江戸時代

柳生一族&将軍争い関連のオススメ作品はコレ! ドラマ『柳生一族の陰謀』放送記念

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隆慶一郎『柳生非情剣』とBLになる田畑&余湖作品

隆といえば

『花の慶次』(→amazon
『影武者徳川家康』(→amazon

の原作者です。

前田慶次郎
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文句なしの人気作品の多い彼のラインナップに「柳生一族でボーイズラブがある」と言ったら、「フザけてんの?」と怒られかねないと思います。

でも……本当だからしょうがない。

連作短編集『柳生非情剣』(→amazon)は、柳生一族の六人の剣士を描いたもの。この柳生友矩がすごいんですわ。

柳生左門友矩は、柳生宗矩の二男です。

史実では、あまりに有名な長男・十兵衛三厳、家督を継いだ三男・又十郎宗冬に挟まれており、ひっそりと夭折。

フィクションでの扱いは酷く、【いつの間にか死んでいる十兵衛の弟】が定番でした。

その彼にスポットライトを当てたこの作品は、ボーイズラブです。史実はともかく、本作ではそういうことになっています。あまりに美しいため、男色を好んだ家光とフォーリンラブな設定です。嘘じゃないんだって!

家光は左門と激しい愛を誓い、ついに「十三万石の大名にしちゃう❤︎」と言い出したもんだから、宗矩はバチギレ。

真面目に公務員していても1万石なのに、彼氏になったら十三万石? ふざけんなよオメー! そんな殺伐としたBLが展開されます。

そして絶対に忘れちゃならないのが、漫画版『柳生非情剣 SAMON』(→amazon/田畑由秋・脚本 余湖裕輝・作画)。これがもう傑作すぎる。

「尻一つで十三万石だとぉっ!!」

そう驚愕する柳生宗矩の顔だけでも、世知辛い世の中を生き抜く気力を得られます(個人の感想です)。

柳生一族は尻で大名になる――何を言ってんだかわかりませんが、語っているこっちも何がなんだか未だにわかりません。

読むしかない。

読むしかないんです!!

隆慶一郎がBL……と、驚愕される方もおられるでしょう。

ただ、彼の作品を読んでみると気づくことがある。男性同士の熱い絆をともかくプッシュしていて、女性は浅はかでどうしようもないという断言も多い。ボーイズラブになっていても、それはそうだろうと納得できます。

はい、柳生一族からボーイズラブまで無駄に話が吹っ飛びました。そこは自由です。

隆慶一郎と田畑&余湖

『柳生非情剣』(→amazon
『柳生非情剣 SAMON』(→amazon

 


柳生一族と将軍継嗣問題とは一体何なのか?

一体、柳生一族とは何なのか?

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将軍継嗣問題はどうしてこんなにも日本人の心を荒ぶらせるのか?

不思議に思えてきませんか。

※『将軍家光の乱心』結局、家光乱心すんのかよ!

これには、日本史の状況も関係していると思われます。

太平洋戦争敗北後、GHQは武士道を礼賛することを危険視しました。ファシズムや軍国主義に与えた影響を警戒したのです。確かにそういう一面はありました。

歴史ものを描くにせよ、戦後の創作者たちは、中国史から題材を選ぶような苦労を強いられます。

その制限から解放され、戦争を見てきた創作者たちには、武士道への不信感が燃えたぎっていた。

侍、忍者。そんなエンタメを楽しんできた。

とはいえ、そのせいでああいう戦争へ洗脳された一面は否定できない……。

司馬遼太郎や山岡荘八のような作家は、こう張り切ったわけです。

そして、そうした作品が大河ドラマになりました。

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「敗戦し、自信を失った国民たち。そんな日本人を励ますためにも、誇りある日本史にいた英雄を描こう!」

一方、南條範夫や山田風太郎は逆のベクトルに向かいました。

「戦争に向かう過程でダメになったわけではなくて、日本の歴史ってずっとダメだったんじゃないの?」

南條範夫原作の映画『武士道残酷物語』は、中村錦之助が七役に挑み、ひたすら日本人のメンタリティゆえに死に続ける、地獄のような映画です。

 

おもしろいけどさ。こういう拭えない不信感、怒り、組織への理不尽さをぶつけたい鬱屈した思いが、モヤモヤと漂っていたのです。

そういうモヤモヤ感を表現するため、柳生一族と将軍継嗣問題はうってつけでした。

太平の世に向かいつつあるようで、日本人のメンタリティにマイナスの影響を与え続ける、思考停止の武士道が生まれてゆく。そんな転機。

自由気ままに生き、組織に埋もれることなく暴れたい十兵衛。

サラリーマンとして、つまらぬ連中を切り捨ててでも出世したい、ムカつく上司じみた宗矩。

自分の保身しか考えていない徳川将軍家周辺。

そういう社会不満をぶちまけるには、このテーマはうってつけだったのです。

 


深作欣二が描く柳生だから

むろん作品はあくまでエンタメです。

真面目なだけでもつまらない。ゆえにエログロバイオレンスや爆発がぶち込まれる。

結果、柳生一族がやたらと暴れ、家光と忠長が無茶振りする世界観が再生産され続けました。

『仁義なき戦い』で山守組長に振り回されるヤクザの不満を描いた――その深作欣二が描く世界なのですから、柳生一族をとにかく暴れさせたって何ら不思議はありません。

あの戦争でたまりきった不信感とルサンチマンが、そこに込められていたのでしょう。

こうした作品のリメイク版がいまひとつパンチが足りないのは、敗戦直後にはあった鬱屈した世界への怒りが不足しているのかもしれません。

そして迎えた2020年代です。

NHKは『十三人の刺客』リメイクも手がけるとか。

局内にも、かつての南條範夫、山田風太郎、深作欣二のように不満を爆発させたい誰かがいるのかもしれません。

ここでは漫画化や映像化がないため、取り上げられなかった柳生ものを得意とする作家がおります。

「柳生一族と日本史に、朝鮮史をぶち込みました!」

そういう一体何を言っているのかわからないコンセプトを貫き続ける。

荒山徹です。

韓流ブームをある意味先取りした鬼才です。2020年代を代表する作家になっても不思議はありません。

こんな時代です。
ここにあげた作品に、ぜひ触れていただければと思います。

誰しも柳生一族の推しを語れるようになることを願っています。

※オリジナル『柳生一族の陰謀』(アマゾンプライムで無料→amazon

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文:小檜山青

今回紹介した作品LIST

『甲賀忍法帖』(→amazon
『バジリスク~甲賀忍法帖~』(→amazon
『柳生忍法帖(→amazon)』
『Y十M(→amazon)』
『魔界転生(→amazon)』
『柳生十兵衛死す(→amazon)』
『駿河城御前試合』(→amazon
『シグルイ』(→amazon
『衛府の七忍』(→amazon
『花の慶次』(→amazon
『影武者徳川家康』(→amazon
『柳生非情剣』(→amazon
『柳生非情剣 SAMON』(→amazon

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