『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』/amazonより引用

真田丸感想あらすじ

『真田丸』感想レビュー第47回「反撃」 男も女も生きるために策と嘘を弄する――からこそ魅力ある

こんばんは。あの手この手を使うといえば本作の徳川家康ですが、屋敷Pもなかなかのものです。

◆「真田丸」最終回は大河異例の無題!屋敷CP「皆さんが副題を付けて」(→link

私もぼんやりとこの二文字かと思うところはありますが、最終回を見たら気が変わるかもしれません。果たしてどうなることでしょうか。

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『真田丸 完全版ブルーレイ全4巻セット』(→amazon

 


砲弾はもう尽きている! されど茶々の恐怖は拭いきれず

さて今週の内容へ。
大坂城天守を襲った砲弾。目の前で侍女が圧死した茶々は気が変わり、幸村や牢人たちの思いを裏切って和睦へと舵を切ります。作劇上、茶々の決断が重要視されてはいますが、実際にはもっと複合的要因が絡んでいました。

このとき心理的に大打撃を受けたのは茶々だけではありません。
結果的に豊臣家を最悪の裏切り方をしてしまった片桐且元は、これよりおよそ半年後急死したとのこと。「病死とも、自ら命を絶ったとも言われる」という言葉は、ナレ死の中でも最も残酷な気がします。史実では夏の陣も参戦していますが、本作での且元はここで退場となります。

真田丸<a href=片桐且元" width="370" height="320" />

幸村は、砲弾はもう尽きているから撃って来ない、和睦の時ではないと主張します。しかし精神的に打撃を受けた茶々は面会すら出来ないと、きりに言われます。
このとき茶々の心配だけして現場にいたきりを心配しない幸村はちょっと酷いと思います。毎度のことではありますが、彼は女の扱いが雑です。それにしてもきりは頼もしくなったものです。

和睦となったら後はどうなるのか。不満を募らせる牢人たち。
いくら上層部が和睦を決めたとしても、この牢人たちの進路が決まらなければどうにもならないわけです。十万にも達するという牢人たちは、頼りになる戦力から巨大な火薬庫へと化しました。牢人たちに近い立場の大野治房も、和睦に反対します。

和睦となれば、あとはどこで妥協するかが問題です。上層部は評定を開きます。
ここで重要なのは今や火薬庫と化した牢人の処遇ですが、大蔵卿局は牢人を軽視し、使い捨てにする気満々。秀頼は牢人に報いたいと考えてはいるようなのですが、大蔵卿局をどうにかしないとそれも難しいでしょう。強硬な大蔵卿局と違い、秀頼は大坂城を出ることも視野に入れ、柔軟な態度を示します。

真田丸<a href=豊臣秀頼" width="370" height="320" />

そこへ茶々に遣わされたきりが来て、幸村を呼び出します。
茶々はやつれた様子で、幸村に砲撃の衝撃を淡々と語ります。茶々は幸村の胸に顔をうずめ、少女のような声音でこうしぼり出すのでした。
「茶々を叱ってください、あれほど和睦をしないと言っておきながら……」

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本作の天真爛漫さと哀しさを持ち合わせた、少女のような茶々を見ていると、本当にこの人が気の毒でなりません。男女が抱き合うようでも艶っぽい雰囲気はあまりなく、茶々は頼りなく幼く見えます。
小谷城炎上の時に、どこか止まってしまった部分があるのでしょう。
幸村は茶々の様子を見て、彼女が城を離れるのもありだときりに漏らします。この城にいる間ずっと彼女はつらかったのだろう、と気遣う幸村。大坂城は茶々にとって、絢爛豪華な牢獄だったのかもしれません。

五人衆はじめ牢人たちは、苛立ち幸村に詰め寄ります。毛利勝永は「お前もしかして茶々様とできてないよな? 牢人を利用して自分だけいい目を見るつもりなら切り捨てるぞ」とまで凄みます。そういう艶っぽい関係ではありませんが、これは誤解されるのもやむを得ないところでしょうか。

 


稲とおこう、お通に囲まれた信之がカッコ悪いよ、悪すぎる……

一方、江戸では信之が小野お通に膝枕され、弟の境遇を案じています。弟が生きるか死ぬかのときに、真剣な口調でありながら女の膝枕とは。やはり兄上の全盛期は第三十五回「犬伏」だったということでしょう。

『真田丸』感想レビュー第35回「犬伏」 兄・信幸が旗を振り、船頭となるとき

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真田丸お通

そこへ、ただならぬBGMとともに、稲とこうが乱入! 信之は「別にいやらしいことしていたんじゃなくて、相談に乗ってもらって癒やされていただけ!」と言います。

「はい、はい」
稲は塩対応。こういう塩対応が修羅場では一番怖いんですよね。
こうは「旦那様の癒やし係は私だったのに!」とお通につかみかかり、稲にたしなめられます。
お通はにっこり微笑み「お帰りください、次のお客様がいますので」と爆弾発言! この展開には何かデジャヴがあります。昌幸が偽吉野太夫に騙されていて、見抜いた出浦昌相が偽吉野太夫を視察する回です(第三十回)。しょーもないハニートラップ、しかも京女に弱いのは父子譲りか! 京の才媛・お通がクラブの女みたいな扱いでいいのか、と突っ込みつつ、なんとも身につまされると言いますか、脂汗が出そうな展開です。

真田丸稲<a href=小松姫" width="370" height="320" />

真田丸おこう

信之はなんとかその場を誤魔化し出て行こうとしますが、お通のプロとしての顔を見て隠しきれぬ動揺を浮かべます。これはキャバ嬢の営業LINEトークに騙されていた男の顔だ。
さらにお通は「支払いは家来の方がしていました。今月まだ支払われていませんけど」と言いだし、稲がレシートを受け取ります。信之はあわててレシートをひったくり、言うのです。
「膝枕オプション二百文はぼったくり価格ではないか!」
ああ、どこまで格好悪いんだ、信之……知らぬ間にチャージされるオプションサービスには気をつけよう。彼と我々はそんな教訓を得ることができました。

真田丸<a href=真田信之" width="370" height="320" />

 


信玄に忠義を捧げた昌幸 幸村はその意志を継いでいる!

場面は大坂城に戻ります。
城内菜園を作っていた堀田作兵衛は、勝永や後藤又兵衛から「幸村は信じられるのか」と尋問されます。作兵衛は「本人はよく知らないが、昌幸様ほど義にあつい方はおられなかった」と返します。
ここで視聴者も牢人たちも総突っ込みを入れたと思いますが、作兵衛がフォローします。
生涯武田信玄に忠義を捧げ、武田の旧領回復を願い、その恩に報いるためならば何でもした、と。幸村も太閤殿下の恩に報いるためなら何でもする御方だと啖呵を切り、作兵衛は畑仕事に戻ります。

真田丸作兵衛

ただ、ここで考えるべきことがあります。
昌幸の忠義をもってしても武田旧領回復は叶わなかったということを。もはや事態は、一指揮官の忠義や人間性によってなんとかなるほど甘いものではありません。

大坂方から和睦条件を受け取った家康に、秀忠は和睦することなどないと詰め寄ります。正信は「和睦と見せかけて敵を無力化し、それから総攻めをするんです」と家康の腹づもりを明かします。

徳川方から突きつけられた到底飲むことの出来ない和睦修正条件に、豊臣方は困惑します。
「こうなったら使者同士で話し合わせるべきだ」と織田有楽斎が言いだしますが、幸村はここで条件をつけます。相手方にある最強のカード・本多正信を使えなくするために、敢えて女同士で話し合わせようとするのでした。

真田丸<a href=織田有楽斎" width="370" height="320" />

大蔵卿局がここで張り切ります。舌打ちしてお前は引っ込んでいろと思う視聴者も多いことでしょうが、これも彼女なりの茶々・秀頼母子を守りたいという気持ち、彼らのために活躍したいというやる気のあらわれでしょう。まあ、無能な働き者が一番厄介というのは、この人にも当てはまる言葉ではありますが。

これに対し幸村は、茶々の妹である初(常高院)を強く推薦します。

 

家康が出てこずとも徳川方には女狐がおりまして

初の亡夫は徳川方の大名・京極高次でした。交渉に立つ人物としてはうってつけかもしれません。
しかし彼女にとっては辛いことでしょう。なんせ豊臣秀吉の側室・茶々は実姉であり、徳川秀忠の正室・江は実妹なのですから。
実際、初は不安がり、幸村と茶々はその背中を押します。
ここでの誤算は、初が心許ないからと大蔵卿局をつけて欲しいと言ったことでしょうか。初にとっても大蔵卿は乳母ですから、頼りになるのでしょう。

真田丸初

徳川方の相手が阿茶局だということで、彼女を知るきりがどのような人物かと幸村に聞かれます。きりは顔をしかめ、本多正信が古狐ならば阿茶局は女狐、見た目は雌狸だと評価。幸村はきりも和平交渉の場に同行させることにします。
女優さんの顔を狸に譬える台詞を書く三谷さんはなかなか凄いと思います。

しかし、そんなことよりここで突っ込みたいのは、幸村が交渉相手を女にすると決める前に、きりに探りを入れなかったかということです。そうしていれば、きりは「だめよだめ、古狐を避けたところで相手には女狐がいるんだから」と忠告したでしょうに。どのみち交渉できる人材がいないという次点で、大坂方は詰んでいた気もしますが……。

ここでコーエーマップが出現。まさかきりまでこの図面に登場するとは思いませんでした。
和睦の場で、阿茶局は「戦なんて男の都合で始まることばっかり、それに女の手で始末をつけるのは愉快なことですね」と言います。なかなか巧みな滑り出しです。おおっと、このままだと阿茶局のペースになってしまいますぞ。

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阿茶局は、茶々を人質にしない、秀頼の領地はそのままで危害を加えない、大坂城もそのままでよい、大坂を離れるならばどこの国でも希望をかなえる、牢人は罪を問わない、といいことづくめの条件を切りだします。さらには「そちらが戦に勝ちましたし」とおだてます。ここで阿茶局は「あとはおいおい」と追加オプションの存在をにおわせます。
ここできりが「脚がつりました!」と叫び渾身の演技で、初に合図を出します。
そもそもこんなに聡明で機転が利くきりを、たかが侍女にとどめておくのは大失敗でした。なんのかんので肩書きをつけて、交渉の場で口を挟める旅場にすればよかったのではないかと思います。阿茶局と直接やりとりできなくとも、初に助言するくらいできるポジションに、きりをつけておけば!

初は牢人のために所領の加増がなければ和睦できないと言い出します。
しかし阿茶局は巧みに大蔵卿の牢人を軽んじる立場に同調するふりをして、相手をうまく乗せます。さらには「軍事施設があるから牢人が戦おうとするんです。真田丸は取り壊し、堀も埋めましょう。そうなれば牢人もあきらめて退去。大御所様も一安心、よいことづくめではありませんか。そういたしましょ」と話をまとめようとします。まさに悪魔のオプション!

ここで再度きりが脚をつったふりをして初に合図します。初は「このことはいったん城に持ち帰りたい」と言いますが、阿茶局と大蔵卿局は強引に和睦を決めてしまいました。

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