鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第16回「伝説の幕開け」

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天才義経の戦術とは

京の範頼の陣では、平家討伐の軍議が始まっていました。

どこから攻めるか?

そんな主題について、景時は真っ向攻めではなく、軍を二手に分け、北から山を越えて攻めると献策します。

小馬鹿にするような顔の義経は無言のままです。

御家人たちは納得し、重忠は戦上手だと景時を褒めます。

しかし義経は、山から攻めるのはいいが後はダメだ!と言い切る。

景時が理由を聞くと、意表をついて山から攻めるのは子どもでも思いつく。ゆえに敵も思いつく。ならばいっそのこと手の内を見せてやるのだ。

なんのため?と義盛に聞かれると、義経は全部説明するのかと面倒臭そうに言います。

出た。自分がわかっていることはみんなわかっていると言いたげで、説明を省きたがる悪癖です。

義経の狙いは「敵を散らすこと」でした。

敵も、今のままなら二箇所だけ守っていればいいが、山にも進軍すれば、三箇所の守備が必要になる。

その上で平家の裏をかき、予想外のところから攻める。

では予想外とは何処なのか?

しばし考える義経は、程なくして「そのときその場で見て決める」と言い出します。

これには、義盛ですら「そんなアヤフヤな策があるか」と反発。

意に介さず義経は、行軍に二日かかる場所へ明日一日で夜襲をすると言い切る。

さらには戦に無理はつきものと突っ切ろうとすると、重忠ですら平坦な道ではないと困惑しています。

「なんだなんだぁ? 坂東武者は口だけかぁ?」

義経にオラつかれ、無表情になる景時。義時も困りながら、景時に意見を求めると、思わぬ返事がかえってきました。

「九郎殿が、正しゅうござる。すべて理に適っておりまする」

「あの男はわかっておる! あはははははは!」

そう言いながら、思いっきり笑い出す義経。

怒ったり笑ったり感情がコロコロ変わりますが、源範頼も景時がそう言うならと納得の様子です。

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義無き義経と法皇の波長

それにしても、なぜ景時は納得したのか。

本当は同意してないが反論するのも面倒だから、その場では義経の意見に従ったのか。

一瞬、そんな風に思えてしまうかもしれませんが、景時も凡人には非ず。

自分なりに正しいと判断した。

感情ではなく理性で考えたことを義時に説明。その上で、もう一歩深く思考できなかった自分に腹を立てている。

それも仕方ないこと。義経は戦をするために生まれてきたような男だと義時が讃えると、景時はこうきた。

「戦神……八幡大菩薩の化身のようだ」

信心深いからそうきましたか。

その化身である義経が二人の前にやってきて、義時だけを残すと別の策を話し始めました。

法皇に文を出し、平家に対し和議を命じてもらおう!

源氏と停戦するように伝えてもらい、その前日に知らぬして一方的に攻め込む――義からどんどん遠ざかる義経です。

それに朝廷の力を利用することは禍根ともなり得ます。

彼は自らが地獄へ堕ちる道を踏み始めてしまったかもしれない。

天才的な策にせよ、一つでも間違えたら総崩れとなる危険性がある。この英雄は、一押しで崩れる砂の楼閣のようでもあります。

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義時が暗い顔をしていると、義経はこう言います。

「騙し討ちの何が悪い?」

攻める側ですから今はイケイケですが、もしも自分が騙される側になった時、彼はどういう顔をするのか。

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それは、先の展開を待つこととして、義経の依頼を受け取った法皇は俄然乗り気です。

平家をハメる。そのために平宗盛に文を出すと告げると、平知康はすぐに取り掛かると言い出します。

丹後局が相手の意を汲み取って言う。

「今度の源氏の御曹司は、法皇様と気が合いそうですこと」

「こういうのが大好きなんじゃあ」

義を軽んじる者同士が連携してゆきます。

 


馬を背負ってでもついていく

福原の平家の陣では、平宗盛が文を受け取っています。

法皇様は和議を望んでいる――宗盛がそう説明すると、平家一門の勇士である平知盛は笑い飛ばします。

清盛の遺言に背くのか?

そう語気を強める知盛に対し、宗盛は一門の行く末も大事だと困惑しています。それでも知盛は叫ぶ。

「総大将がぁ! このようなことでいかがします?」

人には向き不向きがあります。この兄と弟はいる場所が逆だったのかもしれない。

宗盛は眉間に皺を寄せつつ、和議の可能性を振り払えないのです。こうして迷うだけでも人は弱くなる。実に狡猾な策です。

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義経は福原に向かい、険しい山中を進みます。

すると荒れた山を猟師に案内されました。

断崖絶壁だが、一箇所だけなだらかな鵯越がある。そこならば馬に乗って駆け降りることもできる。

義経はなだらかなところを駆け抜けても敵を出し抜けないと言います。景時は、なだらかといっても崖だと眉をひそめる。

この先には鉢伏山という切り立った山もあり、義経はそこを降りると言い出す。

馬では無理だと反論されても、出来ると引かない義経。

たまらず景時が怒りで声を荒げます。一人にできても皆ができなければ無理だ!降りれば多くの兵が無駄死にする。大将ならそこまで考えろ、と。

義時も景時に同意すると、義経は「馬に乗ったままで降りるとは言っていない」と返します。

馬は後戻りができない。まず馬を行かせ、続けて人を行かせる。

合理的なようでいて、坂東武者の自尊心を思うと中々の奇策です。

当時は、騎馬か徒歩かでまるで扱いが違いました。

言うまでもなく騎馬の方が上で、プライドの高い武士であれば反発しかない。だからこそ景時も、そんな無様なことはできないと引けません。

それでも見栄えなんて関係ないと義経は主張し、しまいには「自分の兵だけで行く」と言い捨てました。

義時が重忠に、義経について行くように頼むと重忠は返します。

「馬を背負ってでもついていきます。末代までの語り草になりそうです」

実際そうなります。畠山重忠の銅像は、馬を担いだ姿。そして上へと登ってゆく。

畠山重忠公史跡公園(埼玉県深谷市)

景時は悔しそうに義時に言葉を漏らします。

「なにゆえ、あの男にだけ思いつくことができるのか……」

まるで天才に嫉妬する秀才のようだ。

常識的に考えれば、景時が正しい。義経は兵士の損耗を度外視しすぎ、かつ技量に頼りすぎています。

これは日本の特徴かもしれません。

他の文化圏では、一つの技術なり作戦なりを集団で覚えて底上げする方法が重視されます。

たとえば諸葛弩(しょかつど)――諸葛亮が発明あるいは改良をした弩であり連射ができる、現在で言うところのボーガンです。

こんな兵器があれば誰だって矢を連射できる! 流石だ!

そんな風に讃えられる一方、坂東武者は扱いが難しい弓術の個人的技量を重視します。

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では、どちらが名将なのか?

そう問われたら、私は景時の方がよいと思えてしまうことも確か。義経は、とにかくリスクが高すぎます。

 

義村の娘

八重が金剛を抱いているところへ、留守を守る三浦義村が来ました。

三浦は後詰めだそうで、義村は赤ん坊を抱いています。

「俺の子だ。はつ」

なんでもこの子の母は訳ありとかで、要するに産褥死してしまった。そこで戻ってくるまで預かって欲しいとのことです。

「無理です」

「一人も二人も、同じではないか」

おおっと三浦義村、全国の視聴者を敵に回す無神経発言をしおった! 乳母ぐらい自分でなんとかしろー。

「まったく違います!」

八重がそう言っても、着替えと食い物はあとで届けさせると彼女の意見をまるっと無視。

食べ物って……まだ乳児でしょうよ。

八重が困ると言っても、金剛のいい遊び相手になると言うし。いやいや、遊べるワケないってば。

これは泰時の息子(北条泰時)と義村の娘(矢部禅尼)が結婚する伏線とは思います。

のみならず今週も最低値を更新する義村の面倒くささ。

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義村は、八重と義時をからかっていただけで、本気ではないとハッキリしましたね。

もし執着があるなら「あいつとの子を産んじまったか」くらいの反応はあるかもしれない。それに困っている八重をあぁも無視はしないでしょう。

娘に対しても冷たいですね。別れを惜しむ様子はなく、とっとと置いて振り向きもせずに去る。愛情表現がとことんズレてんなー。

根っからの悪人ではないけれど、本当にこいつは何なのか……。

 


一ノ谷の戦い

2月7日早朝――義経は70騎の武者とともに鉢伏山にいました。

鹿の糞を見つけて喜んでいます。鹿が降りられるのならば、馬も降りられるという理屈。それにしたって糞をそんなに重忠につきつけなくていいし、投げなくてもいいのに。

「この糞に命運を賭けた!」

そのころ生田口では範頼と知盛がぶつかっていました。

一ノ谷の戦い――源平合戦最大の戦いです。

知盛が矢を放つところへ、義盛が突撃。やっぱりバーサーカーはあなただ。

相当高度な映像です。

まず馬が複数いるし、馬に乗る義盛のアップも映り、弓矢も放っている。

大河の合戦でも、ここ数年で屈指であり、予算と手間暇を感じます。アクションもVFXも、かなりレベルが上がってきていますね。

本陣で宗盛は、幼い安徳天皇に告げでいます。

「帝、心配はございませぬぞ。この一ノ谷に、敵は参りませぬ」

頷く帝。まだ幼いのに、気品のある姿です。

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しかし、義経一行が土埃をあげ、すぐ側まで接近すると、獣のように叫ぶ。

「かかれー!」

白い旗を見て絶望の表情を浮かべる宗盛。

景時や義時は、知盛の強弓の腕前を見つめています。

人馬が入り乱れ、戦う中、義経はなおも雄叫びをあげる。

「八幡大菩薩の化身じゃ……」

景時がそう酔ったように言う隣で、ますます暗くなっていく義時の顔でした。

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