戦のにおい――義経が待ち望んでいた戦場の気配を嗅ぎ取っています。
鎌倉の澱んだ空気とは大違い!
弁慶はまだ先だと指摘します。ここはまだ近江国。しかし……。
「義仲、待っていろ!」
弁慶の言葉を意に介さず、高笑いをする義経、その顔つきを覚えておきたいです。
猫が動く獲物を見つけたような獰猛さがある。強い酒を煽るような、そんな魅力がある。不愉快な味なのに、気づけば酔ってしまう。
危険な魅力。
この先、義経は大勢を殺すのですが、その中には幼い安徳天皇もいるのです。
-

1歳で即位して6歳で壇ノ浦に沈んだ安徳天皇|清盛に振り回された生涯
続きを見る
身重の八重を時政夫婦に託す
敵が迫っている、鎌倉勢を入れてはならぬ。
今井兼平と巴御前からそんな進言を受ける義仲は後白河法皇を捕まえることにします。それで敵も手出しはできぬであろう。
丹後局と共に怯える後白河法皇のもとへ、平知康が駆けつけてきました。
かくして法皇は捕まります。
ここは日本史のポイントですね。
武士は天皇を都合よく使います。平家は安徳天皇を抱えていった。そして義仲は後白河法皇を捕える。
しかも義仲は都に火を放ちました。
源氏同士の戦が始まる大義名分はできていきます。義仲は自分の命運にまで火を放ったのかもしれない。
-

なぜ木曽義仲は平家討伐で大活躍だったのに失脚へ追い込まれたのか
続きを見る
義時は、時政とりくに八重との結婚報告をしていました。
しばらく戻れないから、気にかけて欲しい。そう頼る義時に両親夫妻は請け負います。
しかも時政は「立派な北条の後継ぎを産んでもらいたい」と微笑んでいますが……。
ん? 本音が出ちゃいましたか?
りくが産んだ子を北条の後継にする。それが彼女の思惑のはずであり、少しばかり怪訝な表情を浮かべています。
そうした状況を踏まえると、りくに八重を託すことがちょっと怖くなりますね。
万寿誘拐計画
鎌倉では、源頼朝が焦っていました。
義仲討伐のためにすぐに出立したいのに、御家人たちが反発しているのです。
しかも、頼朝追放計画までもが着々と進行中。
いったい陰謀サークルでは何を話しあっているのか?
千葉常胤は頼朝の首とまで息巻いています。そもそも生首をお土産に頼朝陣営へ駆けつけたぐらい気の荒い方なので、前向きですね。
岡崎義実もヒートアップしている。
-

頼朝の蜂起に駆けつけた岡崎義実の生涯|三浦一族の重鎮で重忠や義盛の大叔父
続きを見る
この時代の坂東武者は、いくつになっても暴れる傾向がありますね。
ただし、三浦義澄はそこまでやるつもりはないようです。
少し離れたところに据わっていた上総広常は「坂東を取り戻すだけだ」といきりたつ意見を押さえつけようとします。
と、義澄が「万寿誘拐計画」を言い出しました。チャンスがある!と煽るのが文覚。なんでも生まれて五百日目に“足固めの儀式”を開催するんですと。
-

伊豆で頼朝に用いられた破戒僧の文覚|実はストーキング殺人事件の被疑者
続きを見る
僧侶ならではの話の展開ですね。
彼らは、儀式にかこつけて金を集めたり、人を集めたりできるから、厄介な存在になりかねない。
五百日目に随分と都合のいい儀式があったものだと坂東武者たちがはしゃいでいると、こうきました。
「拙僧が作り出した!」
この一連のやりとりをジッと聞いていた梶原景時は、家に帰ると告げ、その場を去ろうとします。
すると「御所まで行くのではないか」と呼び止められました。
血気にはやる和田義盛が景時を襲おうとすると、三浦義村が「殺すな」と止めます。広常も「同じ坂東武者じゃねえか」と温情を見せます。
かくして景時は厩に捕縛されたのでした。
鹿狩りとはタイミングが良すぎる
頼朝外しを画策している千葉常胤、三浦義澄、岡崎義実らの宿老たち。
彼らは木曽義高に掛け合いました。
旗頭になっていただきたい!
そう訴えると、義高は「しばらく時が欲しい」と慎重な態度を取ります。
そもそも旗頭の子である万寿を誘拐する連中です。担がれるのはリスクが高い。
御家人を掌握して頼朝を打ち果たし、そのまま京都に向かうほど、あくどいことは思い付かない。それが義高なのでしょう。そんなことをしたら大姫を悲しませてしまいます。
頼朝と政子は、我が子をかわいがっています。
五百日の祝いがあることを素直に受け止める政子。こういう時でもない限り抱くこともできないから、ありがたいのですと。大姫も最近は弟をかわいがっているそうです。
雑な計画は察知されるもので、安達盛長が、三浦義澄開催の鹿狩りがあることを頼朝らに告げています。
まだまだセキュリティ意識が甘いですね。
『麒麟がくる』では、連歌会で暗殺計画が練られていました。連歌会に武器を持ち込む人がいたら「どういうことでしょうか?」と察知されます。
狩りはそうではない。堂々と武器を持てる。だからこそ不穏な気配を察知されてしまいます。
しかも都から来た大江広元も五百日祝いなぞ聞いたことがない、そんなものはないと言い切ります。
彼のような貴族はせっせと日記をつけ、冠婚葬祭の手順を覚えていますから、そうした状況を察知しきれていない文覚は、やはり甘い。
坂東武者が仏僧の言うことをありがたがってと信じるからって、相手もそうだと思わない方がよいのですね。
-

平安末期~鎌倉時代の「呪術事情」生臭坊主・文覚の呪詛はどこまでマジ?
続きを見る
かくして比企能員が、鹿狩り一行の真意を確かめに向かうことになりますが……うーん、ちょっと手駒が足りないですね。
頼朝陣営も、もうちょっと頼りになる誰かが欲しい。
あっさり裏切る能員
三浦館に比企能員がやってきます。
鹿狩りにしては大掛かりだといきなり切り出す能員。いや、そんなどストレートに切り出したらイカンでしょ。
案の定、坂東武者たちが集まってきて、今にも斬られそうな雰囲気です。和田義盛が猛り出したところを、畠山重忠が止めます。
味方をすれば助けてやると言われ、能員はこうだ。
「わしも頼朝はどうかと思ったのだ! 力になりましょう」
あっさり裏切る能員は、御所へ戻り謀反の気配はないと伝えると言い出します。広常も、能員は俺と同じ素直な奴だと太鼓判を押すと、よく言われると勢いづく能員。
「素直な男は損得で動く」
そう断言する広常です。そして広常が鹿狩りを仕切ると宣言すると、能員も「大願成就をお祈り申し上げる!」と調子のええやっちゃ。鎧でもつけておけと言われる始末で、あまりにチョロい奴です。
そのころ北条義時は、文覚を訪問していました。
五百日目ってなんだ? 足固めというが赤子は五百日より早く歩くものだし、万寿も歩いているとつっこむと文覚は開き直る。
「人それぞれだ! ははははっ!」
笑いで誤魔化そうとする文覚は、架空の儀式を持ち上げるなら、もっとディテールにこだわりを入れた方がいいですね。嘘をつくときは、少し真実を混ぜるとよいと言いますし。
もちろん義時にはバレバレ。御家人一行が何か企んでいると頼朝に報告すると、すでに寝返っていた能員は「殺気だった様子はなかった」と火消ししようとします。
本当に頼朝を裏切る気とは……二重スパイにもなれない程度なんですね。ったく、この先が心配になりますわー。
能員は身の丈にあった野心でも抱いていたほうがいい。変に、外戚として政権にグイグイと食い込もうとするからよろしくない。
-

比企能員はなぜ丸腰で北条に討たれた?頼朝を支えてきた比企一族の惨劇
続きを見る
しかも鎧を身につけ窮屈なものだから、こすれて異音を聞かれてしまいます。大江広元は異変を察知。
鹿狩り不参加の実平を問い詰めると……
役立たずの能員はさておき、もう一つ気になる情報がありました。
土肥実平が体調を崩し、館で休んでいるそうです。
早速義時が向かうと、腰が痛いとかなんとか口ごもる実平。
鹿狩りで野山を駆け回るのはつらいと、取り繕うとしますが、本当に鹿狩りなのか?と義時が問い詰める。こうした切り出し方の持って行き方が、比企能員と北条義時の差ですね。
能員は室内で、しかも複数名がいる状態で、「鹿狩りにしては大掛かりだ」といきなり聞く。
義時は屋外で、相手は一人。しかも謀反の計画に乗り気ではないのではないかと、促すように聞いた。
土肥実平が答えを濁していると、ありならば一度、なしならば二度首を振ってほしいと、義時はさらに詰めます。
「本日、謀反の企てはありや、なしや!」
迫力の表情で迫られ、唸るしかない実平。
一度とか二度とか、実際に首を振る回数はさほど重要ではないですね。実平が、からりと笑い飛ばそうものなら、判断は微妙になるけれども、彼はあまりに素直で、焦りを見せ過ぎた。
-

初戦で敗北の頼朝を支えた土肥実平|西国守護を任される程にまで信頼され
続きを見る
義時は事情を理解します。
「ありがとうございます!」
「小四郎ぉ〜!」
実平が慌て焦る中、さっさとその場から去る義時。
聡明であるとはわかっておりましたが、なかなか狡猾な技巧も覚えてきているようです。
陰謀は進行中です。
雑な計画ではありますが、坂東武者の心は入り込んでいると思う。
この先、鎌倉幕府は早々に源氏将軍が断絶しますが、幕府はそのあとも残る。
-

4人いた鎌倉幕府の皇族将軍|宗尊親王→惟康親王→久明親王→守邦親王
続きを見る
幕府は滅びたのに、将軍の血は残る、室町時代や江戸時代と比較すると興味深いものがあります。
景時と重忠
坂東武者に捕縛され、厩に閉じ込められた梶原景時。
彼はこう語りかけています。
「この企ては必ず行き詰まる。おぬしだけでも抜けてしまえ」
相手は畠山重忠でした。しかし重忠は、今度何かあったら私に先はないとキッパリ断り、景時に深いことを言います。
使われることと、従うことはちがう。鎌倉殿が御家人を信じていないことを、景時が一番わかっているはず、そう訴えるのです。
この二人には共通点があります。
頼朝の挙兵当初、彼らは大庭景親らの平家方についていました。この時点で不利があります。
そこを重忠は重視しているのでしょう。だからこそ坂東武者という仲間を尊重しなければならないのだと決めている。
-

鎌倉武士たちの憧れだった畠山重忠|時政と牧の方にハメられ悲劇の最期
続きを見る
不穏な動きを確認した頼朝たちが最終判断を決めようとしています。
まずは御所の守りを固めるよう指示を出しますが、義時が「戦えば鎌倉が火の海になりかねないから、話し合うことが肝要だ」と待ったを入れる。
キーマンは上総広常――と義時が説明を続けます。
実は上総広常とは通じている。彼が御家人の手綱を引いているのだと。
それを聞き、またも挙動不審になる比企能員。
相変わらずガサガサと音を立てているのを突っ込まれ、慌てて鎧を見せると「既に戦の支度ができている!」というアピールします。
頼朝は義時に、上総広常と共に御家人を説き伏せよと告げます。そうすれば全てを不問に付す!という条件を提示され
「命に代えても!」
と張り切る義時です。
謀反、決行
八幡宮へ向かおうと血気盛んになる謀反人たち。
人数が多すぎると計画が事前に発覚してしまうため、選り抜きの強者が派遣されることになりました。
このころ読経中に異変を察知した全成。
三浦義村たちが捕らえにくると、間一髪で床下に逃げ込み難を逃れます。
八幡宮では政子たちが儀式を終えて帰ろうとしていました。
そこへ武装兵士がやってきて……。
「これはどういうことですか?」
毅然とした態度で言い放つ北条政子。
緊張感、危機感、それに威厳。亀との約束を守り、坂東中の女が憧れる頂点の存在へと向かっています。
重忠は、言う通りにすれば手荒なことをせぬと迫ると、ここで源範頼が刀を抜きます。そして華麗な剣術で、襲いかかってきた相手を斬り捨てると、実衣が言います。
「意外にできる!」
うん、私もそう思いました!
範頼に対しては「あの地味な、頼朝の弟」という認識がずっとありました。
しかし範頼は、智勇兼備のデキる人物です。
他の兄弟が派手過ぎて目立たないけれど、目立てば危険だと理解していて、そつなく生きる聡明な人物だったのではないでしょうか。迫田孝也さんが実によくはまっています。
-

源範頼が殺害されるまでの哀しい経緯「頼朝討たれる」の誤報が最悪の結末へ
続きを見る
同時に木曽義高も「万寿様を守る、主に対し逆らうものは許さぬ」と言い切るのを聞き、畠山重忠が感激したようにこう漏らしています。
「冠者殿……」
重忠だからこそ、義高の高潔さがわかったのかもしれない。
-

婚約相手は頼朝の娘で父は義仲|なぜ木曽義高は無情に討ち取られたのか
続きを見る
と、ここで義時が駆けつけます。
義盛「俺は納得した!!!」
義時は彼らの心に訴えかけます。
「既に企みは漏れた。刀を収められよ。これ以上の争いは無駄にございます!」
石橋山で敗れた後、先がないと思われたとき。頼朝は源氏のために戦っているのではなく、これから坂東武者と平家を倒すのだと言ったと。
「覚えておられますか?」
そう言われ、義盛は心を掴まれてしまう。
そして、その一言で鎌倉殿が立ち上がったことも、そのときの気持ちも嘘だったのかと問いかける義時。
義盛は相手のペースに引き込まれてゆきます。
同士討ちをしている時ではないと説得され、あと一歩というところ。
すると畠山重忠が「だまされるな!」と義盛を押し退けて言います。
平家と戦うことが嫌なのではない。木曽と戦うのが嫌なのだと。源氏の棟梁が誰になるのか、我らとは関係ない。そんなことのために戦いたくない。
義時が、法皇を捕らえた義仲の話を持ち出すと、詭弁であると食い下がる重忠。
すると突然、義盛がカットインして、叫びました。
「俺は納得した!!!」
もう、なんなのよ……。
義盛は、そういうことならば仕方ない、はじめからそんな気じゃなかったと言い出し、荒々しく重忠を突き飛ばす。
そして万寿に近寄りこうだ。
「怖かったですか? おじさんほんとはこんなに優しいんだよ♪」
でた。かわいい坂東武者タイムだ。謎の愛くるしさがあるんだよなぁ。
義時が、政子にもう安心だと告げると、小四郎が頼りになるところを初めて見たと返します。
たしかに義時は成長しています。
その義時に、重忠が近づいてきました。
義盛は自分の言うことに必ず異を唱える。だからわざと乱が収束する方向とは逆のことを言ったそうです。そして宿老たちと会ってくるから、あとはお願いすると託します。
前述の通り、重忠は当初は平家につき、和田義盛の祖父であり、自身の祖父でもある三浦義明を攻め滅ぼしました。
-

孫の重忠に攻められ討死した三浦義明|超長寿な坂東武士の生き様とは
続きを見る
その因縁が残っていて、重忠はうまく使いこなしました。賢い人です。中川大志さんの演技がますます光ります。
酒を酌み交わす頼朝と広常
もう陰謀も限界だ。こうなったら御所を襲うか。
無駄死と悟っている宿老たちに大して、三浦義村がキッパリと「もう終わった」と告げます。
千葉常胤は無念のあまり自害を覚悟。わし一人の命でおさめると言うと、そこで上総広常言います。
「よさねえか、爺さん」
自害しようとする常胤の刃を素早く奪う義村。山本耕史さんの一連の動きが流れるように美しい。時代劇に慣れている彼らしい流麗さですね。
-

安房に逃げ落ちた頼朝を救った千葉常胤|幕府設立を支えた武士は大往生
続きを見る
-

殺伐とした鎌倉を生き延びた三浦義村|義時の従兄弟は冷徹に一族を率いた
続きを見る
義時が広常に報告しています。頼朝も腹に収めるとのことで、ホッとしている。
「あとは小四郎に任せたよ。時が経ったら解散だ、めでたし、めでたし」
かくして陰謀は終わったのでしょうか……。
頼朝は、陰で広常と協力していた策を誉めちぎると、義時は、大江殿の策だと言います。上総広常が御家人の手綱を引いたので、大事に至らずにすんだのだと。
そして夜――広常と頼朝が並んで酒を酌み交わしています。
「武衛、お前に言っとくぜ」
「聞こう」
「お前は自分勝手な男だ。だがそれがお前だ。頭の中には親父の仇を取ることしかねえ。だろ? それでいいんだよ。御家人なんざ、使い捨ての駒だ。この乱世に坂東に閉じこもるなんざ、臆病者のすることだ。おめえさんは己の道を行けばいい。法皇様だって目じゃねえや」
「あいわかった」
「御家人どもが騒ぎ出したら、俺がまたなんとかするよ」
「上総介、そなたがいるから、今のわしがおる。これからも頼むぞ」
そう言い合う二人を、義時は微笑みながら見守っています。しかし……広常は結局のところ、己の基準で相手を見てしまっている。こうあって欲しい。そんな虚像を見ているだけでしょう。
それぞれの戦後処理
政子が御家人の宿老たちと向き合っています。
「あなたたちがそこまで思い詰めていたとは、思いもしませんでした」
恥ずかしい限りだと悔しそうな御家人たち。
岡崎義実は、石橋山で息子(佐奈田義忠)を失っていると語りかけます。
息子のためにもお側で役に立ちたい。けれども、あのお方はいつもわしらの方を見てくれねえ! それが悔しくてな……。
そう訴えると、政子も話し始めます。
「私もあの戦で兄を失いました。命を賭けて戦う者たちのおかげで今があることを忘れはしません。これからは鎌倉殿に言えぬことは私にお話しください。できることは、なんでもやらせてもらいます」
「御台所にそう言ってもらえるだけでも、此度のことにたった甲斐があるというもんだな……」
と、御家人宿老たちは泣き始める。
政子は賢く、思いやりがあります。彼女が尼将軍として君臨する未来への道が見えてきます。
人の上に立つ大きな器量があり、理想的な人物でしょう。小池栄子さんがどんどん大きくなってきます。
比企能員が謀反人一覧を頼朝に提出しています。
人数の多さにさすがに驚く頼朝。しかも皆、これまでの武功があります。
寛大なお裁きを願う義時に対し、御所に攻め込もうとしたことを放置しては示しがつかぬと頼朝は苦い顔をする。
平家を倒したあかつきには、御家人に分配すればよい。そうすれば我先に向かう。
義時がそう告げると、安達盛長も、御家人の気持ちは御家人がわかっていると感心しています。義時のこの言葉は、父・時政の受け売りですね。
「合点がいった。ここは小四郎の言う通りにしよう」
これで義時はホッとしたのでしょうが……事は終わりません。
大江広元が言い出す。
御家人たちにお咎めなしというのは、示しがつかない。この際、誰かに死んでもらいましょう。
信賞必罰は大事です。餌で釣るだけでなく、悪いことをしたら叱らなければいけない。
瞬時に、義時は顔色を変え、止めようとします。一人を選んで首をはねるなんてありえない! 広い心の深さを見せて欲しい!
そう訴えると、隣では比企能員が一人くらいならいいだろうとアッサリ応じています。
広元は、謀反を企てて示しがつかないとみせしめを主張。では誰か?と義時が尋ねると、鎌倉殿が決めることと広元が言葉を濁します。
「やはりあの男しかおらんだろう」
頼朝のこの言葉に対し、広元が続ける。
「上総介広常殿」
驚きのあまり一瞬言葉を失う義時。信じられない!と言いたげに問いかけます。上総介がおさめたのにそれはおかしい!
兎より鹿
「上総介殿でよいかと」
頼朝の言葉に広元が同意すると、やはり信じられない義時が本気なのかと問いかけ、はたとここで気づきます。
「まさか……はじめからそのおつもりだったのですか? こうなることを見越して!」
「最も頼りになる者は、もっとも恐ろしい……」
「ご存じだったのですか!」
義時はさらに悟ります。頼朝の陰謀を。
「この鎌倉で、わしの知らないことはない。広元から逐一聞いておった」
上総介広常――いずれなんとかせねばならぬと思っておった。その矢先に今度の一件が持ち上がった。頼朝はそう言いながら、広元に問いかける。
「最初に言い出したのは、おぬしであったな」
「鎌倉殿でございます」
「ふふっ、わしであった」
「敢えて謀反に加担させ、責を負わせる。見事な策にございます」
頼朝はむしろ得意げだ。これだけ大きな企てがあったのに、上総介一人で皆を許そうとしている。
それでも承伏できない義時。
ここで頼朝が謀反人一覧を突き出す。
「では誰ならよいのだ? 申してみよ! この中で、死んでも構わぬ御家人をあげてみよ!」
頼朝は、恩義を感じているからこそ別れを告げてきたという。あの酒盛りにはそんな意味があった。
そして御家人たちの見せしめにするためには、効き目は大きい方がいいと言いきります。
「なりませぬ!」
義時は叫びます。それでも頼朝はすぐに手配せよと言い切ってしまう。
「なりませぬ! なりませぬ!」
「上総介は言った。御家人は使い捨ての駒だと。奴も本望であろう」
頼朝は冷たくそう言い切ります。
かつて死ぬ間際に、大庭景親は言いました。頼朝がいつかお前たちの災いになる。彼には先が見えていたのです。
-

大庭景親は相模一の大物武士|なぜ一度は撃破した頼朝に敗北したのか
続きを見る
そしてこの先、気が重たくなるのですが……頼朝と広元の判断は正解だったとも言える。
戦と飢饉で生活が苦しい中、手っ取り早く所領を分配するのであれば、誰かを生贄にするのがいい。
狩りをするなら、兎より鹿をとった方がいい。
上総広常は見事な鹿だったのです。
義時が頼朝に似てきた?
心身ともに疲れ果てた義時が、盟友の義村に相談しています。
頼朝に失望した――義時がそう言うと、前からわかっていたと答える義村。
義時が「広常に逃げろと促してくる」と言うと、馬鹿なことはヤメとけと止めています。
あいつ一人が死ぬことで皆が助かる。俺もお前もわかっていたくせに、とズケズケと言う。
更にはそれしかないとわかっているくせにと畳み掛ける。
「ちがう!」
「じゃなんで俺のところへ来た? 止めて欲しかったんだろ」
逃すことなんてできない。義村の中で上総介の命運は尽きている。
さらに義村はこう告げます。
「気づいてねえようだが、お前少しづつ、頼朝に似てきてるぜ」
義村の、面白がっている本音が顔にうっすらと出てきていますね。
盟友が頼朝のように陰謀を喰らうようになるならば、彼は取り出せる。こういう位置が義村にとっては一番美味しいのでしょう。
主君を操り、自らの精密な陰謀を天下に向けて放つ。こんな面白いこともない。
いい暇潰しができたとワクワクしているのかもしれません。女をからかうよりも楽しめるゲームになることでしょう。
そのころ頼朝は、景時に揺さぶりをかけていました。
謀反に加担していたフリがあくまで潜入のためであることを自分は信じている。しかし、広元あたりは疑っているかもしれない。
そうカマをかけ、景時が「存外でございます」と否定すると、ならば疑いを晴らせと迫る頼朝。
かくして景時に、汚い仕事が回ってきました。
どちらが賢明なのでしょうか。
畠山重忠のように、潔癖を通すことと。梶原景時のように、暗い仕事に手を染めてでも保身を図ることと……。
12月22日――広常が御所を歩いていると、廊下の曲がり角で誰かにぶつかりました。
善児です。なぜ奴がいるのか?
実衣が政子に、御家人たちが集まっていると告げます。
政子が水に流すお言葉をいただくためというと、実衣は「甘すぎる!」と憤慨しています。私の夫がどんな目に遭ったか。
すると政子はムッとしてこう言います。
「いちいち誰か背負って自刃したり、首を取ることにはもううんざり!」
姉妹の性格の違いがでていますね。実衣は夫のこともあるとはいえ、厳罰主義。彼女ならば大江広元の策に納得するかもしれない。
一方で政子は寛容なのです。
上総介広常! 大悪人なり!
梶原景時の息子である梶原景季が、双六を父・景時の元に持ってきました。
景時は上総介を斬ることにためらいがある。本当にここで死ぬ男なのか。賽の目に聞く他あるまいと言い出す。
-

なぜ梶原景時は鎌倉御家人たちに嫌われたのか|頭脳派武士の無惨な最期
続きを見る
御家人たちは集まって何か話しています。
話題は御台所のことで、皆、感心しきっています。頼朝はなぜ、この寛容さを妻から学べないのか。
そんな中、目から光が消えた義時が座っています。
「いつまで待たせんだよ武衛は」
広常がそうぼやいていると、景時が双六に誘ってきました。
賽を振る二人。ついてねえなと広常はボヤいています。そして賽の目を見て、広常が嘆く。
「やられた!」
その瞬間、景時は天意を悟ったのでしょうか。ニヤリと笑うと、息子の景季が事前に仕込んでいた刀を取り出し、父に渡しました。
そして……。
「上総介殿、御免!」
相手は無力でした。事前に善児がわざとぶつかり、広常の刀を奪っていたのです。
呆然としたまま逃げようとする広常。
周囲がザワつく中、景時が大音声で叫びます。
「上総介広常! 法皇様、ならびに鎌倉殿に楯突いた大悪人なり! 御所に攻め入り鎌倉殿を亡き者にせんと企んだ、その咎によって、ここに成敗致す!」
御家人たちは顔色を失って惨劇を見つめるばかり。義村が和田義盛を抑えています。
「小四郎っ、小四郎ぉ!」
烏帽子を吹っ飛ばされ、助けを求める広常。
黙って俯くしかない義時。
広常は義時のことを信じていた。仲間だと思っていた。
それなのに、こいつは、俺を売っていたのか?
裏切りやがったのか?
そう責めているように義時は感じたのかもしれない。
「武衛、武衛っ!」
頼朝のもとへ向かい、すがるような目で相手をみあげる広常。
かつて頼朝に食らいつこうとしていた狼はもういない。そこにいるのは撲殺される猟犬です。
思えば何もかもが一方的で間違っていた。
広常は、“武衛”と親しみを込めて呼ぶけれども、本当の意味は尊称であり、上下関係がある。それなのに広常は、二人の間に壁は無いと勝手に思い込んでしまった。
義時が思わず弾かれたように立ち上がると、涙が落ちます。
「小四郎! 来ればお前も斬る」
「御免!」
景時がとどめを刺す。
胸を突き刺された広常は、すがりつくような目をしながら命を失いました。
武人の残酷さが凝縮された景時
景時は残酷ながら、所作が重みがあり、何もかもが決まっている。
ものすごく残酷であるにも関わらず、なんて見事な猟犬なのかと思ってしまう自分が嫌になる。
この目、この牙。
命令を受ければすっ飛んでいって獲物を薙ぎ倒し食らいつく――権力者として、こういう側近がいることはよいものです。
難しい役目を果たしたこの猟犬を思い切り撫でて、美味しい肉を食べさせたい! そういう景時に対する愛着みたいなものも湧いてくる。
武人の残酷な見事さが凝縮されていると思える中村獅童さんの姿でした。
「謀反人上総介広常を成敗した。
残党を討ち、その所領は一同に分け与えよう。
西にはさらに多くの所領がある。
義仲を討ち、平家を討ち、己の力で我がものにせよ。
今こそ天下草創の時。わしに逆らうものは何人も許さぬ。
肝に銘じよ!」
頼朝がそう宣言します。
目線を左右に動かし御家人を見、堂々たる口調で言い切る。大泉洋さんがこうもおそろしい人間になるとは思わなかった。
そして頼朝の心を眺めてみると、おそろしいものがあります。
勝手好き放題をしていた荒くれ者たちが自分に怯えている。参ってしまっている。
けれども、この座に安住できるわけではない。引き締め続かねば転落する。
これからは常に、どうすれば殺されないのか、考えねばならなくなりました。
義時が涙を落とします。
眼下には広常の死体が転がっている。
義村は言った、己はあのおぞましい頼朝に似てきていると。
これから先、何人が広常のように死ぬのだろうか?
歩み始めたからには、もう止まれないのではないか?
もう、誰も義時を救えないのでは?
そう不安になるほどの暗い目でした。
広常の書状をあっさり踏みにじる頼朝
そんな義時にとって癒しは、臨月の八重。ついに彼女が産気づきました。
義時は、謀反の処理について聞かされています。
盛長が広常の屋敷を探り、鎧の中から書状が出てきたと言います。
あまりの悪筆に「子どもの字か」とそっけない頼朝。
広常が京都に登った時のために稽古をしていたと義時が言い、頼朝に「読めん」と無造作に投げ出された書状を解読します。
書状の内容は、今後三年のうちにすることでした。
・明神様のために田んぼを作る
・社も作る
・流鏑馬をたくさんする
そしてその全ては「鎌倉殿の大願成就と、東国の泰平のため」と続きます。
しかし、頼朝は「あれは謀反人じゃ」と素っ気なく返し、書状を丸めるのでした。
床に這いつくばって、未来を夢見て、一生懸命、上総介広常が書いた書状を、一顧だにしない頼朝。
それを見ている義時。
これは主君が家臣を見定めているようで、それだけでもない。
逆です。
義時は頼朝をはかった。
これと似た場面が『麒麟がくる』にありました。
松永久秀から平蜘蛛を預けられた明智光秀。
織田信長が欲しがっていると知っている光秀は、信長がもっと寛容になること、君子にふさわしい心掛けをすることを条件に譲ろうとします。
しかし信長は、そんなことならいらないと無造作に返す。そのうえで平蜘蛛を売ろうとした。
誰かの思いが詰まったものをそっけなく扱うこと――そういう姿をジッと見つめている誰かはいます。
その場で何かせずとも、心に溜めているのかもしれません。
そしてついに、義時と八重の子が生まれました。
のちの北条泰時――義時は我が子を抱きます。
-

人格者として称えられた三代執権・北条泰時|父の義時とは何が違うのか
続きを見る
もしも上総広常を助けていたら、この子を抱くことはできなかったかもしれない。
そんな気持ちがよぎる人生を、北条義時は生きています。
MVP:上総広常
木曽義仲にも言えることですが、本作の上総広常は、史実よりも邪気が抜けています。
特に政治的な権力闘争要素が抜けています。
広常はオラオラしていたので、御家人にデカい態度をとったとか。
岡崎義実が頼朝の水干をもらおうとしたらケチをつけて大喧嘩になったとか。
そういう癖の強さもあるのですが、劇中では、子どものような無邪気さというか、素直な一面が見えてきてしまって。
広常が無邪気で無垢なだけのはずがないのに、そう思えてしまうからすごい。
しかも敢えてエグい演出にしている。
広常は痛くて苦しくて意味がわからないまま、無念のまま死んでいく。
それが伝わってきて、胸を抉られるように痛い場面でした。
この回は「神回」予告もされているし、三谷さんも自信を見せていたのですけれども……気持ちはわかります。伏線を張り巡らせるひとつの境地に到達していると感じます。
武衛と呼ぶ飲み会とか。
彼が字を練習するところとか。
クスッと笑えて微笑ましいようで、それが最後になって突き刺さってきてひたすら辛い。
しかし、そういう仕掛けを作る側にしてみれば、そりゃ得意げになってもよいと思えるのです。
しかも、ああいう場面も、時代考証の先生の意見を取り入れつつ、当時の坂東武者の像を反映させて仕上げている。
軽いだの笑えるだの言われてきた本作ですけども、いやいや、本当に恐ろしいドラマです。
それにまだ序の口。これからは死屍累々、毎週のように陰謀と惨殺三昧になります。
たびたび持ち出す『ゲーム・オブ・スローンズ』では、毎回死んでしまった人物をイラストにして公式サイトに展示するという、おそろしいコーナーがありました。
この大河でも、それが成立し得ると思います。
総評
坂東武者たちをしばしば“猟犬”と呼んでしまって申し訳ないと思います。
ただ、意図があります。
上総広常のような人物を表現する言葉が漢籍にはあります。
飛鳥尽きて良弓蔵る。狡兎死して走狗烹らる。
飛ぶ鳥が尽きて弓は片付けられる。素早い兎がいなくなれば、猟犬は煮られてしまう。
天下草創のために血と汗を流して走り回ってきたのに、待っていたのは粛清だった――そういう人物の悲運は、こう振り返られるのです。
広常誅殺の状況は不明点が多いけれども、このドラマではまさに走狗が煮込まれるような状況にあわせてきたように思えます。
そうならないためには、どうすればいい?
無害なふりをして隠居するとか。間抜けさをアピールするとか。引き際を弁えることが大事だとは思えますが、そう思ったところでこの上総広常の場合、どうにも手の打ちようがないというのが困ったものです。
このドラマを見ても、失敗を防ぐコツはなかなか学べない気がします。
三浦義村や大江広元のように、人の恨みを買っている人物は横死しないし。
畠山重忠のような高潔な人物でも酷い死に方をするし。
人間、死ぬときは死ぬ!
そうまとめたくなるけれども、いやいや、それだけではないはず……とも思う。
一点ご報告を。来週は木曽義仲討ち死に備えるため、本レビューの公開は遅れます。
日本版『ゲーム・オブ・スローンズ』度が上がってきました
こんなニュースがありました。
こちらの記事を読み、本作が順当に日本版『ゲーム・オブ・スローンズ』になってきたと確信できました。
あの作品は、序盤から子どもたちが酷い目に遭い続けるため、その時点で脱落した人もいます。
遺体損壊。
陰謀に次ぐ陰謀。
騙し討ち暗殺。
そして野心で心が濁る人々!
これです。このタイトルは原作シリーズの『氷と炎の歌』と異なり、サーセイ・ラニスターという人物のセリフを元にした1作目からとられています。
「王座のゲームを遊ぶならば、勝つか死ぬかしかない」
権力闘争をしたら、勝つか死ぬだけだ!
というのは、今週の頼朝、そして義時の心境にぴったりなセリフと言えるでしょう。
本作における悪の要素は見えてきました。
政治闘争です。
王座を奪おうと手を伸ばすと毒が流れ込んでくるように思える。そのマニュアルを脳にみっちりと詰めた奴が京都からやってきた。
大江広元です。
彼の登場以来、どんどん頼朝の人相が悪化し、ついでに義時の目からも光が消えてゆきます。
『麒麟がくる』の明智光秀は、理想の政治実現から遠ざかることで心が濁るようだったけれど、この北条義時は、権力に近づくと濁ってゆきます。
これから、どれだけ真っ黒になってゆくのでしょうか?
一方で、本作を見ているとき、頼朝の心境にすっと入り込むようにすると、言い方はあれですが、ものすごく楽しくなります。
自分の命令ひとつですっ飛んでいって、御家人が別の御家人を刺す。
御家人たちが平伏し怯える姿を見てやる。
どうだ! 俺はこんなにも強く、人を従えているのだ――そう成りきって見ていると、それなりに楽しい。しかし……。
我に返るとゾッとするし、自分が嫌になる。
そういう感情移入をしやすい演出やカメラワークまで考えているようで、実に興味深いものがあります。
そしてふと思うことがある。
権力って、自分は別に欲しくないなと。
今年の大河からマネジメントスキルは学べない
大河ドラマで学ぶ人間関係――そんな記事を見かけますが、今年は学べないでしょう。
この時代の人間はメンタリティが違いすぎる。
せめて上層への朱子学定着以降、室町後期あたりからの方がよいかと思います。
そもそも、平時と乱世では社会のルールが違い過ぎます。
現代日本で坂東武者のような世渡り術をやらかしたら、犯罪をやらかすことになりかねません。
謀略や殺人上等の世界から学ぶのって、
『仁義なき戦い』から学ぶ! 組織のマネジメントスキル
のようにトンチンカンな話なので、誰かが言い出したら話をそこで打ち切ることを推奨します。
何をどうすれば、このドラマの人物に共感できるのか?
そこは真顔で考えた方がよいかもしれませんよ。
では、なぜ、そういう記事が出るのでしょう。
需要あるところに供給あり――去年は渋沢栄一から『論語』を学び(これまた推奨できません)、来年は家康から学ぶ。そういう需要は毎年あるものです。PVが稼げるなら、何でもアリで記事が作成される。
何かを学べるとすれば、大江広元かもしれません。
彼は際どい事態に何度も巻き込まれ、それでいて断定的なことはなかなか言わず、責任転嫁する達人です。
今回の会話でも「決定したのは頼朝ですよ」と言い切り、うまく責任回避しました。
それでいて頼朝が一から考えた陰謀とも思えない。広元がうまく誘導しているように見える。ともかく只者ではありません。
こういう「王佐の才」(主君を助ける才能)はよいものです。
敵意を投げかけられやすい立場ながら、自身は逃げ切る。その巧みさは学べることが多いものでしょう。
そんな広元の行動原理を学ぶには?
大河もよいですが、実際に彼が読んでいた古典があります。
例えば『貞観政要』(→amazon)などは応用が効き、北条政子、徳川家康、明治天皇も愛読していました。
中世の神頼み
史実から景時の人間性を掘り下げる――そんな脚本が光った今回、中世の殺人者らしい発想がありました。
殺すことがまずありながら、動機づけをしたい。
そこで神の出番です。
神が殺していいと言ったから……という理屈を通す。
これは別に日本特有でもなく、中世のカトリック教国では「おらが村の聖遺物」だの、その日の守護聖人だの、そういう神頼みを理屈にして色々やらかすことはありました。
しかし「そういう迷信って、どうかと思うよね……」という意識の進歩があり、プロテスタントではそういうことはやらなくなる。
そんな中世人らしい神頼みをするところが、景時なのでしょう。
というのも「殺したいから殺した!」「殺した方が手っ取り早いからそうした!」とスカッと笑顔で言い切る奴も、ごく少数、人間の中にはいます。
木曽義仲は違いますね。
彼は法皇を盾にした。
平宗盛も違う。
彼は幼い安徳天皇を盾にした。
答えは源義経です。
権威や神を平気でぶん殴るような相手が隣にいると、景時の神経はもう、やすりで削られ続けるようなものでしょう。
景時の悪夢が来週始まります。
本文に登場する関連記事
-

なぜ梶原景時は鎌倉御家人たちに嫌われたのか|頭脳派武士の無惨な最期
続きを見る
-

1歳で即位して6歳で壇ノ浦に沈んだ安徳天皇|清盛に振り回された生涯
続きを見る
-

なぜ木曽義仲は平家討伐で大活躍だったのに失脚へ追い込まれたのか
続きを見る
-

頼朝の蜂起に駆けつけた岡崎義実の生涯|三浦一族の重鎮で重忠や義盛の大叔父
続きを見る
【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

















