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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第20回「望みの先に」】
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心まで美しき定子の願いは通じず
定子が帝に声をかけます。
「お上が恋しくて来てしまいました」
月が照らす中、幻のような風情で声をそっとかける定子。
帝がなぜ内裏に上がれたのか?と問いかけると、右大臣が手引きしてくれたと明かします。
定子は跪き、兄と弟の罰を軽くしていただきたいと願います。
「お情けを……」
そう訴える定子に帝は声をかけません。定子は寂しそうにこう言います。
「さがります。お健やかに」
「待て」
帝はそう言い、定子を抱き止めます。
なんとも銀色の月光が美しいシーンですね。照明が素晴らしい景色を作り上げています。
定子は生身の人というよりも、まるでかぐや姫のようで、ここまで美しいと、かえって不吉に思えるほど。
月光に濡れたような二人の姿があまりに美しい場面です。ずっとこの時が続けばよいと思ってしまいますが……。
蔵人頭となった行成が、このあと処罰を読み上げます。
「謀反は死罪相応だが、罪一等を減じ、遠流に処す。伊周を太宰府権帥、隆家は出雲権守にする」
さらには後任として、道綱が中納言に、斉信が参議に指名されました。
道綱はともかく、斉信としてはしてやったりでしょう。それに道長が何を言おうと、これではあまりに道長派が強い人事でもあります。
道長は安倍晴明に相談しています。
帝はこれでよいのか。伊周と隆家は二人は甥である。呪詛は本当なのか?
すると晴明は「そのようなことはどうでもいい」と言うだけ。大事なのは道長がいよいよ強くなり、誰も敵わなくなるということだと。
道長はなおも、甥のことを聞きます。
隆家はこれから道長にとって強い力となると答える晴明。伊周は道長次第である。
うまくはぐらかす、心理描写の達人ぶりが見えますね。
ここで晴明は特殊な足の運びをしています。禹歩(うほ)という、中国古代の聖王である禹の歩き方を模したものであり、陰陽師が行う特殊な歩行です。
今も伝統行事や、能のすり足としてみることができますが、かなり貴重な動きを見られました。
そしてそんな晴明の従者である須麻流(すまる)にも注目です。
◆身長128センチは「ブランド」 「光る君へ」須麻流役、DAIKIさん(→link)
言葉少なに晴明をじっと見守る彼の瞳には、何か力強さがあります。彼がこの作品にいて、本当によかったと思えます。
朝ドラ『虎に翼』。
土曜ドラマ『%(パーセント)』。
最近のNHKは体制が変わったのか、意欲的で多様性を重んじるコンテンツが増えていて見応えがあります。多様性をなかったことにするもではなく、ありのままに描くことも公共放送の役割。素晴らしいことです。
定子は清少納言に、里に下がるよう言い含めています。それでも中宮様のそばにいたいと訴える清少納言。
しかし定子は、嫌がらせが昂じて清少納言の身が危うい、下がった方が良いと言います。
自分だって大変なのに、清少納言を気遣う定子の優しさが溢れてきます。こんなに素晴らしい人であれば、清少納言も忠義を尽くすと思うことでしょう。
伊周と隆家兄弟は、態度がわかれます。
隆家は処罰を受け入れますが、伊周は嗜める弟を「黙れ!」というのでした。
定子の出家、清少納言の絶望
二条邸から下がった清少納言がまひろのもとに来て、現状を訴えます。
なんでも検非違使が邸を囲んでいるとか。しかも囚われる二人を見ようと、野次馬まで大勢集まっているそうです。
「中宮様が心配だ」とまひろが案じると、清少納言は一緒に行ってくれるよう頼んできます。
かくして二人は粗末な身なりをして、木の枝を手にし、二条邸の庭に潜みました。
藤原実資が二条邸に踏み込み、伊周と隆家を捕縛しようとしています。
もうあきらめましょうと語りかける隆家に対し、どこにもいかぬと突っぱねる伊周。
門が破壊され、隆家が連れて行かれます。
とてつもない修羅場なのに、隆家は明るく笑って母の貴子に別れを告げる。竜星涼さんが粗暴で爽やかな貴公子をよく演じ切っています。
しかし伊周はどこにもいかぬと粘る。
貴子は踏み込んでくる検非違使のものたちに怯えるばかり。
するとそこへ定子が出て来ました。
中宮様は牛車に移し、屋敷を改めるよう実資が命じると、定子は取り囲む相手から刃物を奪い、自らの黒髪に当てて、切り落としてしまいます。
清少納言が、最愛の人の転落を目を見開いて見ている。
出家でした。
自ら髪を切り、もはや世を捨てると定子は宣言してしまったのです。
このころの出家は、重いものでした。
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