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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第32回「災いの種」】
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比奈との離縁
大江広元が御所でうやうやしく、千幡が征夷大将軍に任じられたと発表します。
ついに元服です。
あのキザな京都守護・平賀朝雅が早速お礼の品を京都に届けると伝えれば、京都との橋渡しを頼むと義時。
そして名前が発表されます。
実朝
実に良い名だと朝雅は言いますが、この人はいちいち存在感がありますね。
といっても、大江広元との対比がこれまた残酷でして。
広元は無愛想というか、滅多に笑うことすらありません。愛嬌ではなく頭脳で勝負するとわかっている。
一方、そういう中身がないタイプは無闇に褒め、ニタニタするのかもしれない。
「佞言は忠に似たり(おべっかは忠義の言葉に似ている)」ってやつですな。
廊下へ出てきた義時に、そこで待っていた仁田忠常が相談があると話しかけています。
急いで戻らねばならんと断る義時。
困った顔で「かしこまりました」と言うしかない忠常。
「すまん」
義時は軽くそう言うのですが、相手の切羽詰まった様子までには思い至らず……。
自邸に戻ると、息子の泰時とその妻・初が、うやうやしく座っていました。
なんと一幡は生きているとか。父の言いつけを破り、ある場所に匿っているとか。
初は「(義時が)泰時の性分はよくわかっているはずだ」と言いながら、一幡の命を奪うことのできなかった夫を庇っています。
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泰時は、頼家が健康を取り戻したため、一幡が生きていたことは不幸中の幸いだと訴えます。
それを聞いているのかいないのか。ただ「鎌倉にいるのか?」と確かめるだけの義時。
鎌倉の善児のもとに一幡はいました。
出かけようとする義時に、比奈が話しかけてきます。
比企の血を引きながら、比企を滅ぼすことに加担してしまった。このまま鎌倉にいることはできない。
一人、思い悩んでいたのでしょう。
あの起請文がある限り、義時から離縁は言い出せない。誓いを破れば地獄に落ちる。全身の毛穴から血を噴き出して死んでしまう。
そんな恐ろしい死に方をして欲しくないから、自分からお願いすると比奈はいいます。
「どうか離縁してください」
「比奈……」
比奈は勝手に出て行ってもよかった。でもせっかくだから出かける前に言いたかった。
「すまない」
「ああ、もういやだ、泣くつもりはなかったのに、いけませんね!」
そう泣く妻を後ろから抱きしめる義時。
富士の巻き狩りでも猪に追いかけられて、義時が比奈をこうして抱きしめた。同じぬくもりなのに、あの時と何も変わらないのに。
そう昔を懐かしみつつ、けじめ、けじめ、と二度つぶやきます。
「お出かけでしたよね。ここで失礼します」
「行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
これが永遠の別れです。
義時の正室である姫の前は、比企滅亡後に鎌倉を去り、四年後京で生涯を終えたと語られます。
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ひどく悲しく、感動的な別れだけれども、何か嫌な予感もします。
義時は平気で嘘をつき、誓いを破る人間になりつつある。八重が亡くなった時は、罰があたったと恐れる気配はあった。それが今もあるのかどうか……。
律儀過ぎた忠常の死
義時は一幡の元へ向かいます。
そこには善児とトウがいて、一幡と遊んでいました。
なんでも鞦韆(ブランコ)は善児が作ったとか。義時はさりげなく一幡を殺せといいます。
「できねえ」
困った顔で善児が首を横に振る。
「千鶴丸様と何がちがう?」
「わしを好いてくれる」
「似合わないことを申すな」
八重の亡き子の名を出し、そうつきつける義時。
千鶴丸もなついていなかったとは言い切れないでしょう。変わったとすれば、善児の心です。
トウを育てる過程で愛を知ったのか。加齢ゆえか。あるいは仏の教えでも学んだとか?
義時に強く言われ、殺しに向かう善児ですが……どうしてもできない。苛立ったように、義時が刀に手をかけます。
「一幡様、トウと水遊びをいたしましょう」
トウが師匠の代わりをこなします。善児は苦しげにブランコの縄を切る……そんな姿に、酷い破滅が迫っている未来が浮かんでくる。
殺すから重用されていた者が殺すことを忘れたら、何の役にも立ちません。
トウという後継者もできた。
以前のように人の命やぬくもりを知らぬまま死ぬのであれば面白くない。死ぬことは酷いことだ、まだやり残したことがあった――そう悔やみつつ死んでこそ、残酷というものです。
義時が自邸に戻ると、泰時が何か焦っています。
そこには、頸動脈を切り、息絶えた仁田忠常がいました。
なんでも不意に御所に現れ、命を捨てるといい、止める間もなく自害をしたと。
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義時は頼家様はご存じなのかと確認すると、まだ耳には入ってないようです。
義時としてはありがたいことでしょう。
りくと義時は考えが一致しており、頼家が災いの種だとわかっている。
しかし、相手が動かなければ、コチラから手はくだせない。その言い訳を頼家は与えてくた。あとは大義名分を掲げて排除すれば完了です。
武士とはどういうものだ?
「あなたの軽々しい一言が、忠義に篤い坂東武者をこの世から消してしまった!」
義時が頼家を責め立てています。
もともとは北条が悪いと反論する頼家ですが、義時がそれを認めながら、頼家の気持ちが変わらぬ限り、同じことがまた繰り返されると追撃の手は緩めません。
「おわかりいただきたい」
そう静かに頭を下げる義時。怒鳴ったりこそしないけれど、迫力がありすぎて反論できない。
やはり頼家様には鎌倉を離れていただくしかない――。
北条一族にそう告げる義時。
政子がどこへ追いやるのか?と問うと、伊豆の修善寺で仏の道を極めていただくのが最善とのことです。
本当にあの子のためになるのか。息子の心配をする政子に対し、鎌倉で弟の千幡が鎌倉殿になるのは辛いだろうと時政も賛成します。
父上の申される通りだと義時。
政子も修善寺ならばたまに会うこともできると納得しますが……ちょっと待ったぁ!
修善寺は当時から名刹で、源氏の御曹司でもよいほどの場所。鎌倉にも近く、北条の目も光らせやすい。
しかし、その条件だからこそ、範頼も幽閉後に殺されているのでは?
泰時が、義時に一幡生存のことを伝えたのかと聞いてきます。
冷たい声音で、一幡様は比企の館が焼け落ちた時に亡くなった、おかしなことを言うなと返す義時。
小栗旬さんはこういう低い声でも発声がきちんとしていて、クリアなのが素晴らしい。乾いていて絶望的で。聞いているだけで、こちらも地獄に堕ちてしまいそうな声です。
低くしっかりとして張りと艶のある小池栄子さん。
若くハキハキした坂口健太郎さんとよい意味で対比になっています。
泰時は愕然とし、父に善児のところへ行ったのかと聞きます。
「父上は、一幡様を! なぜ!」
「武士とはそういうものだ……これでよかったのだ」
「父上はおかしい!」
そう叫ぶ我が子の頬を義時が叩きます。
武士ってなんなんだい?
私もそれは思ってしまいます。こんな異常性がある集団でいいのか?というドス黒い思いが湧いてくる。
とはいえ世界を見渡しても、同時代の騎士も酷いもので、十字軍は敵の血に踵まで浸かったとか。
そんな思いがぐるぐると回ったりしますが、そういう逡巡が大事なのかもしれません。
程なくして武士が「仁義礼智信」を得ていく。これぞ歴史であり、そのために義時の息子である泰時が奮闘するのだと。
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