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真田丸レビュー

『真田丸』感想レビュー第32回「応酬」 ジリジリと追い詰められ、胃のキリキリする秋がやってくる

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こんばんは。リオ五輪が盛り上がっております。時差の関係か、四年前の『平清盛』ほど影響はないようです。
ドラマは今週から「秋」、関ヶ原へ向けた新章に突入します。

◆「真田丸」新章突入 毎週ヤマ場 家康に敵わぬ…三成の焦燥感 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能
◆堺雅人「真田丸」後半戦は「浅い呼吸」究極の自然体「流されるだけ」 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能

先週のタイトルは「終焉」でしたが、秀吉の死=豊臣政権の終焉といえる気がします。
もちろん秀吉のあとは秀頼が跡を継ぎ、大坂の陣による滅亡まで豊臣と徳川による支配が続くわけですが、「死に体」に延命処置を施しているようなものでしょう。

そんなわけで本編です。新章突入らしく、新キャストも大勢投入します。

 

出浦は生きていた、が、昌幸の感覚のズレに……

まずは視聴者が気になっていた出浦昌相の生死から幕を開けます。

人物関係図から消えていないことから生存説が有力でしたが、全身火傷を負い、有馬温泉で佐助とお供に療養中とのこと。ちょっと個人的に意外だったのが、昌相が火遁で火傷を負っていることで、てっきり火傷を負わないトリック込みでの忍術かと思っていたので驚きました。ハイリスクなんですねぇ。

真田丸出浦昌相霜月けい

大事な人の生死を確認できたところで、話は真田昌幸に向かいます。なぜ問題の多い計画で、徳川家康に刺客を放ったのか。そんな風に信幸・信繁が問いただすと、昌幸は「乱世に戻し、旧武田領奪還を狙っていた」とか。やはりこの人の感覚はずれてきたな、という目で見つめる息子二人がなかなか切ないものがあります。

昌幸は一応真田家の家長ではありますが、ゲームの流れを決めるのは息子の方です。何かと彼が精彩を欠くのは、全盛期が過ぎ去ったからでしょう。

本作において昌幸が一番輝いていたのは、春日信達を謀殺したあと上機嫌で風呂に入っていた第八回から、第十三回の第一次上田合戦あたりだったのだなと。今後も見せ場があるとはいえ、なかなか切ないものがあります。

そこへきりから、豊臣秀吉の訃報が届きます。

 

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巨大な漬け物と化した秀吉の亡骸

徳川屋敷では「どうせ命を狙われるなら、思い切って天下を取ってしまったらいかがでしょうか」と、けしかける本多正信。しかし家康は「くどい」とあしらいます。彼のヤル気スイッチはどこで切り替わるのでしょうか?

茶々は秀吉の死に対して冷淡ですが、糟糠の妻である寧は遺体のそばに寄り添います。三成はその横で、秀吉の遺体を塩漬けにして、大きな甕に詰め込むように指示。防腐のためとはいえ、漬け物のような処理をされるのが不愉快なのでしょう。寧は私の聞こえないところで話せと苦言を呈します。

すっかり巨大な漬け物のようになった秀吉の遺体には、好感情を持っていない「きり」すら同情気味です。そして秀吉の塩漬け遺体は、城の一角で安置。生前は絢爛豪華な天蓋付きの寝台に寝ていたのに、今や甕に詰められ黴臭い一角で放置されるとは……まさしく諸行無常です。

真田丸豊臣秀吉

信繁は秀吉の死によって、馬廻りのお役目御免となります。継続して秀頼の馬廻りとなるかどうか。三成は信繁に今後の進退を尋ねます。

信繁はここで誰にも相談することなく、己の義にのみ従い運命を決めます。石田三成のそばにいて、彼を支えるアシスタントになりたいと志願するのです。

「犬伏の別れ」よりはるか前、この次点で信繁は進路を決めてしまうわけです。三成もけなげな信繁が嬉しかったとは思いますが、実際に役に立つかどうかはまた別の話でしょう。

 

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「たまには頭を使って自分で理由を考えてみろ!」

秀吉の訃報を聞いた家康は、一人きりで何者かに向かい深々と手を合わせます。

この合掌の場面が長く、何か大事な要素があると思わせます。

家康は呼び出した秀忠に、即座に江戸へ戻るよう指事を出します。理由がわからず戸惑う秀忠を、家康は「たまには頭を使って自分で理由を考えてみろ!」と一喝。家康の真意は何でしょうか。それにしてもこの秀忠への一喝ぶりが今までの家康とはひと味違うような気がしました。

真田丸徳川家康霜月けい

三成は秀吉のうわごと以来、家康を厳しくマークしています。しかし三成本人では家康に対抗できません。三成の人望は秀吉のバックアップがあってこそです。

となると、豊臣に忠義を誓う老衆や奉行が必要となるわけで。そうした老衆の一人が前田利家です。

前田利家といえば2002年の『利家とまつ~加賀百万石物語~』(利家役は唐沢寿明さん)で主役をつとめたほどの有力武将。秀吉とも古い知り合いであり近しい人物ではあります。

しかし『軍師官兵衛』や本作のように、秀吉にさらに近いという設定の人物がメインのドラマですと、関ヶ原前夜の秀吉死後にやっと出てくるパターンになりがちでもあります。『軍師官兵衛』では黒田官兵衛からオブラートにくるめた本音「死に損ないがすっこんでろ」を言われておりましたが、本作はどうでしょうか……。

はい、本作でも既に病床にありました。
「わしの目の黒いうちは勝手な真似はさせぬ!」
とかつての名将である利家は言うわけですが、誰の目から見ても死期は近いでしょう。利家の代理は嫡男の利長がつとめますが、あまり頼りになりそうにありません。

 

いったんは三成の葬儀スケジュールに同意する

ライバル不在の中、家康はすっかりふてぶてしくなり、五人の老衆と五人の奉行のリーダー然として振る舞います。

とはいえ、まだ野望は隠し通し、三成が提案する葬儀スケジュールに同意。秀吉の葬儀は、朝鮮に出兵している将兵の期間後と決まります。三成は十名の評定の際にもきっちり資料を作ってきて、有能ぶりを見せます。

真田屋敷には久々に矢沢三十郎がやってきます。彼を迎え、真田家の面々はなごやかな団らんを楽しみます。しかし信繁は、いつの間にか真田家の女性たちまで秀吉の死を知っていることに危機感をおぼえます。これは完全に情報漏洩ですね。三十郎は、昌幸が精彩を欠いていることに懸念を抱いているようです。

真田信幸に離縁されて侍女に格下げになったはずのおこうは、何故か信幸正室の稲と並んでおります。いつの間にか側室に格上げでしょうか。

その信幸は、徳川屋敷の宴に呼ばれているそうです。信幸はここで秀忠が江戸に戻ったことを信繁に伝えます。ナゼ急に江戸へ戻ったのか。その意図を計りかねる息子たちに、昌幸はボソッと、しかし内容鋭く語ります。

「父と子をバラバラにしておくことで、いざというときどちらかを残すのだ」

本能寺の変における織田信長・信忠の二の舞を避けるためだ、という意図での分析を披露したのでした。

霜月けい真田丸真田信幸

 

宴を開き、招待客を取り込もうとする正信の老獪

家康は野望実現のためには様々な手を尽くします。

その尖兵の一人が、女版・本多正信の阿茶局。彼女は寧と茶々に、「三成のせいで秀吉の葬儀が決まらないようだ」と吹き込みます。寧に呼び出された家康は、しれっと阿茶局の言葉を認め、三成を責めます。
真に受けた寧から呼び出された三成は、評定で朝鮮からの撤退後からだと決めたはずだと弁解します。寧は「誰を信じたらええの?」とすっかり困惑している様子。

寧と違い、茶々は葬儀にまるで関心がありません。彼女の関心は息子の秀頼にのみあるようです。さらに茶々は、秀吉の遺骸が安置された場所のうら寂しさにおかしみすら覚えます。茶々が生前、甘ったるい声で秀吉の寵愛を受けながら心はこうも醒めていたと思うと、なんだかゾッとさせられます。

徳川屋敷では、宴会部長のような伊達政宗らを招いて、盛大な宴を開催。招待客たちは浮かれ騒ぎ、上機嫌で酒食を楽しんでいます。

そんな中、政宗が突如シレッと言い出します。

「実はある噂を聞いたのだが、太閤は既に亡くなっているのでは?」

正信は「さようなことは……」と何か含ませ否定とも肯定ともとれる曖昧な返事をします。政宗はあいかわらずへらへらと「失礼しました~」と軽薄な態度を取るわけですが、彼はこのやりとりで完全に秀吉の死を悟ったと思えます。

さらに正信は、政宗の娘(五郎八)は今いくつかと尋ねています。正信がこの状況で、世間話のように政宗に娘の年齢を尋ねるわけがありません。裏が必ずあります。

真田丸本多正信霜月けい

 

酒を酌み交わしたい清正と空気の読めない三成 溝は深まるばかり

これに焦った三成は、負けてはいられないとばかりに宴を開催するのですが……見ているだけでわびしいほど、人が集まっておりません。宇喜多秀家や小早川秀秋など、既に豊臣に親しい大名たちばかり。例外は遅れてきた細川忠興です。

本作では宴席における接待において家康の工作をあらわしていますが、史実ではさらに様々な行動で大名の心をつかんでいました。たとえば秀次の死後、秀次と親しいという理由で処分されそうになった政宗や細川忠興を弁護したのが家康です。
忠興は家に帰ると、愛妻の玉(ガラシャ)に「行くんじゃなかった。ガラガラだった」と素直な感想を漏らします。

その玉のもとには、なんと「きり」が切支丹になりたいと訪ねて来ておりました。フランシスコ吉蔵のように殉教する覚悟はあるのか尋ねられると、彼女は躊躇します。もっと学んでから入信した方がよいのではないか、ここに通ってきたらどうかと提案する玉でした。この展開、きりはおそらく玉の最期に関与することでしょう。

十一月、朝鮮から肥前名護屋に加藤清正が帰国しました。

三成は今後ともに秀頼を支え守ろうと清正に持ちかけます。

三成は清正に、
「お前は築城も内政も結構いけてるし、ただの戦バカではない」
と言います。

うーん、戦バカって。もっと口の利き方ってあるでしょうに。

清正は三成の態度に気に入らないものを感じてはいるものの、秀頼に尽くしたい気持ちは同じです。三成は清正のために慰労会を開きます。

ところが三成は、残業があるからと飲み会から帰ろうとします。自分から飲み会をすると言いながらこの仕打ち。感じが悪いですね、この社畜め。三成の空気の読めなさに清正は怒り、「お前と飲みたいんだよ!」とキレます。しかし三成は、結局清正を振り切って退席してしまいます。

真田丸石田三成

 

太閤はまだ死んでない よって縁談も問題はない

三成の留守中、家康はせっせと伊達政宗や福島正則と縁談を進めていました。

徳川屋敷では、やっと信幸が舅の本多忠勝に対して、おこうと稲の同時妊娠を打ち明けるはめに。忠勝は「それだけ婿殿はラブな人ってことだな。そのラブで稲をハッピーにすればそれでいい」と、なんと優しい笑顔を向けます。よかったね、信幸、半殺しにならずにすんで。

が、実は信幸の目的は別のところに。信繁が家康に聞きたいことがあるそうです。信繁は家康に対してストレートに用件を切り出しました。

「なぜ勝手に伊達政宗の姫と、そちらの五男の縁談を進めるのですか? 太閤殿下のご遺志を無視してどういうつもりですか?」
「遺言っていうのは死後発効するんだろ。でも、殿下はまだ亡くなっていないし、葬儀もまだだろ。なら遺言は無効だよな? 何か文句ある?」

あまりにあっけらかんとしている物言いに、信繁は言い返せません。

霜月けい真田丸真田信繁

明けて一月、やっと秀吉の死が公表されます。三成は清正が家康の娘を娶るという知らせに激怒。もう家康を老衆から排除するほかないと思い詰めます。

相談された吉継は「そんなことをしてはいけない、時を待つべきだ」と助言します。しかし三成はそれでは遅いと聞く耳を持ちません。どうしてもやるつもりなら「家康と三成の対立構造」には持ち込むな、と吉継は言う他ありません。

吉継は信繁と親しい老衆の上杉景勝に家康糾弾を頼むことにします。

病状がすすみ、書状を書くのもやっとの吉継。この頼みを聞いた景勝は「任せておけ、太閤殿下を裏切る奴はゆるせないぞ!」と勇ましく言いますが、家臣の兼続はしらけきった顔です……嫌な予感がしますねぇ。

 

家康を前に何も言えなくなる景勝 その横で兼続が……

いざ評定の日。老衆たちは「家康はけしからん!」「許すな!」と意見をあわせ、家康を問い詰めることにします。

しかし家康はのらりくらりと「掟のことなんて忘れてた。昔のことはよく覚えているんだけど、三方原では……」とシラを切り、相手を閉口させます。さらに返す刀で「おまえら俺をないがしろにするって殿下の遺言に反しているだろ。なめてんの?」と反論する始末です。

景勝は、
「忘れたですむ話ではない」
と蚊の鳴くような声で何度か言います。

家康は掌を耳の横につけるどこかで見たようなポーズを取りながら、景勝に迫ります。
「あ~~~きこえんな~~~」
「な、なんでもござらん!」
と逃げるしかない景勝。一瞬見える信繁と兼続の顔が、何とも言えない表情をしております。

真田丸上杉景勝霜月けい

真田丸直江兼続霜月けい

ここで三成が立ち上がり、家康を問い詰めるのですが……。

「忘れたのだろうが、掟を破ったのは事実。九人の合議で老衆をしりぞいてもらう!」
「いいと思ってるの? 俺を排除して。俺を閉め出そうとするなんて、あまりにあさましい、政治を私物化したいの? 君側の奸が出る幕ではないわ」

ああ、もう、まるで格が違う。家康の言葉に激昂する三成が弱々しく情け無く見えます。

三成は秀吉の遺骸を前にして、何やら決意を固めます。そして彼は、信繁にこう告げます。
「腹は決まった。徳川屋敷に夜討ちをかける。家康の首を取る」

嫌な予感しかしません。果たして結果は?

 

MVP:徳川家康

「秋」の章からは、いよいよ家康が最大の敵として立ちふさがります。ヒールターンの回です。

今週前半の家康はまだ頼りなく、どの程度本気で天下を狙っているかわかりませんでした。しかし秀吉の死を知り、いよいよ牙を剥きます。秀忠を呼び出す前に合掌する場面で、そのスイッチが入りました。

そこからは頼りなかった頃が嘘のように、口八丁手八丁で三成を追い詰め政権簒奪にかかります。

第十七回で家康は、芝居が下手だと自ら言い、ぎこちない演技で秀吉と会見しました。さらにさかのぼれば第五回の伊賀越え、第二回の初登場。あのころから格段に進化し、手の付けようのない悪役と化しました。この変貌、存在感、実に見事です。

 

総評

本作はユーモアがあると評される一方で、大変意地が悪い作品です。

秀次が追い詰められる描写、秀吉が老衰してゆく描写で、視聴者もそれがわかったと思います。先週「夏」の章が終わり、あのじわじわと追い詰めるパターンが終わったのかと言いますと、それは違いました。シチュエーションを変えてまた追い詰められます。しかもその追い詰められる中に、主人公である信繁はさらに深く飛び込んでゆきます。

結論から言いますと、信繁が天真爛漫にふるまえていたのは「春」まででした。これからは最期まで、ひたすらじりじりと追い詰められます。鬱展開において定評のあった『八重の桜』ですら、後半は明るい方向に転換できましたが、本作はそれがありません。

これから三成と信繁が追い詰められてゆく様は「きっと辛いのだろう」と思わされた新章スタート。その原因には、信繁と三成の「無能」ぶりがあります。

負けてゆく中だろうと最低限主人公はきびきびとしていて有能であるのが、この手のドラマだと思います。しかし、本作は主役もその盟友もその点では何かが足りないのです。

愚かなわけではありません。むしろ二人は頭が切れ、実務能力もあります。ただしこの才知あふれる二人は、豊臣秀吉の機嫌をとり、その命令を実行にうつす方向にのみ、その能力を特化させてしまいました。秀吉がいない今、彼らは方向性を失い追い詰められてゆくだけです。

実はこの信繁の無能ぶりの前には、別の主役格の人物が同じような状況に陥っていました。真田昌幸です。武田信玄の家臣として、地方の国衆としては能力を縦横に発揮した昌幸。しかし世の秩序が変わると、彼の能力もまたもてあまされ、使い道がなく、かえって実力があるがゆえに目が曇ってしまいました。「春」に冴えわたり、「夏」に色褪せたのが昌幸であったわけです。

そして今度は息子の信繁まで、似たような状況になりつつあります。この父子がそうして時代に適応できず色褪せた結果がどうなるか。それはもう歴史が証明しているわけです。

真田父子にせよ、石田三成にせよ、人気も実力もある人物たちが時代に適応できずに自滅し、輝きを失ってゆく様をじっくりと描く――。それが本作の本質であり、実に意地の悪いところだと思います。そういう底意地の悪さが嫌いであるという人がいてもおかしくはないでしょう。ただし、その意地の悪さのさらに下には、どんな状況でもできる限りの力を発揮する人間への賛歌や、あたたかいユーモアがあるのは救いでしょう。

胃のキリキリする「秋」が、これから展開するのです。

 

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著:武者震之助
絵:霜月けい

 




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