べらぼう感想あらすじレビュー

背景は葛飾応為『吉原格子先之図』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第1回「ありがた山の寒がらす」浄閑寺は投込寺

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第1回「ありがた山の寒がらす」
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貸本屋はなかなかいい商売だ

重三郎は、松葉屋へ向かいます。

女将のいねと半左衛門は、それなりに年齢差があるようで。それでも半左衛門は娘らしき少女に肩を揉ませ、いねの差し出す帳簿を確認していて、よい雰囲気です。

遊女たちの食卓が映されると、なかなか良いものを食べていることもわかる。

これも重要でしょう。松葉屋は、まだ良心的です。

呼出花魁の花の井も食事をとっていて、同じく呼出花魁の松の井は、柱に寄りかかりながら何か書いていました。

重三郎は彼女たちに「お姫様方!」「貸本屋が参った!」と声をかけます。

夢中散人の『辰巳之園』、『石山軍艦』を仕入れてきた。

そう宣伝すると、座敷持花魁のうつせみが『ひらかな盛衰記』はあるか?と尋ねてきます。

重三郎は、茶屋の仕事の合間に貸本屋もしていたのです。働き者ですなぁ。

ここでの本は、

・赤本(子ども向け)

・青本(大人向け)

・浄瑠璃本

・洒落本

・読本

などなど、一冊あたり6文から24文、高いもので72文で貸し出しているとか。あれだけの冊数を用意せねばならない小道具さん、お疲れ様です。

そしてその後に「蕎麦一杯は16文」と続きました。江戸の物価基準として蕎麦の価格はよく使われますね。

セールス上手な重三郎は、怪談噺がいいなら『登志男』がいいと禿に勧めています。

女郎が読み書きできるのは商売上のスキルだから。

生まれ故郷である田舎の農村にでも向かえば、周りの誰もが文字を読めなくともおかしくない状況ですね。

唐丸は、あやめから戻ってきた本が痛んでいると重三郎に見せます。

すると、重三郎は立ち上がり、あやめが駄目にした本3冊分の18文を花の井に請求するのですが、すかさず花の井は「吹っかけすぎだ!」と反論してきました。

一冊6文で計3冊をダメにしただろ、と粘る重三郎。

ダメにしたのは新しい本ではない!と反論する花の井。

営業時間外の女郎は強気ですね。

そんな花の井に「ケチくせぇ!」と重三郎は一歩も引かず、「一晩で十両二十両稼ぐじゃねぇか!」と文句をつけます。まぁ、その稼ぎも何かと費用はかかっているんですけどね。

花の井は腕を突き出し、何かの包みを重三郎の顔の前に突きつけます。

「情念河岸の朝顔姐さんに届けて欲しい」

届けたら16文払うか?と聞き返す重三郎に、花の井は「朝顔姐さんに届けてくれって話だよ?」と低い声で脅すように包みを突きつけます。

彼女が膝を立てると白い脚が一瞬あらわになって、なんとも色気が漂う。

「あんたとあっちの朝顔姐さんだよ、そんなこと言うのかい? あんたそんなこと言う男なのかい?」

「あ〜ったよ!」

迫られ、承知するしかない重三郎。

彼は唐丸に先に戻るように告げ、情念河岸に向かいました。

 


河岸の二文字屋に朝顔姐さんがいる

お歯黒どぶ沿いの場末で、女郎たちの揚代は線香一本燃え尽きる間の一切、たったの百文。

花の井のいるような大店とは大違い、格差社会だと説明されます。「蕎麦一杯は16文」でしたので、6~7杯の計算ですね。

それでも重三郎は「お姫様方~♪」と明るく声をかけて入っていきます。

すると女郎たちが一斉に群がり、重三郎の手にしている花の井からの包みを開けてしまう。中身は弁当で、手づかみで食べられてしまう。

きくという女将が大声を出してそれを止めると、重三郎はようやく朝顔のもとへ。

奥の部屋には、やつれて咳き込む女が、夜具に横たわっていました。

あまり近付かぬように押し返してしまい、重三郎に謝る朝顔。花の井が届けた弁当には薬まで入っていました。

「花魁の金繰りも楽ではないだろう、自分も辛いだろうに……」と気遣う朝顔。すると彼女は弁当に一礼し、食べずに包んでしまいます。

食べるとむせるから見せたくないという彼女に、重三郎は本を読み聞かせるのでした。

重三郎は、帰りに蕎麦屋「つるべ蕎麦」に寄り、店主の半次郎と話しています。

河岸はそんなに景気が悪いのか……と嘆く半次郎。

「女郎たちは風呂にも入ってねえ」

重三郎が眉をひそめ、答えます。きっと体臭がしたのでしょう。

昼見世とはいえこれだもんなぁ……と周囲を見渡しながら半次郎も嘆いています。

華やかな色街であるはずの吉原は寂れていました。

岡場所と宿場には敵わない――というのも岡場所と宿場とは無許可の風俗街で、吉原にとっては商売敵でした。

さらには楊弓場のようなレジャー施設でも“裏オプション”があり、無許可店よりも敷居の高い吉原には厳しい世の中になっていたのです。

すると半次郎が江戸らしいセクハラ感覚で、「千住に連れてってもらったか」と唐丸に尋ねます。

吉原の男はみんな千住に行くというと、重三郎は「まだ早ぇよ」と一蹴。要は、千住の宿場町ですね。

半次郎は、重三郎と唐丸の関係を語り出します。

なんでも侍のように幼名として「唐丸」、しかも自分と同じ名前をつけたそうです。これはもう、二人はソウルメイトでしょう。

唐丸は昔の記憶がまるでない。

重三郎は粋な仕草で煙管を吸っています。

 


ガラの悪い客がきた

すると唐丸が、ガラの悪い客から「茶がぬるい」とケチをつけられているではありませんか

急いで割って入る重三郎。腰を低くして詫びます。

このチンピラどもは三人組で、武士らしく袴をつけて座る男の後ろ姿がみえ、その左右に町人髷に着流し男がついております。

茶が実際ぬるいかどうかは関係ない。因縁つけたいだけなんですよ。

こうした無粋なクズはそうそういないので、重三郎は吉原初見と見てとり、そう語りかけます。チンピラは「あァ?」と凄む。

重三郎は相手をいなし、歓迎しつつ、武士から腰のものを預かりたいと申し出ます。

綺麗な仕草で頭を下げ、刀を包む布を差し出す重三郎。

チンピラは食ってかかり、「兄ぃ」の刀を盗もうってのか!と凄んできます。

ははぁ、義兄弟気取りかよ。『三国志演義』か『水滸伝』の類でも読んでるヤツでもいるのかい。

重三郎は吉原の決まりを説明し、見世に上がるときは誰からも刀を預かると言います。

しかし、深川でも品川でもんなこと言われたことはなかったと、しつこいチンピラども。この騒ぎを、武士らしき「兄ぃ」は黙って見ております。

重三郎は、チンピラではなく「兄ぃ」に言い聞かせるように、吉原は天下御免の場所だと、公方様の権威をチラつかせました。武士なら公方様が決めた吉原の掟には従うべきだと、示したわけですね。

すると座っていた武士が、舌打ちしながらも「おらよ」と刀を素直に差し出してきます。

この武士、なかなかファッショントレンドを掴んでいるうえに美丈夫で、ほつれた鬢の毛は額にかかっている。刀もご立派だと重三郎は感心しております。

するとチンピラ仙太が、差したまま入って行く奴がいると目ざとく見つけます。

こういう奴は兄貴が軽んじられることが一番嫌なんですね。

重三郎が、あの方は馴染みの引手茶屋が中にある、大身のお武家様は中の引手茶屋に預けると説明すると、武士は何か思うところがあるようで。

「馴染みや大身は中……」

そう言いつつ、襟を正す武士。一方でチンピラは重三郎を突如ぶん殴っています。江戸っ子だねぇ。

口の利き方がなってねぇと言いたいようで、

「このお方はなぁ!」

「おう、その辺にしておけよ」

武士はゆらりと立ち上がり、重三郎の近くに座り込みこうきた。

「おめぇもさ、人を見る目を持った方がいいぜ、フッ」

肩に手を置き笑う。そして重三郎の手拭いを投げて去ってゆきます。

「クソが!」そう吐き捨てる重三郎に、唐丸と半次郎が心配して駆け寄ります。

「あんな奴らは鼻から屁がでる病気になればいいんだ」

臭くてたまんねぇだろう、と下ネタ全開で吐き捨てる重三郎。喧嘩は弱くて口が悪いのか、あるいは反撃するのを控えたか。

それにしても、あのチンピラトリオは何様でしょう。

 

夜見世の花、花魁道中

暮れ六つ、吉原の本番である夜見世の始まりです。

三味線の音がテンポよく響いています。

昨年の『光る君へ』の琵琶と比較すると、格段にテンポがあがっていることがわかります。

中国でも時代が降ると琵琶は縦に持ち、かなりリズミカルに、テンポをあげて演奏するようになります。日本の薩摩琵琶もそう。平安京の琵琶はそうならずに残ったのですね。

三味線は盛場で奏でるものですから、独自の進化を遂げ、ともかく早くリズミカルになりました。

華やかな衣装で着飾った女郎たちが、この三味線の響きを背景に並び、客に「遊んでいかないか」と声をかけています。

メイクは現代人でも違和感のないようにアレンジされておりますが、浮世絵の再現も意識しております。

特に、うなじ、襟足の美しさは絶品。浮世絵の細かい彫りを連想させるではありませんか。

花魁の花の井は、和泉屋からの呼出に「お受けしんす」と返す。廓言葉ですね。

女郎は日本各地の貧家から集められた少女たちで構成されます。各地方の訛りを隠すために作られた人工言語が、この廓言葉の悲しい正体でした。

松葉屋から和泉屋のいる場所まで、練り歩く花の井。

花魁道中が再現されます。

すると「一日千両落ちるとされた吉原の仕組み」として稲荷の解説が始まりました。

稼ぎ頭となったのは、この花の井のような呼出花魁だとされます。

客は大通(だいつう)と呼ばれる身元も財布も確かな金持ちばかり。

客はまず引手茶屋で一席。それから女郎屋でも一席。宴会をこなさねば遊べません。芸者や幇間も呼ばれ、大金が動くわけですね。

和泉屋は「待ちかねたぞ、待ちかね山だ」と浮かれています。

すると、あのチンピラトリオが「吉原なんて大したことねぇ」と言いながら、大通りを歩いています。次はどこを攻めるか?と問われた兄ぃは何やら考えているようで。

そこで、あの花の井の花魁道中が目に入ります。

まるで天女のようなその姿に、釘付けになる武士。

花の井はただ目線を動かしただけでしょうが、こういうバカな男たちは「俺を見た! 俺を誘ったッ!」と妄想に浸りますよね。たちまちメロメロになっております。

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