◆NHKの籾井勝人会長らが受信料「50円値下げ」を提案 ネットで物議に(→link)
一月50円って……。そんなことより、受信料を払ってもいいと思える番組作りをすることがなすべきことではないでしょうか。
受信料が安くなっても毎年昨年のようなおにぎり大河だったりしたら、まったく嬉しくありません。
今年の大河は受信料を有効利用していると納得できるものです。
まずはよい作品を!
ちまちま受信料を下げるより、作品作りを第一にしていただければと切実に願います。
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『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』(→amazon)
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木津川口と今福と、手薄なところばかりが狙われる
いよいよ真田幸村伝説の総仕上げが始まります。
慶長十九年十一月。
大坂冬の陣が開幕です。
初戦は、明石全登の守る木津川口、木村重成の守る今福砦での敗戦から始まります。
守りの手薄な西と東を失いましたが、幸村は敵の狙いは南であると断言。大大名や家康の孫まで布陣する南からの敵を、真田丸で倒すと幸村は言います。
毛利勝永は、手薄な拠点から敵に落ちるのはおかしい、内通者がいるのではないかと幸村に告げます。
幸村はあやしいと睨んだ織田有楽斎を厨に誘います。
厨には上田の地侍・与八もいるようです。これは何かの伏線でしょうか。
幸村は有楽斎を信長の弟とおだてつつ、弱音を吐きます。
博労口の砦は手薄で不安だと語る幸村。
有楽斎は「博労口……」と復唱するのですが、いかにも暗記しようとしているようで不穏です。
幸村は布陣図にいくつか白い碁石を置きます。
有楽斎以外もあやしい人がいたのでしょうか。博労口が落ちたと高梨内記から聞いた幸村は、誰が裏切り者か悟ります。
江戸では信之が、大坂から戻って来た姉の松から様子を聞いていました。
そこへ福島正則がやってきます。
正則は大坂屋敷の兵糧を豊臣秀頼に献上してしまい、家康から怒られたそうです。
それでも懲りない正則は、平野長泰まで巻き込んで、信之に大坂に兵糧を運ぶから手伝えと持ちかけるのでした。なんてトンデモナイことを言い出すんだ。
すっかり乗り気で計画を話す正則と長泰。
弟が大坂城にいるから、兵糧を運び込むのに信之を参加させたらいいと思っているようです。幸村のためにもと頼まれ、信之は動揺します。
信之は妻の稲に相談しますが、当然断固拒否されます。
それはそうでしょう。しかも信之はうっかり口を滑らせて隠し事があるようなことをぽろっとこぼしました。
これは小野お通との浮気疑惑を強化してしまうのでは(バレてるでしょうけど)。
稲は「息子二人は徳川のために戦っているのに不憫! どんなおとがめを受けることになるか! 稲は決し、許しませぬ!」と断言します。
これは稲が正しいと思いますよ……信之、血迷ったのか。
しかし、こうは蔵を調べて『そば粉の在庫』を信之にこっそり告げるのでした。
大量のそば粉です。信之はこれからどうするつもりでしょうか。
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徳川軍の「井伊部隊」に目をやり来年の大河へ
大坂城の幸村は、妻の春に決して「戦の場に来ないように」と釘を刺しています。
その様子を見守る女の影がふたつ。こっそりどこからかお菓子を持ってきたきりと、茶々でした。
茶々は幸村ではなくなぜかきりに話しかけ、これから侍女になるようにと言いつけるのでした。
きりの奉公歴は、寧→細川忠興の正室・玉→茶々と、なかなかすごいことになっています。
家康は真田丸を潰さねば始まらないと息巻きます。
真田丸の危険性がわからない秀忠に、家康と正信はなぜ危険かを説明。政治家として卓越した手腕を発揮し、自信をつけた秀忠ですが、戦となると戸惑うばかりです。
幸村は櫓から敵を見下ろします。敵の井伊直孝の軍を見た幸村と内記は
「向こうにもここに至るまでの物語があるのだろうな」
「一度聞いてみたいものですなあ」
と、来年大河へのサービストーク(としか思えない会話 ※来年は井伊直虎が主人公であり、彼女が後見人となった直政は、直孝の父)を繰り広げます。
幸村の見た中には上杉の旗印もありました。
家康は上杉景勝と直江兼続を呼び出し、ネチネチと嫌味を言います。
「おまえら真田と仲良かったよね? あいつは父親も息子も邪魔なんだよ。真田丸をおまえらで落とせ。この間の戦(関ヶ原)では俺に逆らっただろ? あの無茶苦茶長い手紙書いてさ」
「おかげで百二十万石が三十万石になっちゃって。ここで真田と戦って忠義を示したらワンチャンあるかもよ? がんばれよ〜」
こう言われ、嫌そうな口調で「かしこまりました」と返すしかない直江兼続。
あきらめてここで戦わねば上杉の生きる道はありません、と主君に告げます。
茶々が鎧姿で兵士たちを励ますだって!?
秀頼は総大将として出陣したいと言いだします。
これには周囲が幸村も含めて反対。
そこで茶々が「秀頼のかわりに私が鎧姿で励まします!」と言い出します。
有楽斎はそんなことは聞いたことがないと咎めますが、本作での稲をはじめ、女性が甲冑姿で戦陣に立つことはしばしばありました。
茶々の侍女の中にきりがいるのを見て、幸村は驚きます。
茶々は秀吉の羽根がついたような陣羽織を着て(第二十三回で着用)、颯爽と戦陣を見て回ります。
茶々の勇ましい姿に皆呆然。きりは「本人がコスプレして喜んでいるだけ。あの人好きになれないんだよね〜」と不満そうです。
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一方、信之の子である信吉と信政の陣には真田丸を攻めよと下知が届きました。
信政だけがやる気まんまんですが、他の面々は嫌そうな顔です。
信吉は「叔父上とは戦いたくないのじゃ」と士気はほぼゼロ。そこで三十郎は佐助を呼び出し、文を書いて幸村へと託します。
幸村は急いだ方が良いと判断し、すぐに攻めかかることにします。
他の場所を守る明石全登・毛利勝永以外の五人衆三名とともに、幸村は戦の準備を整えます。あのバラバラだった連中がよくぞ団結したものです。
「おのおの、ぬかりなく」
父と同じ台詞で、念押しする幸村です。
大助の誘いに乗り、前田隊と井伊隊が次々に
早朝、初陣の真田大助は六文銭の旗を振り、「高砂や」を唄い始めます。これはかつて第一次上田合戦(第十三回)で父が果たしたのと同じ挑発役です。
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まんまと挑発に乗った前田勢は、真田大助らのあとを追って真田丸にまで引きつけられてしまいます。
ここから幸村が采配を振るいます。
佐助が爆発を発生させ、敵方に大坂方が内部分裂したと思わせます。勝永もお手並み拝見と言いながらやってきました。
前田勢は空堀に気づきますが、背後からは井伊勢が迫るため後退できません。
「敵はひとつの塊ではない。所詮、人の集まりじゃ」(第三十八回での昌幸の言葉より)
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空堀を上ってきた前田勢は、鉄砲の餌食となって転げ落ちてゆきます。
あんな道を、しかも撃たれながら進むのははっきり言って地獄そのものですが、敵は手を緩める気はありません。
「真田勢有利で進むかに見えた……」
ここで不気味なナレーションが入ります。
直後、長宗我部盛親が石落としを開こうとするのですが閂が外れず手間取り、それと前後して真田丸の中に敵が侵入してきます。
幸村や又兵衛も刀や槍を振るって敵をなぎ倒し、内記は弓矢で敵を射殺。
さらに勝永がやたらとかっこつけた笑顔を見せながら、盛親が手間取る閂を撃ち抜きます。
おのおの力を思う存分に発揮し、前田勢はついにたまらず撤退し出すのでした。
この場面、豊臣方全員がカッコイイです。
秀頼に「総大将は動いちゃダメ」と言っていたわりに、現場指揮官の幸村がちょろちょろするのはどうかと正直思わなくもありませんが……多分、主人公である以上白兵戦もしないというノルマがあるんだと思います。ハイ。ビジュアル重視だね!
「日本一の兵! 真田左右衛門佐!!」
「一兵たりとも討ち漏らすな!」
叫ぶ幸村。前田に混じり、徳川の旗印が虚しく倒れます。
仕上げとばかりに幸村は出馬し、騎馬で敵に追い打ちをかけるのでした。
赤備えの真田勢は、さんざんに敵を打ち破ります。
その姿に感激したのは味方だけではありません。
上杉主従が感極まった顔で幸村の活躍を見つめ、景勝に至っては
「日本一(ひのもといち)の兵! 真田左右衛門佐!!」
と絶叫までします。
えぇ……気持ちはわかるような、わからないような。アイドルのファンですか。おまけに横ではあの兼続がにっこりと微笑み、あたたかいまなざしを主君に注いでいます。
家康はまたしても真田にしてやられた、と激怒。
ひとまず前田と井伊を撤退させ、次の手を考えることにするのでした。
赤い旗がたなびく中、帰陣した幸村は歓呼の声に迎えられます。
まさにこれぞ真田幸村伝説です。
策と勇、まさに知勇兼備です。
勝ちどきをあげる豊臣勢。
たとえここに居る人がこれから全員斃れるのだとしても、この瞬間は輝いていた、そんな風に思い出したい場面でした。
幸村は戦果を絶賛し感激する木村重成に、他の者には内密にと前置きしてこう漏らします。
「かような大戦、私も初めてなのだ……心の臓が口から飛び出しそうであった」
長い、思えばここまで長い道のりでした。
今このとき、真田幸村は、大将として大輪の花を咲かせたのです。
今週のMVP
真田幸村です。
もはや何も言うことはありません。言葉は不要でしょう。
次点は上杉主従で。突然叫び出す景勝、なんであのチベットスナギツネ顔の兼続の、慈愛に満ちた微笑み。よいものを見ました。
総評
全体的に言えばすごくよい出来だと言いたいんです。
鹿角の兜、赤備えの幸村が疾走するだけでぐっときて感極まってしまいます。
三白眼になるほど気合いを入れて疾走する堺雅人さん、最高でした!
しかし、どうにも何かもう一つ足りない。
脚本でもなければ、役者でもない。セットだって頑張っている。エキストラだって頑張った。
◆【真田丸】大坂の陣、徳川兵のエキストラに上田市民を起用する奇策(→link)
うーん、なんだろう。ずっと考えていました。
それで思いついたのは「ワラワラ感」不足です。
前田勢のあとに井伊勢がいるから押し出される。上杉はじめ、大大名の大軍がいる。
敵は総勢三十万……となれば、地平線まで埋め尽くす、絶望的なまでの多くの兵士が見たいわけです。
上杉勢が大勢いると言われても、目に見えるのは景勝と兼続しかいないわけです。
CGの鳥瞰図で真田丸も見えますが、兵士の姿までは確認できないわけです。
それもそのはずで、五十人程度のエキストラだからなんですね。
それ以上が画面に入らないように入れ込んでいるわけで、あとは画面の外にいると想像してくださいということなんでしょうけれども。
幸村が馬上で戦う姿なんて本当に格好いいんですけれども、兵士の絶対数が足りません。真田丸だけで六千人いるはずなんですけどね。
これが「ワラワラ感」不足です。
2010年代の歴史ドラマとして見ると、これはあまりに物足りないのです。
この点は2013年の『八重の桜』の方がまだ上だった気がするんですね。
私なりに理由を考えたのですが、おそらくエキストラを使用した実写にこだわったからではないか、と思うのですが。
しかし何度もくどいのですが、やはり2010年代の歴史ドラマならば、そこはCGに妥協してもよいのではないでしょうか。
テレビ画面が大型化し画質が向上した現在、従来の大河ドラマのように実写だけでは迫力が出ないのです。
リアルな「嘘」であれば、その「嘘」があってもよいと個人的には思うわけです。
回りくどく書いていますが、要するに「VFXでもっとワラワラ感を出して、びっちりと兵士がいればなあ。現状でもいいけど、そうしたらばもう言うことないのになあ」というぼやきです。
十年前と違って、現在のCGは実写と見分けがつきません。
OPのラストで大勢、CGの騎馬武者が疾走しているではありませんか。あの技術を本編で生かしてもらえないでしょうか。
参考までに『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン6のVFXメイキング動画をあげておきます。
2010年代の歴史ドラマにおける「ワラワラ感」はこれがおそらく最高水準です。これに近づく日が来ることを祈ります!!
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絵:霜月けい
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真田丸感想