べらぼう感想あらすじレビュー

背景は喜多川歌麿『ポッピンを吹く娘』/wikipediaより引用

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『べらぼう』感想あらすじレビュー第39回白河の清きに住みかね身上半減

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ほんと、そういうところですよ!

牢から解放された蔦重が、鶴喜らに報告とお礼に出向いています。

「頭を下げるならおていさんだぞ」と指摘する須原屋。続けて「何か買ってもらうとよい」とおていさんに告げると、彼女も既に考えているのだとか。

蔦重は“政演”の様子を聞きます。みんな山東京伝と言っているのに、蔦重はまた呼び方が戻っていますね。

なんでも鶴喜が覗きに行ったところ、真面目に手鎖をはめていたとか。

奉行所が来ない時は外していてもよいのに、反省のためか、厠に行く時ですら外していないそうです。

行事だった吉兵衛と新右衛門は江戸払いです。検閲をお目溢ししたばかりにこうなってしまった。

しおらしく謝る蔦重に対し、二人への詫び銀は立て替えたので、支払うようにと鶴喜が釘を刺しております。

ここで須原屋が、書物問屋の株の空きを一つを押さえたことを報告。蔦重が戸惑っていると、ていが言い切ります。

「買ってください。株は買ってください。私への詫びとして書物の株をいただきたく存じます」

なるほど、これを狙っていたのですか。綺麗な服飾品でもないし、書物でもない。もっと大きなものでした。この書物本屋株が、のちに耕書堂を救うことになります。

そしてこの決断が夫ではなく、妻のものであるということが重要です。

歴史上、女性側の発案であっても、男性名義での決断とされて、女性の意思が史料の合間に埋もれることは往々にしてあります。

制作チームが同じである『麒麟がくる』では、織田信長の正室である帰蝶が率先して火縄銃の買い付けを行っているという状況が描かれました。

今回のていの提案で書物問屋株購入を決めることも、それに通じるものを感じさせます。ジェンダーからの歴史の捉えなおしとして、大変重要な描写といえます。

蔦重は金繰りが厳しくなりそうだとぼやいています。なにせ「身上半減」ときた。

さてこの「身上半減」とはなにか。新しい刑罰なので皆わかりかねています。板木や有金、帳簿まで全部半分持っていかれるのか?と推理していますが……。

「ついでに間違えて借金でも半分持ってってくんねえですかね」

そう笑うと、その場にいる全員がひきつった顔になります。

鶴喜は笑みを浮かべつつこうだ。

「ほんと……ほんと、そういうところですよ!」

渾身の怒りが炸裂しました。ほんと、そういうところなんですよ! ああ、本当に腹立つ奴だな!

鶴屋の本気の怒りに、蔦重も頭を下げるしかありません。

こういう人物を「幇間」や「太鼓持ち」というのだと痛感させられます。

遊郭で太客のご機嫌をとって浮かれ騒ぐ、そういうパリピのことですね。ご機嫌取りやその場を盛り上げることは上手でも、中身がまるでないのです。

 


「身上半減ノ店」で売り出せ

そしてついに「身上半減」となりました。

実態が不明確なので、創作も入っています。

暖簾から看板まで、半分持っていかれることになり、あまりのことにていは涙を堪えきれません。使用人たちも精神的打撃を受けています。

見にきた鶴喜たちも驚いている。

売れ筋の本や板木まで持っていかれて、こうなったら畳を入れ替えて仕切り直しかというところ。

さらには大田南畝と宿屋飯盛も来て、半分になった看板に笑い転げています。ふんどしの几帳面さが窺える処分だそうです。

「世にも珍しい!」

大田南畝がそう声を張り上げ、見物人も皆笑い出すと、蔦重は板と筆をみの吉に持たせてきました。

何をする気か?とていが心配そうにしていると、店を開けるのだそうです。畳も半分しかないと困惑するてい。それでも十分だと蔦重は新たな看板を掲げて、店を開けます。

「身上半減ノ店」

こんな店は日の本で蔦屋だけだ!とアピールするのだそうです。ちなみに大河ドラマ館のお土産コーナーも「身上半減」仕様になったらしいぜ。

松平定信はこの報告を受け取っています。

蔦重は、かえって山東京伝本の売り上げを伸ばしていることも把握。

蔦重の発想は、問題ありのロットをジャンク品として売るようなものでしょうか。京伝も手鎖でかえって名を上げたとか。

もう少し重い処分でもよかったのではないかと定信に意見する者もおりますが、柴野栗山の配慮が背後にあります。

過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如し――重すぎる処分はかえってご公儀の威を損なう。適切な刑罰を与えられるものこそ賢者だと言われていたのです。

栗山はおていさんに感銘を受けたのでしょう。

定信はそのことを思い出しつつ、「身上半減」は軽くはない、じわじわと効いてくると確信を込めて言うのでした。

するとそこへ長谷川平蔵がやってきているとの報告があります。

 


火付盗賊改方、長谷川平蔵である

平蔵は葵の紋がついた提灯を見せてきます。

なんでも「葵小僧」という悪党が出没しているとか。

徳川の紋を掲げ、先の将軍の御落胤(ごらくいん・隠し子のこと)と名乗り、将軍のような行列を仕立て市中を歩き回る。

そして休ませて欲しいと騙して家を開けさせ、強奪のみならず、必ずその家の妻や娘を辱めていくのだそうです。

こうしておけば被害者が恥じて言い出せないだろうという卑劣な発想です。

平蔵は、あまりに由々しきこととして報告しに来たのだとか。

「直ちに賊どもを捕らえ、極刑に処せ!」

定信はそう怒りを炸裂させて言い切ります。

そして闇夜に提灯がおどる夜、葵だけでなく「火盗」の提灯もここに加わります。

「葵小僧、火付盗賊改方、長谷川平蔵である! 神妙に縛につけ!」

十手をひらめかせ、賊を捕える鬼平。

待ってました! スピンオフもNHKでやってくだせえ!

これがやりたかった!という熱意を感じる名場面ですね。

葵小僧は素早い裁きにて獄門。辱めを受けた被害者を配慮し、異例の即決となったのでした。

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編集管理人・五十嵐利休。 1998年に大学卒業後、都内の出版社に勤務。 書籍や雑誌の編集者を務め、2013年に新聞記者の友人と武将ジャパンを立ち上げた。 月間の最高アクセス数は960万PV超。 現在は企業のオウンドメディア運用やコンサルティング業務もこなしている。

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