秋に八重が命を落とし、鎌倉には冬が到来。
ひらひらと雪が降る中、義時は天罰だと悩んでいます。
そんな風に考えるなと励ます三浦義村に、義時が縋るように問い掛ける。
「何か言ってなかったか? 八重は最後に何か」
「そういえば、いま思うと八重さん、あの日気になることを……」
義村が回想する八重は、ニッコリと微笑んでいました。
「私はちっとも悔んでいません。十分楽しかったし、私はとっても満足」
「八重がそう言ったのだな」
そう聞き返す義時。
「あの日は肌寒く、川遊びは思うようにできなかったが、子供たちは楽しそうだった。八重さんが言ってたのはそのことかもしれないし」
「そうではないと思いたい」
義時は泣かない、叫ばない、ただ目に涙を溜める、声も沈んでいます。
義時は、息子の金剛に寄り添い、こう語りかけます。
「よいか金剛、鶴丸を恨んではならん。鶴丸を憎む暇があるのなら、その分、母を敬え。母のしてきたことを思い出すのだ。父がお前を育てあげてみせる」
金剛は父の言葉にうなずくのでした。
上洛する 命令じゃ!
日本中が源氏の名の下に平定されました。
その途中、多くの別れもありながら、頼朝はいよいよ上洛実現を目指します。
冬は過ぎ、春がきて、義時の家にいる子供たちが歌い、はしゃいでいる。
そこへ頼朝が来ました。
子供もすっかりリラックスしているのか、頼朝に声をかけられても応じています。よかったですね。
そして頼朝は「久方ぶりじゃ!」と声をかけるわけです。妻の死で塞ぎ込んでいたせいか、義時は主君とも顔を合わせなかったんですね。
頼朝は10月に出立、上洛するから一緒に来るよう義時に告げます。
しかし……。
「お役に立てるとは思えませぬ。あの子たちを育てていくのが八重への供養になると思いまして。それで手一杯でございます」
「京都の景色を見れば気も晴れる。これは命令じゃ!」
そう言い切る頼朝。この態度から、義時の重要性も見えてきますね。
亀騒動のとき怒って伊豆に引っ込んだのは時政でした。今度は義時が引っ込んでしまい、それを頼朝自ら引っ張り出しに来ています。
重要性が上がったのか、それとも義弟への愛ゆえか。
頼朝と後白河の対面
建久元年(1190年)11月9日――大軍を率いて源頼朝が上洛、後白河法皇の御所を訪ねました。
一行の中には、どこか得意げな大江広元の姿もあり。
後白河法皇と二人きりの対面となった頼朝ですが、かつては夢枕に立つ後白河に怯えていたものです。
それがここまで辿り着きました。
「大軍を連れてきたものじゃな。見せつけておるのなら大成功」
「ありがとうございます」
「奢った武士は皆滅んだ」
「確かに」
「我らを亡きものとするならばこの日本は治まらぬ。やれるものならやってみるがよい」
かなり強い言葉で挑発する後白河。
追い詰められているのか、何らかの策があるのか。
対する頼朝はこう答えます。
「新しい世のため朝廷は欠かせませぬ」
「新しい世?」
「戦のない世にござる」
武士である頼朝のセリフを白々しいと感じたか、後白河が思わず苦笑いです。
そして、より突っ込んだ前のめり姿勢になって頼朝に迫る。
「薄っぺらいことを申すのう。誰より業が深いくせに」
「命からがら逃げ回るのはもうまっぴら」
「我が身かわいさ……」
「戦がなくなり喜ばぬ者などはいません。ただし武士どもは別。あの者どもをおとなしくさせねばなりませぬ。ぜひともお力をお貸しいただきたい。私が欲しいのは……」
「朝廷が与える誉れ!」
「ついては我が娘を若き帝の后としていただきたく存じまする」
この流れは実に日本史らしい、独自で特有な会話です。
どのあたりが?というと、主に以下のような部分。
・【易姓革命】の否定
日本が手本としてきた中国では【易姓革命】――天意に叛いた王朝は滅び、別の姓の王朝に交替――しますが、日本にはありません。
・外戚排除を考えていない
中国では前漢の呂后が猛威を奮って以来、いかにして外戚の権力を削ぐのか考慮されてきました。
最も徹底していたのは北魏【子貴母死】――太子の母は殺す――という仕組みです。
日本に、そのような仕組みはありません。【摂関政治】は外戚の力を利用した構図でした。
日本では院政、つまり退位した上皇に権力を持たせることで、権威を分散させ、外戚の影響力を低くしようとしましたが、決定的な排除には至りません。
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日出ずる源氏と斜陽の摂関家
頼朝はこのあと、摂関家のトップである九条兼実と話します。
これまた実に面白い構図。斜陽の摂関家と、上りゆく源氏の対峙です。
「法皇様にお会いしてどう思った?」
「夢枕にあった通りのお方でした」
兼実がちょっと反応してしまいます。彼は信心深いので、夢や何やらを気にする。
「何かお約束いただいたか?」
「全国の守護を請け負うことをお許しいただきました」
「他には?」
頼朝はそう促され、思いのほかお年を召しておられると返します。
すると兼実は、このところ病がちでそう長くはないと推察。
その真意を探るかのように、何かあったときは共に手を携えていくと頼朝が訴えると、兼実も、わしとお前で帝を支えていくと言い切ります。
しかし最後にこうも付け加えた。
「断っておくが、わしの娘(九条任子)が帝の后となっておる。わしのほうが早かったのう」
兼実は有能で、策略もあり、そして人間らしいと思える。
麻呂眉に白塗りで高笑いをする。そんな『柳生一族の陰謀』に出てきた烏丸少将文麿のようなテンプレ公家描写ではありません。
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あれはあれで味がありますが、血の通った人間だとわかるこの兼実も実によい。
声がまたいい。気品と陰鬱さもある美声。
田中直樹さんの声なのですね。
「鎌倉殿を囲む席」
京都では、上洛に従ってきた北条義時、三浦義村、畠山重忠らが酒盛りをしていました。
例によって荒れ気味なのが和田義盛。せっかくの祝いなのに鎌倉殿が来ないと不満げです。
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なんでも「鎌倉殿を囲む席」だそうですが、頼朝は工藤祐経と共に歌会に参加だとか。
工藤もずいぶん気に入られたな、と義村が渋い顔をすると、都に通じていると重忠が説明します。
「ただの腰抜けじゃねえか」
と、吐き捨てる義村。こいつはそもそも頼朝を嫌っている気配がありますからね。
ちょっと違和感があるのは、大江広元もその場にいたことでしょう。義盛に「田舎者と飲んで楽しいのか」と聞かれると、珍しく心底嬉しそうに語り始めます。
頭の固い都の連中を見限って鎌倉に来た。それがこうしてリベンジを果たすように上洛できた。坂東の勇者のおかげだとホクホク顔です。
広元は学業が優秀でしたが、身分が悲しいことに低かった。
自分より出来の悪いボンボン上級貴族に負け、ハッキリ言ってイライラしていた。九条兼実も元上司ですね。そりゃ嬉しくもなりますわ。
そして義盛は、小四郎の再婚相手を勝手に探しているときた。なんなんだよ……。
いや、それよりツッコミたいのは義村のこのセリフでしょう。
「女子を失った深い穴を埋めるのは、女子しかない」
おいおーい。川に入って鶴丸だけ助けて、八重を忘れて一息ついていた義村。
考えようによっては、義村の迂闊さが八重の死に繋がったと言える。この人は用意周到なようで雑なところもありますから。
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義時がそこを恨みに思っていたら、絶縁ものかもしれません。けれども義村はこういう奴だし、幼馴染だから、義時は盟友だと思っている。
義村は大変魅力的で人気があるけれども、難ありの性格です。こういう人物なのに人気があると、個人的には嬉しく思います。そばに居たら仲良くできるかどうかは別として。
「鎌倉殿に不満がある会」
いい加減、嫌気がさしたのか。義時は外に出て風に当たっていました。
そこへ重忠が現れ、義時に情報提供。
なんでも別に集まっている者たちがいて、彼らは鎌倉殿への不信が膨らみきっているようです。
「上総介殿の一件が繰り返されなければいいのですが……」
重忠が重苦しい表情を浮かべています。
確かに、御家人って危ういですよね。不満があるからって、すぐに謀反だの何だの、そんなに目立つ不穏な動きは控えればいいのに。
「鎌倉殿に不満がある会」には三浦義澄、千葉常胤、土肥実平、岡崎義実……という上の世代が集まっていました。
上洛は金がかかるし、メリットもわからん!
そんな風に愚痴りあっていて、しかもそこには源範頼の姿も。「兄上は安寧な世を作りたいのだ」と皆の不満を和らげるようにフォローしています。
千葉常胤はむにゃむにゃと源義経のことを褒め始めた。もう酔ってほとんど寝ているから今日は終わりにしようと宣言されます。
「鎌倉殿を囲む会」と「鎌倉殿に不満がある会」は、明らかに年代差がありますね。
下の世代は上洛のメリットを理解していて頼朝の飲み会不在を愚痴っているけれども、上の世代はそうでもない。その辺、頼朝がきっちり説明すべきでしょう。
このドラマは時代考証がシッカリと練り込まれていますが、創作ですので表現上の強調はあります。
上の世代が、史実よりも教養が低く、荒っぽくされているのもその一例。
実際には、ここまで上洛が理解できていなかったとは言い切れません。ドラマはあくまでドラマです。
特に本作は【東と西】あるいは【武家と朝廷】という対立の構図が強調されます。
序盤における北条宗時の台詞や、オープニングで武士と天皇(朝廷)が対峙するようなイメージからも見て取れますね。
華夷変態――朝廷と武家の力が入れ替わる――そんなテーマが根底にあると思えます。
上世代の愚痴を一通り聞いた源範頼に、澄ました表情の比企能員が何やら話してかけいます。
範頼も比企一族の娘を妻にしていますので、姻戚関係ですね。範頼は兄と違って暇だから皆の話を聞くと優しさを見せます。
能員は、口にはしないけど、
「蒲殿が鎌倉殿であったらと……」
皆が思っていると囁きかけます。
「兄上あっての私、つまらぬことを申すな」
範頼に即座に否定すれ、能員も引っ込めますが、何か嫌な予感がしますめ。
範頼は慎重で温厚、なぜ死罪を命じられるのか理解できない人物とされます。
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しかし、本人の資質はどうあれ、担ぐことのできる神輿であれば危険……パワーゲームはまだまだ続いています。
烏帽子も被らず育児に奔走
赤ん坊を抱く阿野全成。隣には妻の実衣(阿波局)が居て、兄の義時がまだ引きずっていると話しています。
義時は育児に追われて大変。
当時としてはこっ恥ずかしい烏帽子も被らない姿で、子供たちの面倒を見ていました。
政子と大姫が、今にも義時を訪問しそうなほど心配していますが、全成は放っておくように言います。
きっと忙しさで悲しみを紛らわせているのだろう。向こうから相談してきたら応じるように……。
「珍しくいいことを言っている」と実衣がからかうように感心しています。この人も素直じゃないんだからなぁ。
政子は覗き見をしてはいけないと念押しします。
ここで北条時政が二人の青年を連れてきました。
曽我五郎と十郎の兄弟です。
八重の甥にあたり、どういう関係かややこしいので、実衣のように「遠い親戚」でまとめてよいかもしれません。
今は時政の家人だけど、いずれ鎌倉殿に目通りをして推挙すると時政。
烏帽子親としての責任を感じているようです。
このあと全成は難しいような気がすると実衣に告げています。
近頃の鎌倉殿は京都に縁があるものを重用している。新規で坂東武者を取り立てるとは思えないと考えているのです。
全成の見通しには頷けるところはあります。
瀬戸康史さんが演じる、若い世代の北条時連(北条時房)の顔を思い出してください。
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ああいう洗練されてきた人物と比較すると、曽我兄弟はいかにも粗削りに見える。
十郎の田邊和也さん、五郎の田中俊介さん。
どちらも精悍で、声もしっかりしていて、古いタイプの坂東武者感があります。これからが生きづらくなる性質に思えるのです。
お忍びでやってきた姉政子
義時は烏帽子も被らず子供の面倒を見ながら、八重の姿を思い出しています。
助っ人らしい仁田忠常がいて、こう声を掛けています。
「やればできる、できるよ、だいじょうぶ!」
するとそこへ誰かが「失礼いたします」とやってきました。
粗末な身なりの政子です。美味しいお餅を作らせたので、金剛に食べさせてに来たとか。おおっぴらにくると面倒なので、お忍びだそうです。
ここで忠常がやっぱり無理だと脱落してゆきました。金剛は餅をつまむなと叱られつつ、食べています。
政子はしみじみと金剛は義時に似ていると言います。
そうそう、頼朝には似ていませんね。義時は子供たちと接することで、自分の幼少期を思い出すようで、なんでも政子にはよく首を絞められていたとか。
「絞めてたわねえ」
政子、否定しないんかーい。
「あれはなぜ?」
「わからないのよ。顔を見るとなぜか絞めたくなるの」
そう語り、久々に弟の首を絞めにかかる姉。
二人は童心にかえったように餅を食べてしまいます。
義時は子供たちの引き取り先を探しているそうです。政子も賛成します。金剛を育てる役目があるからには、八重さんも反対しないだろうと。
「また来ます」
そう去ろうとする姉に、義時はこう語りかけます。
「その格好懐かしいですね。私はそっちの方が好きだな」
「実は私も。動きやすいんだもの。またね」
そう言う姉に対し、やっと笑い、頭を下げる義時。家族の絆はなんて素晴らしいのでしょう……と言いたいところですが、家族というよりはこの場合は姉と弟の絆ですね。
こういうあたたかさは頼朝と弟たちにはない。
それに北条一家も全員がずっと仲良しでいるわけでもありません。
後白河の最期
頼朝との対面からしばらくして後白河法皇が倒れました。
大仏様が守ってくれると枕元で囁く丹後局。
【南都焼討】のあと、大仏を再建し、目を入れたのは後白河でした。
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「ま。まもりぬいた わしは守り抜いたぞ」
「はい。守り抜きました」
「み、み、みかど……」
そう言われ、後鳥羽天皇がやってきます。
「守り抜かれよ」
「守り抜きまする」
「楽しまれよ」
そう言い残し、乱世をかき乱すだけ乱した日本一の大天狗、後白河法皇が死にました。
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枕元にいた帝は幼いながらも賢そうで只者ではありません。
実は後白河は守り抜いていない。そのことを後鳥羽が痛感することになります。
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建久3年(1192年)7月――後白河の死を待っていたかのように頼朝は自らを大将軍とするよう、朝廷に要求しました。
服喪の感覚はない様子。
数ある将軍号の中でも、朝廷が選んだのは――。
政子が頼朝を待っています。
「征夷大将軍、おめでとうございます!」
そう、征夷大将軍でした。
「大したことではない。御家人共を従わせる肩書きに過ぎん。征夷大将軍じゃ!」
「おめでとうございます」
「わしは日本の武士頂に立った、お前はその妻。政子、呼んでくれ」
「征夷大将軍!」
そう飛び跳ねてしまう政子。頼朝はお腹の子にさわると嗜めます。
「失礼いたしました。おめでとうございます。あっ、蹴りました」
「おう、蹴ったか。征夷大将軍の子が蹴ったか」
義時といるときとは違う政子の顔が見えます。
坂東武士・義時姉として粗末な服装でいる方が楽だけど、征夷大将軍の妻として、着飾っているときも幸せではあるのです。
かくして8月、政子は第4子を産みました。
千幡、のちの源実朝です。
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乳母には実衣(阿波局)と全成が選ばれました。
しかし全成は嬉しくない。占いでは吉と出たけれども、運が開けると出たけれども、筮竹を手にした全成はわかっています。
占いは半分しか当たらない。
いつも外れるなら真逆の行動を取ればいいけれど、半分だから厄介なのだと。
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今週は範頼に続き、全成にも死亡に至る道すじが引かれました。
占いが特技でさして危険でもないがゆえに、兄・頼朝の目は逃れたものの、夫婦で乳母になったことがこののち響いてきます。
比企一族のエース・比奈
比企の道が焦っています。
もしも千幡が鎌倉殿になったら北条に負けてしまう!
夫の能員が「万寿がいる」といっても、道はあっちは何をするかわからないと訴えます。
さすがに即座に否定する能員に対し、道はこう提案します。
「そうだわ、比奈をつかいましょう!」
比企一族のエースであり、能員の姪にあたるとびきり美しい比奈(姫の前)。
そんな女を鎌倉殿の側室にして、男子でも産ませれば盤石だ! と、またいつもの策を思いついたのでした。
かくして一族でも美形で際立つ比奈が頼朝の前へ。
「比奈にございます」
堀田真由さんが演じる比奈。能員が、我が一族は皆鼻筋が通っていて目が大きいと言い。
おまけに賢い。都に通じる嗜みを身につけさせたい。鎌倉殿の側で学ばせたい。そうスラスラと説明します。
頼朝よ……もうデレデレして、魅了されている様子です。なんなんだこのスケベ顔は!
安達盛長がおずおずと「お側に仕えるものは御台所が選ぶ」と言うも、頼朝は後で許可を得ると開き直っています。おまけに京の香をやりたいから今すぐ持ってこいってよ。
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ちなみに古今東西、侍女に手を出す主人はいくらでもいました。
この時代は京都を真似ていて、御所の女房には権限と存在感があります。もしも御家人が女房に勝手に手をつけようものならば咎められますが、鎌倉殿となれば別です。
比企一族としては、せっかく里を義経に嫁がせたのに、討たれて失敗しました。
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おまけに里の実家である河越重頼まで誅殺され、なんとしてもポイントを稼ぎたいのです。
それにしたって、女を使う以外の手段はないのか?と言いたくもなりますが。
「聞いてません」
政子の耳に入ると、彼女はこう言い切る。もう鎌倉殿がぞっこんと実衣から聞かされ、こう苦々しく言います。
「大将軍になってちょっと浮かれてるんだわ」
これも政子の嫉妬だけでは片付けられない。比奈が男児を産んでそれが鎌倉殿にされたら一大事。ゆえに目を光らせねばなりません。
義時と比奈
そのころ、頼朝は比奈に双六を教えるという建前で、背後から近寄り、いやらしい指導をしています。
すると政子が背後で咳払い。
政子は比奈をさがらせ、夫をぎらりと睨んでから話があると切り出します。
「うん! あれほどの女子は坂東広しといえどもそうはおらん。小四郎にはぴったりだな。いや、小四郎もそろそろ前に進むべき頃合いのような気がしてな」
はいはい、頼朝は義時のために比奈をチェックしていたってよ。
政子が顔を輝かせます。自分も同じことを考えていた。比企と北条をつなぐためにはよい。頼朝も同じことを考えていたと同意し、ならば早速話を進めると言い出します。
とんとん拍子で話が進むのは気持ちが良いものと、政子は笑顔で言い切ります。
哀しい笑顔の頼朝。
確かに一石二鳥といえばそうだけども、本人たちの気持ちは?
かくして義時と比奈の話し合いがセッティングされました。
後妻を持つつもりはない、亡き妻の思い出のある館で息子を育てていく。
そんな風に取り付く島もない義時は、一応、相手の気持ちも聞こうとします。
「私の気持ちを聞いてどうなさるのですか」
比奈が自分の意思で動いたことはないというと、義時は笑います。比奈が不思議がると、先妻と同じだと明かします。
「以前妻に同じようなことをいわれた。しかし八重はいつも最後の自分の意思を貫き……そして帰りなさい」
二人の関係は不調に終わります。
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比奈はおじである能員と道に、たらい回しかと不満をぶつけます。
鎌倉殿は御台所が目を光らせている限りだめ。そう去ろうとする比奈。能員は何か手を打たねばと言うばかり。
比奈は義時について聞かれると、恋愛でしつこいという噂があると言います。
道も同意。薄気味悪い。そう言われる義時なのでした。
金剛と鶴丸
義時が「喧嘩を始めたのはどちらか」と金剛を問いただしています。
弥九郎が押してきたと金剛が言うと、押されるようなことをしたのかと迫る義時。先に手出ししたのはなぜかと問うと金剛は黙っています。
言いたくなければ言わなくていい、としながらも、義時は続けます。
「しかし金剛、どんなわけがあっても手を出してはならぬ。なぜかわかるか。お前が北条の一族だからだ。北条は他の御家人たちより立場が上。だからこそ慎み深くあらねばならぬ」
そう義時が諭していると、弥九郎(のちの景盛)の父である安達盛長が謝罪に来ました。
たかが子供の喧嘩と言うものの、義時は何かを贈ります。
盛長は丁重に断っていたものの、結局はこうきました。
「せっかくなのでいただいておきます」
それから義時に、皆待っているから戻ってきて欲しいと訴えます。
このあと、義時が金剛を抱いて外に出たところで、何やら鶴丸が訴えてきました。
なんでも弥九郎が鶴丸のことをみなし子とからかったから、金剛が代わりに殴ってくれたのだと。
義時にそうなのかと聞かれ、金剛は深くうなずきます。
義時は愛おしそうに我が子を撫でます。そして遅くなった夕餉にしようと我が子と鶴丸に語りかけるのでした。
曽我兄弟 真の狙いは
建久4年(1193年)5月――時政は曽我兄弟の願いを聞いています。
父の仇討ちを果たしたい。
兄弟の父・河津祐泰は伊東祐親の子。
伊東祐親に離縁させられ、所領を奪われ、恨みがあった工藤祐経は、伊東祐親を殺そうとして間違って兄弟の父・河津祐泰を殺してしまった。
あっぱれな心がけじゃ!
そう褒められていますが、そこは法律で解決しましょうよ……まぁ、それは北条泰時たち世代の課題ですね。血生臭いことを嫌いそうなりくも、これには賛同。
そのやりとりを善児が聞いていました。
頼朝は大将軍就任祝いに巻き狩りをする計画中です。
万寿のお披露目にもしたいし、御家人も腕を見せるチャンス。命を狙われているなんて思わない工藤祐経は、富士の裾野はどうか?と提案しています。
巻き狩りは義時復活の良い機会でもあると頼朝は考えているようです。
岡崎義実が曽我兄弟を連れていました。それを比企能員が目に留めます。仇討ちの話を義実から聞かされるのですが、計画にはさらに裏の企みもありました。
狙いは工藤だけではなく、頼朝も襲う――。
義実は気に入らない。伊東祐親に恩を仇で返したうえに、征夷大将軍だのなんだの、文官ばかりが出世して気に入らんのだと。
新しい世を作るために戦ってきたのに、平家の頃とかわらねえじゃねえか!
ここで曽我五郎がぶちまける。
頼朝に近いものだけが出世するなんてあまりに理不尽だ!
能員は「なにも知らない若造が知ったような口を叩くな!」と苦々しく言い、頼朝の恩義を口にする。
ただ、本音は違うようで「おまえらだけで何ができる?」と探るように煽ると思わぬ答えが返ってきました。
「20人ほど揃えている」
「ぬはは、嘘をつけ」
と思いきや、なんと曽我兄弟は北条の力を借りているとか。
確かに時政は烏帽子親です。だからってそんな企みにのるか?と当然の疑いを向けると、義実はそこが面白えと言い出します。
時政は敵討ちしか知らねえ。まさか北条の兵が背くなんてわからねえって寸法だと。
能員は妻に、十中八九、企みは失敗すると言います。
失敗すれば処刑。北条は終わりだ。
道はもし成功したらというと、頼朝が倒れた方が都合が良いと能員は言います。それで万寿様を立てればよいと。
「ではどちらに転んでも……」
「ふふ、面白いことになってきたわ」
ゲスな夫妻が今日もまた喜んでいる。上総広常の一件で懲りるどころか、しょうもないことを企む岡崎義実も相当悪いぞ!
そのころ義時は政所で年貢米を数えていました。
二階堂行政は義時がいると仕事がしづらいとぼやいています。
と、梶原景時が義時を呼び出します。御家人たちが謀反を企んでいる気配があると伝えると、義時は侍所別当の和田義盛に言うべきだと返します。いや……それはどうかなぁ。
景時が義時に伝えたのには理由がある。北条時政が関わっているのだと。曽我五郎の烏帽子親は時政です。
かくして坂東を揺るがす曽我事件が始まるのでした。
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MVP:大江広元
今回ほとんど出番のなかった大江広元がなぜ?
あまり目立たないことこそが、この人の恐ろしいところかもしれません。
岡崎義実、比企能員、源行家のように、ペラペラと思う様、策謀を語る人はそう怖くありません。
その点、広元は不気味ですよ。
鎌倉行きの話が出て、貧乏下級貴族が新天地を求めて下向してきたようで、その脳内には復讐計画があった。
坂東武者の手綱をとって上洛し、自分を下に見ていた連中を嘲笑ってやる。
そんな大博打、大胆な策がうまくいきました。
それほどの策士なのに、和田義盛に「一緒に飲み会していいのぉ?」と声をかけられちゃうくらい、人畜無害に見えているところがおそろしい。
策謀の隅っこがチラッと見えるだけでこんなにも怖いのか。
文官が出世することに坂東武者たちはイライラしていますけれども、それって頼朝だけの問題ですか?
そういう方向に誘導している誰かがいるんじゃありませんか?
それがおそらくやこの男、大江広元です。
頼朝が将軍になって、組織していくシステムも広元発案のことも多いわけです。
広元の脳には、日本の新時代が詰まっています。まったくもって実に怖い。
その策謀をチラッと飲み会で口にしただけでも、深淵のような凄みがある。
誰も「あいつが悪いんだ!」と思わない。そこが梶原景時とも違う。
大江広元はよくもこんな危険な綱渡りをできるものだと思いますね。
この作品で恐ろしい人物のリストを作ったら、大江広元は確実に入りますね。
栗原英雄さんがそんな人物を、磨き上げたような美貌と美声で演じるのだから、たまらないものがあります。
総評
義時の生きる道とは?
八重のように子供を慈しむ道を行きたい。政所で米を数える地道な道を行きたい。そういう気持ちはわかります。
ずっと人相が悪化していたのに、今週は元に戻ったようにすら思えます。
こんな謙虚でささやかな人物だったのだと改めて思いましたし、金剛はそんな父にも似ているのだと。
これは姉の政子もそう。
ひさびさに昔の装いに戻り、お餅を持ってきたかわいらしさはどうしたことか!
やっぱり政子は素敵だ。それなのに比奈にデレデレする頼朝は度し難い。
とはいえ、比奈もかわいいし。久々のギャグがあって爆笑回だな〜!……と思えたかというと、そうでもない。
随所に不吉なフラグが立ちました。
範頼も、全成も、破滅への道のりがうっすらと見えてきます。
彼ら自身が迂闊というよりも、懲りずに企む坂東武者が悪いとも思えてくる。上総広常の死を教訓にできていないんだなぁ。
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なぜ上総広常は殺されたのか 頼朝を支えた千葉の大物武士が不憫な最期
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善児が怖いと言われますが、私は人間よりも権力のありようが怖いと思いますよ。
比企能員と道の夫妻なんて、権力をとりにいくことを楽しみすぎていて危険です。
しかも彼らは一族の女を駒にするからたちが悪い。比企に関わると滅びるという意味では、源行家に匹敵するほどの死神かもしれない。
義時はまっすぐに生きたい。政子もそうかもしれない。
どっこいそうは行かない。そんな生き方が見えた気がします。
アブダクション――仮説形成を使う作劇と思考術
こんな記事があります。
◆ 「鎌倉殿の13人」風雲急 ついに“三谷流”曽我事件!善児も暗躍?ネット興奮「もうミステリードラマ」(→link)
曽我事件の解釈は、三谷さん一人で考えているというより、考証の坂井孝一先生あってのものでしょう。
なかなか大事なのが岡崎義実。彼はあまり目立っていなかったと思うのに、急に出てきましたね。
義実の出家の時期と状況が不自然で、何かあったのではないかとつないでいくことで事件が見えてきます。
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頼朝の蜂起に駆けつけた岡崎義実の生涯|三浦一族の重鎮で重忠や義盛の大叔父
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三谷さんが原作とも呼んでいる『吾妻鏡』は、記録が全部揃っているわけではなく、散逸したものを後世再編纂しています。
ゆえに点と点を繋いで、蓋然性の高いシナリオを読み解く必要がある。
こういう考え方を【アブダクション】【仮説形成】と呼びます。
ミステリでは定番の技法でして、わかりやすいのがシャーロック・ホームズです。
彼はワトソンと初対面の場面で、アフガニスタン帰りだと見抜きました。
・日焼けしているが、手首は白い。地黒ではない
・医療関係者だ
・立ち居振る舞いに軍隊にいたような厳しさがある
・顔つきが険しいぞ
こうした要素を組み合わせていき、当時イギリスの軍医が派遣されている日焼けする場所となると、アフガニスタンだとわかる。
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このやり方を今回に適用すると……
・御家人に不満が溜まっているじゃねえか
・万寿もそろそろ育ってきたよな
・なんならいっそ蒲殿が鎌倉殿でも構わねえ
・工藤祐経みてえなゴマスリがうまいだけの臆病者が出世ってどういうこと?
十分に不穏な要素が溜まってきていて、そこに景時が善児経由で決定打をつかんだことが見えてきます。
なんだか最近「伏線回収!」という言葉でドラマを評価することが流行しているように思えますが、三谷さんのようなミステリ大好きな作家ならばそれはむしろ当然のこと。
そういう発想のジャンプができるところにフィクションの醍醐味もあるわけです。
歴史劇でも【アブダクション】は定番技法だし、大事です。
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三谷さんはこの思考の積み重ね方がともかく得意で、今までもこなしてきました。
それにそうすることで話を動かせる中世と相性が良いのだと思えます。
ちなみに『孫子』「行軍」には戦場でのこの適用法があります。
杖ついて立っている者は腹が減っている。
水を汲んですぐ飲む者は喉が渇いている。
利が目の前にあるのに進まない者は疲れている。
鳥が集まるところは誰もいない。
夜に叫んでいる者は何かに怯えている。
軍の統率が取れていないのは、将軍の威厳が不足しているのだ。
旗さしものがやたらと動くのは、何かが乱れている。
役人が怒っているのは疲れているから。
馬に米を食べさせ、兵が軍馬の肉を食べ、食事のためにのための器や鍋を壊し、キャンプに戻らないのはもう切羽詰まっているということ。
司令官が腰を低くして兵と話しているなら、士気が落ちている。
やたらと恩賞をはずむのはもう切羽詰まっているから。
やたらと罰するのは疲れ切っているから。
先に暴れておいてあとから復讐を恐れるなら、判断力がもう限界。
贈り物を持ってきて停戦交渉をする。これはもう休みたいから。
敵軍が激しく攻めてきたのになかなか迎撃しないし、撤退もしないなら、観察してみよう。
『鎌倉殿の13人』の進む道
【アブダクション】は色々と応用ができます。
視聴率では下落傾向が続く大河ドラマ。
今年は昨年と視聴率でも大差がないように思えます。
が、しかし、作品評価や手応えでは今年が成功枠とNHK側もみなしているということは、さまざまな要素から伝わってきます。
・Twitterでトレンドを獲得する
→これは保留。Twitterのアルゴリズムを理解していれば、ノイジーマイノリティ(声の大きい少数者)が活発化するとトレンドは取りやすいため。
・関連番組が多い
・ネットニュースの本数が多い
・関連書籍も多く出てくる
・関連イベントが多い
・歴史雑誌が、夏になっても関連ネタを取り上げている。昨年は夏にはもう下火になっていた
・ファン層の空気に余裕がある。心底好きか、義務感から好きと言っているのか。その違いはファン層の空気に反映される
書籍にせよ、イベントにせよ、関連番組にせよ。金と人が動くものは、そうできるものではありません。
勝てるとわかっていなければ動かない。そこが動いています。
NHKプラスでの再生数や、みなさまの声といった部分で、熱量が観測できているのでしょう。
こうもネット配信が発達した現在、視聴率だけでの判断は時代遅れになりつつあります。NHKもそこはふまえてNHKプラス再生数を気にしている。そこでよい結果が出ているのでしょう。
NHKは中世大河という賭けに勝った。
ゆえに再来年も『光る君へ』にしたのではないでしょうか。
そしてこのドラマが成功している証拠として、来週日曜、6月12日、伊豆の国市の江間公園で「第1回義時・江間祭り」をあげておきます。
第1回、つまり今年から。江間次郎を演じた芹澤興人さんのトークショーもあります。
◆第1回義時・江間祭り(→link)
こういう行事があることが、大河の持つ力でしょう。
2019年に大河にからめたイベントが開催されたとき、参加者が二桁を割っていて、私は色々と不安になりました。
NHKが不安に思わなかったわけもないと思いますが、それも払拭できていることかと思います。よいことです。
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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト




















