4月11日(土)本日、吉田鋼太郎さんを主役に据え、NHKでリメイク版が放送される『柳生一族の陰謀』――。
2020年代は柳生一族と将軍継嗣問題がトレンドになりそうです。
タランティーノにも影響を与えた深作欣二『柳生一族の陰謀』はギトギトに濃厚だ
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コイツは一体何を言っているんだ?
そうツッコまれる前に、まずはオリジナル版(1978年)『柳生一族の陰謀』の予告編テロップをご覧いただけると幸い。
己れの信ずるままに行動し
斗争するドラマ
イジケたりシラケたりせずに
懸命に生きそして戦う大ロマン
そんなドラマを作りたいと思った
※1978年映画『柳生一族の陰謀』予告編より
見るからにギトギトした……よく言えば熱気のある昭和な世界観が漂ってきてますよね。
本作は徳川家光と徳川忠長兄弟の壮絶な将軍争いを描いた映画です。
そこに柳生が絡む。
自らの生存を賭け権謀術策が駆け巡る。
2020年代こそ、誰もが柳生一族になりたいと願う、そんな暑苦しい時代の到来としませんか!!
リメイク版『柳生一族の陰謀』はその嚆矢。
今回はドラマ放送を祝して、他の【柳生一族作品】や【将軍継嗣争い作品】をいくつかピックアップしてみました。
熱い! 酷い! でも面白い――そんな柳生作品に注目だァ!
※文中敬称略
※オリジナル版の映画『柳生一族の陰謀』はアマゾンプライムで視聴可能です(無料→amazon)
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山田風太郎『甲賀忍法帖』とせがわまさき
柳生作品か。将軍継嗣作品か。
まず最初にピックアップしたいのが山田風太郎の『甲賀忍法帖』(→amazon)です。
「迷惑すぎる将軍継嗣問題」の代表作とも言える逸品です。
まず山田風太郎といえば――。
高い筆力、完成度、人気、エンタメ性、後世への見逃せぬ影響を誇りながら、ナゼか歴史ファンのお気に入り作家として名前の挙がらない人物です。司馬遼太郎と比べ、その支持率はあまりに低い。
ネックとなっているのが山田作品のエロさでしょう。葛飾北斎の好きな絵を聞かれて『蛸と海女』をあげられないようなものです(ご覧になりたい方はウィキへ→link)。
そんなわけで、今なお「読まず嫌い」も多そうな風太郎作品。
『甲賀忍法帖』は傑作の一つで、これまでエロに傾きがちだったマンガ化をせがわまさきが一変させました。
『バジリスク~甲賀忍法帖~』(→amazon)として漫画化したところ、大ヒットを記録したのです。
アニメ化のみならず、現在においてはパチスロ化までされる話題作。
国際的にも高い評価を得ています。
この動きに便乗したような『甲賀忍法帖』実写映画もありますが、これについてはまぁ……忘れてよろしいかと……。
※忘れてもいいアレ
では、どんな内容か?と申しますと……。
甲賀と伊賀忍者が争う――悲劇的かつスリリングなストーリーで、能力バトルの定番ともいえるもの。
山田が日本版『水滸伝』を目指した展開と、せがわの高い画力に裏打ちされた漫画によって鮮やかに蘇ったのです。
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何が凄い?って、とにかく、もう忍者の争う理由が酷い。
伊賀が勝利したら、家光。
甲賀が勝利したら、忠長。
将軍継嗣をめぐって忍者が殺し合いをさせられるのです。
南光坊天海に入れ知恵された徳川家康の決定なんですが、そんなもん……くじ引きで決めろよ! 忍者を巻き込むな!
そんな風に苦い思いを噛みしめつつも、面白いから読んでしまう――そういうお話です。
将軍継嗣争いは本当に迷惑ですわ。
なお、実際の滋賀県甲賀市と三重県伊賀市は対立していません。当たり前です。
山田風太郎の「柳生十兵衛」三部作
次の注目作品もまた山田風太郎から。
柳生十兵衛の三部作で、
となります。
山田が、最強の剣豪として選んだのが柳生十兵衛。
浪人として自由に生きるイメージが愛された十兵衛を彼なりに描きました。
史実は……いいんです。
フィクションでの十兵衛はフリー素材みたいなもん。みんなに愛される十兵衛だ。
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そもそも宮本武蔵はじめ、実在の人物を手酷く描くことに躊躇がない山田です。
しかし十兵衛は愛すべきヒーローとして、極めて格好良く描かれている。
堀主水の【会津騒動】に千姫の後ろ盾を得て十兵衛と七人の女が挑む――それが『柳生忍法帖(→amazon)』。
せがわまさき氏により漫画化された『Y十M(→amazon)』も傑作です。
十兵衛がなんと室町時代にタイムスリップしてしまう。そんな度肝を抜かれる設定なのが『柳生十兵衛死す』ですね。
しかし知名度という点では『魔界転生(→amazon)』が図抜けているかもしれません。
アラフォーオーバーの方でしたら、歴史ファンでなくてもご存知ではありませんか?
沢田研二扮する天草四郎が映画の中で「エロイムエッサイム エロイムエッサイム……」と不気味に唱えるアレ。中毒性があまりに高く、放映日の翌日には学校で真似した方も少なくないはずです。
ちなみに原作ではラスボスが宮本武蔵で、天草四郎があそこまで目立ってはおりません。映画版でのナイスアレンジです。
山田自身は原作をどうイジられても、それを見逃す太っ腹さがありましたので(ゆえにエロ作品がドッサリ)、天草四郎の起用にはむしろ感心したそうです。
『魔界転生』は『柳生一族の陰謀』ともども海外でも高い人気を誇ります。
世界的な知名度では、実は司馬遼太郎より山田風太郎の方が上ではないかと思うほどです。
ともかくヤマフー読め! そういう話ですね。
山田風太郎とせがわまさき
南條範夫『駿河城御前試合』と山口貴由の世界
将軍継嗣問題作品では、兄・家光より英明とされ、それゆえ話がこじれる徳川忠長。
将軍になれなかったストレスなのか、ともかくなんだかわかりませんが、どうしようもない暗君になってしまった。
それが『駿河城御前試合』(→amazon)の世界観です。
たかが暇つぶしのために、真剣勝負で殺し合いをさせる忠長。
そのせいでいろいろ台無しになる。そういうお話です。
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忠長はこの世界観において、ただ人殺しを見たがる迷惑なサディスト暗君でしかないのですが、同作品を再度有名にしたのが山口貴由『シグルイ』(→amazon)でした。
原作では何試合も続くわけですが、漫画では第一話「無明逆流れ」のみをフィーチャー。これがいろいろとすごい!
やたらと命が軽い世界の中、ひたすら武士が殺し合う。
語彙力が追いつかないので、読んでくださいとしか言いようがありません。
のちに『衛府の七忍』(→amazon)では、『シグルイ』の登場人物が設定を変更して再登場。フィクションにおいても最凶となった薩摩隼人ども、ぼっけもんと対決します。
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日本史の勉強にもなるので(おそらく)、読んでみて損はありませんぞ!
そうそう、『衛府の七忍』には柳生宗矩も出てきます。
『シグルイ』ではカメオ出演だったうさを晴らすかのようなナイスな宗矩。しかも沖田総司と共闘する。
ええ、あの新選組の沖田総司です。
何を言っているのか読者以外理解できないとは思います。
いいから、読んでくれ~い。これが2020年代のトレンドなんだ、多分。
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