絵・富永商太

武田・上杉家

甲州流軍学(家康が学んだ信玄のノウハウ)なぜ徳川軍に採用されたのか?

甲州流軍学――。

はたまた「甲州流築城術」という言葉を聞いたことございます?

戦国ファンの皆様であれば、一度は興味を惹かれたことと思いますが、この言葉が普及するすべてのキッカケは、実は一人の武将でした。

現在の松本城天守を造ったと伝えられる「石川数正」です。

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甲州流軍学は家康が目をつけたことから始まった

徳川家康に付き従っていた三河以来の譜代家臣・石川数正――。

彼は【小牧・長久手の戦い】直後、家康のもとを出奔して豊臣秀吉の家臣になりました。

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当然ながら困ったのは家康です。

なんせ、徳川軍の最高機密となる軍制は、すべて秀吉側へ筒抜けとなったのです。

そんな状態で合戦が始まれば、圧倒的不利な状況に追い込まれるリスクが高まり、徳川としては仕方なく軍制を変更せざるを得ません。

このとき家康が新たに採用したのが武田信玄の流れを汲む「武田流」です。

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恐怖のあまりウンコを漏らした――そんなエピソードで戦国ファンには有名な【三方ヶ原の戦い】。

若き日の徳川家康が、信玄はじめ山県昌景や馬場信春、小山田信茂など武田家の武将にコテンパにやられた合戦があります。

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それ以外にも、何度も何度も際どい戦いをしてきた家康が『取り入れよう!』と思っても何ら不思議ではありません。

石川数正の出奔を機会に採用することにしたのです。

数正が豊臣家へ出奔したのは1585年。

ゆえに関ヶ原の戦い(1600年)までには十分に間に合っていたことでしょう。

 

小幡景憲が立ち上げ、後に北条流や謙信流も

そして関ヶ原の戦い後――。

ほぼ徳川の世の中になりつつある頃、武田の旧臣・小幡景憲が「甲州流軍学」なるものを立ち上げます。

「家康公は如何にして成功したのか」

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「もしも女子マネージャーが甲州流軍学を読んだら」

「秒速で稼ぐ!」

みたいなハウツー販売で一儲け……では、ありませんが、この甲州流軍学がちょっとしたブームを巻き起こします。

平和な江戸時代になっても武士の学問の一つとして隆盛を極めたのです。

後に「北条流」などの分派も誕生。

「謙信流」という、おそらく上杉謙信とは全く関係のない流派まで出てきました。

しかし、です。

合戦の戦略や戦術、武器の運用などを武士が学ぶというのは、幕府にとっては非常に警戒すべきことでもあります。

なので内容的に攻撃的な戦術は徐々に消極的なものとなり、一方で、築城術などディフェンシブな軍学が主流となっていきます。

そうです。
いつの時代もミリタリーマニアは危険視され、城マニアは時代に許容されるのです(笑)

ともかく、徳川幕藩体制下で、甲州流軍学=築城術のような学問になっていきます。

 

机上の学問に成り果てた甲州流軍学

甲州流軍学が絶頂に達したのは江戸時代となります。

ゆえに戦国時代の城郭を甲州流軍学の理論であてはめて考えるのは後付けでしかなく、その城の持つ本来の意義や実力を見誤ってしまいます。

唯一の例外が赤穂城で、江戸時代に甲州流軍学者を招いて縄張りを設計したので、まさにマニアのマニアによるマニアのための縄張りとなっています。

甲州流軍学の真髄が拝めるでしょう。

赤穂城はJR赤穂駅から近いので、姫路城とセットで行くのがオススメですよ。

お城野郎ワンダーキャッスルジャパン20140921-2

赤穂城

では、この甲州流軍学は、どのような変遷を辿っていったか?

すっかり平和な時代となり、しかも【一国一城令】のため城を建て直すことですら容易でない時代に入ると、甲州流軍学はますます机上の空論と化していきます。

学問化しているので、流動性は失われます。

受講者には試験が課せられ、どんなにクリエイティブでキャッチーな縄張り図を描けても、師匠の流派を逸脱するような縄張りは決して認められませんでした。

これでは独創的な縄張りも生まれませんし、進歩もしません。

甲州流軍学は完全に机上の学問に成り果ててしまいました。

しかし戦国時代は「誰が城の縄張りを考えたのか?」という疑問は残ります。

その辺を見て参りましょう。

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