『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第41回「新しき国へ」


使節団を送り出すシーンって、必要ですか?

このあと、明治天皇が岩倉使節団派遣の勅を出す場面です。
露骨な時間稼ぎにしか見えない。

こんなことする暇あれば、明治政府の事情をもっとちゃんと描いてくださいってば。

戊辰戦争の責任を感じて引きこもるはずだったのに、大久保利通の誘いでホイホイ出てきて。
その辺の心理的葛藤や変化がろくに描かれていないから、ただの適当な奴に見えてしまいます。

ここで西郷どんと大久保が財政についてなにかぶつくさ言っておりますけど、このドラマに期待しちゃダメですね。
11/6から再放送の『あさが来た』、五代友厚様で勉強しましょう。

再放送にあわせて、毎日のレビューを始めました(作品を見直して以前の週マトメを修正しております)。以下のサイトにありますのでよろしければご覧ください。

五代様の史伝については、以下の記事にまとまっておりますね。

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本編へ。

岩倉使節団がいなくなったあと、留守を守る政府が描かれます。
井上馨はともかく、西郷どんが大蔵省を預かるという時点で明治政府がもうダメだという気持ちが湧いてきて、つらいものがあります。

 


政府はどんだけ情弱なんだ!?

場面は長屋に移ります。
住人たちが新政府への不満を語り合っていて、偶然居合わせた西郷どんもそれを知ることになります。

なんで庶民の会話で知るんだよ……。
不満を察知する手段が立ち聞きって、政府はどんだけ情弱なんだよ!

ちなみに、このドラマだと、西郷どんは民から好かれているようですけれども。
史実では西郷どんのせいで、薩摩藩士はガチで江戸っ子たちから憎まれておりました。

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幕末に江戸で暴れまわった「薩摩御用盗」。

その記憶も新しいところなのに、それを主導した西郷隆盛が好かれるとか、ないわー。

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本作のおかげで、江戸っ子はますます薩摩隼人が嫌いにならないか、ちと不安です。

新門辰五郎の娘を、薩摩出身のクズ女に変更した本作のやらかしは、忘れられないでしょうね。
本作のスタッフにとっては、どうでも良かったのかもしれませんけど、新門辰五郎の人気ってかなりのものなんですよ。

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突然の山城屋事件も意味不明

このあと、なぜだか桐野がキレております。
山県有朋相手に刀を振り回して、周囲に止められる、と。

だから、こういうところで簡単に抜刀するなってば!

説明なかったので意味不明だったと思いますが、これは山城屋事件ですね。

こういう重大事件を、サラッとやらないでいただきたい。
説明不足にも程がありますよ!
西郷菊次郎の、しょーもない留学相談室やってる暇があれば、もっと背景を描きこんで欲しいです。

要は、長州閥と薩摩閥の対立もあって、他にもっと描きようがあるはずなんです。
それがなんでヤンキー漫画になってしまったのか。

一体このドラマ、なんなんですか?

やらかしているといえば、薩摩だってクリーンじゃないんですよね。
金がらみよりも、暴力沙汰系が多いという違いはありますけど、明治天皇が見ている御前まなのに、ビール瓶で人の頭部をブン殴ったとか。

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山県有朋役の方については、何も語りたくありません。

彼が悪いわけじゃない。
あの『真田丸』の思い出を踏んづけるようなことはせんでくれ……。
※編集部注:直江兼続役を演じられた村上新悟さん

 

県令をやりたいと言い出した久光に対し……

有村俊斎が、ここで島津久光の使いとして来ました。

久光は、廃藩置県に対して批判的です。
もちろん史実ではちゃんとした理由があるのに、本作ではそこをやりません。

久光が県令をやりたいと言い出し、それを西郷どんが却下するわけです。
まあ、これは確かに正論のようではあるんですけど、明治初期の県令って薩長出身者が多いわ、遺恨を残している部分もありましてね。

『花燃ゆ』に出てきた群馬県令・楫取素彦とか。
来年の『いだてん』にも関係している、福島の三島通庸とか。

◆長州が主役のNHK大河『花燃ゆ』に群馬県民激怒 その理由(→link

八重の桜』には、「長州藩をテロリストのように描いた!」というよくわからない抗議があったそうですが、『花燃ゆ』の方がよほどテロリストぽく描かれていたことを、このニュース記事で思い出しましたよ。

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そういう史実をふまえますと、西郷どんがキリッとカッコつけている様子も、虚しくなって来ました。

 


薩摩への明治天皇巡幸

このあと、どうでもエエ西郷どんホームドラマ。
菊次郎をナレーションにした弊害が大きいと言わざるを得ません。まあ、それ以前からホームドラマで時間稼ぎしていましたけどね。

子役と犬の組み合わせ、ネタ切れ感があって最高です。

このあと、薩摩への明治天皇巡幸シーンです。

ここでも、洋装の天皇を見て久光に顔芸をさせる最低最悪の演出。
ったく、最後までしょーもない、こういうのは、いい加減やめませんか?

それにこのまだ若い天皇を使って、久光をやり込める西郷どん、天皇まで利用する浅ましいクズに見えてしまってげんなりしてしまいます。

そういえば……。
幕末の諸事情すっ飛ばして、明治天皇を利用しているとみなされかねない「倒幕の密勅」なんかかなりロンダリングしてきたのに、いいんですかこれ?

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色々とアッサリ認めるんかーい!

このあと、久光と西郷どんとの会話場面です。
久光をゲスでバカに描きたい意図はわかるんですけど、時折久光の方が正論に思えるのがなんとも言えません。

西郷どんは、またボソボソした声で、新しい国作りのために久光を騙して来たと認めます。
認めるんかーい!

「でも、なんか国作り間違って来た気がするぅ。死んだ人に顔向けできなぁい」
と続けるわけですが、もうザマアミロという気持ちしか湧いて来ません。

「戦の鬼」とかっこつけておいて、このオチかよ……orz

ここで「やりぬけ!」と励ます久光、エエ人やないの。
セリフの中身はスカスカですが、役者の熱演は伝わってきます。

それにしても、こんな軽いノリで藩主に背いてきて後悔したとか、今さら言い出す西郷どん。バカなの?
どうして明治維新150周年という節目の歳に、維新三傑の一角を最低の無能として描くのか。まったく理解できません。

このあと、久光が明治天皇の洋服に文句つけます。これが面白いと思っているんですかね。これみよがしにエエ場面用BGMが流れていますけど。

 


本当にあった明治留学エエ話

西郷どん、帰宅。要らん場面にイライラします。
菊次郎が「異国で学びたい」と決意しました。

ちなみにここで明治初期の留学について、ちょっとエエ話をしますね。

薩長中心に、明治政府成立以降、大勢の留学生が海を越えました。
しかし、勉強をする気もない奴も大量におりまして、日本人同士でつるんで、遊び呆ける者が続出。政府はこれではいかんと、留学を打ち切らせます。

しかも、まとめて打ち切りを決定。留学生の中身をろくに吟味しなかったんですね。

こうして打ち切りが決まった中で、極めて真面目、優秀は青年がおりました。
彼が母国から学費を打ち切られたと悲痛な思いで、学友に相談します。

すると、学友の母親が学費を出すと言い出したのです。

「あなたがこの国で学び、帰国後母国ために尽くすのであれば、学費を出しましょう」

こうしてこの留学生は、無事にアメリカで学び続け、イェール大学で物理学、帰国後は東京帝国大学総長をつとめるほどの人物になりました。
彼は多くの教育機関で活躍を遂げ、明治日本の知性を引っ張ったのです。

この留学生の名は、山川健次郎。
彼は会津藩出身でした。

山川健次郎/Wikipediaより引用

だからといって、
明治政府が会津藩まで留学させるなんてエライ!
差別がなかったんだね!
と早合点しないでくださいね。

山川が留学できたのは、会津藩士・秋月悌次郎と、長州藩士・奥平謙輔の、個人的な交流が根底にある、あくまで例外的な存在です。
山川健次郎の活躍は、あの名作『八重の桜』でご確認ください!

あるいは以下の記事を参考にしてみてね。

秋月悌次郎
幕末で日本一の秀才だった秋月悌次郎~会津の頭脳をつなぐ老賢者とは

続きを見る

 

総評

何がしたいのか、全く理解できない回でした。

本当は、本作制作者も、納得できないことがあるのではないでしょうか。
今回は、今までの言い訳めいた積み重ねを、バーン!とひっくり返す展開ばかりです。

列挙して参りましょう。

・長州藩をクリーンアップするんじゃなかった? 山県有朋を引き合いに出していきなりゲスになってまっせ(史実準拠だけど)

・土肥を悪くしたいのか、それともエエことを言っているようにしたいのか、よくわからなくなってきました

・土肥の不満を描いたあと、薩摩の西郷どんらが仲間意識のナアナアでポジションを独占したり、国費留学をやっているように見えて、ゲス感が半端ない

・アレだけぶつくさ反省の素振りを見せてきた西郷どん、あっさり政府に出仕しているし、克服したのかと思ったら、久光の前でまた同じ悩みを繰り返すし。こういう描写が西郷どんの心身不調表現たとしたら、それはないから!

・天皇の利用描写を幕末関連でロンダリングしてきたのに、西郷どんが私的利用しているみたいな描き方なんですけど

・結局久光をどうしたいん? ゲスにしたいの? エエ人にしたいの?

とまぁ、本当にワケがわからないのです。
今日は、ともかく見ていることが辛くてたまりませんでした。

その原因を探ってみると……同日午前中に『八重の桜』総集編が放送されていて、それを鑑賞した後だったからです。

八重の桜
会津まつり&綾瀬はるかさんと言えば『八重の桜』いま見ても面白い魅力を解説!

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時代考証の的確さやシナリオの良さは言うまでもなく、総集編で一瞬だけ映る場面ひとつとっても、VFX処理がきっちりしていて、高級感があるわけです。

殺陣も意欲的ですし、演出も抜群。

どうして5年前、こんな意欲的な映像を作ることのできた大河チームが、ここまで堕落しきったのか?
意味がわかりません。

『八重の桜』で会津が描かれたから、今度は長州と薩摩とばかりに『花燃ゆ』と『西郷どん』。
どうして、『八重の桜』のクオリティを上回るようにしようと思わなかったのでしょうか?

幕府と会津藩をデタラメ描写で悪くする一方で、おにぎりだの磯田屋キャバクラ遊びだのやることにした。
そんなことをして『八重の桜』に勝てると思ったんですか?

『八重の桜』総集編を見ていると、本作ではゲンナリさせられた西郷隆盛も、木戸孝允も、全員素晴らしく志のある人物に見えました。
薩摩も長州も、こちらのほうが、はるかに動向がわかる上に、正確で魅力的です。

『八重の桜』の、吉川晃司さんの西郷隆盛を見ていただきたい。
ものすごく魅力的なんですよ!
ハァ〜、西郷隆盛ってこんなにステキな人物だったんですね!!

そんでもって、来週以降の注目は、大久保利通の対立でしょう。

征韓論にどれだけスポットが当たるかわかりませんが、おそらくドラマじゃ意味不明!となりそうですので、よろしければ以下の参考記事をご覧ください。

征韓論と明治六年の政変
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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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