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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第30回「全成の確率」】
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政子と実衣 久々の再会で
頼朝の死後、姉とは疎遠だった実衣。
不満そうな表情で久々に姉との再会となります。
「そのお姿、板についてきましたね」
「なかなか楽でいいわよ。大丈夫、あなたは私が守ります」
そう姉に言われ、妹の目には涙がにじんでいます。
「中、どうなってんの」
「尼そぎ」
「蒸れないの?」
「誰も見てないときにたまにこうやって」
そうして頭巾に風を通すところを見せる姉。好奇心旺盛でズケズケと聞いてくる妹を理解しているのでしょう。
姉妹は打ち解け、微笑み合います。
何気ない会話なのに息があっていて、こういう姉妹の仲をしっとりと描けるものかと思わされました。よい場面です。
そのころ義時と重忠は三浦義村に署名集めを頼んでいます。
命乞いか?と即座に理解する義村。
できるだけ多くの署名を集めるにせよ、実は全成にはボヤッとした印象しかないという和田義盛。
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和田義盛は坂東武者のカリスマだ!なのになぜ滅亡へ追い込まれてしまったのか?
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「源氏の流れの坊主……」
「ぼやっとし過ぎだ」
そんな義盛に突っ込む重忠。
でもそこは仕方ねえんじゃねえの?
兄の範頼や弟の義経とは異なり、全成は戦に出ませんでしたからね~。義盛は呪詛のことも理解しそうにないし。
義時は粘り強く、全成だけの問題ではないと説得します。
比企の思惑一つで首が刎ねられるようなことはあってはならない。
義時は賢い。自分達にも関係あることを理解させ、積極的に引っ張り込まないと、こういう協力は得られません。
一方、トラブルが好物の義村は「面白くなってきた」と興味を示しています。
梶原がいなくなって、比企と北条の全面対決だってよ。
こいつは面白くないことにはとことんヤル気を出しませんからね。
いや、ちょっと待った。梶原景時失脚のため、実衣を利用するよう、結城朝光に持ちかけたのは義村だったじゃんよ!
(俺の計算通りで)やっと面白くなってきた――そう考えているとしたら、あまりに危険な存在ですね。
義時は「北条と比企をぶつからないようにするためだ」と釘を刺しますが、もう義村の中では対決不可避なのでしょう。
義盛は北条に味方するというものの、義村はこう言います。
「言っとくがな、今のところだ。その先はどうなるかわからねえ」
また義村が邪悪だ。
義村は安全圏からこのゲームで遊びたいので、先に軸足を動かせると宣言しています。
人間は切替が大事だから、もし北条が潰れそうになっても巻き込まれないよう逃げる宣言をしていると。
でも、これですら彼なりの誠意であり好意でしょう。義時のことを心底嫌っているなら、前振りもなくシレッと捨てるはずです。
そうそう。義村は既に、娘の初を北条泰時に嫁がせています。
それで北条を切るとなったら、初をどうするのかって?
その時はその時ですかね。政略結婚の意味がない奴だ。
木の橋なら真ん中で分けられるが人は?
北条と比企の緩衝材として義時に嫁いだ比奈(姫の前)。
比企能員の前にやってきました。
「叔父上、お久しぶりでございます」
今回のことで比企と北条が争うことはいかがなものかと彼女なりに感じ、伺いにきたとか。
道が、義時の差し金か?と猜疑心を見せますが、それをあっさり否定し、自分の意思だと告げる比奈。
そして頼朝の命令で、比企と北条の架け橋になると言い切ります。
架け橋とは……橋はどちらのものなのか?
木の橋ならば真ん中で分けられるけど、人はそうではない。
そう道が目を光らせます。
と、そこへ、既に兵を集め、いつでも指図できると告げにくる家人がいます。能員は、もし戦になれば、北条の者はすべて滅ぼすと比奈に言います。
「お前は比企の家に生まれ育った。それをくれぐれも忘れてはならんぞ」
「かしこまりました」
そう釘を刺します。
娘を北条に嫁がせた義村が出てきたあと、比奈の登場。
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義時がベタ惚れだった姫の前(比奈)北条と比企の争いにより引き裂かれた二人
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さて、ここで問題です。
日本の伝統では、女性は結婚後、実家と婚家、どちらを優先するものでしょうか?
答えは時代によります。
戦国時代までは実家優先の傾向が強い。
江戸時代以降は婚家優先となり、例えば、薩摩藩から将軍家に嫁いだ篤姫は、幕府と徳川家存続のために尽くす人生でした。
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むろん家のパワーバランスもあり一概には言い切れないものでもあります。
ともあれ、鎌倉時代初期ならば実家上位ですので、そこに異議を唱える比奈は個性がある。
しかも彼女は夫と子(ドラマには出ていませんが)への愛情は一切理由として出しません。
あくまで頼朝との約束を出し、道義に訴えています。
比奈の聡明さがよくわかる設定です。
政子と仁田が立ちはだかる
「お引き取りください!」
泰時が、実衣を捕らえに来た比企能員の子・時員らを抑えています。
堅強な武士とは言い難い泰時一人ではさすがに辛い。
こんな時こそ善児とトウを……いや、かえって状況は悪化しますね。
押し通ろうとする相手を、命に換えても止める!と泰時。
時連改め時房がこう頼みます。
「太郎! 頼むから姉上を渡してくれ!」
揉み合っていると、室内に一喝する声が響きます。
「おやめなさい! これはどういうことですか?」
現れたのは北条政子です。
鎌倉殿が連れて来いと命じた、と時房が言うと、話が聞きたいなら自分でここに来いと返します。
「わからない人たちですね。では致し方ありません。お願いします」
そう政子が告げて開けた戸の奥には、仁田忠常がいました。
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二刀を抜いて立ち塞がる。
さすがプロ野球選手候補とも言われたティモンディ高岸さん。これは強いぞ!
「あとはお任せください。来るなら来い!」
「来い!」
泰時もがんばってそう啖呵を切ります。
今はあまり強くなさそうに見えますが、果たしてどうなるのでしょうか。
全成は駄目だ、流罪だ!
政子が頼家に詰め寄っています。
甥にそんなことしない、そんな力はないと。大江広元も署名を提出しています。
しかし能員は、呪詛を焚きつけた実衣も同罪だとネチネチと攻める。
妹は関わりないと政子が返すとこうだ。
「はっ! これは尼御台らしくもないお言葉。北条にお肩入れですか?」
そして義時に何か言ってやれと促してくる。
義時は頼朝の遺志を持ち出します。北条だの比企だの言っている場合ではない。飛び抜けた力を持つ御家人がいると政治が乱れると。
頼家はたまりかねたように言い切ります。
「もうよい、母上に免じて叔母上は許す。だが全成は駄目だ、首は取らん、流罪だ!」
かくして阿野全成は流罪となりました。
実衣が全成の元へ会いにきます。怪我をしてやつれた夫に抱きつきます。
「常陸国に決まったって!」
「八田殿が治めるところだ。目と鼻の先だよ」
「会いに行けるの?」
「半年ほどだと小四郎殿が話しておられた。来年の正月には一緒に過ごせる」
ここで実衣の激情を見せます。
「父上が許せない!」
「それは言うな」
「なんであなた一人が貧乏くじを!」
「鎌倉殿を呪詛したことは間違いないのだから、私はその罪を償う。それだけのことだ」
「だけど……」
「誰も恨んではいけないよ」
「うん」
そうまるで出会ったばかりのころのように語る二人。
倦怠感に悩み、結城朝光にときめいていた実衣はいない。そんな妻に嫉妬していた全成もおりません。
全成は実衣の髪飾りを見てこう言います。
「お前は本当に赤がよくに合うな」
「ふふふ……」
実衣が赤を身に付けることは久々です。昔を思い出したのか、無意識の選択か。
ここで戸が開き、時政が来て謝り出します。
「義父上! おやめください」
「わしが余計なことを頼んでしまったばっかりに!」
「ご自分を責めてはなりませぬ。私は大丈夫」
そう全成は返します。
あんなに殴られ、蹴られてもこの穏やかさ。徳のある人物です。ありすぎてどこか儚いような。
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御家人にとって土地は命より大事
御所では、またもや所領の揉め事が持ち込まれていました。
あまりにこの手の訴えが多いのでしょう。皆うんざりした顔をしています。
義時が状況を説明します。
所領の少ない御家人からすれば土地が与えられてうれしいが、それは義時を含めた所領の多い御家人から召し上げてのこと。
となれば、不満が出てくる。
ここで八田知家が自分なりの意見を言ってきます。
「無理があるんだよ。御家人にとって土地は命より大事。誰かあのお方にお伝えした方がいいんじゃねえか」
鎌倉殿は御家人が従うのか試しているのかもしれない。そんな意見を耳に入れておいた方がよいのではないかと広元が言い出します。
能員は鎌倉殿に伝えるつもりです。
三善康信は難しい問題だと言い、足立遠元も自分がいた方がよいのかと言い出しますが、宿老の13人もすでに9人にまで減っているし、北条時政や和田義盛も来ないってよ。自分がいる意味がわからんとか。
二階堂行政が苛立たしげにこう言います。
「いないほうがおかしいのだ!」
全くその通りよ。
さて、時政は双六をしています。
御所に行かなくてよいのか?とりくが尋ねると、義時におとなしくしているよう言われたとか。
確かに呪詛のことをペラペラ話しそうで危なすぎますね。
ここで北条時連が北条時房に改名したと告げられます。
しかし「トキューサ」と聞き違える時政。
りくが大事な名前をなんだと思っているのか!と憤っていると、時政は気に入っていないとか。
三浦一族の佐原義連から「連」をもらったけど「つら」ってなんだ――そう思ってたってよ。あの世の三浦義澄が聞いたら激怒しそうなことをサラッと言いおって。
「早くから言って欲しかった」
「トキューサ、いいと思うよ。どんな字を書くんだ」
そう能天気な時政。トキューサ連呼でろくに字を気にしていないあたりがおおらかというか、迷信を信じないというか、大雑把というか。
誰かの諱と被っていないかとか、不吉じゃないかとか、そういうことは気にしないんだなぁ、時房は。彼は父ほど大雑把でもないようで。
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