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『どうする家康』感想あらすじレビュー第20回「岡崎クーデター」

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『どうする家康』感想あらすじレビュー第20回「岡崎クーデター」
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沐猴(もっこう)にして冠す

沐猴(もっこう)にして冠す。『史記』

あいつらってさ、サルにスーツを着せたみたいなもんだよね。

この言葉をふまえまして、大河ドラマの深読みそのものは否定していません。

『麒麟がくる』では、明代の高啓作「尋胡隠君」が印象的に使われていました。

あの詩そのものも重要ですが、高啓は残虐でもある明太祖洪武帝・朱元璋に言いがかりをつけられて処刑されたことも、深読みのしがいがあります。

暴虐な主君と、それに抗う高潔の士。

あの作品での信長と光秀に通じるものがありました。

『麒麟がくる』は漢詩が登場する貴重な大河です。

背伸びしたところで、『どうする家康』の語彙力や教養、知識では、足元にすら及ばない。

無理に時代ものらしくしようとして、子どもが背伸びしたようなセリフになっていますが、使い方がおかしい。せめて添削するか、脚本協力者を起用して欲しいと切に願うところです。

大河では珍しいけれども、本場中国の時代劇では漢詩を用いないことがないほど。

戦いにあわせ、戦乱の惨禍を詠んだ詩にメロディをつけて重ねてくるような、繊細かつ高度な演出が味わえます。

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今年の大河にはそんな高等なことは到底望めないので、代わりに試してみることにしました。

三国志』でおなじみ、かつ詩人として名高い曹操作「薤露行」(かいろこう)です。

ニラの葉についた露はすぐ枯れてしまう――

そんな儚さを嘆き、こりゃもう終わったと慨嘆する。

本来は葬儀の定番ですが、曹操はオワコン漢王朝を詠んだ。そういうテーマです。

夏目漱石にも同名の短編小説があります。

では、超絶意訳というかこじつけをつけて、いきますよ。

惟漢廿二世  惟(こ)れ漢の二十二世

これは大河ドラマ62作目の話なんだけどな

所任誠不良  任ずる所 誠に良からず

指名された連中が、本当によくないんだよ

沐猴而冠帶  沐猴にして冠帯し

サルにスーツを着せてもダメだろ

知小而謀彊  知 小にして謀 彊(つよ)し

知識のインプットは不十分なのに、SNSやマスコミの盛り上げばっかりうまくてもな

猶豫不敢斷  猶予して敢えて断ぜず

立て直ししようにも、グズグズして同じ失敗ばかりよ

因狩執君王  狩りに因りて君王を執(とら)う

主演が浜松祭りに出たけど、そこまで盛り上がってないなんてツッコミ入るわ

白虹為貫日  白虹 為に日を貫き

戦国大河なのに視聴率ワースト2を確たるものにするわ

己亦先受殃  己 亦た先ず殃(わざわい)を受く

そんなことしたら作ってるやつら、バチが当たるぞ

賊臣執國柄  賊臣は国柄を執り

どうしてこんなマズイやり口で大河を作るのよ

殺主滅宇京  主を殺めて宇京を滅す

看板ドラマがコケたらNHKそのものがまずいよ

蕩覆帝基業  帝の基業を蕩覆(とうふく)し

大河の歴史を台無しにするつもり?

宗廟以燔喪  宗廟は以て燔喪(はんも)す

先行作品にものすごく失礼だしな

播越西遷移  播越 西に遷移し

もうさ、ドラマ10『大奥』か朝ドラ『らんまん』が大河枠になったのかと言われてるほどで

號泣而且行  号泣し 且つ行く

俺も号泣してる 推しが死んだからでなくあまりの出来の悪さに

瞻彼洛城郭  彼(か)の洛城の郭(くるわ)を瞻(み)れば

『鎌倉殿の13人』受賞ニュースを見ていると

微子為哀傷  微子 為に哀傷せん

去年の大河はよかったね、って泣けてくるわ……

 


大手代理店の調査では出演者の価値がガタ落ち

とにかく今年の大河はまずい。

後半になると、出演者の確保も厳しい可能性すら出てきました。

以下の記事をご覧ください。

◆松本潤、松本まりか、岡田准一ら『どうする家康』勢が続々! 視聴者1800人・春ドラマ「株を下げた俳優調査」入手(→link

大河の出演によって、俳優としての価値が上がったか下がったか?

そんな大手広告代理店のリサーチがすっぱ抜かれており、とにかく今回の大河ドラマ出演者の評判が芳しくありません。

「株が下がった」部門の1位が松本潤さんで2位にダブルスコアをつけているとのこと。

しかも、その2位にしても、忍者役だった松本まりかさんであり、以下に続々と続きます。

4位 岡田准一さん

5位 溝端淳平さん

7位 野村萬斎さん

11位 山田孝之さん

12位 古田新太さん

13位 大森南朋さん

17位 ムロツヨシさん

24位 有村架純さん

25位 松嶋菜々子さん

記事の中では「あまりに突飛な歴史解釈」とか「将軍の高貴さがなく、ただただ気持ち悪いだけ」とか「えびすくいが鬱陶しい」とか散々な評価が記されています。

大河作品が成功だったか失敗だったか?

今は、視聴率だけでの判定が難しい時代とされますが、こうして広告代理店から見て価値が下がったのであれば、役者さんとしては失敗作にほかならないでしょう。

大河は拘束時間が長いわりにギャラが安い。それでも出るメリットがあるとすれば、評価が上がることだった。

それが逆効果となったら?

来年以降まで禍根を引きずりそうで暗澹たる気持ちになります。

まだ序盤だから巻き返すチャンスは……残念ながら感じられません。

曹操がライバルである袁紹に勝利し、その遺児である袁尚と戦っていたときのこと。

本拠を目指し、急行する敵軍を前にして、曹操の家臣は止めます。危機を聞きつけてやってくる軍勢は勢いがあり危険だと。

しかし曹操はこう言います。

「連中が本道を進んでくるならば、確かにそうだろう。だが、西の山沿いを進んでくるなら恐ることはないぞ」

逃げ場がない――そうして正攻法で進む相手は、必死で勢いがあるから強い。

けれども、地形を頼りにし小細工するような相手は、心がゆるんでいるからさして強くない。

そういう理論です。

歴史や兵法の面白さとは、こういう冴えた思考を学ぶところにある。幼児のようにギャーギャー喚く武将からは、そういう魅力を感じられないですよね。

『どうする家康』は危難の中にいます。

しかし制作首脳陣にその自覚はないでしょう。

SNSを切り貼りした提灯コタツ記事、ネットの一部盛り上がりに頼っている。

現実逃避ばかりで必死になれないまま年末を迎えてしまう前に、どうにか立て直しをお願いしたいところですが……現状は厳しい気がしてなりません。

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文:武者震之助note

【参考】
どうする家康/公式サイト

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