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信長公記 戦国諸家

信長を喜ばせた安部二右衛門(村重家臣)の寝返り~信長公記174話

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安部二右衛門の寝返り
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万見重元が無念の討ち死に

翌12月4日、滝川一益丹羽長秀が、兵庫・一の谷を焼き払って軍を返し、塚口に陣を張って伊丹城に睨みを効かせます。

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丹羽長秀
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徐々に追い詰められていく伊丹城。

ただし、城内の士気は高かったようで……。

12月8日には織田軍が伊丹城へ攻撃を仕掛けましたが、攻めきれません。

堀秀政・万見重元・菅屋長頼の三人が鉄砲隊を率いたり、お弓衆が三隊に分かれて火矢などを放ったり。

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城のすぐ近くまで詰め寄ったものの、荒木軍が城壁の際で防戦、織田軍は内側へ入れなかったのです。

また、この城壁での戦いで、万見重元が討ち死にしていました。自ら塀を乗り越えようと試みて、薙刀に突かれたのだとか……。

重元はどちらかというと武将というより吏僚に近く、歳もまだ若かったと推測されているため、功を焦ったのかもしれません。

側近・重元の戦死を重く受け止めたのか。信長は12月11日、力攻めから持久戦に方向転換。

これまで味方についた城はもちろん、伊丹の周辺複数箇所に砦を築き、一門衆や武将たちを配置しました。

 

動かせる戦力を全て用いた

どの砦に誰が入ったのか?

『信長公記』に掲載されていた武将をざっと書き出してみますと……。

・丹羽長秀
・蜂屋頼隆
・蒲生氏郷
・高山右近
・織田信孝
・織田信包
・滝川一益
・織田信雄
・武藤舜秀
・池田恒興
・池田元助
・池田照政
・中川清秀
・古田重然
・稲葉一鉄
・氏家直通
・安藤定治
・芥川
・津田信澄
・塩河長満
・織田信忠
・大津長治
・牧村利貞
・生駒一吉
・生駒一正
・湯浅直宗
・猪子一時
・村井貞成
・武田佐吉
・福富秀勝
・下石頼重
・野々村正成

相当な規模で取り囲んでいることが一目瞭然。

先述の安部二右衛門や高山右近・中川清秀など、織田方について間もない者も含まれていますね。当時、動かせる戦力を全て用いた――ということでしょう。

また、佐久間信盛明智光秀筒井順慶には、三木城を包囲中だった羽柴秀吉の援護も命じています。

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まず道場河原と三本松に要害を築き、秀吉の兵を入れて新たな拠点としました。

その後、播磨へ向かって、秀吉軍の砦各所に兵糧・鉄砲・弾薬を補給したり、砦の補強を行ったりした後に帰還。援軍というよりは、後方支援ですね。

筆頭家老である佐久間信盛、丹波攻略も担当していた明智光秀、信長と縁戚でもある筒井順慶――このビッグネーム三名が請負う仕事にしてはいささか地味に見えますし。

ともかく、

・織田軍主力が取り囲む【伊丹城】

・主に秀吉が取り囲んでいた【三木城】

という両城への攻撃体制は続きます。

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長月 七紀・記

【参考】
国史大辞典
太田 牛一・中川 太古『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon
日本史史料研究会編『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon
谷口克広『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon
谷口克広『信長と消えた家臣たち』(→amazon
谷口克広『織田信長家臣人名辞典』(→amazon
峰岸 純夫・片桐 昭彦『戦国武将合戦事典』(→amazon

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