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遊女の中に寿桂尼の顔を見た信玄が突如血を吐き!
そんな中、笙を吹く空気の読めない今川氏真。
酒井忠次からあきれられても「おばば様の命日だから、好きな笙を吹きたい」と悪気はありません。
周囲の冷たい視線に気づかずに「おばば様型が助けに来てくれるかも」と透き通ったまなざしで言うのでした……ある意味大物、そしてとびきりチャーミングです。
一方の信玄は「三河を滅ぼし、このまま尾張まで攻め入って青二才の信長も大きな口を叩けんようにしてやるわ」と、ヒールの風格たっぷり。遊び女を寝所に呼び寄せ抱く余裕を見せます。
しかしこの信玄を待ち受けていたと語るひさという遊び女、何かがおかしいような。
「かわいいことを」
ふっと灯りを消すと、エロ親父そのものの声をあげつつ、女の顔を見る信玄。
「冥府よりお迎えに参りました」
なんとその顔は寿桂尼……。
信玄は悲鳴をあげ、突然血を吐いて倒れ、そのまま死亡してしまうのでした。
まさか氏真の笙でおばば様が冥府から蘇って助けに来たとか?
長いこと待ち受けていたというのは納得です。そりゃこの人が来たらショックで死んでしまう……。
南渓も猫のにゃんけいも、信玄の訃報に衝撃を受けます。
ここでにゃんけいが「ニャウッ!?」と驚きの声をあげたのが凄い。
「勝手について来るんじゃねえよ、ババア!」と心にもないことを……
いよいよ直虎と龍雲丸が出立という朝。
信玄の訃報を聞いたばかりの南渓も、見送りにやって来ます。
出立した直虎ですが、どこか上の空です。龍雲丸は「帰るんぞ!」と直虎を引っ張って行きます。
「勝手について来るんじゃねえよ、ババア! 前の男が忘れられなくいせに、迷惑なんだよ! そんなのうれしくもなんともねえよ。城も家もねえけどあんたはここの城主なんだよ。根っからそうなってんだよ。だからほれ、戻れ!」
龍雲丸はそう強い言葉で直虎を突き放します。
そうこうしているうちに転んでしまう直虎。慌てて駆け寄り、手をかける龍雲丸。
「今無理してから行かなくてもよ、やることやって終わってから来ればいいじゃねえか。待ってっから」
「その日など来るわけはないではないか。何も案ずることのない戦のない日など来るわけがないではないか。ここで行かなければ頭と生きる日など来ないではないか!」
「わからねえじゃねえか。あと十年、二十年でも」
それじゃあババアになってしまう、待っているわけがないと泣く直虎を抱きしめ、龍雲丸はさらに力を込めて言葉を紡ぎ出します。
「そんときぁ俺もジジイだ。待つって。あんたみてえな女が他にいるかよ」
奇妙でしたたかなおんな城主と、心のままに生きる盗賊
龍雲丸も、心からそう言っていたのでしょう。
しかし「ごまかすな」と返す直虎。
あと十年も、二十年も待てるわけがない。少し甘えるかのような、それでいて自分の判断を決めかけているかのような。
様々な感情が浮かび上がってくる彼女に対し、龍雲丸は更に続けるのです。
「あんたみてえな大人が他にいるかよ。普通の女なのに、そいつが何でか、兵一人使わず町を手に入れ、人一人殺さず戦を乗り切り、したたかに世を変えていくんだぞ。そんな女がどこにいるんだよ」
「頭……やはりな待たずともよい。頭にはやはり、心のままに生きて欲しい。なれど、あの約束だけは忘れんで欲しい。吾より先には死なぬ、と」
直虎はそうきっぱりと告げ、さよならのキスをしてから龍雲丸と別れるのでした。
さようなら、龍雲丸!
奇妙でしたたかなおんな城主と、心のままに生きる盗賊として、生きることを選びました。
それは互いに初対面の時と同じ、心ひかれた姿でした(第16回)。ある意味幸せな別れです。
『おんな城主 直虎』感想レビュー第16回「綿毛の案」 人身売買や金儲けに瞳キラキラ
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直虎は振り向きもせず、井伊谷に戻ってゆきます。
虎松たちが戻ってきたぞ、YAH YAH YAH
武田は、信玄の死によって勢いを失いました。
さて井伊はどちらに味方すべきか。悩ましいところです。
直之によれば、近藤は隠し里を出て、武田相手に野武士としてゲリラ活動をする息子の支援に向かったそうです。彼らしい武士としての生き方ですね。
そこに「袖にされました。未練たらたらのババアはうっとうしいだけだと」そう言いながら、直虎が井伊谷に帰って来ました。
家康は遠江西部を武田から奪還。井伊谷は再び徳川領になりました。
そして、天正2年(1574年)。
直親の十三回忌を執り行いたいと南渓が直虎に告げます。
しの、なつ、奥山六左衛門、亥之助。そして虎松が、龍潭寺に来るとのころです。
ここで小さなことではありますが、虎猫にゃんけいが引退、白黒ハチワレの仔猫になりました。
すっかり大きくなった虎松に、亡き直親の面影を見る直虎でした。
MVP:松下虎松
たくましく成長した井伊直親が戻って来た時も思いましたが、そのキラキラした笑顔だけでも「希望の星」という説得力がないといけません。
それがこのキラキラ感ですよ。
素晴らしい。
メイクの力もあるのでしょうが、虎松の面影を残しつつ、直親の爽やかさや「スケコマシ」的なチャラさもあるという。
しかも予告を見ると、さらに政次、しの、そして直虎のそれぞれの部分もあるようです。
これはもう「全部乗せ」ではないですか。すごいことになってきたぞ!
総評
第33回の小野政次刑死以来続いてきた、直虎どん底編も今週で終わりです。
この辛い時期を支えてくれた龍雲丸も無事に生きたまま退場し、次回へとつながってゆきます。
今回で出番が終わりという人も多い、お別れの回です。
あっさりと寿桂尼に地獄へと引きずられていった、信玄の最期には笑いながらも困惑しました。
出番はあまり多くなかった信玄ですが、存在感が強烈であっただけに、突然の死に驚かされた方も多いのでは?
近藤の武士としての生き方、直虎の身の処し方、傷つけようとしながら結局は傷つけない龍雲丸の別れ方。
それぞれの魅力が出ていました。
もう「ババア」と言われてしまうほどの直虎です。
龍雲丸はそういう若さではなく、彼女の生き方を愛していました。
兵を動かさずに城を手に入れ、戦わずして民を守る、そんな生き方が好きなんだと。
自分についてきたら、そんな唯一無二の女が魅力を失ってしまう、ということでしょうね。
政次も愛した美点を、彼もまた愛していました。
愛するがゆえの別れというのは、政次も彼も一緒ですね。
悲しいだけではないいくつもの別れを経て、いよいよ次章へ。
希望が芽を吹く、虎松→井伊直政の時代がいよいよ始まります!
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著:武者震之助
絵:霜月けい
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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link)