第五回がかなり好き嫌いの分かれそうな出来でしたので、その結果を反映してのことかと思います。
ただしBS流れ組もかなり多いようです。
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昌幸は電光石火の勢いで沼田城を奪回! しかし……
さて本編。今までも、息子を騙したり、臣従した相手を騙したり、ろくでもないことをしてきた真田昌幸。
しかしここまでは軽い準備運動のようなもので、今週からは本格的に「自分の城絶対取り返すマン」として、ウザすぎる謀略を繰り返します!
昌幸が今後やることといったら、城を取り返すために汚い手を次から次へと繰り出すことばかりです。
先週、昌幸は北条と滝川を焚きつけました。北条に攻められた滝川一益は大苦戦し、敗北してしまいます。
北条家には名前の区切り方がわからない人物として定評のある、板部岡江雪斎が初登場。
某刀ゲームのおかげで知名度があがっている人物です。
北条氏政はこの江雪斎の報告を受け、布団の中でグフフ笑いします。氏政は汁かけ飯だけではなく、気持ち悪い笑い方も特徴になるのでしょうか。
昌幸は電光石火の勢いで沼田城を奪回(火事場泥棒とも言う)。
しかし、人質は一益に連行されていたようです。
勝手に城を奪回したと一益にバレたら、ヤバイんじゃないですかと今週も焦りまくる信幸兄さんですが、昌幸は「こうなっちまったからには仕方ねえじゃねえか!」と開き直り、人質を捜すことにします。
しれっと一益の元へ向かう昌幸と信繁。ここで一益がうれしそうにするのが切ない。
昌幸は渾身のいい人演技をして一益に接します。
吐き気を催すレベルの偽善演技に、見ているこちらは思わずガッツポーズ。面白いから仕方ない。
一益は、昌幸の母は息災だが人質として旧武田領内脱出まで連れて行く、と丁寧に言います。
こんな人のいい一益さんを騙す奴は、本当に反吐が出そうな悪党だぜッ! 主人公の父親のことなんだけどな!
「真田の城なんだけどな、おまえに返すことにした」
人質となったとりときりは、それなりに元気にやっています。
きりは侍女として最悪の対応をするのですが、ばばさまには勝てずあしらわれてしまいます。
きりはとりの頼みを受けて水をもらうため、番兵にかけあいます。
するとそこへ、人質捜索のために潜入してきた信繁が。
大喜びで抱きつくきり。ここでも空気を読まないツンデレぶりが炸裂し、視聴者の憎しみが集中しそうに思えてきますが……キャラ改変あるのかな。
信繁たちは、とりあえず今日は助けられない、いずれまた来ると告げて脱出します。
昌幸は一益に、沼田と岩櫃のことをおずおずと切りだします。
「真田の城なんだけどな、おまえに返すことにした」
【悲報】昌幸、一益さんの善人ぶりを見誤る
ギャアアアアアア! 本当に先が読めるならこんなことにならなかったんだよ! 策士が策に豪快にダイブして溺れまくりだよ!
それにしても昌幸の自業自得とはいえ、針のむしろみたいな会話になっています。
一益が本当に善人としか思えない言葉を語り続けていて泣けます……善人が酷い目にあうのが戦国時代なんだ……辛い、辛すぎる!
昌幸は「やべえ。こんなあっさり返してくれるなら、もうちょっと待つんだった」と焦り出します。この人、結構駄目な奴なんじゃないか。
一益は、北条で自分たちが苦戦していり間、沼田と岩櫃を真田がちょろまかしていた真相を知ります。
案の定、一益激怒。
ここはもう百パーセント一益に感情移入してしまいますね。
今さら実行できるプランBがない真田家。開き直って謀略を進めるしかありません。
信繁はこそこそと小諸城に入り、人質奪還を企てます。
この信繁が出会うモブの小諸の兵士がこれまたいい人でしてねえ。台所におにぎりまであるから食べて行きな、とか言うんですよ。
そんないいひとばかりの小諸城を騙しまくり、とりときりを奪回する信繁たち。
ここでもきりは空気を読まずに、櫛を忘れたと取りに戻るんですよ。もうこの娘ときたら困ったもんだ。
きりが忘れ物したせいで、人質奪回作戦は危うい展開に。
きりにヘイトが集中する作りではあるのですが、まあ誰かがバカをやらないとあっさり終わってしまうんですよね……とはいえ、これ以上きりを残念な子にするのはかわいそうですぞ。
立ちふさがる木曽義昌 武田憎しで我らも危ないか!?
そしてついに、ぐずぐずしていると一益がやって来て信繁と出くわしてしまいます。
ミッション失敗。
一益は「人質を取り返すということはもう敵に回るんだな?」と言い出します。
ミイラ取りがミイラになってしまった信繁と頼幸。きりはまた空気を読まずに「こんな奴らが奪回なんかできるわけないでしょ!」と毒づきます。
あんたが忘れ物したからだよと頼幸につっこまれますが、「どのみち失敗したでしょ!」と開き直ります。おまえなあ〜……。
真田の郷では、堀田作兵衛が武装し、その妹の梅も屋敷を守る人のために食料を持参して来ました。
薫は不穏な空気を感じています。
昌幸は滝川一益が小諸城に止まっているとの情報を佐助から得ます。どうやら木曽義昌が足止めをしているようです。
木曽義昌は真っ先に武田家を裏切り織田についたのに、今更武田家を滅ぼした織田家臣は許せないと言い出したようです。
秀吉は中国をぶっちぎっていたのに、どうやら清洲会議に遅刻しそうな一益さん……可哀相すぎます。
彼にとって信濃は魔界なのか。
祖母ともども人質となった信繁は、木曽へ向けて移動中。
木曽一族は織田家に寝返ったことにより、勝頼にあずけていた人質を処刑されています(第一話)。
武田家臣を恨むあまり、真田一族にも危害を加えてくるかもしれないと言い出す信繁。さあどうなるのか。
木曽義昌は真田家の人質を要求。
これでやっと一益は清洲会議に向かうのですが、遅刻して天下取りレースから脱落します。辛い。現実辛い……。
一方、木曽一族に捕まった信繁たちは、義昌から「おまえらは俺が大名になるための駒だ! わはははは!」と小物感剥き出しの演説を聴かされます。
人質としてローテーションされる主人公一行。きりはわがままを言いまくり、真田に帰りたいとべそべそ泣くし、困ったもんです。
信繁がきりを慰めていると義昌がやって来ます。
ところがとりの前に来ると、まるで祖母に対する孫のような態度になります。
信玄の前でおもらししたとかバラされる義昌。
さらにとりから武田家を裏切ったなと叱られ、ビンタされる義昌。
なにこのかわいい生き物?
とりは人質を返せ、せめて信繁だけでも返せと交渉開始。ばばさま無双じゃないですか。
信繁は「ええっ、ばば様を奪い返すために来たのに、ばば様にかえって救われるなんてそりゃないよ~」と言うわけです。
ついでにうるさくて鬱陶しいきりも信繁にくっつけて返せと言い出すとり。強いぞ、いいぞ、ばば様!
上杉を内部分裂させて北条に攻めさせればワシが戦功第一よ!
昌幸は、出浦昌相から室賀正武はじめ国衆は北条についたと報告を受けます。
昌幸は昌相に、自分は北条につかないけれども、出浦はとりあえずついて様子を探って欲しいと指示を出します。
二週連続で人質救出に失敗した信繁はどんより落ち込みながらも、真田の郷に帰還します。
ぶーたれる弟に対し、信幸は「俺も岩櫃任されて手一杯。慰められなくてごめんな」と正直に言います。この裏切り者だらけの中、誠実な信幸は一服の清涼剤です。
昌幸は上杉家にしつこく押しかけます。
上杉家は露骨に迷惑そうな態度を取りますが、上杉景勝はついに断り切れず受け入れることになります。
直江兼続、本当に「うわっ……」という顔をしていて笑えました。だって昌幸がつくと呪いかかるもんね。そりゃ断りたいよね。
人質奪回を失敗した信繁は、昌幸に「勘に頼り過ぎるな!」とお説教。
しかしここは「おまえが言うな」とツッコミたい。
昌幸は「でもおまえは勘に頼りすぎるから面白いんだよ。兄の方はクソ真面目でつまらん。二人でユニットを組め。そうでないとおもしろくない」と一体アンタそれでいいのか!?という結論に達します。
絶対この会話、信幸には聞かせたくありません……。
ここで昌幸は次のミッションを信繁に託します。
「上杉家の春日信達を裏切らせろ。俺が北条につくときの手土産にする。春日に上杉の背後を突かせ、北条と挟み撃ちにすれば俺が戦功第一よ!」
ゲ、ゲスの極み……ッ! だから昌幸を臣従させたらいかんのだ! 真田の大勝負は始まったばかりって汚い、流石真田汚い。
今週のMVP:ばば様こととり(&木曽義昌)
男どもがジタバタ空転し、きりはウザさの極みとなっている中、唯一まっすぐ地に足を付けて歩むようなばば様無双でございました。
今週の聖人枠:滝川一益
戦国時代にそれでいいのかと思うくらいホワイトエンジェルであった一益さん。
本能寺の変のあとといえばみんな秀吉快進撃に注目するのですが、信濃という魔界にいたばっかりに、天下取りレースからひっそりと消えた彼を時々思い出してあげてください。
歴史って残酷ですね。
総評
Q:本作はなぜ家族愛を強調するのですか?
A:本作の家族愛とは「家族のためならどんな汚い手を使ってもそれは愛」の略です。先祖が築いた城や人質となった家族を取り戻すためなら、裏切り謀略なんでもありの世界です。でもそれをそのまま全面に打ち出すわけにはいかないので、誤魔化しています。中身はヒーロー映画の『ベイマックス』が、宣伝ではやたらと家族愛を強調していたようなものです。
Q:本作の「今だって、愛と勇気の旗をかかげていいんだ。」というコピーはおかしいのではないですか?
A:本当は「戦国だから、策と謀を正当化してかかげていいんだ。」があっています。でもそれだと番宣に使いにくいでしょ? 本当はゾンビ映画なのに、宣伝では感染がどうこう、ブラピが家族を守るとか誤魔化していた『ワールドウォーZ』みたいなもんです。
思わずそんな想定問答集を考えてしまいました。本当にさわやかさがかけらもないひどい回でした(褒め言葉)。特に昌幸のド外道ぶりが際立っています。ギャグっぽい演出が賛否両論の本作ですが、シリアスに昌幸の行動を描いたら毒気にあてられて辛くなりそうなので、苦肉の策という気はします。
真田家は波間を漂う小さな小舟だったのが先週までならば、今週からは「むしろ波を積極的に起こすスタイル」に転換しました。自分の船だって危ないけど、巻き込んだ周囲の人間をどす黒い渦に巻き込み沈める様子は、まさに呪われた船に乗る海賊です。自分で勝手に策に溺れるならばまだしも、周囲を巻き込むから始末が悪いという。
こんな難しい題材、本当によく挑むなあと毎週思います。今後絶対「主人公父子がド畜生過ぎる」という理由で視聴率は伸び悩むと思いますが、真田という題材の時点で予測できる事態でした。むしろ真田に何を期待していたんだ、と。真田という題材の時点で大博打が始まっているわけで、あとはこのチキンレースをどこまで逃げずに続けられるかという、スタッフの胆力勝負ですな。
最後に、まだどうにも意図がわからないのが、きりです。
同じく不評女性枠だった松は、先週の一時退場前は他の人質を逃がし指示を出すという機転を見せていました。ところがきりは人質奪還作戦では脚を引っ張るわ、主人を置いて帰ることを喜ぶわ、無責任で自分勝手で今のところよいところがひとつもありません。声のトーンがやたらと高い演技であることも災いし、きりは相当なウザキャラになっています。
ただ、きりの場合、彼女は作中で他の人物から嫌な女、うるさい、鬱陶しいと軒並みけなされているんですね。彼女が欠点のある人物であるのは、脚本としては想定通りということです。昨年のヒロインのように、脚本の意図では理想の女性として描いたはずが最低最悪の性格に仕上がっていて、周囲も褒めまくる、そういう滑り方をしているわけではないのです。脚本の意図はどのへんにあるのか、まだわかりません。今週の場合はどうしても信繁は失敗しなければいけないわけで、その尻ぬぐいをきりに押しつけているようにも見えます。損な役回りのヒロインです。
そんなわけで視聴率は乱高下の本作ですが、出演者が話題性十分なのは朗報。
海はないけど山はある~っ! 真田家の信繁正室というわけですね。元気いっぱいキャラかな。若手でも屈指の実力派なので楽しみです。
そしてこちら。朝ドラで人気となった・・・
◆ディーン・フジオカの「真田丸」出演が内定か 旋風続く?(→link)
スポーツ紙の記事なので信憑性はさておき。以前、伊達政宗役はどうかと予測したことがあるだけに、気になるところです。
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霜月けい・絵
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真田丸感想