鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第15回「足固めの儀式」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第15回「足固めの儀式」
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兎より鹿

「上総介殿でよいかと」

頼朝の言葉に広元が同意すると、やはり信じられない義時が本気なのかと問いかけ、はたとここで気づきます。

「まさか……はじめからそのおつもりだったのですか? こうなることを見越して!」

「最も頼りになる者は、もっとも恐ろしい……」

「ご存じだったのですか!」

義時はさらに悟ります。頼朝の陰謀を。

「この鎌倉で、わしの知らないことはない。広元から逐一聞いておった」

上総介広常――いずれなんとかせねばならぬと思っておった。その矢先に今度の一件が持ち上がった。頼朝はそう言いながら、広元に問いかける。

「最初に言い出したのは、おぬしであったな」

「鎌倉殿でございます」

「ふふっ、わしであった」

「敢えて謀反に加担させ、責を負わせる。見事な策にございます」

頼朝はむしろ得意げだ。これだけ大きな企てがあったのに、上総介一人で皆を許そうとしている。

それでも承伏できない義時。

ここで頼朝が謀反人一覧を突き出す。

「では誰ならよいのだ? 申してみよ! この中で、死んでも構わぬ御家人をあげてみよ!」

頼朝は、恩義を感じているからこそ別れを告げてきたという。あの酒盛りにはそんな意味があった。

そして御家人たちの見せしめにするためには、効き目は大きい方がいいと言いきります。

「なりませぬ!」

義時は叫びます。それでも頼朝はすぐに手配せよと言い切ってしまう。

「なりませぬ! なりませぬ!」

「上総介は言った。御家人は使い捨ての駒だと。奴も本望であろう」

頼朝は冷たくそう言い切ります。

かつて死ぬ間際に、大庭景親は言いました。頼朝がいつかお前たちの災いになる。彼には先が見えていたのです。

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そしてこの先、気が重たくなるのですが……頼朝と広元の判断は正解だったとも言える。

戦と飢饉で生活が苦しい中、手っ取り早く所領を分配するのであれば、誰かを生贄にするのがいい。

狩りをするなら、兎より鹿をとった方がいい。

上総広常は見事な鹿だったのです。

 

義時が頼朝に似てきた?

心身ともに疲れ果てた義時が、盟友の義村に相談しています。

頼朝に失望した――義時がそう言うと、前からわかっていたと答える義村。

義時が「広常に逃げろと促してくる」と言うと、馬鹿なことはヤメとけと止めています。

あいつ一人が死ぬことで皆が助かる。俺もお前もわかっていたくせに、とズケズケと言う。

更にはそれしかないとわかっているくせにと畳み掛ける。

「ちがう!」

「じゃなんで俺のところへ来た? 止めて欲しかったんだろ」

逃すことなんてできない。義村の中で上総介の命運は尽きている。

さらに義村はこう告げます。

「気づいてねえようだが、お前少しづつ、頼朝に似てきてるぜ」

義村の、面白がっている本音が顔にうっすらと出てきていますね。

盟友が頼朝のように陰謀を喰らうようになるならば、彼は取り出せる。こういう位置が義村にとっては一番美味しいのでしょう。

主君を操り、自らの精密な陰謀を天下に向けて放つ。こんな面白いこともない。

いい暇潰しができたとワクワクしているのかもしれません。女をからかうよりも楽しめるゲームになることでしょう。

そのころ頼朝は、景時に揺さぶりをかけていました。

謀反に加担していたフリがあくまで潜入のためであることを自分は信じている。しかし、広元あたりは疑っているかもしれない。

そうカマをかけ、景時が「存外でございます」と否定すると、ならば疑いを晴らせと迫る頼朝。

かくして景時に、汚い仕事が回ってきました。

どちらが賢明なのでしょうか。

畠山重忠のように、潔癖を通すことと。梶原景時のように、暗い仕事に手を染めてでも保身を図ることと……。

12月22日――広常が御所を歩いていると、廊下の曲がり角で誰かにぶつかりました。

善児です。なぜ奴がいるのか?

実衣が政子に、御家人たちが集まっていると告げます。

政子が水に流すお言葉をいただくためというと、実衣は「甘すぎる!」と憤慨しています。私の夫がどんな目に遭ったか。

すると政子はムッとしてこう言います。

「いちいち誰か背負って自刃したり、首を取ることにはもううんざり!」

姉妹の性格の違いがでていますね。実衣は夫のこともあるとはいえ、厳罰主義。彼女ならば大江広元の策に納得するかもしれない。

一方で政子は寛容なのです。

 

上総介広常! 大悪人なり!

梶原景時の息子である梶原景季が、双六を父・景時の元に持ってきました。

景時は上総介を斬ることにためらいがある。本当にここで死ぬ男なのか。賽の目に聞く他あるまいと言い出す。

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御家人たちは集まって何か話しています。

話題は御台所のことで、皆、感心しきっています。頼朝はなぜ、この寛容さを妻から学べないのか。

そんな中、目から光が消えた義時が座っています。

「いつまで待たせんだよ武衛は」

広常がそうぼやいていると、景時が双六に誘ってきました。

賽を振る二人。ついてねえなと広常はボヤいています。そして賽の目を見て、広常が嘆く。

「やられた!」

その瞬間、景時は天意を悟ったのでしょうか。ニヤリと笑うと、息子の景季が事前に仕込んでいた刀を取り出し、父に渡しました。

そして……。

「上総介殿、御免!」

相手は無力でした。事前に善児がわざとぶつかり、広常の刀を奪っていたのです。

呆然としたまま逃げようとする広常。

周囲がザワつく中、景時が大音声で叫びます。

「上総介広常! 法皇様、ならびに鎌倉殿に楯突いた大悪人なり! 御所に攻め入り鎌倉殿を亡き者にせんと企んだ、その咎によって、ここに成敗致す!」

御家人たちは顔色を失って惨劇を見つめるばかり。義村が和田義盛を抑えています。

「小四郎っ、小四郎ぉ!」

烏帽子を吹っ飛ばされ、助けを求める広常。

黙って俯くしかない義時。

広常は義時のことを信じていた。仲間だと思っていた。

それなのに、こいつは、俺を売っていたのか?

裏切りやがったのか?

そう責めているように義時は感じたのかもしれない。

「武衛、武衛っ!」

頼朝のもとへ向かい、すがるような目で相手をみあげる広常。

かつて頼朝に食らいつこうとしていた狼はもういない。そこにいるのは撲殺される猟犬です。

思えば何もかもが一方的で間違っていた。

広常は、“武衛”と親しみを込めて呼ぶけれども、本当の意味は尊称であり、上下関係がある。それなのに広常は、二人の間に壁は無いと勝手に思い込んでしまった。

義時が思わず弾かれたように立ち上がると、涙が落ちます。

「小四郎! 来ればお前も斬る」

「御免!」

景時がとどめを刺す。

胸を突き刺された広常は、すがりつくような目をしながら命を失いました。

 

武人の残酷さが凝縮された景時

景時は残酷ながら、所作が重みがあり、何もかもが決まっている。

ものすごく残酷であるにも関わらず、なんて見事な猟犬なのかと思ってしまう自分が嫌になる。

この目、この牙。

命令を受ければすっ飛んでいって獲物を薙ぎ倒し食らいつく――権力者として、こういう側近がいることはよいものです。

難しい役目を果たしたこの猟犬を思い切り撫でて、美味しい肉を食べさせたい! そういう景時に対する愛着みたいなものも湧いてくる。

武人の残酷な見事さが凝縮されていると思える中村獅童さんの姿でした。

「謀反人上総介広常を成敗した。

残党を討ち、その所領は一同に分け与えよう。

西にはさらに多くの所領がある。

義仲を討ち、平家を討ち、己の力で我がものにせよ。

今こそ天下草創の時。わしに逆らうものは何人も許さぬ。

肝に銘じよ!」

頼朝がそう宣言します。

目線を左右に動かし御家人を見、堂々たる口調で言い切る。大泉洋さんがこうもおそろしい人間になるとは思わなかった。

そして頼朝の心を眺めてみると、おそろしいものがあります。

勝手好き放題をしていた荒くれ者たちが自分に怯えている。参ってしまっている。

けれども、この座に安住できるわけではない。引き締め続かねば転落する。

これからは常に、どうすれば殺されないのか、考えねばならなくなりました。

義時が涙を落とします。

眼下には広常の死体が転がっている。

義村は言った、己はあのおぞましい頼朝に似てきていると。

これから先、何人が広常のように死ぬのだろうか?

歩み始めたからには、もう止まれないのではないか?

もう、誰も義時を救えないのでは?

そう不安になるほどの暗い目でした。

 

広常の書状をあっさり踏みにじる頼朝

そんな義時にとって癒しは、臨月の八重。ついに彼女が産気づきました。

義時は、謀反の処理について聞かされています。

盛長が広常の屋敷を探り、鎧の中から書状が出てきたと言います。

あまりの悪筆に「子どもの字か」とそっけない頼朝。

広常が京都に登った時のために稽古をしていたと義時が言い、頼朝に「読めん」と無造作に投げ出された書状を解読します。

書状の内容は、今後三年のうちにすることでした。

・明神様のために田んぼを作る

・社も作る

・流鏑馬をたくさんする

そしてその全ては「鎌倉殿の大願成就と、東国の泰平のため」と続きます。

しかし、頼朝は「あれは謀反人じゃ」と素っ気なく返し、書状を丸めるのでした。

床に這いつくばって、未来を夢見て、一生懸命、上総介広常が書いた書状を、一顧だにしない頼朝。

それを見ている義時。

これは主君が家臣を見定めているようで、それだけでもない。

逆です。

義時は頼朝をはかった。

これと似た場面が『麒麟がくる』にありました。

松永久秀から平蜘蛛を預けられた明智光秀

織田信長が欲しがっていると知っている光秀は、信長がもっと寛容になること、君子にふさわしい心掛けをすることを条件に譲ろうとします。

しかし信長は、そんなことならいらないと無造作に返す。そのうえで平蜘蛛を売ろうとした。

誰かの思いが詰まったものをそっけなく扱うこと――そういう姿をジッと見つめている誰かはいます。

その場で何かせずとも、心に溜めているのかもしれません。

そしてついに、義時と八重の子が生まれました。

のちの北条泰時――義時は我が子を抱きます。

北条泰時
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もしも上総広常を助けていたら、この子を抱くことはできなかったかもしれない。

そんな気持ちがよぎる人生を、北条義時は生きています。

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