こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【鬼滅の刃はパクリ漫画なのか?】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
呼吸を使う
呼吸を使うというのも、これまた独自のようで、実はそうでもない。
瞑想の際、思考力を高める際に呼吸をすることは基本です。
「競技をする前に準備運動をしている、これはパクリだ!」
なんて言う人がいたら、神経を疑うでしょう。「柱」という名称についてもそうです。
『ジョジョの奇妙な冒険』といえば、思い出したことがあります。
筒井康隆『薬菜飯店』という短編をぜひお読みになってください。
ゴゴゴゴゴゴ……とあるスタンドとそっくりの能力がでてくるッ!
こういう一致は、あるものなのです。
ワニ先生にせよ。荒木先生にせよ。インプットが十分だという証拠です。
その他の漫画はどうなのか?
では、その他の漫画とも比較検証してみましょう。
◆『BLEACH』の柱と護廷十三隊が似ているのではないか?
和装、武技により治安維持を担う組織ということで、新選組あたりの史実をモデルとしていると考えられます。
そうなれば似てしまってもむしろ当然です。
こういう組織は、効率的に運用するとなると似た構成になることはごく当たり前のこと。
幕末の諸隊同士も、構成が似ていることが往々にしてあります。
近藤勇が新選組で成し遂げたかったことは?関羽に憧れ「誠」を掲げた35年の生涯
続きを見る
◆才能がある者に技が継承される、血統による継承
これも別に不思議でも何でもなく、人類が普遍的にしていることでしょう。
むしろ血統継承がほとんどである『ジョジョの奇妙な冒険』に対し、『鬼滅の刃』では血縁でなくとも継承できる点が違いかもしれません。
お隣・中国の武侠でも定番の設定でした。
要は、東アジアのエンタメには、伝統的にそういう要素が多いということでしょう。
北斗の拳やドラゴンボールにも影響大!中国エンタメ「武侠」は日本と深い関係あり
続きを見る
◆『進撃の巨人』との共通する要素は?
巨人と鬼は、元となる神話や妖怪の性質が違うこと、ヨーロッパをモデルとした舞台と日本が舞台であることから、異なる点が多いと思われます。
ただ、近代史要素が共通する点はあります。
『進撃の巨人』も難解ですので、いつか考察したいと思います。
要は「同工異曲」ですよね
散々検証しておいてなんですが……『鬼滅の刃』パクリ批判については、こんな言葉で一刀両断できたりします。
理屈と膏薬はどこへでもつく
いわば
パクリ疑惑はどこへでもつく
ですね。
【吸血鬼モノ】のルールに沿っていること。
「呼吸」、「柱」、「炎」、「雷」のような一般的な概念が共通していること。
こういうことまでパクリと言い出したらばキリがありません。
それが通じるのであれば、
とも言えますし。
『水滸伝』ってどんな物語なの?アウトローが梁山泊に集うまでは傑作なんだけど
続きを見る
「シェイクスピアの『リア王』、あれ、『ブリタニア列王史』のパクリじゃんw」
とすらなりかねない。
「やはり微塵のパクリも感じさせない斬新さと独創性を考え抜いて欲しいっす! それがプロでしょ!」と言われたところで「滝沢馬琴もシェイクスピアも、そんなことしてません」で終了です。
「パクリだ!」と熱くなる前に、数多の作品に目を通して人生を謳歌したほうがよいと思いませんか?
そこで注目したいのが「同工異曲」という四字熟語です。
韓愈(かんゆ)『進学解』(しんがくかい)が由来で、以下のような意味になります。
音楽や詩文などで、その技量が同じでも味わいや趣がまちまちであること。転じて、見た目は異なるが、内容は似たり寄ったりであること。
▽「工」は巧みさ・技量。「異曲同工(いきょくどうこう)」ともいう。(goo辞書)
パクリを堅苦しく言い換えたような否定的な意味で使われるケースが多いですが、本来はそうではありません。出典である『進学解』では褒めるニュアンスで使っています。
古人と同じような文章や意趣でありながら別の作品として立派に成立している。先人の作品をインプットしながら、別の味わいの作品に仕上げているということです。
『鬼滅の刃』は、先行する作品を吸収し、影響を受けています。作風やテーマが同じようでありながら、別の作品として成立しているのです。
元の意味での「同工異曲」と言えます。
あたかもゼロから作られたような作品だって、その著者が別の作品から何らかの影響を受けてないわけがありません。
なんでもかんでもパクリ認定し続けると、ご自身の心の幅まで狭くしてしまい、せっかくの世界観が台無しです。
「同工異曲」を楽しむ姿勢で、よいのではないでしょうか。
あまり触れたくはありませんが、先行作品ではもっと際どいパクリ問題があります。
『るろうに剣心』とSNKや司馬遼太郎、『サムライスピリッツ』と『魔界転生』、横光三国志と吉川英治版などなど。
よろしければ以下の記事も併せてご覧ください。
『るろうに剣心』オマージュとパクリの境界線にあるSNK問題とは
続きを見る
『るろうに剣心』の新選組が複雑だ 司馬遼太郎の影響でややこしや
続きを見る
不朽の名作『横光三国志』はいわば日本の町中華? その成立を考察してみた
続きを見る
ちなみに国境をまたぐと、無意識のうちにパクリや侮辱を働いていることも増える傾向があります。
◆『鬼滅の刃』も…ドイツ在住ライターが「日本アニメ、すごいのに残念」と言う理由(→link)
あの名作『ベルサイユのばら』ですら、ツヴァイク『マリー・アントワネット』の影響が濃過ぎて、歴史モノとして信じ込むと弊害があるとされています。
オーストリアへの思い入れが強すぎるため、その反動でルイ16世の描写が偏ってしまったのです。漫画を楽しむ一方で、心のどこかで『史実はどうなのだろう』というちょっとした疑問を持つことも大切かもしれません。
無実の罪で処刑されたルイ16世なぜ平和を願った慈悲王は誤解された?
続きを見る
『鬼滅の刃』は、鬼という実在しない怪物と戦い、かつ実在する歴史人物を作中で登場させていないだけに良心的な配慮がある作品です。
読んで楽しむ読者の姿勢も、作品を構成する要素になりえます。
【パクリパクられ論争】は一旦やめにして、歴史について調べることもきっと楽しいですよ。
良い作品は人生を豊かにしてくれるものですから。
あわせて読みたい関連記事
将軍を辞めた慶喜は明治以降何してた?せっせと子作り&趣味に興じるハッピー余生
続きを見る
将軍を辞めた慶喜は明治以降何してた?せっせと子作り&趣味に興じるハッピー余生
続きを見る
将軍を辞めた慶喜は明治以降何してた?せっせと子作り&趣味に興じるハッピー余生
続きを見る
将軍を辞めた慶喜は明治以降何してた?せっせと子作り&趣味に興じるハッピー余生
続きを見る
将軍を辞めた慶喜は明治以降何してた?せっせと子作り&趣味に興じるハッピー余生
続きを見る
将軍を辞めた慶喜は明治以降何してた?せっせと子作り&趣味に興じるハッピー余生
続きを見る
文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
『鬼滅の刃 しあわせの花』(→amazon)
『鬼滅の刃』アニメ(→amazonプライム・ビデオ)