青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第26回 感想あらすじレビュー「篤太夫、再会する」

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青天を衝け第26回感想あらすじレビュー
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捨てるフランスあらば、拾うイギリスあり

慶喜は一縷の望みをかけ、フランス公使ロッシュに面会しています。

これまで慶喜を熱心に支えてきたロッシュは幕府を助けるべく動いたのです。

彼は具体的な案を出してきました。

「全国の大名に向けた新たな政治体制布告を出しましょう。京都の朝廷とは、薩長の干渉がなければ交渉しないと追い返すのです。フランスから兵も送りますから、フランス人士官に指揮を任せてください」

なんとも具体性のある案ではありませんか!

「ただ……それなりの資金をいただかねばできませんな。シャスポー銃の代金はいつお支払いいただけますか?」

ロッシュは金勘定をしていたのです。

この会見後、慶喜はフランスを頼ることを放棄します。本人曰く「朝廷に弓を引けない」とのことですが、それならはなから夷狄なぞ頼らなければよろしい。つまりは言い訳でしょう。

幕臣たちはこれ以前から、薄々勘づいていることはありました。

フランス人は友愛でもなんでもなく、金儲けのために力を貸しているのだと。むろんブリュネのような人物はいましたが、政治とは綺麗事でもありません。

フランスは金の切れ目が縁の切れ目であったのに対し、意外な人物が慶喜助命に動いています。

イギリス公使・パークスです。

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イギリスは抜け目なく薩摩と歩調を合わせ、朝廷とも接触を図っていました。

攘夷に固執した孝明天皇崩御の後であればそれも可能でした。

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東を目指す西軍が、江戸での決戦の際に出る負傷者の治療に協力して欲しいと申し込みに向かったところ、パークスは激怒します。

てっきり快諾すると思っていた西軍側は困惑。

「西洋では、負けた国の君主の首を求めるような残虐なことは許さない、慶喜公は助命なさい! 死罪にするならば国際公法違反だ。日本がこれから先、国際社会にデビューするならそこのところを考えなさい!」

「だいたい、慶喜公は恭順しているのに、戦争を仕掛けるとはどういうことだ! 無政府国家と思われてもよいのか!」

この背後にはパークスが慶喜に抱いていた親愛の情もあるのでしょう。

それのみならず、イギリス人ということも関係があるかもしれません。

これより遡ることおよそ一世紀前、フランス革命を目にしたイギリス人はこう言いました。

「フランス人は野蛮だ! 国王に王妃をギロチンにかけ、平然としているとは!」

イギリスでは、国王斬首抜きで革命を成し遂げたという誇りもあります。

この時代のイギリスでは、あの名君であるエリザベス1世の評価が下がってすらいます。スコットランド女王メアリ・スチュアート斬首があまりに酷いとされたのです。

 

幻の江戸焦土作戦と、勝の深謀遠慮

一方で根っこが江戸っ子の勝は、おそろしいほどの博打を打ち出そうとしていました。

江戸焦土作戦――。

火事と喧嘩は江戸の華! そうされるほど火災が頻発した江戸。ただし、戦火で焼けたことはない。

それがあやうくなったのが幕末です。

吉田松陰は【安政の大地震】の報告を聞き、長州から攻め上れば勝てるのではないかと妄想していました。

生麦事件】の際には、イギリスの報復をおそれたこともあり、関東では治安が悪化しています。

その悪夢を実現し、敵を破る。そんな奇策をナポレオンを撃退した【1812年ロシア戦役】から思いついたのです。

とはいえ、生まれ育った江戸を焼くとなると、当然のことながら気は重たくなる。

火消し新門辰五郎らに話をつけつつ、同時に船頭にも交渉します。

もしも江戸が焼け野原になったら、なるべく多くの人を逃してやって欲しい。そして、自腹を切ってまで作戦を立てたものですから、勝の家計は火の車になったとか。

この焦土作戦は無駄だったのでしょうか?

そうとも言い切れないでしょう。愛する街を焼け野原にしないためにも、勝は全力で交渉に当たるしかない。気迫を胸に、あの西郷隆盛との対談に臨みます。

何かと交渉の阻害となりかけない会津藩や新選組を江戸から遠ざける。

薩摩隼人も好みそうな武士の中の武士、山岡鉄舟とはじめに話をつけさせておく。

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勝はあらんかぎりの智勇でもって、己の役割を果たすべく動いておりました。

そして総攻撃と予告された3月15日から遡ること2日の13日、薩摩藩蔵屋敷で勝と西郷の会談がなされます。

有名な絵もあり、この日にすべてが決したようですが、この二人だけの力でもない。この日だけのことでもない。

むしろ積み上げた勝の策を西郷が受け止めた、最終局面といえました。

ここで決まったことは総攻撃中止です。諸条件を詰めるのは西郷ではなく京都の薩摩藩、長州藩の上層部と朝廷の面々でした。

そう言いたいところですが、実はここでもう一手ありました。

 

教師イギリス先生の生徒であった明治日本

彰義隊奥羽越列藩同盟、そして幕臣たちが江戸から函館まで戦う中、慶喜はひっそりと水戸へ送られました。

これにも裏話があります。

無血開城のあとの3月27日、勝は横浜のイギリス領事館に乗り込み、あのパークスと話し合いをしていました。

そこはパークスですから、傲慢極まりないのですが、勝の聡明さを気に入ったのか態度を軟化。

夕食をとりながらこんなやりとりしたのです。

「そちらは慶喜公をどうするおつもりで?」

「これがなんとも困ってまして。まァ水戸に送りたいのですが、上野の寛永寺に預けてます。死罪や切腹だけは勘弁したいのだが、どうにかならんもんですかね」

「なるほど、ならば我が国の軍艦を貸しましょう。いっそ我が国に亡命したらいかがでしょう? 歓迎しますよ」

「ありがたいことです。じゃあ、その軍艦を一月ほど停泊させておいてもらえますか?」

「いいでしょう」

こうして保険をかけていたのです。

パークスは西郷を横浜まで呼びつけ、慶喜助命を念押し。美談のようでもあり、重要な要素もあります。

無血開城で早々に降伏したことで、日本は海外の干渉を防いだのである――。こんなことが言われております。

しかしどうでしょう?

パークスの判断で政局は動いています。これから訪れる明治時代において、政府がその意向を受ける予兆に思えます。

実際にパークスの強い干渉を受け、樺太千島交換条約が成立。

日露戦争のころ、イギリス人とアメリカ人が日本人をけしかけ、ロシア人と戦うように迫る風刺画がで回りました。教科書でご覧になった方も多いことでしょう。

伊藤博文はのちにパークスのことを「彼の我々に対する態度はまるで、教師が生徒にするようなものだった」と振り返っています。

文明国とは何か!

そう振りかざしてくるのです。

明治の政治家たちはこのパークスに戦々恐々としておりますが、そんな傲岸な態度が、慶喜の助命に繋がったのです。

4月11日、開城した江戸から慶喜が出て、水戸へと向かいました。

江戸城に乗り込んだ西軍は、そこで堂々とこれまで亡くなったものたちの霊を弔いました。

大久保利通は、慶喜への処置が寛大すぎるのではないかと懸念を示しています。水戸に戻り、その地で兵士でも集めたら危険です。

江戸が明治に変わる頃、水戸では諸生党への復讐に燃えた天狗党が暴れ回り、血で血を洗う惨劇が発生していました。

むしろ、これが慶喜にとっては好材料となります。

水戸はこのことによって人材が枯渇し、無力化されたのです。幕末一猛悪とされた水戸藩は同士討ちによって壊滅し、明治以降人材が尽きたとすら言われています。

こうしてみていくと【無血開城】とは果たして無血であったかどうか、考えたいところ。

幕臣として慶喜たちに忠誠を尽くしてきた川路聖謨は、江戸城総攻撃が迫る中、ピストルで己の命を絶ちました。

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川地にとっては勝の交渉も遅すぎたのです。抗戦を諦めていたにもかかわらず、小栗忠順は冤罪により斬首刑とさえました。

幕臣たち、彰義隊、新選組、諸生党、奥羽越列藩同盟……多くの血が流れ続けます。

結局のところ、無血とは将軍慶喜の助命だけではないかと思えるのです。

 

慶喜の再起と弁明

旧幕臣たちは政治から遠ざけられ、慶喜は駿府へ向かいます。

幕臣たちが困窮する中、慶喜は趣味に生き、女中との間に多くの子を作る日々を送りました。

明治はなかなかおさまらないスタートを切っています。

世直しのためと立ち上がる士族反乱も続発します。

それでも慶喜は「政治は我がことにあらず」とシラを切り通し、我関せずとばかりに生き続けました。下手に政治力を見せたら危険である。そんな判断があったのでしょう。

そして時は流れ、政治的な圧力が弱まった中、慶喜は元幕臣の願いに応じます。

その人物とは、渋沢栄一です。

幕政時代はそこまで頼りにしていなかったものの、明治以降は長州閥に連なる政商として明治財界を取り仕切る渋沢栄一。

彼が慶喜の顕彰をするとなれば、願ったり叶ったりです。

かくして意気投合した君臣は、邪魔者があらかた去った世で、自己弁護の語り残し、執筆、そして出版を始めるのでした。

一方で、慶喜から顧みられなかった幕臣たちもいます。

函館戦争まで戦い抜いた永井尚志は、駿府での面会すら断られました。勝海舟は、彼が最晩年になって歩けなくなってから、ようやく慶喜が見舞いに訪れているのです。

忠義を尽くしたところで、恩を感じる主君でなければ、応じるとは限らないのでしょう。

 

【無血開城】とは何だったのか?

歴史用語には、イデオロギーが反映されていてなかなか扱いが難しいものがあります。

例えば本項では「官軍」ではなく「西軍」としています。

「官軍」の対比は「賊軍」であり、それをそのまま使うことはふさわしくないと考えた上でそうしています。

実はこの【無血開城】も疑念を感じます。

確かに慶喜の血は一滴も流れていません。その意味では正しい。

しかし、くどくどと述べましたように、これでは彰義隊や川路聖謨の酷い死がまるでなかったようにも思えるのです。

このあとの【戊辰戦争】の流血を過小評価することは、伊藤博文がアメリカで「明治維新は無血革命のようなものだ」と演説したことをはじめ、誤認としていまだに顔を出し、そのたびに論争になっている誤解としか言いようがありません。

海外の干渉を防いだというのも、ここまでパークスが新政府側に圧力をかけているからには、肯定できません。

むしろイギリスの同盟国となる地ならしと言えます。

そもそも博打をしていたのは勝海舟だけでもありません。

幕府海軍が軍艦をそのまま奪い逃げたからには、西郷隆盛だって慎重にならねばならなかった。そんな薄氷を踏むような偶然がいくつも重なる中で、運命のサイコロは慶喜の首を求めないほうに触れたのでしょう。

そしてこのことにつきましては、慶喜はさしたる役目を果たしたとは到底言えないのです。

【無血開城】とは、その評価が変わるものでもあります。

明治維新のみが日本の近代化における最適解であり、正しいことであったとみなす限り、その過程におけるワンシーンとして評価されます。

しかし、明治維新が本当に成功と言えたのか?

手放しで評価できるものだろうか?

無責任。優柔不断。逃げ惑うばかり。臣下の功績は自分のもの、臣下のあやまちは臣下のものと言い張るその傾向。

そんなリーダーを是とすることそのものが、日本の歴史に悪影響を及ぼしたのではないか?

福沢諭吉ら幕臣がそう舌打ちした思いは、リーダーシップに疑念を抱いた人から定期的に蘇ります。

偉い人ほどすぐ逃げる。それって歴史を辿れば徳川慶喜がそうだよね……そこに気づくと【無血開城】も素直に肯定できなくなるのかもしれません。

【参考文献】
野口武彦『慶喜のカリスマ』(→amazon
野口武彦『江戸は燃えているか』(→amazon
一坂太郎『明治維新とは何だったのか』(→amazon
半藤一利『幕末史』(→amazon
半藤一利『もうひとつの幕末史』(→amazon
安藤優一郎『幕末維新 消された歴史』(→amazon
鳴岩宗三『レオン・ロッシュの選択 幕末日本とフランス外交』(→amazon

※著者の関連noteはこちらから!(→link

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青天を衝け全視聴率

文:武者震之助note
絵:小久ヒロ

【参考】
青天を衝け/公式サイト

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