こんばんは。武者震之助です。
今週はこんなニュースから。
◆長州力「西郷どん」で大河デビュー!必殺技“リキラリアット”披露(→link)
読みながら、目から光が消えていく感覚がありました。
いや、いいんですよ。
記事中にあるように、
プロレスラーでは過去に高田延彦(56)と高山善廣(51)が「功名が辻」(2006年)、真壁刀義(45)が「おんな城主 直虎」(17年)に出演した。
プロレスやお笑い芸人枠は、大河の伝統です。
ただ、中身がなさすぎて、こういう異分野からおもしろキャストをしていくやり口が『花燃ゆ』そっくりだなあ、って思えてきただけで。
他の記事も読んでみたところ、どうも様子がおかしいのです。
◆長州力「西郷どん」出演決定 ラリアット撮影秘話を明かす(→link)
長州さん、ほんとお気の毒という感じで……。
殺陣の練習をしている時に『じゃ、次はラリアットいってみましょう』と、いきなり殺陣師から声がかかりました。事前に知らされていなかったので、長州はかなり戸惑っていました。頼まれたことは比較的、何でもやる長州ですが、シリアスなドラマということもあり、『ここでやっていいのか』と思ったらしく、マネジャーの私に『おかしくないか? おかしいでしょ?』と何度も相談。周りの役者さんたちからも、笑いが漏れていました。
あは、は、は、は……あの「禁門の変」の見せ場がラリアットだそうで。
まさかドラマ盛り上げの定番時間、8時38分から40分の間にやりませんよね?
もう、こんなん木嶋と久坂あたりの亡霊に祟られたらええねん。チェストいけー、平成の駄作大河薩長同盟!
早く本編に進めよ、って?
まぁまぁ、もう一本、見てみたいニュースがあります。人斬り半次郎こと中村半次郎の俳優さんについて。
◆大野拓朗「西郷どん」に中村半次郎役で出演…「花燃ゆ」以来2度目の大河ドラマ(→link)
演じるのは大野拓朗さんです。
誰か?
と申しますと、『わろてんか』でキース役をやっていた方。
それがもう、どうにも泣けてくるNHKドラマ歴なのです……(´・ω・`)
【大河】
『花燃ゆ』
『西郷どん』
【朝ドラ】
『とと姉ちゃん』
『わろてんか』
なんなんでしょう、このラインナップ。
もちろん大野拓朗さんに悪気なんてないでしょうし、ご本人もインタビューの中で「NHK専属俳優です(笑)」なんておっしゃってましたけど、いや、シャレになっておらず、もはや誰かに呪術でもかけられてるかのようなレベルです……。
では、本題の西郷どんスペシャルを見て参りましょう。
【TOP画像】
『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』(→amazon)
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革命という歴史観、いまどきどうなのさ
今回は第二弾です。
結論から申しますと、第一弾よりもあかんやつや……。
完全にバラエティだし、世界観がクラッシュする内容ですよ。
いや、壊れるべき世界観なんてそもそもないか。と思いつつ、見ておりましたが、チラッと本編映像出てくるだけで、もうヤンキー漫画臭さが漂っているじゃないの……。
それより「革命」の連呼、いい加減やめませんか?
今どき、明治維新が「革命」というカビ臭い歴史観ってお話にならない。
2013年当時、最先端の学説を取り入れた『八重の桜』の五年後に、数十年くらい前の司馬遼太郎を劣化コピーして、独自解釈で腐敗させたような歴史観です。
早いものでドラマも折り返し地点を迎えており、ここから本作が巻き返す可能性はゼロです。
私が考えるべきことは、この駄作をどう反面教師として活かすか。それしかない。
死体だって、肥やしにはできる。本作は最早そういう段階です。
それにしてもこのスペシャル。「幕末が大好き!」っていうタレントさんたちが出てきていますけど、ええんか?
幕末史好きで本作に納得いっとるんですか? マジすか?
時代考証の担当者さん登場の真意は?
あとこれ、あんまり言いたくないんですけど、時代考証の担当者さんが出てくるとは……ご本人はドコまで内容に関わっているんですかね。
彼のトーク自体は、問題なく面白い。
さすがテレビ番組にも慣れていて、歴史学者さんの中では、とびきりお話も上手ですよね。
しかし……。
ずーっと気になっていたんですけど、メインの考証担当者、幕末の専門家じゃないですよね。
一応、薩摩藩に詳しい方もついてはいます。
『花燃ゆ』のときは、露骨に幕末長州研究者が逃げ出したようで、悲惨でしたが。
ともかく時代考証さんが、いくら古文書を読んでいようと、このドラマのこれまでの放送にゴーサインを出しており、かつスペシャル版にまで顔を出すという、その姿勢が私にはわからないんですね。
なんというか、ドラマとは全然関係なく、単に好きな歴史の話をしに来た――そんな雰囲気でした。
ちなみに『八重の桜』は、会津の幕末史エキスパート、しかも会津の歴史にかなり厳しい批判も寄せている、誠実な担当者がついていました。
『真田丸』の交渉担当者トリオは、もう最強クラスでした。
あのさー。
考証担当者をみれば、事前にドラマの質がわかっちゃうんじゃないかな! 主演や脚本家より大事じゃないかな!
なぜ龍馬までウナギなのさ
さて、他の感想ですが……番組では冒頭から【幕末の人物について街頭アンケート】が行われておりました。
もう冷え切った私の顔は、こんな感じになってますわ↓
※チベットスナギツネという狐です
前回のスペシャルでは視聴率が一気に1ケタ台という悲惨な目に遭いました。世界のケン・ワタナベインタビューという本音トークも放送されたというのに、その数字です。
それが今回は、バカバカしいアンケートに充てられるというのですから、私と同じくチベットスナギツネ顔になっていた方も多いのでは?
はっはっは、NHKさん、有能なスタッフを朝ドラに全部取られた?
もう、この時間を『半分、青い。』の増枠にあてて欲しいぐらいっす。
更に番組内では、
【坂本龍馬がうなぎ】
とか言い出してしまいました。
なんだなんだ?
やたらとウナギ推しがすごい。絶滅危惧種推しドラマ?
『花燃ゆ』文ちゃんのオニギリ並にウナギを推してきますよね。
それが急に坂本龍馬だなんて……ハイハイ、うなぎがぬるぬるしているからでしょ。もういい加減にしてよ。
なんだか無理に納得雰囲気を出そうとして、中身まったくゼロの話を繰り広げないで欲しい。
もう一度言います。
坂本龍馬のうなぎ喩えは正しい?
タレントのテキトーな居酒屋トークが辛い
龍馬に関しては、長州藩が薩摩藩の船を撃って沈め、そのせいで海軍関連が停滞した薩摩藩が招聘したとか、そういう話はやるんですかね?
あとピストルについてドヤ顔で語っていて、これまた考証的に正しいの?という疑問がありまして。
当時のピストルは万能ではありません。
例えば薩摩藩士はピストル装備した敵を自顕流で倒しまくっています。
来日外国人ですら「ピストルでは刀の攻撃を防げない!」とお手上げでした(広い戦場ではなく町中や建物内での話です)。
にもかかわらず、いかにもピストルが最新の最強兵器的に取り扱われている印象でした。
龍馬は要するに、うなぎとか謎のゆるふわワードを散りばめながら、なんとなく薩長を結び付けちゃんうだな、ってことなんですよね。
そして、また別の場面でもうなぎ採りやってた。
ナゼそこまで推す。もうウンザリ……。
チェスト関ヶ原。チェストしたい、このスペシャル番組……。
スタジオのタレントが、飲み屋トークばりに適当なことを語り散らすのも痛いです。
専門家同士で語る番組と比較すると、濃度が十分の一ぐらいですかね。
これだけペラペラしゃべっておいて、中身が何もないってすごい。
勝登用のキッカケは取り上げられる?
次は勝海舟。
交渉の達人だそうです。
これまた中身のうっす~~~い話が始りますなぁ。
ていうかですね、勝海舟が引き立てられたキッカケを作った阿部正弘を出さないとかどんだけポンコツ?
まぁ阿部正弘さん、本編では顔のいい空気、いつのまにか死亡退場でしたのでしゃあないか。思い出したら腹たってきました。
あと江戸城無血開城も……シャンシャンのつまらない美談にしそうですよね。
そういうのが見えてきて辛い。
「敵」が大好物というのがキーワードだそうです。
これ、アンチ勝海舟の福澤諭吉が聞いたら、怒髪衝天しそうですね。
勝海舟は、敵だっていっぱいいました。
それに勝の意見書を出すなら、出された背景も描かなきゃダメでしょ!
あと、気づいちゃった。
まーーーーーた中岡慎太郎が空気です。
坂本龍馬だけでなくて彼も薩長同盟では頑張っているんですけどね。ま・た・か。
西郷どんが時にしたたかに、非情にもなるってのも白々しいのです。
今までだって十分非情だったじゃないですか。
寺田屋で仲間がいっぱい死んだあと、愛加那とイチャイチャしていた場面。あまりの冷血ぶりにドン引きしていました。
品位が感じられない公家岩倉
次は岩倉具視。
同じコメディアン枠でも『八重の桜』での小堺一機さんはよかった。
しかし、鶴瓶さんって適役なのでしょうか?
トーク番組の優しげな鶴瓶さんと違い、俳優のときって、かなり【黒い雰囲気】を出すじゃないですか。
それが吉と出るか凶と出るか。不安ばかりが先行します。
泉ピン子さんの出演時に感じたような違和感と申しましょうかね。
本作の貴人って、全然貴く見えません。
品位がない。
この岩倉も、公家らしい品位がミリ単位ですら感じられない。
【武器は知恵のみ】と語られても、残念ながら、その知性が感じられないんですね。
それにしても第一回スペシャルでもそうでしたけど、役者の熱量は褒められても、誰も脚本を褒めないという。
わかるんだろうな、そういうの。
一昨年と昨年は、まず脚本を役者さんが褒めるところからスタートすることがデフォルトでしたが。
桂は「逃げる」だけの人物なの?
そして桂小五郎について。
玉山鉄二さんなんですよね……『八重の桜』で演じられた山川浩が非常に良かっただけに、西郷どんには出てこないで欲しかったというのが正直なところ。イメージ的にもあんまりあっていません。
『八重の桜』の及川光博さんはよかったんですけどねえ。
これ、ツイッターでも指摘されていましたけど。
薩摩についても、長州についても、一番マトモに描かれているのが、会津視点の『八重の桜』というのがなんともなぁ。
私は2015年と今年、確実に当たると思っていた予想があるんですよ。
『八重の桜』が再評価される――。
同作が放映中は、「日曜夜八時にはヘビーすぎる」とか「負ける連中の話なんていやだ」とか「薩長を悪役にしやがって」とか、とにかく色々と言われていましたけど、なんなんですかね、評価爆上げじゃないですか。
会津から見た薩長が嫌なら、今度はそちらから語ってくださいとバトンを投げられたのに、真正面から描くのを放り投げ、挙句の果てにオニギリやウナギに逃げ込んでいるのですから目も当てられません。
語れないほど恥ずかしい、都合の悪い歴史だと? ひどい話ですなあ。
あと、桂の金言、「逃げるは恥だが役に立つ」とか。
逃げるだけの話で引っ張られて本当にかわいそうです。逃げる話をネタにされそうで、不快感MAXです。
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著:武者震之助
絵:小久ヒロ
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『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』(→amazon)
【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等