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【青天を衝け第31回感想あらすじレビュー】
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銀行と富岡製糸場
栄一は言います。
「廃藩置県だけやれってことは、それ以外やってもいいんじゃね」
うーん。そんな出し抜くことばかり考えず、真正面から切り出してはいけませんか。
いくら栄一が有能だと言われたところで、セコく見えてしまうのです。
というか明治政府初期のしょうもないミスを踏まえると、小栗忠順を殺してしまった損失がしみじみと感じられてしまう。劇中の登場人物にそんな反省でもあれば、もっと真っ当な人物たちだと思えてくるのになぁ……。
冤罪で新政府軍に処刑された小栗忠順~渋沢より経済通だった幕臣はなぜ殺された?
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途中で大隈邸に切り替わり、食事をしています。
その所作も、どうしてもキレイに見えないのはさておき、栄一は、大隈重信が使節団に入れない理由を聞いています。
なんでも大久保が嫌いなんだとか。
薩摩閥の動きがちゃんと描かれないから、まるで大久保がネチネチいびるだけ平成OLのお局状態です。
そして五代の大久保ダメ出しレターでケラケラ笑う連中。
くどいようですが、五代は大久保に相当庇われていた。もしも五代が大久保のことを心底嫌っていたら、かなりの恩知らずになってしまいます。それが栄一も揃って陰で悪口を言うように見えて、辛い……。
そして話題は銀行の命名へ。
「国立銀行」に決まりました。
本作は明治の翻訳語のセオリーを丸無視ですが、それもひとまず置いといて(詳細は後述)、三井と小野がやってきて銀行設立の会議がスタートです。
どうやら見所らしいのですが、学園ドラマの文化祭準備程度にしか見えない。
この辺の経済話をジックリ描けないからこそ、幕末をウダウダやっていたのでしょうか。
商人を睨みつけてばかりで、説得力のあるセリフがない。気になることといえば、栄一の大仰な動作です。
明治時代の日本人は、いちいち手をうったり、腕組みするでしょうか?
著者が腕組みしたり、ろくろ回しポーズをとっているビジネス書の帯写真みたいなんだよなぁ。
一行は、富岡製糸場の視察へ。
楫取素彦「なしてうちらの出番がないんか!」
美和「せわぁない」
そんな脳内伝説カップルの声が響いたのですが……いや、まさか本当に出てこない?
あの二人なしで富岡製糸場はありえないのでは?
私は2015年大河ドラマ『花燃ゆ』を通して学んだんですよ!
もうがっかりだ。それだけを楽しみにしていたのに。美和のおにぎりを頬張る渋沢の一行を見たかった。
ハウスも製糸場もVFX合成が荒すぎて
三井組ハウスが出てきました。
旗のVFX合成が荒すぎて、結構な驚き。本作の映像処理はどうなっているのでしょう。
その後も、いかにも明治村っぽいパーティ場面です。明治村を使うなとは申しませんが、もうちょっと小道具やセットを頑張れたのではないか?と疑念ばがりが湧いてきます。
そして、またもや栄一は廊下で歩きながら話しています。
相手を脅すような口調で、本当に何のドラマなのでしょう。凄腕の経済人・商売人にはとても思えません。
だから悪代官のシーンを回想されても、奪われる側から奪う側になっただけで、まるで同情できない人物になっている。
尾高惇忠の娘・尾高ゆうが出てきました。
彼女に頭を下げながら女工のスカウトをしていますが、彼女は上級女工になれるのかな。
この女工スカウトも要注意です。
ゆうの器量やら何かを美談仕立てにしていますが、要するに明治のガチャ当たりはうまい人生を送れたというだけの話です。
いわば格差社会の勝ち組話。まぁ『あさが来た』から終始一貫しているといえばそうです。
彼女たちの働き口は『女工哀史』のように悲惨ではないとされますが……。
・公的機関としてのうちはまだしも、そうでなくなるとかなり過酷な労働が課された
・壮絶な藩閥ガチャの世界で、長州藩といった勝ち組出身女工は簡単な作業を任され、そうでないと辛い仕事ばかり
藩閥ガチャは政府上層部だけでなく、こうした女工にまで及んでいたことを描いて欲しかった。
史実の渋沢栄一も、そういう格差社会の打開に貢献したどころか、むしろ工場法成立を十年以上阻害したこともありました。
西郷と豚鍋思い出トーク
そしてここから渋沢一族の親族賞賛タイム。
成一郎も気張るとかなんとか言い出し、イタリアに行くそうですよ。
なんだかなぁ。戦場へ命を投げ出すことができず悔いていたかと思ったら、結局は、政府の上層部とコネがある親族枠を使っている。
薩長に無理やり戦争を仕掛けられ、敗北者となった者たちから見ると恐ろしいほど恵まれた世界です。
北海道の屯田兵なんてリアルに生死の境目にいたのに、本作ではそういった状況を鑑みることはなく、自分たちがどうやって「おかしれぇ」生き方をできるかどうかばかりを考えている。
そして栄一と千代の子・篤二が生まれます。
彼に関するゴタゴタはドラマでちゃんとやるのでしょうか。
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というか、くにの子はもっと早く生まれているはずで、しかも同じ屋根の下にいるはずですが、まったく出てきません。同居する場面だけ流しておいて残酷すぎる。
一方で、政府はまとまらない。
絶叫でしか表現できないおなじみのパターンですが、一人ドッチラケだった西郷が、なぜか栄一へ面会に来ます。
どんな政治外交の話をするんだろ?と思いきや、幕末時代の豚鍋トーク。
本当にこの明治政府はダメダメだな。しかもその違和感が「おかしろくねぇ」だもん。どんだけ語彙力がないんですか。
西郷のセリフも魅力に欠ける。幕末が良かったとネチネチ言い始め、「慶喜公がすごすぎるから潰しちゃった! それなのに申し訳がたたん」と無理矢理持ち上げてます。
いやいや……明治初期に慶喜を持ち上げるような人、いないでしょう。
駿府でコスプレ写真を撮影し、自転車で近隣の畑を荒らし、女中との間に子作り三昧ですよ。
西郷隆盛はそういうキャラじゃない。何か恨みでもあるのでしょうか?
西郷が西南戦争を起こした一因として、明治政府の改革が鹿児島にまで及ばず、士族が困窮する様を見過ごせなかったことも指摘されます。
幕臣の苦難をよそにヘラヘラ遊び呆けている慶喜なんて、それこそ風上にも置けないはず。
『八重の桜』で、ヒロインの兄である覚馬を西郷が引き立てた理由はわかります。山本覚馬は優秀で、人格も誠実でしたから。
それが西郷まで【栄一や慶喜を褒める】枠にするなんて、さすがにやりすぎでしょう。
そしてラストに、栄一は大蔵省を辞めると言い出しました。
まぁ、食べていけるだけの金はあるし、コネもあるし、何とかなりますしね。
「一人の民(みん)」とかなんとか言っていますが、史実では長州閥政治家とべったりくっついて生きている。
最後の変身ってのは何なのでしょう。
結局、政府と密着していて、中身は何も変わってないのでは?
総評
明治時代は藩閥ガチャ!
テロ仲間のコネを使えばウハウハだー!
毎週そう言われている気がします。
渋沢栄一と伊藤博文は危険なテロ仲間だった?大河でも笑いながら焼討武勇伝を語る
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『花燃ゆ』でも、長州閥コネでウハウハ。
『西郷どん』でも私的な目的のために血税を使うことを美談に仕上げていて、呆れたものです。
本作にしても、なぜこれほどまでに葛藤がないドラマなんでしょう。
すべてを美談に仕立てるなんて、まるで軍国主義下のプロパガンダ映画ではありませんか。
上流階級の欺瞞や腐敗を描くドラマはあります。
それが成立するのは悪役として問題提起として描くから。
しかし、このドラマの渋沢栄一から何を学べばよいのでしょう。
戦場で少しは葛藤があったかのように見えた渋沢成一郎も結局コネを使った就職をしている。
社会的には餓死者もいる状況で妻妾同居を始め、そのシーンも最初だけでなんだか有耶無耶。
本作の制作チームなら山守親分目線の『仁義なき戦い』でも、やさしい作品にできそうで恐ろしくなってきます。
そして作品全体に漂う昭和臭。カッパを連発したり、妾の話をゲスに盛り上げたり、若い世代が「大河なんて見ないですね」と言うのであれば、そりゃそうでしょ、と頷くばかりです。
本作は主にTwitterの感想を拾い「ネットでは好評」と言い張ります。
しかし、そもそもTwitterって若者の声を反映しているかどうか?
◆ツイッターとフェイスブックは、10代の若者の間で全く人気がない —— 最新調査(→link)
ツイッター、フェイスブックが好きだと答えたのは、わずか2%だった。
若者はそもそもTwitterで大河実況をしていない可能性が高いですね。
SNS公表と言い張った大河といえば2019年もそうでしたが、あれもSNS以外は低調でした。
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