鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第30回「全成の確率」

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叫ぶしかない!能員はそれしか能がない!

そのころ比企能員は、頼家に土地の再分配はよろしくないと告げていました。

土地とは先祖から受け継ぎ、武功で受け継ぐ。

それを変えるのはよくない。

しかし頼家は変えたい。わずかな者だけに偏る状況を改善したいと考えています。要は格差の解消ですね。

能員は悪いとは言っていないというけれど、自分に任せて欲しいと願い出ます。

「任せておけぬ」

「申されましたな」

ここで火花が散ります。

能員の身内贔屓と欲深さを思えば当然と言えるでしょう。

「よいことを考えた。まずは比企、お前が手本となって示せ」

「わしに?」

「おまえがもっている上野の所領全てを差し出せ。それを近隣の御家人に全てに分け与えよ」

「全て?」

笑いつつそう返す能員。

「わしに忠義を尽くすならできるはずだ。宿老自ら土地を分け与えれば、他の者も従うであろう」

「本気でおっしゃっているのですか?」

「もちろんだ、すぐに手続きに入れ」

そうキッパリと言われてしまう能員。

彼は廊下をずんずんと歩いて行きつつ、叫び出しました。

「たあーああーあああーああーああーーっ!」

外戚として鎌倉殿を傀儡にして好き放題するはずが、これだ。

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そして、こんなとき叫ぶしかないのが能員の器です。

土地以外の価値あるものを代替案として出してみるとか提案もできないし、説得すらしない。ただ操ることを考えている。

実にしょうもない小物です。

政子の方が圧倒的に上でしょう。

 

処刑人が刀を構えると強烈な雷雨

常陸国にその能員が来ました。

全成の流刑先に向かい、鎌倉に戻りたいだろうと告げます。戻してやってもいいと思っているとか。

そのうえで、鎌倉殿のやり方に不満が募っているという。実衣が危ういという。

そして人形の入った包みを投げてきます。

「何度も言っているように、私ににそんな力は……」

「ご謙遜を」

鎌倉殿が病になったというと、あれは偶然だと返します。

そして鎌倉殿も、昔の素直な頃と違ってきたと愚痴をこぼす能員。足りないものがあれば言えと告げます。

そして、実衣が会いたがっていると念押しして、部屋から出て行きます。

全成の選択は?

頼家は怒っています。

「どういうことだ!」

八田知家の報告によると、長い間、厠に籠っているとか。しかも鎌倉殿の諱が書かれた人形を持っているとか。

「恩を仇で返すとはこのこと……これはもはや謀反!」

すぐ呼び戻せ、わし自ら首を刎ねる! そう憤ると、知家が止めます。

せっかく礼を持って過ごしやすい場所を与えたのに。もう討ち取ってくると全成の元へ向かうのでした。

全成は縄を打たれ、読経しながら引き立てられてきます。

風が吹き、雷鳴が響き始める。怯える武士たち。

そして刀が振り上げられたところ、なんと雷が落ちて致命傷にはなりません。

「実衣!」

妻の名を呼びながら這って逃げる全成。

九字を切り、血まみれになりながらその場を離れようとします。

嵐がますます強くなり、武士たちが怯える中、八田知家がスラリと刀を抜く。

そして全成は――。

義時は鎮痛な顔で、八田殿からその死を聞いて知ったと告げます。

全成を救えなかったことを侘びるのです。時政も悔しそうにしています。

実衣はこう尋ねます。

「あの人はどんなふうに亡くなったんですか?」

「立派なご最期だったと……」

「詳しく話して!」

「よしましょう」

姉の政子がそう止めても、聞いておきたいと実衣は兄の前で座ります。

 

「悪禅師全成、覚悟!」

阿野全成は、ひたすた呪文を唱えていたとのこと。

斬首の刀を振り下ろすと、雷が近くの木に落ち、そこにいた誰もが恐れ慄いた。

「それで?」

「そこまでにしておきなさい」

「聞かせて!」

庭に引き出された時、全成はやはり呪文を唱えていました。斬首の刀を振り下ろそうとしたとき、雷が近くの木に落ち、そこにいた誰もが恐れ慄いたと。

政子が止めても聞きたがる実衣。

太刀筋が外れてもまだ生きているところ、空が暗くなり、激しい雷雨の中、ついに八田知家が刀を構え――。

「悪禅師全成、覚悟」

そう呼びながら阿野全成の首を斬ると、嵐は止み青空が広がったのでした。

実衣は涙をこらえつつ、笑う。泣き笑いの顔を浮かべています。

政子は言います。

「やはり全成殿には人智を超えたお力があったんですね」

「当たり前でしょう。醍醐寺で二十年、修行を積まれて来たんですよ。あの人はそういうお方なんです。私にはわかってた。ずっと昔から。ふふふ、やってくれましたね。最後の最後に、うふふ」

初めて相手が何かが違うと思った時。自分にはわからないことを言っているところに憧れた時。

相手が非業の死を遂げたあとで、自分が惹かれたところを確認し、泣いて、そして笑う実衣でした。

日蓮の「龍ノ口法難」とは異なり、全成は落命してしまいました。

でも、最期に奇跡を起こしたことで、最愛の妻の信愛はより強くなりました。

全成の祈祷は、命を守れなくても、愛は守った。

半分失敗で、半分成功といえるのかもしれない。そんな最期でした。

はじめて出てきた時、九字を切っても何も起きなかった全成。それが最期では嵐と雷を呼んだのです。

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義時が妹の前を去って、ずんずんと歩いていると政子が呼び止めます。

「小四郎、こんなことがいつまで続くのです?」

「私に言わないでください!」

「なんとかなさい」

「一体何ができると言うのですか!」

「私にだってわからないわよ。考えなさい、私も考えます」

政子からそう言われ、どんどん煮詰まってゆく義時。

米の収穫を木簡で数えることが好きだった、あの伊豆の青年が、苦難というのみで削られ、仕上がってゆきます。

『麒麟がくる』の明智光秀も、どんどん時間の経過とともに削られてゆきました。

光秀とこの義時の違いは、どこへ向かうのか、ビジョンがないところ。火の粉を振り払ううちに、何かが変わってゆきます。

義時は変わる一方で、政子は何か変わらない、北極星のような不動のものを感じます。

この姉の周りを回るのが、弟の義時であると。

 

いま最も鎌倉殿に死んで欲しいのでは

頼家が蹴鞠をしていると、鞠が坊主頭と重なります。

全成の様子が浮かんできて、彼なりにストレスを受けているようです。

父である頼朝は、義経の首桶にしがみつき泣き叫んでいました。頼家はそんな風にストレス発散できることもなく、毒として体内に溜まっているように思えます。

義時が考え事をしていると、比奈が来ました。

「お呼びでございますか」

「そこへ座りなさい」

「なんでしょう、改まって」

「お前に伝えておくことがある」

「覚悟はとうにできております」

夫婦はそう語り合います。

この二人は理想的であるし、義時も比奈も賢くて優しい。けれども、何かしっくりこないものがあるように思えます。義時は八重の時ほど開けっぴろげに妻を愛せないのかもしれない。

家の都合で妻すら愛せない義時。圧倒的な孤独を感じます。

比企能員を廊下で呼び止める義時。

全成に呪詛を唆したのではないかと問い詰めます。

「わしだというのかな?」

ふてぶてしい能員。佐藤二朗さんがあらん限りの憎々しさを出してきました。

このドラマを見ていると、半分本気で彼に憎しみを覚える人もいるかもしれない。

そんな高濃度の憎々しさを出してくる。素晴らしい演技です!

義時が追求しようが、のらりくらりと所領に戻っていて知らんと返す。それでも義時は、動機があると言い出します。

いま最も鎌倉殿に死んで欲しいでのはあなたです――。

そう問いかけてきました。

 

比企の悪だくみを頼家に聞かせた!と思ったら……

今作では三谷さんが元々好きで大得意の、ミステリ劇の手法をふんだんに使っています。動機を解き明かすことはお約束です。

あの方に従えば大きくなると思ったのに、所領分配の話を断れば今の立場が危うくなる。そんな意のままにならぬ鎌倉殿にもはや用はないはず。

そう義時は追い詰めます。

ここが当時らしい価値観といえるのが、忠誠心が感じられないところです。

こういうことを言われたら、忠義を疑うのか!と、後世の武士ならば怒り出しそうではある。幕末なら確実にそうなりそうだ。

しかし、よくも悪くも当時の武士は利益がないと動かず、やりがい搾取は通じません。

義時はここで善児を活用。

相手の逃げ道を塞ぐように、能員の逃げる側に置きます。義時は実によいものを手に入れましたね。

「仮の話として聞け」

開き直った能員。

頼家にとって自分はただの乳父。しかし、一幡が跡を継げば鎌倉殿の祖父。朝廷にも通じる。京都へ登り、武士の頂に立つこともできる。

そんなことを夢見ることは愚かなのか?

そしてこうきた。

「小四郎、わしに力を貸さんか? お前は北条にしては出来が良い、ともに力を合わせれば……」

「お断りいたします」

そして比企には鎌倉を出て行ってもらう、必ず!

そう宣言する義時。強気に出たと能員は返します。

強気どころか“鎌倉を出るor一族滅亡”なんですよ、義時の中では……。

「ようやく分かったのです。このようなことを二度と起こさぬために何をなすべきか。鎌倉殿のもとで悪い根を断ち切る、この私が!」

大河主人公が、怒涛の敵抹殺宣言しましたのぅ。

だから、どうすんの?と余裕綽々の能員に、鎌倉殿に聞いていただいたと告げる義時。

戸を開けると、そこに頼家が立っているように仕組んだはずでした。

しかし、いない。

「どうされた? 鎌倉殿に立ち聞きをしてもらうつもりだったか? しくじったか、小四郎。詰めが甘いのう」

義時が困惑し、能員が勝ち誇っていると、時房が血相を変えてやってきます。

「時房!」

「兄上! 鎌倉殿が……」

「どうした?」

「お倒れになりました!」

若き鎌倉殿は、病に冒されていたのでしょうか。

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