こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【青天を衝け第9回感想あらすじ】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
演出が今週も変、そして尊王攘夷でウェーイ
本作はBGMがうるさい。
曲そのものが悪いというよりも、使い方がノイズにしかなっていません。これじゃ作曲した方が気の毒。
演出がお粗末すぎるためでしょう。
【尊王攘夷】に走る若者たちが、バイト先でアイスケースに入って炎上していたバカッターのようです。まぁ、こちらのイキリは殺人を伴うのでレベルは違いますが。
江戸では、ええ若者がヘイトスピーチ&ヘイトクライム宣言する場面をさわやかにされてもどうすればいいのか。幕末の青春ですね。
そして今週も殺陣がお粗末でした。
「てんちゅうぅぅう〜!」
こんなしょぼくれた天誅発音は初体験だからかえって斬新。
桜田門外の変も古かった。今なら『花燃ゆ』をもっと優しい気持ちで見られる気がします。
何度繰り返しても『八重の桜』に遠く及ばない幕末事件の数々。今年、あと何回こう書くことになるのか。
「ご老公……水戸を」
自分のたちのことしか考えず、間違った愛国心アピールをして死んでいく水戸藩士も、ご自身に陶酔されているようで不気味でした。
しかも、そういうテロを喜んで聞く主人公一行。人間のクズっぷりが生々しくて洒落になってません。
過去に対して無反省ではありませんか。
中国は文化大革命を反省している。SFベストセラー『三体』もその価値観が根底にある。
でも日本は「尊王攘夷ブーム!」ですからね。なぜこんなことになってしまうのか。いろいろと手遅れのような気がして絶望感ばかりが湧き上がってしまう。
わざとらしい斉昭の吐血と「ありがとう」コールでさらにドン底。どういうセンスのドラマなのでしょう。
少女漫画の世界を求めて
このドラマは少女漫画を求めているらしい。まあ、こういうニュースが出ますからね。
◆【青天を衝け】あれ?いつの間に!?喜作とよしのスピード婚にネット騒然「切り替え早い」「展開はええよ」(→link)
公式サイトには、千代役・橋本愛さんのインタビューが掲載されました。
抜粋引用します。
「取り合いなんて、少女漫画のヒロインみたい」とむず痒(がゆ)い気持ちになりました(笑)。
私は取り合いされるヒロインのような役は初めてですが、このあとも少女漫画のような世の女子たちが悶絶(もんぜつ)するであろうシーンが出てきます。
そのシーンの千代もすごくかわいくて、自分で演じながら心の中で悶絶しちゃいました。
楽しみにしていてほしいです。
そういう古臭い少女漫画アピールよりも、演技をちゃんとしていただきたい。
「お前が欲しい!」と言われたあと、千代が棒立ちに見えて驚きました。
恥ずかしがるとか、驚くことすらない。ぬぼーっと立っているように見える。
もちろん彼女のせいではなく、そもそもの脚本、演出に始まり、演技指導の責任もあるとは思いますが、それにしたってあんまりです。
日曜20時から始まるNHKのドラマを、私は「大河ドラマ」だとして見ています。
少女漫画は求めていません。
なんなんでしょう? 渋めの抹茶を味わいたいと思ったら、タピオカミルクティーを無理矢理飲まされるような不快感って感じでしょうか。
“感じのいいコンビニ店員”へのニーズ
ある方が本作の感想としてこんな風に言っていました。
「栄一となんだっけ? 親戚のやつ。千代ちゃんを取り合っていた男。あれの見分けつかないんだよ」
芸能情報に疎いんですね、ハハッ……と笑い飛ばすことはできないでしょう。
私も同様なことを感じます。あの二人の顔の作りは、そこまで似ていない。それなのにそう感じさせるとすれば?
渋沢栄一の物語に、慣れ親しんでいないのが大きいのでしょう。
明智光秀と織田信長なら、視聴者も最初からそういう心持ちがあるので、明らかに違うとわかる。近藤勇と土方歳三だってそうでしょう。
しかし、喜作がどんな功績があって、どんな人物なのか? どんな性格なのか?
ほとんどの視聴者にはそんな土台知識はないでしょう。
要するに、キャラクターの描き分けができていないんだと思うのです。
キャラがたってないとでも言いましょうか。どの若者も、バイト探しアプリの広告に出てくる「コンビニ店員としていたら感じが良さそうな若者像」でしかない。
『麒麟がくる』の光秀はさておき、信長がコンビニ店員だったらいろいろ面倒だと思います。
染谷将太さんが演じる『なつぞら』の神地は、昭和の問題社員でした。まるで信長がアニメスタッフになった結果、会社相手に反乱を起こすようなプロットでぶっ飛んでいたものです。
そういう不安感を与える若者像を画面から排除し、さわやか路線にした結果、誰も彼も見分けがつかないドツボに陥った。
今後も次々にイケメンが追加されるのでしょうが、きっと量産型になってしまうのでしょう。
まぁ、これはヒロインも同じですね。
きれいな絵のついたガチャが売り――そんなアプリじみた安っぽさが持ち味になっています。
「世代循環問題」は大河にもある
このドラマは何かがおかしい。それはなぜなのか?
この記事を読んでいてピンと来ました。
◆「シニア世代」が「若者世代」を搾取する…研究業界に見る日本社会の危機(→link)
一言でいえばアップデートに取り残された人物たちの老害であり、本記事では「世代循環」という言葉で表現されています。
もちろん歳を重ねても頭脳明晰な方はいますし、一方で若くして凝り固まった方もいます。
そういった例外を排除して、全体的に蔓延している動き、雰囲気とでも言いましょうか。
要はこういうことです。
森氏(元首相の森喜朗)や吉田氏(DHCの吉田会長)の発言そのものも驚くべきものであるが、私が最も危機感を覚えるのは、このような「暴走」に自分自身で気づくことすらできないレベルで時代遅れの価値観にとらわれた人たちが、政治にしても企業にしてもリーダーという立場に居座り続けているという「世代循環」の問題だ。
2020年は脚本家の年代だけを見て「また無難な年寄り向けに戻るのかw」とすら言われていたことを私は記憶しております。
2021年『青天を衝け』をはじめ2015年『花燃ゆ』、2018年『西郷どん』、2019年『いだてん』の場合、むしろ視聴者層のターゲット年齢を下げているように思えるので、そこがわかりにくい。
今年の大河は、2020年脚本家世代の下、子の世代向けに若返りをしている。
何度か指摘しましたが、40代女性が分厚いターゲット層です。それはレビューからも観測できます。
◆ バイプレイヤーの泉(68) 『青天を衝け』草なぎ剛、流麗な演技はまるで“舞い”(→link)
多くを語らず、先見の目を光らせて時流を読む。その姿勢、まるで徳川慶喜そのものだ。この役がひどく似合うのも、そのせいなのだろうか。
熱く語られておりますが、私が幕末関連書籍をあたったところの慶喜像からはむしろ遠い。
この点『八重の桜』の小泉孝太郎さんが最善ですが。その謎は解けました。
戦国時代において、慶喜はめちゃくちゃキレ者だったと聞く。
戦国時代の慶喜だったら似ているかもしれませんね……いやいやいや、そういう嫌味が言いたいわけじゃない。
要するに、歴史知識曖昧でSMAPが好きな層なら、コロッと騙せるということでしょう。
この方はSMAPの森さん推しだったとか。つまり、本作のターゲットである40代女性と推察できます。
次にいきましょう。
◆ さすが「日本資本主義の父」、年度末にきっちり告白 NHK大河ドラマ『青天を衝け』(→link)
告白ですか……。
恋愛や結婚前の告白とは、世界共通ではなくむしろ日本の学園もの特有だという話は小耳に挟んでおります。
確かに海外ミステリにはない。日本文化に近い韓国だとあるようですが。
それに幕末の渋沢栄一が告白をするというのも、妙な話ではありませんか。
要するに「告白だ! ひゅ~ひゅ~w」と盛り上がる層って、昭和や平成前半期に青春を送った世代ということです。
◆ 橋本愛が「青天を衝け」ヒロインで見せる色気に男性陣がメロメロに(→link)
↑こちらの記事がその典型と申しましょうか。
非常にテンション高く語られております。
ただ、これはちょっと意外でもある。彼女は同世代より、もっと上の世代に人気がある印象だったからだ。
ちなみにこの筆者は『麒麟がくる』の駒がお気に召さなかったようです。
まぁ、そうかもしれません。ただでさえキャリア女性を鬱陶しく感じる世代ですから、医薬について高等知識と技能を持ち、良妻賢母にならない駒みたいなタイプは見たくないのだと思います。
要するに『鬼滅の刃』に夢中な本物の若者世代を今年は切り捨て、告白やお色気にメロメロする層を狙っている。
今後も突然のセクシーシーンが出てくるかもしれませんね。
※続きは【次のページへ】をclick!