鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第16回「伝説の幕開け」

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届けられた首

斬られた首を前にして、愕然とする義仲。

激しく怒り狂いますが、同時に「義経たちの挑発に乗ってはならん」と己を抑制します。

しかし、この先は失敗です。挑発するということは、相手に小細工があると考えてしまうのです。

攻め手の分断を見抜き、勢多と宇治から来るところまでは理解します。

義仲軍の地図は、鎌倉勢とは違い、漢字を使っておらず素朴です。

そんなタイミングで、彼らのもとへ新たな一報が届けられます。

鎌倉軍は1千しかいない。

そんな偽の情報を聞いて、義仲は考えます。

頼朝は北の藤原秀衡を恐れて、兵を出せない――。

「鎌倉方、恐るるに足らず! この戦、勝ったッ!」

テンションの上がる義仲ですが、彼は決して愚かではありません。情報確認が足りなかった。

これまた、後世であれば起こりにくい事態といえます。戦国時代ならば、忍者なりを駆使して情報を集め、もっと盤石な戦い方ができたでしょう。

そして……。

草陰から敵兵を確認して義仲らは慄きます。鎌倉軍は二万はいる。今井兼平が目で見て確かめるべきだったと悔しそうにしています。

仕方なく義仲は、兼平に橋を外すように命じますした。

義経の計略に追い詰められ、京を捨てると決意したのです。

しかし橋を外すことは、義経には予想済みでした。その上で畠山重忠に先手を率いて川を渡れと命じます。

敵の矢に狙われ、格好の的になると躊躇する重忠。彼は自軍の損耗を嫌う言動が多く、兵を愛する将ですね。

義経は次のもう一手を明かします。

強者を二人選び、川岸で先陣争いをさせる。そこに敵の目が注がれている隙に、畠山が川を渡るのだ。

先陣争いも兵を乱す原因であり、戦国時代では禁止している家もあるほどでした。

 


義無き法皇に義仲の思いは通じず

義仲は京にある後白河院の御所へ向かいます。

しかし、法皇は平知康、丹後局と隠れています。それでも呼びかけ、京都の地を離れて北陸へ向かうと告げる義仲。

こんなときでも、力及ばず、平家追討を果たせぬことを詫びています。

いっそ法皇を連れて北陸へ!

そう語ると法皇は冗談じゃないと慌てている。

義仲はわかっていました。

そうしたところで、その先に義はないと。そして彼の果たさなかったことは頼朝が引き継ぐと信じていると。三種の神器が戻ることを信じていると。

「最後に一目、法皇様に御目通りしたくござったが! それも叶わぬは、この義仲の不徳のいたすところ。もう二度と、お会いすることはございますまい。これにて御免」

義仲が潔く去ると、丹後局はこう漏らします。

「思えばかわいそうなお人でございましたな」

「義だのなんだの……手前勝手は平家と変わらんわ」

そう吐き捨てる後白河法皇。

本作は、義を理解しない人間が、どれだけ浅ましく醜いのかを描いてくる。

主人公周辺がやたらと「義だ!」と叫ぶのではなく、それを捨てた人間の醜さを描くことで浮かび上がらせる。

結局のところ、後白河法皇に政治のビジョンなどありません。

彼の人生ははこれでしょう。

遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん。

『梁塵秘抄』

白拍子とこういうことを歌いながら、楽に生きていけたらいーのよ。仁とか義とか、どうでもええ。

そういう仁義のなさ、薄っぺらさが持ち味でしょう。

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もちろん、お手本にしてよい人物ではなく、反面教師にはなる。

どんなあくどい陰謀をかましても、これも「義」のためと言い張ればなんとかなるかもしれない。これから先、北条義時が習得しそうな技能です。

 


法皇と義経

義仲の捨てた京へ、鎌倉勢が大和大路から入ってきました。

街の中には飢民がいる。勝利の喜びよりも、虚しさが満ちている。

義仲一人が悪いわけでもなく、飢饉と戦が起きたことそのものが悪い。

そんな末法の世を見て、義時の顔は暗い。

彼らは法皇の元へ向かいます。

「もっと近う」と言われてドスドスと近づく義経。和田義盛ですら慌てるのだから、中原親能の胃痛が心配になってきます。

しかし、名を名乗る義経に対し、法皇は怒らぬどころか、何か感じたようではあります。

義経は宮中と結構関係があったとか、藤原秀衡人脈とか、色々な要素が絡みあってのことでしょう。

ただし、朝廷に近い距離感というのはどうにも危うくもある。

法皇は京都は一安心といい、休めというと義経は即座に断ります。いますぐ義仲の首をとり、平家を滅ぼすと宣言するのです。

「休め=本気で休めとは言っていない」という論法を振りかざす法皇からすれば、まあ、それでよいのかもしれず、案の定、笑って喜んでいますね。

義経は、将兵の疲労はどう考えているのやら……。

このとき畠山重忠が、戦が終わったら嫁探しをしようかと言い出します。

義時が、うちの妹二人が余っていると言うと、まんざらでもない様子の重忠です。

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彼は性格がよいので、三浦義村とはちがって自分の美貌を悪用したりしない。義時も妹を勧めたくなりますよね。

義盛も新しい嫁が欲しいとボヤいている。すでにいるではないか、と指摘されると「ウサギみたいにおとなしくて物足りない」んだとか。

いやいや、義盛に釣り合う嫁なんているか!と突っ込みたくもなりますが。

と、そのタイミングで緋袴の女房たちが、廊下を通ってゆきます。

重忠が頭を下げると、彼女たちも美貌にうっとり。しかしなぜか義盛が走っていって、坂東とちがう女房どもにご挨拶しようとします。

いや、義盛さん、この方たちはウサギどころか雀ぐらいのか弱さですよ。

案の定、悲鳴があがりました。

 

義仲と兼平の死

京を出た義仲は近江方面へ。

しかし、範頼の軍勢が待ち構えています。

「巴、お前はここで落ち延びよ」

小屋の陰に隠れながら、義仲が告げます。

切なそうな顔で見返す巴御前。義仲は鎌倉の木曽義高への文を彼女に託し、わざと捕らえられて鎌倉へ行けと命じるのです。

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しかし巴は断る。

「地の果てまで殿のおそばに!」

そう訴える巴の頬を血まみれの手で包み、義仲は別れを告げます。

「さらばじゃ」

このあと巴は薙刀を持ち、道を歩いてゆきます。するとそこへ敵がやってきた。

「我らが可愛がってやろう!」

「あなどるな!」

このやりとりから、義仲の託したものの重さがわかる。

巴は強いけれど女性である。それに生きて鎌倉まで行けということは、あまりに過酷なことでもある。

それでも巴は諦めない。薙刀を構えます。

「我こそは源義仲一の家人、巴なり!」

薙刀を振り回す、相当長く大変なアクションが続きます。

秋元才加さんが強く、猛々しく、美しい。純粋で本当にかっこいい。どこまでも義仲についていくと死を覚悟した顔も、美しかった。

けれども今、生きて義仲の思いを託すべく奮闘する姿も美しい。

そしてついに地面に倒されてしまった巴の元に、和田義盛がやってきます。

「大した女だ、気に入った!」

満面の笑みを浮かべる義盛。

あれ? なんでこの人が救世主に見えるのだろう?

生きて鎌倉へいく。その巴の望みを叶えるのがこの笑顔なのでしょう。

残るは、義仲と兼平の二騎だけになりました。

ここまでか……と覚悟を決めた主に、兼平は自害に向いている松原があると告げます。

「源義仲、やるだけのことはやった何一つ悔いはない。ひとつだけ、心残りがあるとするならば……」

そう馬上で振り返る義仲の額に、矢が当たります。

あまりに呆気なく訪れる最期。

リアルな死とはこういうものでしょう。

心残りとは、鎌倉にいる息子・木曽義高のことでしょうか。

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書状プレゼンスキル

鎌倉には京からの知らせが続々と届いています。

思えば頼朝が挙兵する前、その手の情報は三善康信頼りだった頃とは変わりました。

しかし、同時に坂東武者たちの教養も明らかになります。

大江広元がまとめたところによると……。

土肥実平:悪筆すぎて読めない。書き慣れていない。

申し訳ありませんが、何もかも一から考え直した方がいい。

現代であれば、フォント選びから画像やグラフまで、何からなにまで間違ったプレゼンをしているような状態ですね。

ただし、史実からはいささか下方修正されておりますので、そこはご理解ください。

和田義盛:イラスト入りでかわいい。それなりの工夫がある。

スライドにかわいいイラストを入れているけど、そのせいでかえってよくわからないタイプ。

別に、かわいらしさは求めていない。

北条義時:内容は確か。しかし内容が細かすぎて頭に入ってこない。もっと工夫しましょう!

とにかく正確に伝えようとして、注釈が入り過ぎている。全ての情報を盛り込もうとするため、フォントサイズがやたらと小さい。

よって要点が不明瞭になる。もっとメリハリをつけて!

現代であれば、各省庁から出される国家公務員作成の資料でしょう。試しにどこかの省庁サイトをご訪問ください。はなから読む気を失います。

梶原景時:戦の進み方、働き方、まとめ方が上手で実に読みやすい!

この部署はみんな梶原さんにプレゼン資料の作り方を学ぶように!

現代であればカタログ雑誌やノウハウ本などの編集者向きですかね。

こうしたプレゼンスキルの評価は現代にも通じるもの。脚本の三谷さんも、様々な企画書を渡され、同様の思いを抱いてきたのかもしれません。

むろん歴史劇ですから単にそこだけを描くのではなく、紙と硯に向かう姿勢も重要でしょう。

梶原景時は実に綺麗。中村獅童さんは荒々しい殺陣だけでなく端正な動きもこなす。宝のような人です。

頼朝もご満悦。

なんでも景時の報告内容は読まずともわかっているとのことで、義経から「木曽義仲を討ち取った!」と報告があったとか。

気になるのはその報告書の体裁ですが……なかなか雑です。

しかし喜んでばかりもいられません。鎌倉には、義仲の討死を懸念する者もいる。

北条政子の前に阿野全成実衣夫妻が来て心配そうにしています。

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辛いことになりそうだと語る全成に対し、政子はハッキリと言い切りる。

大丈夫。決して冠者殿を死なせたりはしない――そう決意を固めています。

北条政子は悪女だのなんだの言われるけれど、そうではないとこのドラマは示しています。

情に篤い。目の前の誰かが困っているのに、権力を求めるなんて性に合わない。まっすぐな人で、彼女にも「義」はあります。

そのころ、父の死を知っているのか知らないのか、木曽義高は海野幸氏とともに、大姫と遊んでいるのでした。

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