青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第23回 感想あらすじレビュー「篤太夫と最後の将軍」

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青天を衝け第23回感想あらすじレビュー
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バイアスを超えて整理する英仏の思惑

そして司馬史観を受けた明治礼賛からの「日本はスゴイ論」は、たとえ甘い嘘でも気持ちがイイからすんなり通っちゃう。

清は植民地にされたのに日本はされなくてスゴイ!

こう言われるとデレデレしてしまう悲しい性があることは否定できないでしょう。

当時の英仏はじめ西洋諸国にとって、日本の植民地はそこまでメリットがありませんでした。

サムライソードで武装したローニンがうろついていることも、理由の一つですが、

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それよりなによりコスパです。

植民地管理はそう楽じゃない。

インフラ整備も必要だし、維持できるかどうかが肝要。赤字になったらいけない。

日本を取ったら絶対に儲かる!そう明白でなければ、手出しするものでもありません。

フランスは手痛い失敗を、幕末と同時期にやらかしています。

メキシコにマクシミリアンを皇帝として送り込み、無策が仇となって処刑という最悪の結果に繋がっています。

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当時のフランス外交はよろしくない。このメキシコ介入をとってみても行き当たりばったりで、信頼できる相手でもありません。

ブリュネのような個人単位で騎士道精神を発揮したフランス軍人はいますが、相対的にみてそんなに信じて良い相手とはいえない。

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では、イギリスはどうか?

狡猾さではフランス以上ですが、彼らは百戦錬磨。かつ自国の利益のためならなんでもやりますので、Win-Winと示せば頼りになる相手です。

イギリスからすれば、日本を同盟国とするメリットはあります。

南北戦争集結で余った武器を売るのがグラバーの主目的。

そしてロシアを東から牽制する。

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イギリスやフランスからすれば、日本に領地を持つことは魅力がない。

しかし不凍港が欲しいロシアは別です。

18世紀からロシア船は姿を見せ始めていて、幕府や東北諸藩、そして蝦夷地は早くから彼らの南下に対抗しようとしていました。

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こうした幕府の対ロシア政策は自発的なものでした。

しかし、明治以降はそうでもなくなってゆき、イギリスの思惑は、日露戦争で成功を収めました。

こんなことを申しますと「話が大きくなりすぎ」と思われそうですし、何よりややこしい。

しかし、これこそが渋沢栄一を題材とする問題点です。

渋沢を大河ドラマでなるべく正確に取り上げようとするならば、幕末から明治にかけての難しい外交を超絶技巧を駆使していかなければならない。

それなのに各種メディアにおける今週の見どころはこうでした。

◆ 【青天を衝け】第23回見どころ 篤太夫、まげを落とし洋服を着ることに(→link

見どころ部分のテキストを引用させていただくと……。

今回、フランスからの借款は消滅したが、篤太夫が当面の資金繰りに奔走し、昭武(板垣李光人)は留学を続ける。

家庭教師のヴィレットの教えに従い、篤太夫たちは髷(まげ)を落とし、刀も外し、洋服を着ることに。

いかがでしょう。

本作で明治期以降の渋沢も描くなら、もっと他に大事なことがあったのではありませんか。

 


あの人物不在の理由

『青天を衝け』は「あの歴史有名人を出さない」ということが指摘されたりします。

有名人といっても、歴史上の人物はタレントと同列に扱えないはずですが、その謎を考えてみますと。

坂本龍馬が出なかったのは?

大政奉還は慶喜の斬新なアイデアということにしたいからのように思えます。

正確には土佐藩の山内容堂や後藤象二郎らが詰めた案を、受け入れた形なのですが、龍馬と中岡慎太郎も推進しています。ゆえに凶刃に斃れたともみなせます。

今週の容堂の出番がミニマムすぎて、土佐藩まで軽んじたように見えました。

本作の慶喜は、ミスは全て部下のせい、功績は全て彼のもの。そんな酷い描写を否定できません。

そして慶喜とも密接に関わる重要人物も出ないことが確定しました。

勝海舟です。

以前、このドラマに出ることそのものが屈辱的だから、いっそ勝海舟はいらないし、出そうにないと書きました。

一応、予想は当たったというところでしょうか。

◆龍馬に続き勝海舟も登場せず!? 栄一がパリでカルチャーショック! NHK大河「青天を衝け」第22回見どころ(→link

番組関係者は「今のところ出演の予定はありません。、少しだけの出番になる可能性もあります」と明かす。数多い幕臣の一人として、後ろ姿やナレーションでの出演はあるのかもしれない。

勝海舟を倒幕の過程でモブ扱いとはどうしたことでしょう?

それって再来年の『どうする家康』で、服部半蔵伊賀越えにおける多大な貢献を否定するようなものでしょう。あるいは『麒麟がくる』で今川義元を打ち取るのが毛利新介ではなく織田信長みたいな。

要するに、歴史ドラマでそれをやってはいけないやつ。

恐ろしいのはこんな意見を見かけたことでした。

「栄一は勝海舟が嫌いだったから、出さなくていいんじゃないの」

慶喜も栄一も、勝海舟を嫌っていたことはその通り。

慶喜は、勝のことを煙たがっていたにも関わらず、自分の生死がかかった局面になると泣きつき、それまで冷遇していた勝海舟ら周囲に無血開城のほぼすべてを投げました。

そして勝海舟が自力で歩けないような死の直前になるまで顔を合わせようともしなかった。

慶喜には、自分にべったり甘い人間を高評価し、厳しい人間のことは軽んじる傾向があります。となれば慶喜べったりな栄一だって、勝海舟を評価しないでしょう。

だからといって作品でまで妙な描き方をしてよいものか。

あまりに誠意なき姿勢ではありませんか。

 

オカルト&スピリチュアルが大好き?

今週は、あの偽遺訓を唱和しても放置する謎の家康のことも考えたいところです。

◆「こんばんは、徳川家康です」大河ドラマ『青天を衝け』に“型破りな語り部”が出るのはなぜ?(→link

この記事では、過去の大河における異色の語り手を網羅し、語っています。

私なりの推理では、慶喜のこのあたりの回想ゆえの家康ではないかと思いますが。

『昔夢会筆記』第一にこうあるんですね。

東照公(家康公)は日本国のために幕府を開きて将軍職に就いたが、私は日本国のために幕府を舞るの任に当るべしと覚悟を定めたのだ。

私の脳内で福沢諭吉山川浩・健次郎兄弟が「ハァ〜〜〜〜ふざけんなこのやろう!」と突っ込んでいます。

慶喜は「自分は家康公と同じ!」と酔っ払ったふりをしている。

なまじ狡猾で策謀があって、周囲からも「家康公以来」なんてリップサービスされちゃったから、陶酔してしまったのでしょう。

この『昔夢会筆記』にしたって時間経過してからのもので、各方面から反発された。

そうなる前の、慶応4年初頭、リアルな慶喜評価はどうか?

大久保利通は「バカの極みじゃねえか」と罵られ、会津藩士からは「あんた、マジ、正真正銘の腰抜けっすね……」と面と向かってあきれられる。松平春嶽に至っても「いつも優柔不断」と振り返られています。

私が危険であると感じるのは、こうした慶喜の自己陶酔ワールドに視聴者も酔ってしまうことです。

もちろんそこまでハマるこむ方は少ないにしても、何らかのキッカケになったら恐ろしい。

なんせ渋沢栄一は死者・行方不明者推定10万人を超えた関東大震災に際し、天譴論(てんけんろん)を大々的に吹聴した人物でもあります。

天譴論とは、大災害が驕り高ぶった人間を罰するためのものとする非科学的な論ですね。

一言で言えばスピリチュアル。劇中での彼は合理的だとされますが、そんな実像もあるのです。

それなのに「えらい渋沢栄一は正しい! あの災害も驕り高ぶった人間を罰するためのものだ!」なんて肯定している投稿も見かけてしまい、ゲンナリしてしまいました。東日本大震災からまだ11年しか経過してないのに一体どうしたことでしょうか。

思えばVFXの無駄遣いだった「お蚕ダンス」や、尾高長七郎が狐の幻を見て殺人を犯す描写もありましたね。

そして最も危険なのは、あのわけわからん家康でしょう。

◆青天を衝け:草なぎ剛「家康様が降りてきちゃって」 演出担当語る、次週“大政奉還”(→link

あの家康を否定するどころか、こんな不気味なことを言い始めた。しかも見る側も飲まれてる雰囲気さえ感じる。

御三家でありながら徳川斉昭が宗家をズタボロにして、その子である慶喜がトドメを刺す。

そんな裏切りに次ぐ裏切りをされ、家康にしてみれば「なんてことするんだ!」と怒る方が自然ではありませんか。なぜ、こんなにオカルトなんでしょう。

信じることは自由じゃない。日本はかつて、死者の声の利用をして痛い目にあったからこそ、そこは距離を取るようになっていたはずです。

明治を代表する科学者である山川健次郎。

彼は己の科学力で、千里眼はじめオカルト騒動を叩き潰しました。そのせいで自殺者まで出てしまい、やり過ぎの感もある。あの貞子のモデルもそのせいで亡くなっています。

そんな山川は、過剰な皇室崇拝にも懸念を表明し、愛国者に叩かれています。

なぜか?

皇室に不敬とされただけで自殺をするような事例があり、これではかえって天皇陛下にとってマイナスであると懸念を表明していたのです。

山川の危惧は的中します。

戦死者を軍神とし、死ねば神になるという思想は、日本人に辛い記憶として残ることになります。

ゆえに、死者に好き勝手なことを言わせるだの、夢のお告げで決断するだの、馬鹿げた描写は慎むようにしておりました。

確かに、過去の大河ではVFXで馬が飛んだり、最終回でお迎えが来たり、トンデモオカルトはありました。

しかし、レギュラーになって撒き散らすのは一線を超えてるとしか言いようがありません。スタッフやメディアにしても、それを危惧しない。逆に肯定的に捉えるばかりで戦慄を覚えています。

山川浩&山川健次郎&捨松たちの覚悟を見よ!賊軍会津が文武でリベンジ

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武士が武士らしくない時代が幕末

現場が弛緩しきっているのではないか。

そんな私の懸念を払拭するどころか、逆に証明するような記事は数多くあります。

以下もその一つ。

◆モデルプレス - 志尊淳、吉沢亮をリスペクト「役者として壁にぶち当たった」初大河ドラマで感じたこと<青天を衝け>(→link

申し訳ありませんが、ダメ出しをしてしまいますと、以下の引用部分です。

志尊:役柄の印象についてですが、お話をいただいた時は杉浦愛蔵という方が存在していたことを知らなくて、撮影に入る前にいろいろ調べさせていただきました。

フォーカスされる前に亡くなられた方ですが、ものすごく功績を挙げていらっしゃる方で、かつ人柄も愛されている方。

陰で渋沢栄一を支えていたという史実を拝見させていただき、もちろん武士の時代に生まれてきた方ですが、あまり武士らしくないと言いますか、いつも戦っているところと違うフィールドで栄一を支えられるような役柄にしたいな、そんな方なんじゃないかな、という印象を最初に持ちました。

大切なのは「ものすごく功績をあげて」の中身でしょう。

如何なる功績なのか?

そこに触れてないと、試験だと点数をもらえません。

手前味噌ですが、以下の記事だとこうなっていますね。

トラブルの連続だった昭武と栄一の遣欧使節団~欧州で何があったのか

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郵便制度の確立、富岡製糸場建設に貢献する

この程度の具体性すら出てこないのでは、記事にも説得力がありません。

インタビュアーが聞いて理解できなかったのか。それとも触れられなかったのか。

真相は不明ながら、もし私が演者だったらこんな回答をしてみます。

「郵便制度というと、一円切手の前島密のことは知っていました。けれども杉浦も貢献していたんですね。ただ、彼は十分な功績を挙げる前に若くして亡くなられていたので、あまり知られていないのです」

そしてコチラも気になります。

「もちろん武士の時代に生まれてきた方ですが、あまり武士らしくない」

この時点でかなり無理があります。

ちょっと続けて後半も引用させていただきますね。

― 武士らしくない印象だったとのことですが、そのために何かやっていたことがあれば教えてください。

志尊:一番最初は発声です。武士らしい役柄の方は、声や様で相手を威嚇するようなイメージなのですが、杉浦はものすごく学問に通じているので、どちらかと言うと知的で、気品があって、芝居の温度感としては内に秘めていく方向性のように感じました。それは演出について相談しながら感覚的に作り上げていきました。

これは彼のせいでなくて、彼を引っ張ってきた田中氏の責任が大きいと思われます。いや、田中氏一人でなく、現場がそうなっているのでは。

「もちろん武士の時代に生まれてきた方ですが、あまり武士らしくない」ということを幕末から明治について語った時点で、試験だったら容赦なく「0点」回答とされてもおかしくありません。

福沢諭吉は、こんな調子で嫌味ったらしく皮肉っておりました。

武士は刀なんて帯びているけど、持ちかたすら知らんじゃないですか。武士なんてとっくにオワコンで全然頼りにならなかったよね? ハァ〜ほんとうにみっともない!

近藤勇のような新選組にせよ、生まれながらの武士が情けないからこそ、自分達のような豪農出身者が武士道を実践するとはりきっていた。

要は、多くの武士が武士らしさを忘れていたのが幕末です。

ですので、ここで彼が語る「武士らしくない武士」なんて「赤いトマト」と同じくらい個性がありません。

繰り返しますが、これは彼の責任ではありません。

曖昧な幕末理解のまま引っ張ってきた上で、ろくに資料も用意せず(そうとしか思えない回答を役者がしている)、撮影に送り出す――そんな現場の責任が大きいのです。

こんなことで若い役者の才能を摘むような真似は勘弁していただきたい。

では逆に「これぞ大河俳優の歴史理解だ!」という好例はあるのか?と申しますとあります。

『麒麟がくる』の秀吉を好演した佐々木蔵之介さんです。

◆【インタビュー】舞台「君子無朋~中国史上最も孤独な『暴君』雍正帝~」佐々木蔵之介、11年ぶりの主宰公演で初の皇帝役「ただの暴君では終わらない」(→link

該当の部分を引用させていただきますと。

-その彼の面白さを、具体的にどんなところに感じていますか。

例えば、彼は、中央のエリート役人をすっ飛ばして、地方の末端役人と直接、手紙のやりとりをしていました。それって現代でいったら、大企業の社長が地方の支店長にSNSで細かい数字の指示を出しているようなものですよ(笑)。夜中に「明日中に改善策を出して」と言ってきたらたまったものじゃないですよね(笑)。そんなことを雍正帝はずっとやっていた。血を吐きながら、玉座に座りもせずに。それで、息抜きに? コスプレをしていた。そう考えると、ワーカーホリックだけど、何てユニークな皇帝なんだなと感じました。

満点取れそうな回答です。

先ほど試験と言いましたが、これは当然ながらテストではなく、この先エンタメとしてどう消化するかが大事です。

何をどうすればそうなったんだと突っ込みたくなる箇所はあるにせよ、ポイントを押さえているかどうかが肝要でしょう。

佐々木氏のインタビューでは「それで、息抜きに? コスプレをしていた」というのが実に良い!

というのも、雍正帝のコスプレは中国史でも屈指のネタとして有名で、こんなことまでされています。

◆清朝第5代皇帝「雍正帝」が萌えな姿になっているとネットで話題に / ツイッターの声「魔改造されすぎ」「雍正帝なら仕方ない」(→link

ワーカホリック皇帝の趣味がコレ。そこをバッチリ押さえるあたり、満点ですよね。

ジョークを交えながら史実もキッチリ踏まているなんて、歴史劇に出演する役者として素晴らしい答えではありませんか。

装の雍正帝/wikipediaより引用

大河に出た――と、役者さんはそれで終了ではなく、この先もまだまだあります。

志尊淳さんだって、今後、三英傑まで到達できるかもしれない。

その際、佐々木蔵之介さんの姿勢を見習っても損にはならないはずでしょう。

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