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【麒麟がくる第30回感想あらすじ】
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久秀の値踏み
松永久秀は、岐阜城で茶器を前に値段をつけておりました。
そこへ光秀がやって来ます。
なんでも信長が上洛した折、豪商たちが献上した逸品ばかりだそうです。そういえば、信長が茶器を見るようになっていましたっけ。
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合計8000貫にはなると久秀は言います。この価格をつけて見る目がある限り、彼は役立つことでしょう。
そういえば、東京国立博物館で開催中の『桃山―天下人の100年』を見てきました。
それこそ天下人たちが愛用した茶器があるわけです。見ようによっては地味な茶碗でしかないけれども、解説がついて、ガラスケースの向こうにあると、すごいもののような気がしてくる。
帰り道に茶器を売る店で見た茶碗と同じようで、何かが違う。
いったいモノの価値とは何なのか。『麒麟がくる』を見ていても、考えてしまいます。
久秀は価値や金の勢いを見る男。金など、戦に勝てばいくらでも転がり込んで来ると言います。
権威が上がれば上がるほど、金だって動く。今の信長様相手なら、負けることはない。
そう断言した上で、朝倉が上洛した信長を嫉妬している、隙あらばとって替わるつもりだとも分析するのです。
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そこへ三淵藤英がやってきます。
信長と何を話たのか? というと、朝倉と一戦交えたいと言い切ったようです。
「それでよいのじゃ!」と張り切る久秀。しかし、浮かない顔の藤英。
朝倉討伐は信長一人で?
藤英によると、公方様は、朝倉様にお世話になったゆえ、共に戦うわけにはいかないとのこと。
たしかに、保護して元服させましたね。
このままですと、やるなら信長一人でとなります。
なんだか怖くなってきましたね。信長からすれば、義昭がふらふらしたせいで最悪の結果になりかねない、そういう解釈はできる。
そんなもの義昭からすればたまったものでもないだろうし、理不尽でしょうが、信長が恨み怒ったらきっと止まらない。
危険な兆候がいくつも出て来ています。
ここで光秀が信長に呼ばれました。
間合いがあり、演じる側の所作を見せ、BGMも照明も、風格のある場面となります。ジョン・グラムさんのサントラの使い方が、どんどんよくなってきていますね。
光秀がそこへ入ると、奇妙丸がちょこんと座っています。
「奇妙丸、そこはそなたの座ではあるまい。こちらへおいで」
「帰蝶様!」
「十兵衛、懐かしいのう」
「長らく、ご無沙汰しておいでました」
久々に帰蝶が出て来ました。
貫禄が出てきているようで、昔のままのようでもある。視聴者も大注目ですね。
信長嫡男・奇妙丸と帰蝶
奇妙丸は無邪気にこう聞いています。
「母上、この者が泣き虫十兵衛か?」
「ふふっ、そうじゃ。幼き頃、高い木に登って降りられなくなり、声をあげて泣いておった十兵衛じゃ」
「またそのような……」
光秀が困惑しています。
帰蝶は相変わらずでした。奇妙丸は自分も木に登って泣いたことがあると慰めつつ、母上から聞いていて会えて嬉しいと返答します。
「信長様に似て愛想悪き子ゆえ」と詫びる帰蝶。
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いやいや、悪いのは信長じゃなくて、光秀の恥ずかしい話をしたあなたでしょ。
帰蝶は天から降ってきた大事な預かり物といい、奇妙丸を膝に乗せていました。清須で9年間育て、もはや実の我が子のように思えると自信の表情を浮かべます。
9年ぶりか……としみじみしている光秀。
帰蝶は信長から光秀の様子を聞いており、何かと相談するとよいといつも申し上げていたとか。
畏れ多き言葉と謙遜する光秀。帰蝶は此度も随分お悩みの様子、戦をしてよいのか、集まった人々の話を聞いて悩んでいると語ります。
そのうえで庭にいるから何卒よしなに、と光秀を促すのでした。
光秀はここで、帰蝶が朝倉との戦をどう思っているか問いかけます。
帰蝶は、朝倉をそそのかし、兄・斎藤義龍の子(斎藤龍興)が美濃を取り返そうと企んでいると告げます。いくら京が穏やかになったといえども、足元の美濃に火がつけば危うい――状況をそう分析するのです。
「それゆえ私は言いました。朝倉を、お討ちなされと」
光秀はそれを聞き、一礼して去ります。
乱世だからこそ能力を問われ
ここもなかなか帰蝶がおもしろいことになっています。
光秀の妻である煕子、あるいは駒あたりと比較すると顕著ですが、帰蝶には戦の流血に対する嫌悪感がない。それどころか、甥だろうと討ち果たしてもよいと思っている。
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きっぱりと【情】を切り捨て、【理】で生きている。だからこそ堺から戦道具を買い付けられる。信長という【理】で詰める夫が、自分の意見を反映する鏡として彼女を愛する。
実家である斎藤家がああなった。しかも子も産んでいない。若いわけでもない。
いわば、帰蝶は”政治力“としても、”女“としての価値も盛りが過ぎていて、尼寺送りにするなり、構わないでいてもよい存在なのです。
それでも彼女が有能だからこそ、信長は側に置いている。自分の役に立つから使う。
往年の大河では「女が口を挟むでない!」と叫ぶ大名や武将が定番でした。それがどうにも変化しつつあるようです。
帰蝶にせよ、駒にせよ、使い物になる。
そしてそれは彼女ら自身だけの有能さでもない。
信長なり、義昭なり、東庵なり、そして光秀なり。女だからと見下さず、人間としての能力を見据えているからこそ、意見を尊重できるのですね。
乱世らしさと言えばそう。女性の地位は、時代が下れば下るほど高くなるという単純なものでもありません。
世が乱れ、男だの女だのいう前に、実力主義が徹底したら、女性が力を持つことはあります。
江戸時代よりも戦国時代の女性の方が発言力があったのではないか?
そういう問題提起もなされていて、本作はこういうところまで色々と反映させてくるから興味深いのです。
帰蝶はただのかわいらしい女性じゃない。
側にいたら「なんだこいつ、生意気だぞ!」「いちいち言うことがキツイ!」となる方も多いと思うのです。
口調がハキハキとして理詰め、ドライ、クール。伊呂波太夫のウェットであたたかい、セクシーな言動と比べると際立っているでしょう。
そうそう、こんな微笑ましいやり取りをする奇妙丸を、後に光秀が殺すことになるんですよね……。
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