鎌倉殿の13人感想あらすじ

大河『鎌倉殿の13人』見どころは?残酷な粛清の勝者・義時の悪辣描写が成否のカギ

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2010年代 歴史劇は露悪的になった

ここからは、本作のめざす到達点の予測となります。

2022年の大河を語るうえで、2010年代の歴史劇変革について避けることはできません。

『鎌倉殿の13人』はことのほかそうです。

理由は後述するとして、まず2010年代の歴史劇変革とは何か?

何と言っても『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下『GoT』)の世界的なヒットです。

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2011年から放送が開始され、2019年に完結した『GoT』は、それ以前とそれ以後を分断した画期的な作品でした。

過激な暴力、渦巻く陰謀、複雑なプロット。

公式サイトやファンサイトの相関図や考察をたぐりながら、じっくりと楽しむ作品だったのです。

この作品はファンタジーに分類されますが、その特徴はむしろ歴史劇に近いところにあります。

アメリカには、ジレンマがある。

自国の歴史には興味があるけれども、騎士が馬にまたがって戦うような、そんな中世史劇をできない。イギリスとは異なる。

そんな歴史劇への渇望を埋め合わせたかのような作品が『GoT』でした。

『GoT』は荒唐無稽なようで、荒々しく、残酷なプロットには元となる史実があるとわかる。

いくつかの興味深い要素が重なりあいますが、薔薇戦争時代のイギリスが中心です。

しかしファンタジーだけに、何の忖度もなしに「中世の連中はひどいなぁ」と言えてしまう。なまじシェイクスピアのように実在の人物を扱っていると生じる面倒がありません。

結果、ありのままに野蛮かつ冷酷極まりなかった人物や事件を描くと、

【とてつもなく面白い!】

と証明してしまった……それが『GoT』です。

ファンたちは歴史を掘り起こし、さまざまな事件や人物をこう呼ぶようになります。

「この処刑法はそう、まるで『GoT』みたい!」

「私たちの過去にもいる! こんな『GoT』なバッドアス!」

一例として、ウクライナを代表する女性・聖オリガをあげておきましょう。

彼女は自身の夫を殺した憎き相手を「生き埋め」や「惨殺」、あるいは「炎風呂」といった激しい方法で復讐します。

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『GoT』を契機にして、ファンたちは歴史に残る惨劇や悪党を、興味津々に眺めるようになりました。

過去にいた偉人をロールモデルにするとか。元気をもらうとか。アイデンティティとして自慢するとか。

ちょっと古い。それが2010年代以降の歴史劇です。

露悪的で、陰謀まみれで、血飛沫が飛ぶ歴史を描くことこそ、最先端であり、世界に通じるドラマである。

そう証明された2010年代。

華流にせよ、韓流にせよ、東アジアも例外ではないはず。

では日本の大河は?

日本の時代劇はほぼ大河のみとなり、かつ形式やテーマ的に唯一『GoT』に肉薄できるのが大河ドラマです。

では、大河で『GoT』が実現できていたかどうか?

考えてみましょう。

なお、歴史劇として新味を求めるより、何らかの制作事情があった年(2015・2018・2019・2021)は外して考えます。

 

転換点はいつか?

2016年『真田丸』から見ていきましょう。

この作品はスタッフが『GoT』を意識していると語っていたインタビューがあったことを覚えています。

なんせ古い話ですので、詳細は失念しました。申し訳ありません。

ただし、影響を受けたと思える場面が複数あります。その代表例をあげておきます。

◆2016年『真田丸』祝言での謀殺

主人公である真田信繁(幸村)の目の前で、暗殺が行われる場面が幾たびも出てくる。

しかも命令者や実行者が、父である昌幸でした。

決定的だったのは「祝言」です。身分の低い梅であっても、せめてもの祝言はあげさせたい。

そう温情を見せた昌幸でしたが、真の狙いは室賀正武を呼び寄せ、謀殺することでした。

確かに冠婚葬祭は暗殺の定番ではあります。

しかし、それを主人公の父がする必要もなければ、暗殺ターゲットを愛嬌のある人物にしなくてもよいはず。

じゃあ、なぜ、そうするのか?

めでたい雰囲気の中での殺人は、心理的な打撃が大きいものです。

『GoT』で最も印象的な場面とされる「赤い婚礼」がその代表例。

結婚式で招待客をまとめて殺すという、作中で最もトラウマになる悪名高い場面でした。

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◆2017年『おんな城主 直虎』女性が加害者となる暴力

イケメン揃えたスイーツ大河か……そう思わせておいて、暗殺場面があまりに過激な作品で、視聴者が憂鬱な気分になることもしばしば。

最大級の場面は、ヒロインが小野政次を槍で処刑する場面でしょう。

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史実であんなことはありえるのか?

いえいえ、むろん創作ですし、そこには意図があります。

【女性による殺人】です。

『八重の桜』では、故郷防衛戦に挑むヒロインが人を殺しているという批判も出ました。

正当防衛でもそうなるとわかっているのに、それでも直虎は政次を殺した。

『GoT』の画期的な描写として、劇中未成年であった少女・アリアの手による殺人があります。

アメリカのテレビですら、2011年になるまで少女による殺人場面はなかった。

『GoT』は【男性がすればありきたりだが、女性がすることで印象が強くなる】効果を発揮する場面がいくつもあります。

その皮切りとなる場面がアリアによる殺人。

このようなジェンダーを意識し、視聴者に印象を残す場面の象徴が、あの処刑でした。

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◆2021年『麒麟がくる』生首箱詰め

織田信長が自らの祝言の祝いとして、松平広忠の生首を箱詰めにし、父・信秀に差し出します。

人を殺すだけでも十分ひどい。そして遺体損壊をするとなると、ますますひどい。

人間のすることではないという衝撃が強まります。

『GoT』では、「赤の婚礼」で虐殺された被害者の胴体に狼の首を突き刺し、馬に乗せて練り歩く場面があります。

遺体をおもちゃにしてしまうことは、見る側の心理に大きな影響が与えられます。

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その判断基準として、遺体埋葬があげられます。

発掘した人骨の周辺から花粉が見つかる。埋葬時、弔いの感情から花を供えたことの証とされます。

人と獣を分けること――それは死への態度とされたんですね。

ただの物体としてではなく、尊厳を持って遺骸を扱うかどうかが分かれ目。

ゆえに人間とは、遺体をモノ扱いされると生理的嫌悪感がドッと押し寄せてくるのです。

こうした特性を踏まえ、心理的な揺さぶりをかけるため、遺体損壊は古来より利用されてきました。

 

誰かが死んでロスだの言っているようでは甘い

そして2022年にも確定している要素があります。

◆2022年『北条殿の13人』無垢な未成年惨殺

木曽義高の写真をみただけで、気分が悪くなりました。

酷い死を遂げる少年をここまで美しくする……どれだけ酷いことをするつもりなのでしょう?

人間の命は尊く、誰が亡くなっても悲しいものです。

とはいえ、衝撃度には違いがある。

フィクションにおいて鮮烈で嫌な印象がズシリと残るのは、まだ十代半ばほどの少年少女の死です。

死の意味を理解し、自分の人生の輪郭がわかり始めたところで、無惨にも命を奪われる。

会津戦争で集団自刃した隊が、白虎隊ではなく年長者の部隊であれば、ああも顕彰されなかったかもしれない。そんなこともつい考えてしまうのです。

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『GoT』はいちいちあげることもキリがないほど、十代の少年少女たちが酷い死に方をさせられました。

無垢であればあるほど、愛くるしいほど、胸が痛む。

本作が木曽義高と視聴者の心を重ね、無惨にぶった斬るつもりであることは、十分伝わってきます。

歴史上には悲惨な出来事はたくさんあります。それを取り入れるか、脚本と演出をどうするか。作り手の狙い次第です。

ここにあげた作品は史実にはない創作描写も含まれています。

歴史をどう描くか。視聴者の心に突き刺さるか。2010年代以降のグローバルスタンダードを取り入れるか。保守的なウケ狙いをするか。そこは重要です。

誰かが死んでロスだの言っているようでは甘い。

誰かの死を思い出すと、気分が重たくなって、翌朝まぶたが腫れている。

それこそが死の重みというものでしょう。

私はもう現時点で気分が悪い。関東地方では、自治体が、惨殺される郷土の英雄を用いて町おこしをしている……どういう状況で最期を迎えるか考えると、イケメンやかわいらしいデザインをされたイラストにすら血の気が引いてしまうのです。

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大泉洋さんは、お嬢さまにはこのドラマを見せたくないそうです。

それが本来の歴史劇です。

鮮血と残虐なくして、乱世を描いた歴史劇であるはずがない。

視聴者が震え涙ぐむことを追求する。憎い役を演じた役者が、道で出会った人から顔を背けられてしまう。

それこそが、2010年代以降の歴史劇です。

 

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