すごく意味ありげで、いかにも「重要なセリフを吐いてますよ」というアピール感が凄まじい。
しかも、あまりにスカした表情で語るため、見ているこちらが本気で恥ずかしくなってきます。
共感性羞恥で自分を殴りたくなるほどだ。
だって、あの恥ずかしいニックネームを、信長は秀吉の前でも言っていたということですよね?
家康の「秀吉を倒す!」宣言も、とにかく虚しい。
かつては信長に対してもそう断言していましたし、この後も結局は秀吉の妹・旭姫をマザーセナ以来空白だった正室にしますしね。
マザーセナを教祖として崇めているようでいながら、性的なことは別。
旭姫がその対象となるかどうか不明ですが、カルトとしての生々しさだけはリアリティのあるドラマです。
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どうする秀吉への面会
秀吉に挨拶をするため、順番待ちをする人々。
僧衣やら貴族やら、なんだかそれっぽい人々が並んでいますが、天下人への挨拶を頼む場面としてはあまりにフランクすぎやしませんか。
『麒麟がくる』の場合、高位の人物に会うとなれば結構な手間暇がかかることがわかりました。
駒や東庵は名のある人物とホイホイ会えたではないか、という反論は別の話。
彼らは特殊技能持ちだからこそのルートがありました。
『鎌倉殿の13人』は、官位が重要です。北条政子の官位が飛び抜けて高いからこそ、朝廷と交渉できた。
それに引き換え、本作の面会ってなんでしょう。
人気のラーメン屋じゃないんだから、全くリアリティを感じさせず、セキュリティもザル。
髭ヅラ秀長の説明セリフもしんどい。どうしたってビッグモーターのCMイメージが先行してしまい、興が削がれます。
まぁ、こればかりは不運としか言いようがありませんね。ドラマが現実を超えられなかった。
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どうするお国言葉
このドラマは差別への意識が薄いことも欠点。
秀吉と秀長、死を目前とした明智光秀がお国言葉になります。
大河でお国言葉を使うことそのものが悪いのではありません。貶める手段として用いることが問題です。
今時この認識なのかと驚きました。
この描写だと、お国言葉を使う人間を貶めているニュアンスがあると思われかねない。
実際、昭和のテレビでは平然とそうした使われ方がありました。
しかし、2020年代にもなってこの感覚とは、愕然としてしまいます。脚本家が同じ映画『レジェンド&バタフライ』も同じようなお国言葉の使い方をしていました。
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脚本家の古臭い手癖なのかもしれませんが、実際に映像化するまでに誰か止められなかったのでしょうか。
どうする秀吉
秀吉の下劣さが止まらない。品位が何もない。
役者の問題ではなく、脚本はじめ作り手が権威や身分秩序を理解できていないせいでしょう。
『鎌倉殿の13人』はこの点高度でした。
時代劇の所作となると、歌舞伎役者は一段上であり、例えば、坂東彌十郎さんや片岡愛之助さんは、敢えてちょっと崩すような演技に見えました。
野蛮な坂東武者のようで、芯が通っているような人物像だった。
中村獅童さんは、坂東武者でも品位ある雰囲気。
尾上松也さんの高慢と気品が入り混じった風情は、もう説明するまでもありませんね。
演技指導が無茶苦茶な本作に何を言っても無駄だとは思いますが、『鎌倉殿の13人』の北条時政のように、わかっていてあえて崩しているような振る舞いにはできないものか……。
今回の秀吉は、ただただ不愉快なだけです。
どうする迫力不足
秀吉が書状を書く場面。
今回も筆の持ち方がおかしい。
そもそも秀吉は出世したのだから祐筆を使えばよいのでは?
さすがに大河スタッフが祐筆を知らないとはあり得ないでしょうが、こうした描写があるから、どうしても出世した感じが出てこない。
秀吉が信雄にグイグイ迫るところも、どうにもくだらない。
一喝するなり、睨みつけるなり、できないのでしょうか。
こんなに怖くない秀吉は前代未聞です。
秀吉の残虐さを示す信孝の死が、ナレーション処理されたら台無しでしょうよ。
本作は、豊臣秀次とその妻妾の死も簡単にすっ飛ばしそうですね。いや、若い美女を殺すことは好きなようだから、じっくり描くかもしれません。
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どうする色彩感覚
秀吉の下劣さは、どうしようもない衣装にも一因がありそうです。
この作品は全体的にカラーパレットがおかしい。
『中国の伝統色』(→link)という本には、色の説明に歴史劇の衣装で使われていたということがしばしば言及されていました。
あざやかな使い方で素晴らしいといったことが書かれている。
そういう色の意味合いや使われる意味を考える楽しみ方が今年の大河ドラマにはありません。
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