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【青天を衝け第36回感想あらすじレビュー】
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今の価値観で考えることも大事
「大河ドラマで幕末史を知った気にならないで欲しい」
私の持っている幕末の書物には、そんな先生方のぼやきがしばしば書かれています。
今年はその悪しき頂点に立つドラマかもしれません。
特に未成年の皆様には見ていただきたくない。本作にかこつけて、不気味なハラスメントめいた記事が出てきます。
こんなものは記事タイトルの時点でハラスメントでしょ。
こういう記事を見せつつ、ニヤニヤして、
「でもね、この人が初代総理大臣なんだよ」
なんて言われる若者がいるかもしれないと思うとゾッとします。
大河はむしろ有害になったと思えてくる。
今の若い世代にはむしろ『アンという名の少女』をお勧めします。
◆美化されたドラマ「アンという名の少女」は歴史修正ではないか(→link)
言わんとするところはわかります。確かに美化されていると思える。
とはいえあのドラマでは、差別がなかったことにされているわけでもない。
それに視聴者の要望もあるのです。
もう今時の若い世代は、綺麗にロンダリングされた勝ち組だけのドラマでは満足できません。
『アナと雪の女王2』は、サーミ族をモデルとしたノーサルドラが出てきます。主人公の先祖が犯した罪である迫害と差別が、物語の背景としてあります。
『鬼滅の刃』だって遊郭への差別構造が出てきます。あの作品では大正時代の厳しさも出てくる。
カナヲが大人から殴られ、虐待され、人身売買されていたのはなぜだろう?
風柱の不死川実弥は、どうして文字を書けないのだろう?
そんなことに疑問を抱いて調べてゆくと、大正時代の厳しい現実につきあたる。
極めて良心的と言えるのです。
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そういう今時のニーズを、修正主義と呼んでいても進歩できません。
正直なところ、こうした作品はやり過ぎであったり、美化だと思えることもなくはないかもしれません。
とはいえ、ありのままの意識でロンダリングする歴史劇ほど有害かつお粗末、不愉快なものはない。2021年の大河ドラマがそう証明しています。
『アンという名の少女』よりも、『青天を衝け』の方が邪悪で、そしてつまらないのです。
豎子与に謀るに足らず
今週の漢籍です。
このドラマの主演インタビューを読みました。
「ぐるぐるする」だの。「おかしれぇ」だの。喜作といると子供に戻ったようだの。
もしもこのドラマが、高校生の部活動を扱ったドラマならば納得できるようなインタビューであったと思います。
しかし、時代は明治初期。日本資本主義の父とされる人物です。
それなのに、なぜこんな幼稚な内容なのか?
手元には『麒麟がくる』の長谷川博己さんのインタビューもあります。その落差が改めて酷い。
とはいえ責める気は全くありません。渋沢栄一はすごいと彼は語っていますが、具体的にどこがどうすごいのかキッチリと語られていない。
五代友厚役のインタビューも同じでした。
それこそ長谷川博己さんなんて、明智光秀と聞いたときはアンチヒーローかと思って期待がふくらんだそうですし。
佐々木蔵之介さんも悪役としての秀吉を楽しんで演じていました。
染谷将太さんなんて、賛否両論ありきの信長像をのびのびと天衣無縫の境地で演じきったものです。
どうにもそれと比べると、今年は小さな箱に手足を折り曲げて入っているような、息苦しさと浅さばかりを感じます。
役者さんが本当に気の毒。
咲き誇れない花ほど哀れなものもありません。
そんな前置きのあと、先週なぜ千代の「ぐるぐる」を私が否定したか、ということですが。漢籍でも。
豎子(じゅし)与(とも)に謀るに足らず。 『史記』
小童め、共に謀略をなすこともできんわ!
要するに
いい歳こいた大人がいつまでもガキみたいな語彙で喋っているんじゃないよ
ってことです。
夫婦の寝室で、睦あいながらならまだしも、あれは妻として提案する場面。
『麒麟がくる』の煕子がああいうしょうもないことを夫に言っておりましたか?
ましてや千代は漢籍を読みこなす教養があった。娘も読書を好んだ母について語り残しています。
そういう聡明な女性を、脚本家の手抜きとしょうもないウケ狙いのために、幼く、愚かにする。
こんな侮辱は度し難いものを感じます。
渋沢千代(栄一の妻)は気高く聡明な女性~しかし夫は突如新居に妾を呼びよせた
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そもそも、あれのどこがよい話ですか?
VIPの接待を頼まれた責任者が、配偶者に責任をぶん投げだと言ってくる。そのおかげでダーリンがいきいきしていた。
こんなこと職場の誰かが言っていたら、むしろ激怒しませんか?
私なら許せません。任命されたのは、あなた自身であって、あなたの配偶者ではないぞ、と。
タイトルだって、あれならいっそ「千代、もてなす」でよかったのでは?
「ぐるぐる! いいよね!」と言いたいのであれば、お好きになさればよろしい。不思議なのは、こちらにまで意見を求めてくること。
一致しないなら、それでもういいでしょう。
大隈綾子が、夫に宛てた手紙をヘラヘラとぶちまけるところは、プライバシーの概念がなさすぎます。
そんなものを妻にまで見せている大隈重信も愚かですが、それをあんな小娘のようにはしゃいでキャピキャピする綾子も情けない。
思慮深さで有名な彼女をこれまた侮辱しています。
そういうしょうもない描写、私は好きではありません。このドラマの登場人物は総じて幼稚で、共に何か計画を練りたいとは全く思えない。何の説得力も感じないのです。
漱石枕流の答え合わせ
先週、「漱石枕流」を引きつつ、もしも致命的なミスを庇うのならばどうなるのかと書きました。
青天を衝け第35回 感想あらすじレビュー「栄一、もてなす」
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◆NHK、国旗逆さまに放送し謝罪 大河ドラマ「青天を衝け」(→link)
そしてありました。
「こんな一瞬の場面なのに、国旗が逆さまだと気づいた国旗考証の先生はエライ!」
「再放送までに修正するなんてエライ!」
「すごい技術で修正するなんてエライ!」
いや……国旗考証なら気づくでしょう。それに修正だってそりゃするでしょう。
技術的にも黒子を消して、初代プレイステーションのようなのべっとした国旗を貼り付けただけのもの。
こんな無理矢理な擁護をしてもらえるのならば、本作は確かに最強だと思いました。
ガチャ運がいいと、視聴者までSSRになる。たまげました。
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
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◆青天を衝け感想あらすじレビュー
◆青天を衝けキャスト
◆青天を衝け全視聴率
文:武者震之助(note)
絵:小久ヒロ
【参考】
青天を衝け/公式サイト