青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第9回 感想あらすじレビュー「栄一と桜田門外の変」

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青天を衝け第9回感想あらすじ
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キャラクターで歴史を見る幼稚さと危険性

こういう特定の年代をターゲットにしていることは、キャストのみならず、歴史の描き方でもわかります。

◆【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第八回「栄一の祝言」栄一や慶喜の姿に見る「思いやりと優しさ」(→link

◆病弱な将軍に強引な大老 横暴2トップの人間性を描く優しさ NHK大河「青天を衝け」の根底にあるもの(→link

◆ 『青天を衝け』“慶喜”草なぎ剛の変化 一橋派処分で見せた“修羅の顔” (1)(→link

三本の記事を挙げさせていただきましたが、代表として一番下の慶喜記事から気になる部分を抜粋させていただきましょう。

ところが、状況は慶喜にとって悪いほうに転がっていく。

家定は死の間際、一橋派を処分しろと直弼に託す。

斉昭は謹慎、慶喜は登城禁止と聞いたときの慶喜の顔はこれまでになく感情的だった。草なぎ剛が好演するジャンルのひとつ、ヤクザものの映画やドラマで見せるぎりぎりとした修羅の顔がちらりと見えた。

そこには「ホッと」も「さみしい」も超越したもっと激しい感情が浮かんでいた。

歴史人物を「こういうキャラクターだから」として捉え、「だから事件が起こる」という描写は危険ではないでしょうか。

慶喜は何を考えているのか理解できず、それこそ渋沢栄一すらわからない、そんなスフィンクス系の人物であったという証言が出てきます。

むしろ修羅の顔だとわかるとすれば、ちょっとキャラ解釈の違いを感じます。

『麒麟がくる』の帝が典型でしたが、権力者って感情が出るのは好ましくないとされます。去年のブチギレる信長は、乱世らしいハズレ値として表現されていたのですが。

◆吉沢亮「青天を衝け」8話。草なぎ剛VS岸谷五朗のピリピリバトルに息を飲む(→link

「慶喜を世継ぎにするのはイヤじゃ! 何としてもイヤじゃ!」

泣き出さんばかりの表情で訴える家定の言葉を受け、かわいく芋菓子を食っていた“茶家ポン”直弼の顔はグッと変わり、家定の願いを叶えるマシーンと化すのだ。

そしてこういう解釈ですね。

井伊直弼が悪党じゃない、安政の大獄で被害にあった薩長史観で赤鬼にされた。それはそう。

そこからの脱却は明治から挑まれてきた課題で、それこそ大河一作目『花の生涯』はまさにそこを捉えていた。

それが令和になって、

「実は弱々しいところもありました!」

とキャラクター性に落としこむのは、歴史観の退化そのもので危なっかしいと感じるのです。

◆ 青天を衝け:同情する声も? “茶歌ポン”井伊直弼 闇落ちで「安政の大獄」始まる 次週「桜田門外の変」(→link

こういう「闇落ち」で歴史的事件が起こるだなんて、冗談もほどほどにしていただきたい。

確かに『麒麟がくる』の本能寺の変は、光秀の心理状態が原因で黒幕説は全否定されていました。

あれはかなり丁寧に心理状態が描かれていたし、黒幕説のような陰謀論否定としてありだと思えます。

けれども本作はこんな根拠でしょう。

「井伊直弼って“ラスボス”みたいなイメージあったけど、当時の史料では意外と気が小さいところもあったとわかったよ! だから闇堕ちしちゃったんだね!」

ニコニコ大百科あたりの項目ならありでしょう。

しかし、大河ドラマでそんな幼稚な話でよいのでしょうか?

心理状態が動機になる描き方そのものは悪くない。それにしたって本作はあまりに幼稚すぎます。一体何がしたいのやら……?

ヒトラーがユダヤ人少女と微笑む写真がある。

そういうネットの拾い物画像を添え「ヒトラーが悪人かどうかわからない!」と提言するようなSNS投稿があります。

バズるし、いい気持ちになるし、拡散する側も新たな歴史を見出したとウキウキワクワクするでしょう。

でも、そんなことが通じる国って歴史観が古いのです。

そもそもヒトラー絡みのそういう写真はナチスのプロパガンダの産物です。

ドイツはそのあたりをきっちり落とし前をつけているからこそ『帰ってきたヒトラー』を世に出せるともいえる。

人間性が歴史をどこまで動かすかなんて、それこそ計測できません。

ましてや意外と弱いだの家族愛があるだの、そんな話は通じません。

警察だって身内が「うちの父は殺人犯じゃない!」と言ったところで、その証言を丸っと信じませんでしょうに。

そういうしょうもないことを受信料でやっているのが今の現状。しかもSNSやニュースが褒める。

毎週毎週、よくぞ斎藤道三のように毒茶を視聴者に勧められるものだと困惑します。

見る側の問題もあるのかもしれない。

本作の作り方って、漫画のコマやライトノベルの一部を画像で貼り付けて「ワイのスタンスはコレw」といきっているツイートみたいな、ライブ感がある。その場だけ盛り上がればよいと。

その親世代は馬耳東風と故事成語を使っていたような局面に、今は「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」のコマを貼り付けると。

 

ネットリテラシー

大河関連のSNSについては今『鎌倉殿の13人』考証担当だった研究者の発言により、大変な状態になっています。

SNSは必要なのでしょうか?

そもそも昔は存在していません。

必須のはずもない。

それなのに重視偏重する兆候が見えてきて、危うさを感じています。

契機となったのは、低視聴率をファンアートでカバーしようとした2012年『平清盛』でしょう。

公式アカウントの発信を止めるべきとまでは言いません。

しかし『青天を衝け』の場合、ネットリテラシーに照合して危うさを感じます。

◆ 吉沢亮主演「青天を衝け」、好調のウラにスタッフによる同時進行ツイート (→link

番組公式Twitter以外でも、関係者であり研究者とわかるアカウントが解説をしています。

視聴者からすれば「やった、トリビアアカウントみつけてラッキー」となるかもしれませんし、ツイートを発信している側も悪意はないでしょう。

しかし、個人アカウントであっても問題発言があれば、どうしたって大河そのものに悪影響が及びます。

現実に問題が起きたわけですし、今後は慎重になってしかるべきではないでしょうか。

ちなみに朝ドラ『おちょやん』も公式SNSがあり、その一方で公式サイトでは考証担当者が実名と経歴をきっちりつけ、図版を使って時代背景を説明しています。

朝ドラは時代ものとして一段下という偏見もあるようですが、2021年前半期についていえば、大河よりはるかに上です。

 

大河ドラマとリテラシーをさらに考える

何やら大河周辺が騒がしい。

◆ツイッターは今や「2ちゃんねる」!気鋭の歴史学者も陥ったエコーチェンバーとは(→link

とはいえ、三谷さんならば大丈夫。むしろ心配なのは別のこと。

◆ 【鎌倉殿の13人】三谷幸喜氏、4・15発表予定のキャストを似顔絵で暗示(→link

情報リテラシーの低さを考えると、『麒麟がくる』の駒はよいキャラクターでした。

「架空の存在」とワンクッション置くだけで信じる人は減る。

その点『青天を衝け』は将来メディアリテラシーの教科書に悪い例として掲載されそうなくらい危険です。

全般的に考証が荒く、誇張や演出も当然もある。その中に史実に基づくちょっとしたトリビアを入れる。

そういうひとさじの史実を、公式アカウントも含めたSNSで拡散。

嘘にはちょっとだけ真実を混ぜるといい――という詐欺でも使われる常套手段ですね。

もちろん大河ドラマですから「誰かを騙してやろう」なんて意図はないにしても、「これは史実だよ」なんて調子で変わったエピソードを時折盛り込むものですから、結果として全体を信用させる雰囲気が醸成されています。

一体何がしたいのか。

かなり前のことです。友人がある大河ドラマを絶賛していて、わざわざ借りて見たことがあります。

ドラマとしては面白い。けれども、嘘くさいと思える描写があまりに多い。

特に主人公周辺と、悪意あるライバルとして出てくる大名周辺がおかしい。悪役とされる側の言動の方が合理的で筋道が通っている。

これは一体どうしたことか?

と気になって調べたら、作り話としか思えない話をベースにしたものでした。江戸期以降、主人公周辺は逸話を創作され、かなり持ち上げられていたのです。

反面、主人公のライバルは改易されたこともあり、悪役イメージが定着していた。

そういう誤りの多い大河が名作扱いで、それを史実ベースで反論すると「フィクションなのに熱くなんなよwww」と嘲笑され、あからさまな嘘が史実として罷り通ってしまう。

こりゃどういうことだ?

そのことに私は悩まされたりもしましたが、ここ数年の大河ファンの動きを見ていると腑に落ちることも増えてきました。

ちなみにその名作大河とは『独眼竜政宗』です。

持ち上げられている主人公は伊達政宗、必要以上に貶められたライバルとは最上義光のこと。

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歴史が好きだからといって、情報リテラシーに優れているわけではない。

そして『独眼竜政宗』時代と違い、今はインターネットがあります。そこを考えてみたい。

人間は問題の認識において、こういう層がある。

信じない

いったんは信じるが、調べて検証し嘘だと判断する

いったんは信じるが、調べて検証するも、判断できない

信じる

自分がどの層になるか。

これはもう自身で考え、決めていくしかありません。

※著者の関連noteはこちらから!(→link

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◆青天を衝け感想あらすじレビュー

青天を衝けキャスト

青天を衝け全視聴率

文:武者震之助note
絵:小久ヒロ

【参考】
青天を衝け/公式サイト

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