青天を衝け感想あらすじ

青天を衝け第36回 感想あらすじレビュー「栄一と千代」

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青天を衝け第36回感想あらすじレビュー
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タップゲーとコラボを期待したい

長谷川博己さんが『三国志真戦』のCMに起用されました。

 

課金では勝てない! 知略を使おう! そう訴える広告もあります。

嗚呼、彼が言うと実に説得力があると思いました。

じゃあ今年は?

 

千代がこんな感じでしたね。

いつも顔色が悪く、虚な笑みを浮かべていて、ワンパターン。

放置して京都で女遊びを楽しみ、妾を連れ帰ってもタップすれば微笑む。まさに理想の放置妻女でした。

栄一は?

 

『お願い社長』でしょう。あの広告は「称号ゲットなり!」「やっと俺が社長になってきた!」「財産がつんつん上がっていく」といった名言が揃っております。

そういうセリフを妙にハキハキと読み上げ、動画にはキレッキレのイケメンがいる。

「おかしれぇ」「がっぽんがっぽん!」「であーる」そして「ぐるぐるする!」……と、わけわからんフレーズに脳みそがとろけそうでしたが、タップゲーへのオマージュと考えれば納得できました。

 


渋沢栄一と慈善事業

渋沢栄一が慈善事業に力を入れたことは確か。

ただし、同時に考えねばならない要素もあります。

◆ノブレス・オブリージュの利用

上流階級は負うべき責務があるということで、フランス語由来だけに、渋沢栄一が学ばなかったわけがない。

それがよい方向に発揮されれば結構な話です。

『ダウントン・アビー』では、グランサム伯爵が城を第一次世界大戦負傷者収容に提供しました。娘のシビルも看護にあたっていた。

こうしたイギリスの貴族階級の男性は、第一次世界大戦時に志願し出征、戦死する例が相次ぎ、多くの貴族が断絶しました。

しかし――寄付をすることで、社会的な名声を高め、悪用する手段がある。近年のアメリカ資本家がよく使う手口ですが。

・寄付することで節税する

・教育機関に寄付することで、子弟の入学を勝ち取る

・寄付することの背後で色々と悪いことをする

こういう悪用例がある。

渋沢栄一の事業を見ていくと、こうした手口の古典的なものが見えてきます。

◆天譴論を捻じ曲げた

渋沢栄一の慈愛に満ちた姿がなんとも嘘くさいのは、儒教由来の【天譴論】を捻じ曲げたことが頭をよぎるからです。

天譴論とは儒教の考え方であり、そもそもは

・君主の悪徳が天災につながる

という発想です。

ゆえに中国の皇帝は罪己詔(己を罪する詔)を出す。華流ドラマでも韓流ドラマでも、名君は「私が不徳であるがゆえのこの災難か……」と嘆くワケです。

しかし、それを明治以降の日本ですると、不敬罪になる。

ゆえに渋沢栄一はキリスト教を利用したのではないか?と思えるのです。

聖書に出てくるソドムとゴモラのように、民の行いが悪いと天罰がくだるという発想です。

そんなハイブリッド日本型天譴論を関東大震災のあと、大々的に唱えていたのが渋沢栄一です。

マスコミを通じて発表し、些細なことを針小棒大に言いはり、「被災は民衆に対する天罰」だと展開した。

こんな発想の持ち主の、どこが儒教通で民に優しいのか。疑問を感じるばかりです。

◆日本公害第一号に関与し工場法を阻止

渋沢栄一は日本の公害第一号・足尾銅山に深く関わっています。

悪辣な労働条件から労働者を守る【工場法】の成立を十年にわたり妨害しました。

それのどこが優しいのでしょう?

民に優しいどころか、複数の顔を使い分けている像が浮かんできます。

本当は怖い渋沢栄一 友を見捨て労働者に厳しくも人当たりは抜群

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東の水戸学、西の優生学

今回でてきた穂積陳重は経歴だけを見れば立派な方です。

しかし、なかなかきな臭い思想の持ち主であり、要注意。当時は許容されたとしても、現代の観点からすれば間違っていて有害、差別的な思想が垣間見えます。

穂積はイギリス留学時にチャールズ・ダーウィンの進化論、ハーバート・スペンサーの社会進化論を学びました。

この社会進化論が極めて危ういのです。

ダーウィンの進化論から飛躍して、差別的な思想となり、近代において猛威を振るいました。

NHKのサイトによい説明があります。

◆ダーウィン進化論に生じる誤解(→link

この手の曲解は、ナチスドイツの「優生主義」につながります。以下の部分に注目です。

さらに、ダーウィンの進化論を曲解したことで生まれた間違った考え方の最たる物と言えるのが、第二次世界大戦中にナチス・ドイツのヒトラーが提唱した「優生主義」です。

優生主義とは、「知的で優秀な人間」「社会的に有益な人間」をつくるために、遺伝を操作して人類の進歩を促そうという考え方です。

ヒトラーはドイツ民族を世界で最も優秀な民族ととらえ、それ以外のユダヤ人などを絶滅させようと企てました。

これが悪名高き、悲惨なホロコーストです。

が、もちろんダーウィンの進化論とは何の関係もありません。

優生主義はナチスだけが陥ったように切断処理されがちですが、それ以外の国や組織にもあります。

そしていくつもの悲劇を生み出しました。

日本では旧優生保護法による強制避妊手術がそのあらわれとされています。

もうひとつ、ハンセン病者の隔離も、優生思想のもたらした悲劇とされている。

このハンセン病患者隔離においては、渋沢栄一が関与し大きな役割を果たしています。

なぜ、そうなったのか?

娘婿である穂積と気が合い、互いに感化しあったのであれば当然の帰結ではないかと思えてきます。

穂積は天賦人権説を否定しました。またロンブローゾの生来犯罪人説にも傾倒。

【犯罪者には生まれつきの身体的特徴がある】

とするもので、現在では否定されています。

こうした偏った思想は信憑性がないだけでなく差別をもたらしました。例えば毛深い人は暴力的であるとか。そういう類の迷信と大差ないものです。それでも科学的とされて信じられてしまった。

渋沢栄一の言動にも、うまく隠しているようでどうにも差別的なものがあります。

アルミホイルを奥歯で噛み締めているような感じ……というのも、周囲に後期水戸学の信奉者や、天賦人権説を否定する娘婿らが揃っていたら、そうもなりますよね。

彼の生涯は、前半生が後期水戸学で、後半生は優生学――現在否定されている危険思想の東西横綱が揃う、恐ろしいキャラクターです。

ずんぐりとした見た目からは想像しにくいかもしれませんけどね。

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『いだてん』では、主人公の田畑がヒトラーに嫌悪感を滲ませていました。

枢軸国として同盟していた日本であり、かつ五輪の成功例として参考にするのであれば、当時、あの場面で、ああも露骨に嫌がるのはむしろ不自然だと思えました。

それでも田畑があのような反応をしたのは、NHKだって、ヒトラーを賛美するリスクを感じていたのでしょう。

ならばなぜ今年はOKなのか?

東西の危険思想に近い渋沢栄一。レオポルド2世まで褒めちぎっておりました。

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思想面をまじめに考察したら、大河の主役として、渋沢栄一は予選敗退になりそうなほど危険な存在です。

しかし、朝日新聞でも持ち上げる記事を載せています。

しかも陽明学にも水戸学にも言及せず、この道の大家である小島毅先生のコメントすら取りにいかない。そこまでして持ち上げる理由がわからないのです。

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