麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第14回 感想あらすじ視聴率「聖徳寺の会見」

斎藤利政(斎藤道三)は、娘婿である織田信長と、聖徳寺で会見することとなります。

光秀が肩を叩くと、そこにいたのはいつも通りの格好をした信長でした。利政の目は、奇妙な婿の姿に釘付けとなるのです。

「寺へ行くぞ。あの男の正体が見えぬ。奇妙な婿殿じゃ、急げ」

信長の花押が麒麟であることも踏まえてみる。しかも、五行の黄麟。まさに麒麟が姿を見せたような、本作の極みのような場面ではあります。

その麒麟をどうして光秀は討ち果たすのか――。

さて、ここで考えたいこと。

利政は鉄砲を所持する兵数をどうしてわかったのか?

かつて彼は、我が子である高政は珊瑚玉の数すら当てられませんでした。

利政が賢くて、高政が愚かなのか? そういう単純なまとめ方をすればよいというものでもない。

利政は距離を置き、俯瞰するように物事を分析できる。それができるかできないのか、ここはなかなか重要ではあります。

※編集部注:ちなみに『信長公記』では「朱槍五百本、弓・鉄砲五百挺」とあり、鉄砲自体の正確な数は記されておりません

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相手を待たせイラつかせる 遅刻戦法も策の一つ

さて、会見の場である聖徳寺では。利政が苛立っております。

「う〜む。遅い! 信長は着いたと申したな。何をぐずぐずしておる。さては臆したか」

利政はイライラすると、手を動かしてしまう。自分の膝をばちばち扇で叩いています。

信長も興奮して手を自分の体に叩きつけていました。この舅と婿は似ているのかもしれません。ついでに言うと、信秀と信長、利政と高政は、タイプが実はかなり違います。

織田上総介がこちらへ着いたと言われ、信長が着替えて入ってきて頭を下げます。

着替えに手間取りお待たせした――そう断るわけですが、この時点で心理戦において信長が一枚上手となっております。蝮はストレスを感じるので、待たされた時点で不利になりました。

創作による誇張もある話と前置きしますが……。

宮本武蔵と佐々木小次郎の対決でも、武蔵が遅刻戦法を使いました。剣術の腕前だけではなくて、心理的に動揺させることも、立派な策なのです。

信長の戦術は使えます。髪の毛を青く染めたり、変な格好をして誰かと会見に臨めば、そこに集中力が分散して、相手は罠に引っかかりやすくなる。

嫌な話ですが、覚えておくとよいかもしれません。

利政が斎藤山城守として名乗りつつ、着替えにいつも時間がかかるのか?と聞くと、信長はサラリと「斯様に立派な装束は慣れていない」と返答する。利政は「着慣れぬ装束は身につかぬもの」と言い切ります。

が、なんか引っかかる。

利政は怖いと思われている。けれども、信長が変な服装だろうと、遅刻しようと、いきなり怒鳴り散らしたりはしない。

それに信長は、素直にいろいろ言うのです。この色は父上好みの色ゆえ、これにせよと。

「まことにお好みの色でございますか?」

 


山城守に討ち取られるのではないか

先週の感想で、帰蝶が筋書きを書いたことへ否定的なものもありました。信長が「マザコンすぎる」という意見も見られました。

マザーコンプレックスって、母親へのものですよね。帰蝶は信長の母親ではありませんし、帰蝶が行動できたのは信長の許可があればこそ。家の中に閉じ込めていたら、ああはならない。

信長はマザコンでも女房の尻に敷かれているわけでもなく、男女問わず適材適所をしただけのこと。そこに文句をつけるのだとすれば、時代の流れについていけない可能性がある。

このご時世、ドイツ、台湾、ニュージーランドといった女性リーダー国家の対応を見ながら「女ごときが! 馬鹿馬鹿しい!」と発信する人がいたら、どう思うか?という話ですね。適材適所ができないと、危機管理能力が低くなるおそれもありましょう。

そういう詮索はさておき、帰蝶の策に乗ると実際おもしろいんですよ。帰蝶が信長に対して正直なのかも判断できる。

彼女をカードとして挟むことで、ゲームが複雑になるし、腹の探り合いができてよい。

信長は釘を刺す。帰蝶は喜び、困り果てていると。理由を聞かれ、山城守に討ち取られるのではないかと困っていたと信長は言うわけです。

これには光秀もひやひやしています。

利政は、信長の鉄砲があれだけあり、討ち取れないと答える。

あれはただの寄せ集めだと微笑む信長。その上で、自分のことを役に立たない、帰蝶の言いなり、帰蝶の掌で踊る尾張一のたわけ者だと堂々と言い切ります。

信長はプライドをキッパリと捨て去ることができるし、自分がうつけだと認めることができる。こういうことができるからこそ、彼は強いのですね。

 


織田家は成り上がりもの

利政がそれを聞いて笑うと、家臣もつられて笑い飛ばします。どこかぎこちないけれど。

そのうえで、この大事な席に家老の林佐渡守秀貞すらいないと指摘する。

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と、信長はこれもあっさり認め、父以来の古い重臣すら参っていないと言い切ります。

そのうえで、家臣二名を呼び出します。

佐々成政前田利家です。

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彼らは土豪の三男、四男。家を継げぬはぐれ者。されど戦となれば、無類の働きを見せる、一騎当千の強者であると紹介するのです。

信長は遊んでいるようで、スカウトをしていたということも考えられると。

「食いはぐれ者は、失うものがござりませぬ。戦うて、家を作り、国を作り、新しき世を作る。その気概だけで戦いまする」

信長は、父・信秀の言葉を伝えます。

織田家は、さしたる家柄ではない。血筋もない。越前の神主だったか。斯波家の家来か。尾張へ出てきてのし上がった。成り上がりものじゃと。

万(よろず)、己で新たに作るしかない。それをやった男が美濃の国にもいる。そういう男は手強いぞ。

家柄も血筋もない。鉄砲は百姓でも撃てる。その鉄砲は金で買える。これからは戦も世の中も、どんどん変わりましょう、我らも変わらねば――。

 

信長殿は見事なたわけじゃ

これは大事なことでもあるし、当時は世界的にも信長タイプがもてはやされた時代ともいえる。

シェイクスピアの創作込みではありますが、イングランドのヘンリー5世は、若い頃は騎士のフォルスタッフと遊び呆ける「うつけ」でした。

彼は戦上手。
百年戦争前半戦で奇跡的な大勝利をおさめたのですが、その原動力が長弓兵です。

騎士や貴族と違い、誰でも扱いが楽な長弓を装備したイングランド軍に、騎士の誇りを掲げたフランス軍は負けっぱなしであったのです。この状況は、オルレアン出身の農民の娘ジャンヌ・ダルクが出てくるまで続きました。

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世界のどこにも、新時代を築きたいものはいる。厄介なのは、それが少数派であるということです。

で、シェイクスピアが描いたヘンリー5世のセリフとしてこういうものがある。

平時は謙虚と冷静さこそが紳士の嗜みだけれど、乱世ならば虎のように振る舞うべし――。

危機的な状況下では、理想とされる人物像も異なるということです。

利政は納得します。

「帰蝶はわしを見て育った。わしと同じと思うておるのであろうな、信長殿を。信長殿はたわけじゃが、見事なたわけじゃ」

「それは褒め言葉でございますか?」

「褒め言葉かどうか、帰って誰ぞにお聞きなされ」

舅と婿は一致しています。家臣たちも安堵する、見事な会見でした。

この二人は話が早くていいなあ。通じやすくていいなあ。わかりやすくていいなあ。

個人的な見解だと前置きしますが、蝮も魔王も、私はそこまで怖くない。対処を覚えさえすれば、話が通りやすくていいと思うのです。

こういう二人に憧れながら、現実は酷い対応をする上司タイプもいるから世の中は怖い。

履歴書を学歴フィルタかけたり。SNSのプロフでマウント取ったり。ダークスーツを着ていない人を面接で落としたり。部下の提案を中身も見ず「生意気だ」と蹴ったり。特定の国や集団のことを吟味せず罵倒したり。

上っ面だけで判断することは、この二人の正反対のことをしているということです。

例えば私みたいなクソレビュアーですら、出演者や脚本家などの過去の実績から、加点減点しないことに気を払います。中身で判断することが大事だからですね。過去じゃなくて、今このときが大事で、見る側もアップデートしなければならないことに追われています。

 


牧「帰蝶は良いところへ嫁に行った」

さて、明智荘に戻り、光秀は食事をとっています。

あの口の悪い殿がそこまで言うとは。しかも、信長が帰るところを門で見送った。帰蝶は良いところへ嫁に行ったと語っていたとか。牧もほっとしています。

なんでも、藤田伝吾は仲違いして、戦になるのではないかと支度までしていたとか。煕子も一日中胸騒ぎがしていたそうです。

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焼きあがったばかりの魚を持ってきます。清流の国・美濃といえば淡水魚ですね。

戦になれば帰蝶様も離縁。そうなればまたこの館に来て、大変なことになると牧と煕子は語り合うわけですが。

二人はわかっています。

帰蝶様が光秀を好きだったことを。妻木でも、帰蝶は光秀に嫁に行くのではないかと噂していたとか。光秀は魚に小骨が多いと言い出し、ごまかそうとするわけです。

煕子は嫉妬するわけでもない。そういう展開は古いです。こうした場面も、よい息抜きではあります。

そのころ、駿河では。

どうやら駿河一の大商人から100貫せしめる東庵の計画は頓挫したようです。スギナを煎じて飲んで治ってしまったとか。

駒は50貫くらい寄越せばいい、どこが駿河一かとと文句タラタラではあります。契約を確認すべきでしたね。

とはいえ、旨味はちゃんとある。

大商人の妻の治療:20貫

今川家の家老:10貫

この調子ならば、あと一ヶ月で100貫稼げるとか。

些細な描写のようで、経済は尾張ほどではないという可能性はあります。信長は鉄砲は金で買えると言い切っていた。金と発想のある信長がこれから伸びるとわかる。そんな描写です。

 

薬屋にいたのはなぜか菊丸

ここで東庵は、駒に薬を買ってきたのかと聞いている。忘れていたと知り、早く買えと促します。

とはいえ、本人が慌てて行けばちょっと嬉しそう。

お金も目的とはいえ、駒の気分転換も大事だったのでしょう。

駒は薬屋へ向かいまして。

・地骨皮(じこっぴ)

・竜胆(りゅうたん)

・車前子(しゃぜんし)

これらを注文。細かいセリフがいいですね。漢方知識を入れないとならないわけで、面倒だとは思うんですよ。

するとそこには菊丸がました。駒が名前を呼ぶと、相手は薬の名前を繰り返してごまかそうとします。

そしてあわてて駒を連れ出し、春次と名乗っていると言います。再会がうれしそうではあります。

菊丸は、味噌は売れないし、駒から教わった薬草のことが面白かったし、こういうところで働くのもよいとは言っています。

これは因果関係が逆なんですよね。

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駒に教わる以前に、彼は薬草が生えている場所を把握していた。

薬学知識はあるのです。忍者だからさ。
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