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映画『ヒトラーへの285枚の葉書』レビュー 独裁者を揺さぶる“砂粒”とは?

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機械に挟まる小さな砂粒

労働者として生きてきたオットーは、このカードは砂粒だと語ります。

小さな砂粒が挟まっても、機械は動き続けます。

しかし何度も挟まってゆくと、壊れてしまうと……。

砂粒のようなカードを起き続ければ、ヒトラーが作り出した社会システムという機械がいつかは壊れるかもしれない、と言うのです。

この動機も白バラ運動とは違います。

正義を掲げてすらいない。

かといって彼が正義を意識していないわけでもない。

ただ、語る術や実現する手段を知らないのでしょう。

 

砂粒に意味はあるのか?

クヴァンゲル夫妻の行動を讃えることも。

無駄だと切り捨てることも。

非常に難しいように思えます。意味があったのかどうか、考えることすら躊躇してしまいます。

終盤の破局に近づくにつれ、気持ちはわかるけれども、もっとやり方がないのかと言いようのない苛立ちすら湧いてきます。彼らの最期を見た後は、一体意味があったのかと虚脱感すら覚えました。

しかし本作は、一番残酷な形で砂粒の意味と、機械を壊す瞬間を観客に見せ付けてきます。

本作でクヴァンゲル夫妻と同じくらい、いやそれ以上に苦しんでいるように見えるのは、彼らを追うエッシェリヒ警部です。

彼は戦時にありながら、最低限の正義や良心は持ち合わせた人間であることがわかります。

事件の捜査を通して、彼の正義や良心が摩耗していく過程が見えて来ます。

そんな彼であるからこそ、クヴァンゲル夫妻の送るメッセージが心に響き、揺さぶられてしまいます。

誰にもこんなメッセージは届かないと吐き捨て、クヴァンゲル夫妻を「ホブゴブリン(小鬼)」と馬鹿にしてきたエッシェリヒ。

しかし彼の存在と行動は、メッセージは砂粒となって機械を破壊できると証明してしまうのです。

ラストの数分で、夫妻のメッセージは効果のある砂粒であったとわかります。

良心を備えた機械には特に効果がある、と。

だからこそ躍起になって、夫妻を逮捕し、ヒトラーへの忠誠心と引き換えに良心を無くすように仕向けているのだと。

なぜ独裁的傾向のある支配者は、どんな些細な批判でも封殺するのか――。

そんな問いに対する答えが、本作では「機械に挟まる砂粒」というかたちで示されているのです。

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著:武者震之助

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