今すぐ実朝を助けたい義盛を止める義村。
時政が実朝に出家を迫っていると説明した上で、これは謀反であり、北条義時サイドに寝返るつもりだと説明するのですが……義盛には全く話が通じない。
わからなくてもいいから俺に従っていればいい。
そう説き伏せても、義盛はこらえきれず、ドカドカと乱入してゆくのでした。
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25年かけて築いた地位が1ヶ月で崩壊
無謀だとわかっていながら実朝を館に連れ込み、必死の形相を浮かべる時政に、無情のナレーションが入ります。
伊豆の小豪族に過ぎなかった男。
二十五年かけて築いた地位が今まさに崩れようとしている――。
その間、わずか一ヶ月。
時政の失墜を予感させる長澤まさみさんの言葉。
と、そこへドカドカと義盛が突入し、「仔細はわからねえがこのお方に刃を向けるなんてとんでもねえ!」と時政に訴えます。
鎌倉殿が起請文を書いてくれない。
時政がそう説明しても、んなもんちゃっちゃと書いちまえ、と義盛が雑に対処しようとする。
それでも断る源実朝の方が、ことの重大性を理解していますね。
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義盛がイライラして、起請文など後で破いてしまえば問題ないと語気を荒らげても、粗末に扱えば身体中から血を噴き出して死ぬと怯えています。
「そんな死に方をした奴は聞いたことがない!」
キッパリ断言する義盛。 おぅ、その通り!
そもそも、この起請文は誰が書かせようとしているのか?
というと、場所が変わり、時政に詰め寄るりくの姿が映し出されます。なんとしても起請文を書かせねばとけしかけている。
時政の館は、すでに軍勢に囲まれていて、北条時房がいますぐ鎌倉殿を引き渡すよう兵に告げています。
りくは必死です。
鎌倉殿だって痛い目に遭わせればいいと口走り、躊躇してしまう時政の尻を叩きまくる。
鎌倉殿を引き渡せば終わる!
生き延びるためだ!
知家の徹底した仕事ぶり
外では時房が、自分が中に入って説得すると義時に訴えています。
しかし義時は、義村が説き伏せると言うばかり。気を揉む時房と冷徹な義時、そんな対比があります。
確かに義時は頼朝に似てきました。
冷たい顔で、弟を殺す――と指示を出していた頼朝にそっくりですね。
そんな父の様子に耐えかねたのが息子の北条泰時です。このようなことをさせるわけにはいかないと言い出す。泰時は母である八重にも似てきましたね。
それでも即座に口を出すなと返す義時。時房もたまりかねたように、父上には死んで欲しくないと弱音を吐く。と……。
「太郎、これが私の覚悟だ! 鎌倉を守るためなら、父も子もない」
悲壮な表情で義時が決意のほどを説明しますが、泰時は納得できません。
見かねた八田知家が泰時に寄り添い理解を促します。
「いいかげんわかってやれ」
これまで義時が何人の御家人を謀反の罪で殺してきたことか。親だからと許したらどうなるのか。御家人全てを敵に回すことになる。
そして知家はあらためて義時に語りかけます。
「構うこたねぇ、首を刎ねちまえ」
この人は、本当に自分の汚れ仕事を理解していますね。
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阿野全成を殺すとき、雷雨となって他の連中が怯えていても、冷静に始末できていました。
知家は神罰に当たりかねない汚れ仕事を進んでやることを理解しています。敢えて時政殺しを促すことで、義時の負担を軽減しているのでしょう。つくづく偉い、素晴らしい人物です。
義時は落ち着き払ってこう言います。
「まずは鎌倉殿をお助けする。それからだ」
妻の脱出を画策する時政
実朝は何か夜食を口にして、時政はどこか虚脱したように座り込んでいる。
そこへ義村が入ってきて、館が囲まれていことを告げます。同時に、義時の頼みでこの場にいることも打ち明けると、今度は時政が頼みごとをします。
義村が、義時の頼みで時政の間にいることが大事ですね。
義時なりに、自らが父を殺さずに済む手札は切った。しかし、それを御家人たちに知られたら意味がない。たとえポーズでも、自身が父を殺すつもりだと見せておく必要がある。
そのためには、我が子や弟から「冷血と思われるリスク」を承知で、ことを進めている。実に大した人物となりました。
すると時政がいよいよ腹を決めたのか。りくに鎌倉を離れるように諭します。京都にいる平賀朝雅ときくを頼れと言うのです。
「しい様は?」
「ここに残る」
そう言われ、りくは京都行きを断りました。
彼女の真意がどうにもわからない。坂東なんて嫌々来ていて、できれば立派な夫と凱旋するように京都へ戻りたかったのでは?
たとえそれが叶わぬ夢となっても、坂東で死ぬより京都に戻る方が良いのでは?
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時政は、そんな妻を説き伏せます。
鎌倉殿のそばにいれば外の奴らは手出しができない。義村の手引で無事に逃げることができたら、残った時政が鎌倉殿を引き渡し、降参する。義時は親思いだから、頭を丸めて手をついて謝ったらきっと許してくれる。
息子のことを心底信じているのか、単にりくを説得するためなのか。時政の真意もまた不明ながら、妻を助けたい気持ちに嘘偽りはないのでしょう。
すると、りくの目も潤んできた。
自分でも止められない。京都に戻るよりも、夫と別れない方が大事。そんな思いが、涙と共に滲んでくるような、圧巻の美しさがあります。
「ほとぼりが冷めれば、また会える日も来る。平六、あとは頼んだ」
「りく殿のことはお任せください」
こうして、りくを逃す算段が整えられてゆきます。
時政に諭されたりくに対し、義村が着替えを渡し、廊下で待っていることを告げると、彼女もキッパリと告げます。
「京へは参りません!」
彼女は一体何を考えているんだ?
夫への愛に気づいてしまった
義村が門を出て、義時の前に現れました。
「執権殿は?」
「あれを説き伏せるのは骨だぜ。りく様が親父さんの横で石みたいに動かない」
そう言うと、怖い思いをさせて悪かったと詫びつつ、使用人たちを外へ出します。彼らの中に着替えを済ませたりくも紛れていました。
実朝が、義盛に「武衛」を説明しています。
武衛とは?
兵衛府のことを親しみを込めて呼ぶもの。実朝は去年まで武衛で、今年はその上の「羽林」となった。
「ウリン?」
一つ賢くなった義盛です。
「羽林」は近衛府の唐名(とうみょう・中国風の呼び名)であり、ここで注目したいのは、まだ幼いにも関わらず父や兄よりスピード感のある昇進しているころでしょう。
すでに右近衛中将(うこんえのちゅうじょう)となっています。
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政子の前に、りくがやってきました。突然の義母到来に驚いていると、彼女が深々と頭を下げてきます。
「どうか頭をおあげください」
「夫は死ぬつもりでいます。このようなことになってしまって、ことを収めるには自ら命を絶つより他ないと思っています」
「父がそう言ったのですか」
政子が愕然としていると、りくは言い切ります。
「言わずともわかるのです。此度のこと、企んだのはすべて私。四郎殿は私の言葉に従っただけ。悪いのは私です」
そうりくは訴えます。
彼女はここまできて、どれほど夫を愛しているのか気づいてしまった。ひとまず館から出たのは、自分が助かるためではなく、夫の助命嘆願に賭けたのですね。
妻に振り回され、執権の立場を失った――時政は不幸なようでいて、これだけ愛されているのならば、本望でしょう。
きっと二人にしかわからない世界があるはず。
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