壊血病

大航海時代の記念碑・発見のモニュメント(ポルトガル)

欧州

大航海時代に船員が斃れまくった壊血病|解決したライム野郎って誰?

2024/09/17

海賊と言えば漫画『ワンピース』でしょう!という皆様。

本物の大航海時代に海のオトコたちを恐怖のドン底におとしめた病気があったのをご存知でしょうか?

その名も壊血病です――。

原因不明だった当時、この病気は海賊なんて目じゃないヤバさでした。

 


歯が抜け落ち倦怠感と共に死に至る壊血病

15世紀半ば、ヨーロッパ人は勢力を世界に拡げていきました。

ご存知、大航海時代の幕開けです。

大航海だんなんて申しますと非常に冒険心に富んだ響きですが、実のところ当時の航海環境は劣悪だったため、生存者より病死者が多いなんてことはザラ。

海賊よりも恐れられていた病がありました。

それが壊血病(かいけつびょう)です。

航海が長期になると発生する致死率の高い病気で、しかも当時は原因不明ですから怖いなんてもんじゃない。

症状は皮膚や粘膜、歯茎などの出血から始まり、 消化管や尿路から出血することも。

病が進行すると歯が抜け落ち、さらには倦怠感が強くなって免疫力が落ち、やがて死に至ります。

 


バスコ・ダ・ガマの大航海 帰国できたのは

バスコ・ダ・ガマのインド航路発見の航海も、その例外ではありませんでした。

1497年7月8日大勢の観衆が見守る中、ガマ一行はリスボンを出発。

11月22日、アフリカの南端・喜望峰を通過して、12月17日に過去の艦隊が到達した最遠地インファンテ川まで進みます。

リスボン出発から5ヶ月、この頃から壊血病で命を落とす船員が出始めます。

翌年の5月28日、ガマは13人の部下を率いてインドに上陸。

8月29日にインドを離れるのですが、この間、人質とってドンパチやったことはサラリと流して先へ進みました。

風の向きが悪かったため復路は時間がかかり、その間に乗組員は壊血病でバタバタ死んでいきます。

そして1499年9月。

航海開始から2年2ヶ月でリスボンに戻ったとき、当初147名いた乗組員は55名となっておりました。

もちろん全員が壊血病で亡くなったわけではありませんが、かなりの割合だったと思います。

 

レモン一個食べることができたら

壊血病には、もちろん原因があります。

ズバリ『ビタミンC不足』です。

ビタミンCはコラーゲンを構成するアミノ酸を作るのに必須であるため、長期(3〜12ヶ月)で不足すると組織をつなぐコラーゲンが弱くなります。血管にも影響するため出血傾向になるんですね。

成人に必要なビタミンCの量は1日は100mgです。

レモン1個食べたらまかなえるもので、普通に生活していればまず不足しない栄養素です。

しかーし、航海が長くなるとそうもいきません。

ビタミンCを含む果物や野菜は日持ちがしないため船内の食事ではどうしても足りなくなってしまい、壊血病にかかる船員が増えたのです。

まさに大航海時代だからこその病気でした。

 


サワークラウトが命を救う

時は下って1753年。

イギリス海軍省のジェームズ・リンドは、「食事環境が比較的良い高級船員に壊血病が少ない」ことに目をつけました。

寄港地で果物や野菜が手に入ったらお偉いさんが食べちゃうってことですな。

リンドは、新鮮な野菜や果物、特にミカンやレモンを摂ることによって、この病気の予防が出来ることを論文で発表。

その成果を受けて、キャプテン・クックは南太平洋探検の際、ザワークラウト(キャベツの酢漬け)や果物の摂取に努めました。

結果、史上初めて壊血病による死者を出さずに世界周航が成し遂げられたのです。

これにて一件落着!

とは、残念ながらなりませんでした。

 

食材を加熱したら意味がない

当時の航海では新鮮な果物を常に入手することが困難だったため、イギリス海軍省は、抗壊血病薬として麦汁、携帯スープ、濃縮オレンジジュースなどをクックに支給したのです。

ビタミンCは加熱に弱いため、それらの調理食材では全く役に立たないんです(´・ω・`)

壊血病を防いだ立役者は『ザワークラウト』でした。

当時はそれが分からず、帰還したクックが「壊血病予防には麦汁だ!」なーんて言っちゃったもんだから、結局、長期航海における壊血病はなかなか無くなりません。

ビタミンCと壊血病の関係が明らかになったのが1932年なんので間違えちゃっても仕方がないですけどね。

その後、1795年以降、イギリス海軍では乗組員にライムジュースの飲用が義務付けられ、同国の壊血病は激減。

イギリス人をライム野郎(ライミー)と呼ぶスラングはこれが由来だそうですよ。

そうそう、壊血病の治療についても、ビタミンCの投与が有効です。

大抵の症状は1〜2週間で完治。

ONE PIECEでナミが壊血病患者に大量のライムジュースを飲ませるシーンは(ちょっとジュースが大量過ぎますが)正しいのです。

『リンゴを囓ったら歯グキから血が出た!!!』

と、心配になった方。

それは壊血病ではなく、歯医者さんで「解決」できる歯周病ですよ、なんつって。

壊血病


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【参考】
壊血病/wikipedia
ヒドロキシプロリン/wikipedia
ビタミンC/wikipedia
ビタミンの歴史/食と健康の総合サイト(→link
大航海時代/wikipedia
MSD(→link
簡単!栄養andカロリー計算(→link
NewsMedicalLifeSciences(→link

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馬渕まり

総合内科専門医、糖尿病専門医、労働衛生コンサルタント。秋田大学医学部卒。 現役の医師にして生粋の歴史愛好家で、武将ジャパンでは2014年より執筆。 連載『まり先生の歴史診察室』は2冊の書籍化を果たし、全国書店に並ぶ人気シリーズとなった。 現在は医療・歴史の両分野で活動の幅を広げ、WEBメディア寄稿や講演なども行っている。エックス(旧Twitter)では歴史大喜利でも注目を集める。 ◆主な著書 『まり先生の歴史診察室』GH・2015年 『戦国診察室2』ゼネラルヘルスケア・2022年 ◆2019年10月15日放送のTBS『クイズ!オンリー1』で準優勝(※優勝はれきしクン) ◆国立国会図書館データ https://id.ndl.go.jp/auth/ndlna/001235984 ◆日刊SPA!にて「まり先生の歴史診察室」関連記事が5本掲載されています。 掲載一覧:https://nikkan-spa.jp/spa_comment_people/%e9%a6%ac%e6%b8%95%e3%81%be%e3%82%8a

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