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【源俊賢】
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温情をかけた藤原行成と親友に
【長徳の変】で花山院に矢を放った藤原伊周と藤原隆家の兄弟は、事件が表沙汰になると失脚。
いよいよ道長が政界の中央に進んでくると、源俊賢は、サッと道を譲るように一歩退がります。
政権交代の最中、どちらにつくわけでもなく、バランスよく振る舞っていた俊賢は、一見、ただの風見鶏のようにも見えてしまいますが、当時はまだ「忠臣は二君に事(つか)えず」という概念が定着しているわけでもありません。
要は、世渡り上手で、気持ちをすぐに入れ替えられるタイプだったのでしょう。
しかも俊賢には、没落した側の恩義に報いる情もありました。
長徳元年(995年)参議に昇進の際、後任の蔵人頭をどうするか一条天皇に問われて、藤原行成を推しました。役人としてはいまひとつ芽が出ない行成に手を差し伸べた形です。
これに恩義を感じた行成は俊賢を慕い、以降、二人は親友となった。
俊賢の嫡子・顕基は、行成の娘を妻に迎えています。
日本書道史において大きな足跡を残す行成が、心を落ち着けて書に向き合うことができたのも、俊賢の優しさあってのことかもしれませんね。
『光る君へ』では今後もドロドロした政治劇が描かれることでしょう。
そんな中、貴公子同士が助け合う場面は、一服の清涼剤になるかもしれません。
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道長時代も、ますます順調に出世
源俊賢は、藤原道長にも気に入られ、その後も無事に出世を遂げてゆきます。
長徳3年(997年)従四位上
長保2年(1000年)正四位下
長保3年(1001年)従三位
長保5年(1003年)正三位
寛弘元年(1004年)権中納言
寛弘5年(1008年)従二位
寛弘7年(1010年)正二位
俊賢は、道長の娘である中宮・藤原彰子とも近い距離にありました。
中宮権大夫(のち大夫)を務めたのです。
俊賢の出世は、彰子が皇太后・太皇太后へと進むにつれ、比例して引き上げられてゆきます。
そして実に二十余年の間、宮大夫を勤め上げたのです。
俊賢の歩みには、道長の姉である藤原詮子、道長の妻である源明子、そして藤原彰子という、女性に近いルートがみてとれます。
女系も重視する【双系制】らしい出世ルートだったんですね。
正二位まで上り詰めた栄光の生涯
ただし、居並ぶライバルを圧倒した出世街道でも、いざ三条天皇の御代となると翳りが出ます。出世が止まったのです。
後一条天皇の御代となった寛仁元年(1017年)、俊賢は権大納言に昇進しました。
彼の政治家としての務めも、もう終わりが見えてきます。
このころ三度に渡り辞表を提出し、寛仁3年(1019年)、ようやく権大納言としての致仕を許されました。
万寿3年(1026年)に全ての職から致仕。
万寿4年(1027年)6月12日、病が重篤であることから出家し、その翌日に世を去りました。
奇しくも享年69は父・高明と一致しますが、正二位まで出世した上級貴族の中でも立派な、輝かしい人生と言えるでしょう。
父の悲劇からここまで上り詰めた才覚だけでなく、温厚な人柄を持つ好人物でした。
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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考文献】
倉本一宏『皇子たちの悲劇 皇位継承の日本古代史』(→amazon)
倉本一宏『敗者たちの平安王朝 皇位継承の闇』(→amazon)
橋本義彦『平安貴族』(→amazon)
倉本一宏『ビギナーズクラシック 小右記』(→amazon)
他