麒麟がくる感想あらすじ

麒麟がくる第14回 感想あらすじ視聴率「聖徳寺の会見」

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麒麟がくる第14回
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「十兵衛はどう思う? 幼い時から互いを見てきた仲じゃ、十兵衛の気持ちを知りたい」

「いずれ、おぬしが継ぐものと思うていた。稲葉殿の仰せの通りかもしれぬ」

そう答えるしかない。

けれどもこれも辛い話です。叔父の光安は利政に忠誠を誓っています。

叔父をとるか?
親友をとるか?

引き裂かれる光秀です。

 

勝利しても味方の犠牲はつきもの

天文23年(1554年)、村木砦の戦いです。

このとき信長は初めて鉄砲を実践で用いました。

「構えー! 放てー!」

光秀はそんな戦いぶりを興奮しながら見守っています。

鉄砲を使い用意周到に攻め、砦を陥落させました。まだまだ鉄砲は新兵器です。砦の構造が鉄砲による射撃を想定していない構造であった可能性は高い。

とはいえ、勝利をおさめても味方の犠牲はつきもの。

「お前もか。お前もか……」

信長は討ち死を遂げた者にそう声を掛けています。この戦で、多くの側近を失ったのです。

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それでも味方の緒川城の防衛に成功しました。

「エイエイ!」

「オー!」

勝鬨をあげる信長たち。染谷将太さんは発声が極めて素晴らしくて、場面によって異なるところも素晴らしい。この声を聞いてもまだ、彼が適役でないと言えるのでしょうか?

本作の出演者は声がよい人が多いと思います。

いくらイケメンだのなんだの言われようが、滑舌がもつれて発音が無茶苦茶な、ヒロイン夫を演じる俳優も数年前にいたものです。どこがイケメンなのか理解できなかったものですが、顔そのものではなく、声に難ありだと今は理解できています。

近年、発声がおかしい大河が多かった。全員が絶叫するような演出は、嫌がらせなのか? 理解はできてきた。なぜプロットホールが多い駄作ほど、大仰でメリハリのない発声をさせるのか? 仕組みを知れば簡単なことではあった。ずっと絶叫されていると、観る側の集中力が落ちる。ゆえに、プロットホールを見逃してしまう。

無意識下でパフォーマンスが落ちていると、そのことに本人すら無自覚だから、そこに気づけないんですね。

やたらと誰も彼もが顔芸をしているとか。叫ぶとか。しょうもないギャグが異常なまでに多いとか。脚本や感想の語彙力が落ちているとか。そういうドラマには、罠が仕掛けてあることも往々にしてあるんですね。

 

母を訪れる高政

深芳野は貝桶から貝を出して、酒を飲みつつ歌い、笑っています。

いちりょー にりょー 並べよー 並べよ この宿踊りを……

そこで高政は、干し柿を手にして母の元に来ます。

これも美濃の経済力ではあり、京都の松永久秀のように水飴は用意できない。尾張では帰蝶が団子を食べられるのに、美濃ではそうはできないのです。

戦国時代には、いろいろな変革ありました。甘味の到来もそう。三英傑はじめ、戦国大名は甘いお菓子を振る舞うことで、その経済力をアピールしました。

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糖分の歴史というのはなかなか興味深いものがある。

当時は世界的にも砂糖は財力の象徴でした。

エリザベス1世はストレスのためか、砂糖を大量摂取して虫歯だらけだったそうです。大航海時代以降、アメリカ大陸で黒人奴隷を使って砂糖を得ることが、財力の象徴となってゆくのです。

薩摩藩は黒糖で儲けを出していた。

そのへんを一昨年はごくあっさりと描いていたものですが、かつて糖分の背景には全く甘くない歴史があったことは重要です。いや、今もかな。チョコレートが本当に適切な労働の結晶なのか、考えた方がよいでしょう。

ベルギーチョコレートにしたって、コンゴ自由国という地獄の歴史あっての名産品ですからね。ちょっとしたものでも、本作はいろんな要素を入れて来るから見逃せない。

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清流の側で息絶えていた深芳野

しかし、その深芳野の姿がありません。

侍女たちが高政に「主人がいない」と訴えます。探しているのに見つからないのだそうです。

二時ほど前はお酒を召し上がっていていつも通りだったのに、姿が見えない。皆で捜索します。

「お方様ー、お方様ー!」

呼びかけに答えはありません。

深芳野は、河原で物言わぬ屍となり、横たわっているのでした。

清流の国らしさを出してきたと言いますか。岐阜県は見事な川が実に多いものです。美濃でなければ、別の死因かもしれないとは思う。ああ、辛い。でも、どういう死に方にせよ、何が彼女を殺したのかはわかる。

このあと、利政は遺体と対面します。

「目を開けよ……わしを……見よ、わしを」

微笑むような寵姫の遺体と向き合う利政。

そんな父を高政は責め立てます。

「母上はずっとお一人でございました。ずっと父上をお待ちしておりました。この部屋で来る日も来る日も……父上は母上を飼い殺しにされたのだ。守護様からいただいた、慰みものとして」

「それはちがう! わしは心の底から深芳野を大事に思うて、慈しんできたのじゃ」

「では何故母上の望みを絶たれた!」

「望み?」

利政は我が子から訴えられます。

深芳野はことあるごとに、血を分けた高政が守護代に就くことを望んでいたのだと。それなのに、小見の方の子たちを大事にして、それに継がせることをほのめかせた。そう迫ります。

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利政が狼狽を見せています。深芳野にそなたに継がせると申したはずだと返すのです。

「聞いてはおりませぬ!」

「申したぞ。わしはそう申したであろう。わしはそなたを悲しませるようなことを、何一つ、言わなかったはずじゃ……のう、深芳野……」

「では今、母上の御霊にお誓いなされ。母上の喪があけぬうちに望みを叶えると。お誓いなされ、私に家督を継がせると! お誓いなされ、この哀れな母上に、せめてもの償いと思し召し、私を守護代に……」

「よかろう、家督をそなたに……」

利政はそう誓うのでした。

 

MVP:斎藤利政

今週は、彼が冴えているようで壁にぶつかったところだとは思えました。

信長とは話が弾むし、好意を表明できる。

それなのに、我が子・高政とは意志の疎通ができない。

愛していた深芳野ともそう。

稲葉良通ら国衆とは絶望的だ。

これはあくまで私個人の見解ですが、この蝮にせよ、信長にせよ、別に狂っているとは思いません。

むしろ、ああいう人物を簡単に狂気だのサイコパスだの言い切れる方が偏見を抱いている気がするのです。

彼らは話が通じやすくていいじゃないですか。データと根拠を示せば、それで納得するからラク。

ワインの中身とラベル――どっちに金を払うのかって話です。

あほくさ、中身に決まっていると言いたいところではありますが、そのへんを疑問に思い実験した研究者もいます。

無茶苦茶高いビンテージだろうが、そうでもない安ワインだろうが、ラベルを見せないで味を評価させると、そこまで変わりがない。素人に試しても資格持ちのワイン通に試しても、そんな違いは出なかった。

ボジョレーヌーボーの選評が毎年褒めているとネタにされますが、それもこうした実験結果をふまえるとわかりますね。

そこまで味に違いなんてないわけです。

高いワインに払う金は「自分はこの味がわかるワイン通」という満足感のために使っているということ。

ボジョレーヌーボーは、お祭り騒ぎへの投資です。

利政にせよ、信長にせよ。やっていることは単純で、ワインボトルのラベルをひっぺがして、中身がうまいかどうか確認しているだけってことです。

しかし、これが意外と難しいらしい。

ワインが目の前に置かれたとき、いきなりラベルを剥がして自分がうまいかどうか確認すると「狂気」と思われるんですね……。

でも、だからこそ、こんなときだからこそ、やってみる価値はあるんじゃないですか。

やりすぎて失敗する危険性も、利政や信長は体現していくわけですが。

 

総評

こんなご時世でドラマを見ている場合か?

そういう意見はあると思う。けれども、皮肉にも、本作は危機管理能力をあげる効果があるので、見なくちゃいけないとは思える。

今日のハイライトは斎藤利政と織田信長の会見だとは思う。

けれども、見終わって「すっきり♪最高!」と思いつつ、苦い何かが湧き上がってきてもやもやしました。

あァ?
朝礼で織田信長のことを取り上げていたくせに、面接でグレースーツ着ていないと落とすじゃないか!

そういうもんですね、はい。

今回のあの会見は、先入観の打破がいかに大事か。そこが肝だとは思う。

染谷さんで大正解だとは思った。彼は先入観をバリバリと踏みつぶせるから。すごいものを見ているという意識は必要だと思いますよ。染谷信長は、歴史に名を残す像になる。

長谷川博己さんの光秀もそうです。ハセヒロさんは傍に喰われているようで、存在感を見せていて、難しい役柄なのにすごくうまくこなしていると思えますもんね。

正直、謝りたい気持ちが湧いて来る。

日本の時代劇は終わったと思えていた。けれども『柳生一族の陰謀』とこの作品で脈拍を確認できました。

伝統を引き継ぎ、新たな世界的な要素に踏み込んできたとは思えます。

でも、考えていることはありまして。

このドラマは好きだし、もちろん最後まで見たい。

とはいえ、それは作り手の安全確保があってこそのことではあります。

ドラマに関わったことで、被害を被るようなことがあれば、そんなものは嫌です。

「私が好きなドラマだから作り続けて!」

だの。

「私の好きなドラマだから、地元が大赤字になろうが最低でも最高!」

だの。

そういう剣闘士に親指を下に向けて喜んでいたローマ市民じみた精神性には、近づきたくもない。『駿河城御前試合』の徳川忠長じゃないんだから、御免蒙ります。

主演男優の結婚がこれで遅れただの。呪いだの。そういうしょうもない話題には乗っからない。

ただ、言いたいことがあるとすれば、長谷川博己さんが主演であることが、本作の幸運の一つだとは思えます。

彼は慎重で、知的で、思考力がある。主演を務めていて、どうすべきか把握した上で現場を見通す。そういう力量があると思えるのです。

勝ち戦で武功をあげることは、実はそこまで際立ったことでもありません。

引き際、撤退戦をうまく仕上げてこそ、名将といえる。

このドラマの質を一定で保つことができれば、長谷川さんは大河の歴史に残り、かつ日本の歴史にも名を残す名優として記憶されることでしょう。そうなることを、祈り見守ることしかできない。

何があろうと、本作を作り続けろとは言わない。何年かかってもいい。

最後まで見たい気持ちはあるし、それが無理ならノベライズ発信でも、当初の筋書きどおりに完結して欲しいとは思います。

どういうかたちであれ、新解釈の戦国史を見たいとは思う。

来年の大河を中断してでも、今年は完遂していただきたい。

願いはそれだけです。

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