青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第23回 感想あらすじレビュー「篤太夫と最後の将軍」

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青天を衝け第23回感想あらすじレビュー
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なぜ本作の“CG”は褒められたのか?

先週のレビューで「本作のVFXはどうなっているのか」と厳しく突っ込みさせていただきました。

案の定、私だけでなく「お粗末すぎるVFXはどうにかならんのか?」というぼやきも見受けますが、一方でそうではない意見も当然あります。

次の記事には「どうしてそう思うのか?」という答えまであるので引用させていただきますね。

◆『青天を衝け』 CGと合成を組み合わせた1867年のパリ再現に絶賛の声「ロケかと思った」(→link

◆ NHK青天を衝け「CG合成」でパリ再現 美麗映像に感嘆の声「本当に現地に行ったような気分」(→link

まず、この記事タイトルに「CG」と使っているところにご注目ください。

もう少し読者年齢層が低いと思われる雑誌は「VFX」とCG混在。

◆<青天を衝け>VFXの勝利? 凱旋門からの眺め、ナポレオン三世の謁見式… “1867年のパリ”再現!(→link

実はここに答えがあり、以下の解説記事が参考になります。

◆VFXとは?(→link

VFXとは、「Visual Effects」の略で、視覚効果という意味を持っています。

実際に現実では目にすることのできない画面効果を実現させるために、特撮を用いる映画やテレビドラマの中で使われる効果がVFXです。

CGとはコンピュータグラフィックスのことで、コンピュータによって制作された映像のことを指します。

映像の場合は、具体的に3DCGアニメーションのことをCGと呼ぶことが多いです。

この区別がついていないと全て「CG」になる。

ちなみに、本気でVFXに自信がある場合、公式ツイッターだのネットニュースでチマチマ発信せず、メイキング動画公開することが定番です。

八重の桜』ではそうした動画がありました。

あの作品は国際エミー賞でもノミネートしましたし、世界規模で見ても基準以上だったということです。

※『ゲーム・オブ・スローンズ』のVFXメイキング

申し訳ありませんが「CG」という言葉遣いの時点で、32bitか64bitくらいで止まったイメージになってしまいます。

CGを作ることは当然として、VFXでどう合成するか。そこがポイントなんですね。

そういうことまで気を配らないと「テレビってやっぱり老人ばかりなんだな」と若者がますます遠ざかる悪循環に陥るのではないかと不安になってきます。

◆「毎日テレビを見るの老人ばかり」キー局が冷や汗をかく"テレビ離れ"の最新データ 衝撃「若者の半分はテレビを見ない」 (→link

こちらの記事では、とっくに現実を見ればわかっていた若者のテレビ離れについて指摘されています。

注目したいのはここです。

国民が支払う受信料を財務基盤とする公共放送のNHKと広告費で成り立つ民放の共存が日本の放送文化を形づくってきたが、その仕組みが根底から崩れて「NHK一強」体制に移りかねない。

NHKは、公共放送として「自主自立」を掲げ「不偏不党の立場を守り、何人からも干渉されない」とうたっているが、かねてから国営放送と見まがうような政権寄りの姿勢を批判されてきた。

政権の意向を汲んだり忖度するようなNHKを「公平公正な報道機関」と呼ぶのは心苦しい。

政府が決めたお札の人物を顕彰する。

海外の基準で言えばむしろ銅像を倒される側の強欲資本家を讃えてしまっている。

最近のニュースはこうなっていますからね。

◆衝突と死者の原因になった南部将軍の銅像、4年経て撤去 米シャーロッツヴィル(→link

ストーンウォール・ジャクソン(リーの右腕)、ウィリアム・クラーク(探検家、軍人。先住民迫害)も撤去。

世界ではこうした動きが起きているのに、日本では不健全なコンテンツが無批判に流されてしまっている。

こんな状況下で、若者が面白がるテレビ番組が作れるのでしょうか。私には焼き畑農業としか思えません。

福沢諭吉は明治初期に喝破しました。メディアは権力の犬になっている、と。そのことを思い出してみても『青天を衝け』はそうそう素直に受け入れられないものであります。

 


「資本主義の父」は否定される時代へ

私のレビューはえらく評判が悪いのでしょう。毎回ひねくれた見方ばかりをすると指摘されるかもしれません。

シャーロック・ホームズとワトソンが田園風景を見ていました。

ワトソンは美しい景色にうっとりする。

一方でホームズは、こんな場所で事件があったら危険だと言い出す。

世の中にはこういう2種類の見方があると思ってください。

真田丸』の昌幸や『麒麟がくる』の道三は「おっ、そうだな! こんな人口密度低い場所は暗殺に最高ではないか!」とニヤリとするタイプでしょう。

ムカつくかもしれませんが、世の中にはそういう人間も必要ではありませんか。

ひねくれ謀殺マニアじみた私からすると、毎週こちらのレビューは参考になります。

田園を見て美しさを褒め称える。素直で素朴な模範解答はまさしくこれだろうと。

◆『青天を衝け』22話。五代さまが邪悪な紳士に「金がなければ政は動きもはん」(→link

そういえば五代才助(ディーン・フジオカ)も普通にコーヒーを飲んでいた。明治維新後の時代に活躍できるかどうか、コーヒーが試金石になっていたのかもしれない

栄一がコーヒーをおいしく飲んだことに感心しているのですけれども……。

私にはリアリティ不足、栄一お得意の盛った話としか思えず、猜疑心からかえってシラけてしまいました。

山川健次郎や福沢諭吉も洋食に苦労しています。

文久遣欧使節団
マズい!醤油をもう一杯!あの福沢も苦労した文久遣欧使節団の食事情が大変だ

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もちろん舌の感覚は人それぞれですが、長らく和食で過ごしてきた人間がいきなり洋食と出会って躊躇なく喜ぶのも不自然に思えてしまうのですね。

そしてこちらです。

しかし本作では、誇り高く正々堂々としているけれど金に無頓着な武士たちが没落し、「金」の力で新しい時代を作る商人たちを描こうとしているのではないだろうか。

金に無頓着な武士――というのは『青天を衝け』の関連記事でよく見られる誤りですよね。

武士は別に金に無頓着ではないことを本レビューでは散々説明してきたので省かせていただきますが、そもそもの前提が間違っている記事が模範解答になるなるのは危ういことではありませんか。

今、世界は資本主義の見直しに直面しています。

誇りなんて捨てちまえ。金さえ儲ければいい! そうできないなら没落する、武士は終わって商人の時代でえ、おかしれぇ!

そういう価値観そのものが何をもたらしたのか?

そこに直面しています。

冷戦終結以降、資本主義国家は勝者としての地位を味わい、謳歌していたように思える。

それに翳りが見え、コロナで急速にブレーキがかかっています。

その手のことを解説する本ならいくらでもありますので、図書館でもどうぞ。それが難しいなら、この記事がおすすめです。

◆「コロナ禍でも五輪すらやめられない」資本主義の暴走を止めなければ人類は滅びる 「中間層を増やせばいい」は間違い(→link

【斎藤】というのも、資本主義の本質が、際限のない利潤追求だからです。

マルクスが『資本論』で書いているように、資本の目的は「蓄積せよ、蓄積せよ」、つまり「世界中の富をひたすら蒐集せよ」ということです。

先進国の生活だけを見れば、資本主義は私たちを豊かにしたかもしれません。

しかし、植民地で奴隷のような過酷な環境で人々を働かせて搾取した歴史もあれば、現代でも社会に過剰な負荷をかけてグローバル経済はまわっている。日本でも、コロナの感染拡大がわかっているのに、資本主義のために、五輪をやめることさえできずにいます。

そしてもうひとつは環境の問題です。現代は人類の経済活動が地球を破壊しつくす「人新世」の時代に突入しています。環境危機を引き起こした犯人は資本主義です。もはや、経済成長を目的とした資本主義というシステムを維持していくことは、まったくもって不合理です。

経済ばかりを重視した結果、先住民を迫害し、野生動物を絶滅させ、森林を破壊してきた。

欲望の赴くままに人類が暴走した結果を直視せねばならない。

道徳を取り戻し、資本主義と訣別することが課題である。

そう直面する2021年に、大河ドラマで「資本主義の父」を流しているなんて、これほどの皮肉もありません。

むしろここは父殺しが大事な局面と私は見ます。

ゆえに私は、このドラマを否定する方向へ走ります。

ひねくれた見方? いえいえ、古きを脱し新しきを創るのは新しき視点でしょう。

 


民、信無くば立たず

本作の何が悪いのか。

渋沢栄一もお好きな『論語』でまとめさせていただきましょう。

民、信無くば立たず。

これが本作そのものであり、嫌悪する理由そのものです。

美男美女はいる。宣伝はしている。

しかし「信」がない。

だから立ってすらいない。他の誰かはともかく、私の目からすればそうなります。

出演者からスタッフまでエゴサーチして、ファンの声を拾っては感謝する。

そういう評価を切り取ったコタツ記事は、日曜午後10時には光る。Twitterトレンドにも乗ったりします。

では、本作に中身はありますか?

誠意は? 仁は? 信は?

つまるところ真面目さが全く感じられない。

出演者が数秒の場面のために早起きしたくないと冗談まじりでぼやく。

スタッフから出演者まで「歴史がめちゃくちゃ苦手なんです!」と堂々という。謙遜でもなく本気で言う。

やる気のない小道具、セット、殺陣、そしてVFX。

毎週のようにどっさり見つかる考証の初歩的なミス。

時代劇の所作をやる気すら感じさせない演出。

何が嫌かって、こんなのプロとしての誇りがあれば採用しないような場面が流れてくることでしょう。

ドローンカメラがいきなりガタンと落ちたような動きを見せる。

聞き取れないほどくぐもり、アクセントがおかしいお国訛りの数々。

背景に映る電線。

合成とわかるVFX。

相手と会話しているのに、腕をだらっとして、背筋も伸ばさずぼーっと立っている役者。

薩摩藩士でなく水戸藩士が猿叫する(薩摩藩士の特徴であるジゲン流の掛け声)。

船酔いがひどいほど揺れているはずの船上場面なのに、カメラすら揺れない。

薩摩出身者同士の会話で、片方だけ途中でイントネーションが標準語に戻る。

滅びゆく幕府のことを、ウキウキした顔で語る家康。

そして後世捏造された家康遺訓を堂々と読み上げる。

どうしてこんなお粗末な場面がNGにならないのですか?

あくまで推定ながら、脚本が遅れているのではありませんか?

場面のつながりや設定も途中で変更されることがしばしばあります。

書き手に力量がないなら『麒麟がくる』のようにチーム脚本家体制にすればよいのではありませんか?

大河のような大仕事に対して「テーマに興味ないんです」「めちゃくちゃ苦手です!」と発信するような人間を採用している時点で、話は終わっていると思います。

コロナ後の時代、倫理観や道徳が大事になると予測されます。

そうあって欲しい。

そこでは、不義の塊である『青天を衝け』なんて評価されなくなると信じたいのです。

今年の大河には最低限の良識すら感じられません。

ニュースで「ワクチンデマに注意!」だのなんだの言っておいて、自局の看板番組で嘘だの捏造だのを毎週のように流す。

検証不十分な番組公式アカウントがあやしげなことをつぶやき、どんどん拡散されてゆく、インフォデミックの状況を自分たちで作り上げている。

既にその例はあります。

渋沢栄一が日本で初めて紙幣を発明しただの。慶喜は天狗党を助命しただの。現在否定された家康公遺訓は真実だの。嘘を信じてしまった人が出てきている。

むしろ仁ある世に訪れる麒麟を呼んでいた『麒麟がくる』こそ、時代に即しているのでしょう。

しばらく放送はお休みになります。

その間に私も勉強をやり直したいと感じているところです。

真夏に入って熱くなりますので、みなさまもご自愛ください。

※著者の関連noteはこちらから!(→link


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関連記事は以下にございます

◆青天を衝け感想あらすじレビュー

◆青天を衝けキャスト

◆青天を衝け全視聴率

文:武者震之助(note
絵:小久ヒロ

【参考】
青天を衝け/公式サイト

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