鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第4回「矢のゆくえ」

2022/01/31

8月17日――くじ引きで決まった出陣日。

三嶋明神の祭りと重なる日ですが、むしろそれが好都合です。

実はこういう要素は普遍的で、大河で有名な歴史事件なら池田屋事件も祇園祭と重なっていたし、現代のテロリストも祭礼を狙いがちだ。

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源頼朝勢が狙うのは山木兼隆! その館を襲うことで狼煙を上げ、関東挙兵をするのです。

 


山木と同時に堤信遠も討とう

軍議の場で北条義時は堤信遠も討つことを提案します。

「平家の味方はこうなると示すため」という理由ですが、ここが義時の賢いところでもありますね。

父の北条時政が顔にナスをなすりつけられる侮辱を受け、他ならぬ義時自身も下馬を強制され、泥水をすすらされた屈辱がある。

しかし、そういう私怨はまるで無かったかのように、あくまで対外的な効果を述べるのですね。抑制ができていて素晴らしい。

三浦勢は衣笠から合流すると言い、三浦義澄と時政は軽口を叩いています。危険だなぁ……兵の合流は慎重に決めないと。

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目指す拠点は相模。んで、相模のどこ?

鎌倉――亡き父・源義朝の本拠であったと感慨深げな頼朝です。源氏の名のもとに坂東武者が集うにふさわしい。そう語られる特別な土地。

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かくして、宿敵平家から後白河法皇を救い出す、踏み出せば戻れない、長く苦しい旅が始まるのでした。

そんなナレーションが実は重要ですよね。

幕府がそもそもまだない時代です。

例えば、戦国大名が天下を目指していたのかどうかも後付けとされますが、頼朝だって義時だってそれどころじゃない。この先何があるかわからない。

おそろしい旅であって、正直、義時は大河の主人公には向いていないと思います。

かつての大河は、いろいろあっても一国一城の主になるものがふさわしいとかなんとか言われました。それを踏まえると難しい……のですが、だからこそ、今の時代に合っているのかもしれません。

 


りく(牧の方)の胸に蠢く野心

時政はクジの結果に大満足。京都育ちは違うと婿に喜んでいます。

17日をよく引き当てたとホクホク。いや、むしろすごい婿を引き当てちゃったのは時政さん、あなたですよ。

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ここで、妻のりくが17日がいかによろしいかを解説し、さらにこう念押しします。

しい様は佐殿の舅として、坂東武者を率いて都に戻る――それが彼女のシナリオです。そのためにりくは、全てのくじを17日にしていたんですって。

時政は「やりおった!」と笑っていますが……嫌な予感はします。

くじ引きにトリックを仕掛けることは、割と見られます。

鎌倉時代に近い時代ならば、宋の名将・狄青も銅銭を投げて全て表が出たらという条件付けをして、事前に細工していたものを投げたとか。

りくはそういう意味では賢い。理想的です。しかし、同時に野心にも着火されている。

こんな田舎に嫁に来るなんて、何か理由があったのか。それとも嫁に来たら頼朝という逸材がいたから、燃え上がったのか。その胸には何かが灯っています。愛ではない炎が。

8月16日――挙兵の前日。

「戦は初めてなので腕が鳴ります!」そう元気に笑う仁田忠常が義時の目に入ります。

大河の登場人物一覧で、こんなにいい笑顔ばかりなのは珍しい。『信長の野望』の面白顔グラシリーズみたいですね。

※面白顔グラシリーズ:ものすごくいい笑顔だったり、シャウトしていたり、インパクトがすごい顔グラフィックのこと。便宜的に名付けました。

 

頼朝のもとに集いし武士はさぁ何名?

相模に集いし、精鋭の坂東武者たち。さぁ、頼りになる武人たちはどれだけ集まったのか?

あわせて18人……。

兵が少なすぎる! 思っていたのと違う!

そう焦る頼朝です。義時が、ざっと300と言っていたのに話が違うと焦っている。

隣で時政は、こんなものだと笑ってる。笑っている場合か!

まぁ、義時は動員可能数を算出しただけなので……って、それじゃダメでしょ、義時!と突っ込みたいところですが、分業していたと思えば仕方ありませんね。

動員人数の計算という彼の仕事はこなしていた。

兵の士気をあげることは、本来、頼朝がやることでしょう。

実際、この士気ってもんが一番難しい。過大評価も過小評価もできない。今回はそもそも士気の算出をマジメにしていないから、こんな結果になってしまう。

頼朝は田舎どもだとイライラしていますが、彼自身、あんまり兵法は得意じゃないんですね。いや、得意であるはずがない。読経と女心を操るくらいしかしていないでしょう。

奥州には特殊枠である兵法の天才・源義経がいますが、彼はまだ出てきません。

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山内首藤が集まれば100にはなると言いますが。頼朝は苛立ちます。

「緒戦が大事と言ったのは誰だ!」

まったくだ。

しかし苛立ちは伝わらず、時政と宗時はポジティブ笑顔。しかも宗時は「以仁王が生きていると噂を流す」とか言い出す。

自分が怪しげな僧侶・文覚に騙されるくらいピュアだからって、世間がそうだと思われても困りますね。

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義時だけは死んだ魚のような目で、300は無理でも200は集めると声を絞り出す。落ち込んでいて、読みが甘かったと反省中。時政と宗時はやっぱりともかく明るい。

「大丈夫だ! うまく進んでおる!」

そう〆る北条家の皆さん。嫌な予感しかしません。

 


川を挟んで政子と八重の対峙は続く

義時が暗い顔をしていると、姉の北条政子が話しかけてきます。

目線は川の向こうへ。

「ずーっといるのね」

江間の館にいるのは、頼朝の前妻というべき八重。政子はらんらんとした目の色でこう言います。

「もし佐殿とあの女がどうにかなるようなことがあったら、私、何をするか、分かりませんから……」

「そう言われても」

「わかりませんからね」

このドラマの政子と八重を見て共感することは、いかがなものでしょうか。

政子ほど武力行使する女性は当時でも少数派ですし、共感なんてとてもとても……私はひれ伏すばかりです。小池栄子さんのこの迫力がいいですねえ。

いや、待って。義時の心労をこれ以上増やさないで~。

義時は手帳のようなものを手にして道を歩いています。

何気ない小道具ではあるけれども、坂東武者の知的水準を考えたら、これはかなりのものでしょう。やはり小四郎は賢い!そう感心されそうな紙のメモ帳です。

義時は八重に声をかけられ、館へ。たまに佐殿を見かけると彼女は語り出します。

元気でいるのか。幸せなのか。

そう語りかつつ、頼朝が幸せには見えないと言う。義時が否定しても、政子殿とはうまくいっていないと言い続ける八重。

義時がびっくりするほどうまくいっていると反論しても、かわいそうだという。まったくかわいそうではないと義時が否定しても、認めない。

そして何か慌ただしいと言い出します。戦でもあるのかと勘付いている。義時は否定しても、八重は問い詰めてきます。

八重にとって頼朝は夫。政子に「寝汗のことを話した」と語っていて、それがマウンティングだのなんだのされていましたが、それ以外にも大事なことはあります。

寝室は一番機密が漏れる場所です。ゆえに徳川将軍の大奥には、侍女と御伽坊主がつく。

八重も頼朝の本心を聞いていた。いつか必ず挙兵する。たとえ義時が濁しても八重にはわかるのです。

それと八重の性格ですね。こうと決めたら思い込む、そんな一途さがあるのでしょう。兄が妹の恋を応援していたのも、妹はそれしかないとわかっていたからかもしれません。

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義時も人がよいのか、八重にほだされたのか、仮の話としてと前置きしながら言ってしまいます。戦になって北条と江間が争うことになるかもしれない。いつでも逃げられるようにしておいた方がよい……かも。

そんな惚けた口調で言う相手に、八重はまっすぐな目線でこう言います。

「大願成就。川の向こうからお祈りしております。佐殿にそう伝えて」

八重は、それほど書物を読むようには思えません。それでも“大願成就”という難しい言葉を口にする。それだけ頼朝が繰り返していたのでしょう。

彼女にとっては頼朝が全て。だからこそ、彼が口にしていた言葉はスルリと出てきます。

なんと哀しい女性なのか……。

 

大鎧を着た時政に「家人じゃない、舅!」

時政は大鎧を着ていました。戦国時代の甲冑と異なり、用意するだけでも大変です。

義時は困惑します。

「早すぎませんか?」

時政はこうだ。

「武士たるものはいつでも戦に出られるようにしておかんとな」

義時はお似合いだと言葉を紡いでいましたが、私はアホかとツッコミたい。体力を無駄に消耗するから、いざ戦闘!というとき以外は着ない方がいい。

それこそドラマでは進軍中も甲冑を付けたりしますが、実はフル装備はいざとなるまでそうそうしないものです。

妻のりくは、源氏棟梁の舅殿にしては、いささかみすぼらしいと言います。

ここは戦で武功を立て、立派な大鎧を揃えないと! と、取らぬ狸の皮算用をしていますよ。

時政は家人の立場でそれは……と戸惑いますが、りくはキッパリと否定し、バンバン焚き付けます。

家人じゃない、舅! 父君と言うべき人なのだから!

何かがおかしくなってきた。

時政は服装に無頓着であったことが、初回放送の冒頭でありました。

京都から帰ってきたのだから相応しい服装にすべきだと、政子がダメ出しをして着替えていましたよね。

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そんな時政がファッションや見栄えをやたらと気にするようになるとすれば、素直な彼がりくに染められていったということです。

今はまだ、染まりかけかも。

頼朝は政子に本音をこぼします。北条の者は戦をたやすく考えすぎていると。

政子も、父と兄は物事をよい方向に考える傾向があると認めています。ただ、義時はちょっと傾向が違う、と。そして、気持ちを切り替えさせるため、姫と表で遊ばないかと誘います。

けれども、頼朝はそれどころじゃない。人は、あまりにプレッシャーがかかっていると、何も味わえないし、楽しくないし、かわいがることすらできなくなりますよね。

政子は遊びたくないみたいだと言います。

「わかってくれ、わしにとって正念場じゃ。しばらくの間離れていよう」

「それがよさそうですね」

「すまん」

「何かお役に立てることがあれば」

「ない」

こう語る夫婦は、理想的といえるかもしれません。

何があろうが寂しくて甘えてきて、かまって欲しいとアピールするのはうっとうしくもある。八重ならこうはできないかもしれない。

それにこの時点で、頼朝は、政子の秘めた力を知らない。

政子はすでに、陰で何かを操る力は出てきていて、その証拠に義時と話し合っていたりする。時政と宗時はあまり役に立たないけれど、弟は使えるからと悟っているんですね。

後に尼将軍とも言われたりする政子の中に、種が蒔かれ芽吹いていくような……そんな描き方が見事です。

ただし、彼女の成長は、頼朝ひいては源氏にとって良いことであったかどうか。それはまた別の話なんですが。

 

「嘘も誠心誠意つけばまことになる!」

妹の実衣が怒っています。

政子はとっくに覚悟ができていても、妹はそうではない。話を聞いてない。誰も教えてくれない! 今日の話も下人の話を聞いて初めて知った!

しれっとしている姉に「そういうものなのか、そういうものなんですか!」と反論しています。

これはなかなか斬新な妹像ですね。

一般的に求められる女性像はオロオロするくらいで、こうもはっきり抗議するものではないと思います。彼女にも何かがあると思える場面です。

義時の悲壮感漂う「募兵ツアー」は続きます。

土肥実平のところへ来ると、彼はいきなり不満爆発でした。宗時のことが信じられないってよ。調子ばかりよくて話が見えない!

わかります。宗時は調子のいいことしか言いませんからね。

土肥としては不安ですよ。もし何かあったとき、土肥が平家に好きなようにされないか不安だそうです。そう、そこだ! 所領や身の安全を保証し、頼朝を信じられるかどうかを確認できないと動くに動けません。

義時も、自分に欠けていた要素を見出しましたね。動員可能数ではなく、動員するかどうかの意思確認が弱かった。これも当時ならではの悩みです。

そこで義時は、頼朝に何かを頼んでいます。

「頭を下げろというのか? いやじゃ!」

そう突っぱねる頼朝。源氏の棟梁が、何故坂東の田舎者にそこまでせねばならんのだ! お前がやれ! そう反論してきます。

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義時は膝でにじり寄る。

こういう動きはなかなか難しいですし、板なので結構痛いもの。それを小栗旬さんはこなしている。

「そのお考え、一日も早くお捨てになられた方がよろしいか思います」

確かに我らは坂東の田舎者。しかし、その坂東の田舎者の力を借りねばならぬとき。彼らあっての佐殿であることをお忘れなきよう! そう言い切るのです。

「よう申した」

頼朝も何か思うところはあるようです。

彼もまだリーダーシップの勉強は足りないのかもしれない。それこそ漢籍教養があれば、義時がここで「劉備は諸葛孔明に三顧の礼を尽くしたでしょう」とでも言えるんですよね。

しかし、それはまだこれからのこと。

義時に説き伏せられた頼朝は、北条館にいる土肥実平の前へ。

「佐殿!」

もう感動して、ワナワナしてしまう実平。

「次郎、よう来てくれた、よう来てくれた!」

「佐殿、もったいのうございます!」

感動している相手に、これから言うことは誰にも漏らさぬようと言いつけ、こう告げます。

「今まで黙っておったが、わしが一番頼りにしているのは、実はお前なのだ……」

もうメロメロになる実平。

頼朝はさらに口説きます。

「お前の武勇は耳に入っている、力を貸してくれ。お前なしでどうしてわしが戦に勝てる! どうかわしと一緒に戦ってくれ」

これでコロリと参った土肥実平は、どこまでも佐殿にお供する宣言をしてしまいます。ここで頼朝、相手を抱きしめる。

「ああああああああッ!」

感動のあまり叫ぶ土肥実平。抱き合う二人。どういうことなの……。

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このあと頼朝はこう言います。

「覚えておけ。嘘も誠心誠意つけば、まことになるのだ」

なかなか深いことを言う。しかも、頼朝はこのあと岡崎義実相手にも同じテクで籠絡しますからね。なんでも片っ端から同じ手を使っていたそうですよ。

これもこの時代の興味深いどころなのですが、頼朝とその武士団の関係性が読みにくいと言いますか。まだ武士道ができあがる前なので、何が何やら。

こういう単純な「兄貴に惚れた!」系の解釈でもいいんじゃないですかね。

 

歯が一本の老武者・佐々木秀義

頼朝の側近・安達盛長が、山内首藤経俊の元へ向かいます。

乳母の子で味方になるのは問題ないと考え、頼朝本人は行かずともよいと判断したのでしょう。

しかし、相手は怒涛の塩対応。

頼朝なんて流人だ! 本気で勝てると思っているのか?

平相国(清盛)と頼朝なんて、虎と鼠ほどの差がある。

この挙兵だって富士の山に犬の糞が喧嘩を売っているようなもの。わしは糞にたかる蝿にはならん!

武士の情けで大庭殿には知らせないでおいてやる。さっさと帰るがよい!

そうまくしたてる経俊。

史実でも確かに暴言を吐き捨てたそうで、それを三谷さんが仕上げてきました。

この時代の台詞回しは難しいと思います。坂東武者は漢籍知識が低いので、故事成語を連発したらおかしい。ここで「夜郎自大にもほどがある」なんて言えないわけです。

盛長は頼朝の元へ戻り、すすり泣いています。

頼朝も唖然。幼い頃から共に遊んだというのに、人の心の虚しさよ……そうつぶやきます。盛長は盛んに悔しがるのでした。

原始的だなあ、もぅ!

もっと時代が降ればそれこっそ人質確保なり、証文なり、やりようがある。そこまで知恵がないから心情由来の信頼に頼り切り。

北条館に老将・佐々木秀義がおります。なんでも頼朝の祖父・為義の娘婿だとか。なんとこのとき68歳で、歯が一本しか見えない。

秀義は大庭景親に呼び出され、頼朝に謀反の疑いがあると問われたものの、はぐらかしたとか。

なんでも息子4人が加勢してくるそうです。

いつ到着するのかと聞かれ、こう返す秀義おじいちゃん。

「あさ!」

「明日の朝?」

曖昧な返事だわ~。しかも加勢するのは息子だけで、不安しかなくても、頼朝としては感謝するしかありません。

それでも本音は出てしまう。

「まるで年寄りの寄り合いじゃ!」

そして頼朝は、工藤茂光が太り過ぎではないかと心配しています。頼朝はこれでは負けると義時に不安を見せています。

ちなみに工藤茂光は、当時、恐れられていた源氏武者の一人・源為朝が狼藉を働いたため、自害に追い込んだ実績があるんですけどね。

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父・祐親に頼朝の挙兵を密告してしまう八重

伊東祐親の館では、八重が頼朝挙兵のことを父に伝えていました。

動きがあれば知らせるよう念押しされ、八重は褒められます。

「でかしたぞ、八重」

挙兵をしくじるとどうなるのか? 八重が確認すると、祐親は、討ち取られるか、捕らえられ首を刎ねられるかと言う。

またどこかへ流罪になることはないのか、私のせいで死罪になっては酷い、と八重が嘆願したところ、兄の伊東祐清が未然に挙兵を防げたらそうなるかもしれないと助け舟を出します。

八重はなんと愚かで単純なのか。

彼女としては、あえて頼朝の挙兵を失敗させて、再び流罪になることを願っていたのでしょう。そして流刑先へついていけば、またあのころのような幸せに戻れるかもしれない、そう思いつき、父に挙兵のことを告げてしまった。

あまりに浅はかながら、これも彼女の哀しい愛ではある。

一方、頼朝はまたも後白河法皇夢枕の時間です。

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挙兵について聞いています。それがなかなか集まらんと頼朝が返すと、こう言います。

「おぬししかおらんのだ、わかっておろうな」

念押しする後白河法皇ですが、これも頼朝と同じく嘘っぱちであることは今後明らかになるわけです。

毎晩これではつらいと頼朝がボヤいて、笑える場面ではありますが、なかなか皮肉です。

頼朝は「お前を一番信じているぞ!」と坂東武者を転がしたつもりでおりますが、実は彼ら源氏も、後白河法皇の手の平で転がされてゆきます。

繰り返しますが、平安時代が終わろうとしている当時は、夢枕のような怪奇現象が重要な役割を果たします。

『源氏物語』だって怪奇現象が重要な役割を果たしていますよね。

 

運命の8月17日 始まる

8月17日――運命の日。

頼朝は読経しています。

大庭景親はそのころ、伊東祐親から挙兵のことを聞かされています。祐親はあのとき首をとっておくべきだったと悔しそう。

ここで山内首藤経俊が急用があるとドスドスとやって来ます。

頼朝挙兵のことを伝え、誘われたが断った!と鼻息荒い。景親からは、いつどこで挙兵するのか、と逆に尋ねられますが、経俊はわかっていません。

経俊を引き下がらせた景親は、兵を集めるのに苦労していては挙兵など出来まいと読んでいます。

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山内首藤経俊の裏切りは頼朝にとって非常に厳しい。

こんな調子では「乳母の子ですら背くってよ」と良からぬ噂が広がってしまい、確実に足を引っ張ります。経俊は、そこまで深く考えてないでしょうね。

なんせ、「どこで、いつ、挙兵するのか?」すら把握していない。

戦国時代ならば、その点をシッカリ把握した上で密告してくるでしょう。いや、そもそも情報収集の間者(忍者)が暗躍していて、こんな雑な計画、即座に露見しているでしょう。

そこに本作の難しさもあると思います。戦国時代と比較して圧倒的に雑で程度が低い。三谷さんがふざけた脚本にしているわけでなく、それが時代の感覚です。

挙兵を控え、市場を歩いていた北条宗時が、伊東祐清に声をかけられました。

お互い対決することになるとわかって、これも運命かと話している。

宗時は、もっと焦ってもよい場面でしょ。情報漏洩しておりまするぞ!

政子が読経しています。そこへりくの女中のくまが来て呼び出される。

仏様に祈っているのか?とりくに聞かれ、できることはそれくらいだと政子が返すと、彼女がさらに続けます。

「おやめなさい」

「どうして?」

「祈れば勝つというものではありません」

政子が反論すると、りくは鮮やかに返します。

敵の身内も祈っている。神仏はどちらに味方すればよいのか?

では何をすればよいのかと政子が聞くと、佐殿はどう言ったか?と、りく。政子は何もすることはないと言われていると告げます。

ならば何をしなくてもよいし、戦は男がするもの、我らはその先を考えましょう。そう言うと、おもむろに図面を広げます。

なんでもこの戦が終われば自分のために館を建ててくれる約束なんだとか。

「楽しみですね」

なんとも楽しそうなりくの頭脳は、ぶっ飛んでいて驚異的です。理詰めで神頼みすら否定する。

今よりずっと神仏が重かった時代に、そんなことができる人間もごく少数います。例えば『麒麟がくる』の織田信長とか。彼女はそれに該当するようです。

比較したいのが、りくと八重――二人はあまりに対照的。人間関係には愛情と打算があり、八重が愛情に振り切っているのであれば、りくは打算に針を振り切っています。

当時わざわざ坂東に嫁いでくる京女なんて、そこはやはりおかしいわけで。自分が思うままに時政を操ることに楽しみを見出してしまっている。

内助の功だのなんでの言いますが、たとえ頭脳が有能だろうと、ここまで打算まみれなのはどうかと思いませんか?

政子はこの点、バランスが取れている方かもしれない。もちろん、彼女も濃厚な性格ですが。

 

最終手段は八重に聞くしかない

挙兵準備は進行中です。

堤の館から出てきた雑色に吐かせたところ、やはり祭り当日は手薄になるとかで、残る問題は山木兼隆です。

本人が館にいるかどうか。時政はいるような気がすると言いますが、それではダメ。確実に本人の首を取らねばなりません。

ここは仕切り直すべきか?

そんな案も出てきますが、伊東が怪しんでいると宗時が言います。息子の伊東祐清と話しましたからね。

ならば延期して18日は?と提案されると、今度は頼朝の都合が悪い。どうやら毎月18日は、殺生を控え、観音菩薩に祈る日になっているとか。

頼朝は苛立ち、取りやめだと言い出しますが、実際問題、今しかないことは重々承知している。かくして挙兵は不安な中で進められてゆくわけですが……。

義時が当てがあると言い出します。

相手はなんと、八重。

彼女のもとを訪ね、山木の所在を確認しにいくのですが、八重にしても「何を言っているのか?」と義時に返すしかない。

それでも義時は、山木が館にいるのかどうかだけでも知りたいと訴えます。

しかし、八重は挙兵のことを父に伝えていた。

呆然とする義時。

一番大事なことを忘れていると八重は義時に諭すように話します。自分は伊東祐親の娘。義時が北条を大事に思うように、伊東家が大事。父を裏切るような真似がどうしてできましょう。

本作は、セリフが矢のように飛んできます。義時と政子が時政にすることを思うと……。

それでも義時は諦めず、頼朝の命が奪われて良いのかと訴える。そうそう、彼はあくまで自分と八重のことは持ち出しません。無意味だとわかっているのでしょう。改めて思いますが、義時と八重の関係は“甥と叔母”だ。

八重は自分自身に言い聞かせるように「命までは奪わぬ」と父が言っていると伝えます。

「爺様はそんな甘い人ではない!」

思わず声を出して食い下がる義時。八重は知りませんが、実際、息子の千鶴丸は犠牲になりました。そして、これ以上話しても無駄だと義時を追い払う。

「北条も愚かな。佐殿の口車に乗せられて、無謀に戦を始めるとは」

「坂東は平家に与する奴らの思うがまま。飢饉が来れば、多くの民が死にます。だから、我らは立つのです!」

そう告げる義時ですが……。

 

夫・次郎との哀しい会話よ

義時の報告を聞いた北条宗時は、頬を引っ叩きます。

「こともあろうに伊東の娘にぺらぺら喋るやつがあるか!」

時政は言っちまったものは仕方ねえと投げやりですが、義時はしおらしく反省。安達盛長はこれでますます後には引けなくなったと言っています。

そして佐々木の息子が……来ていない。さすがに「もう夕方じゃねえか!」と苛立つ時政。いつ来るのかと聞かれて、相手の秀義はこうですよ。

「あさ!」

「だからもう日が暮れるだろ!」

ここで義時は「あさではなく、”さあ“ではないか?」と推察します。もう一度聞いてみると。

「さあ!」

紛らわしいわ!

そう突っ込んでいると、佐々木四兄弟が馳せ参じました。しかも長兄・佐々木定綱は父には夕方着くと伝えておいたと言っております。

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思い出してみましょう。たとえば『三国志』でも結構です。中国の戦争だったら、こういう曖昧なことはやってない。もっと厳密に、いつ、誰が、どの程度率いて合流するかくらい把握しておけ! となる。

国民性云々でありません。それだけ当時の日本では、ルール適用が曖昧だったのです。

笑えるようで、私は地獄だと思ってしまう。だって、これは死人が出る戦の話なのですよ。

わちゃわちゃと「一か八か攻め込もうぜ!」なんて言っているけど、それでいいのでしょうか。もう、胃が痛い……。

そのころ江間の館では、八重が庭にいました。夫の江間次郎が来て、一緒に三嶋明神の祭りに行かないかと声を掛けてきます。

「あなたと?」

「ご案内いたします」

そう照れてうつむく次郎の可憐さよ……。

祭りで父にばったり出くわさないか?と八重が言うと、それはないと返す次郎。なんでも、祐親はそういう場がお好きではないとのことです。

次郎は八重より人間観察眼があるのかもしれませんね。

では山木もそうかと八重が続けて尋ねると、行かないと次郎は断言します。どうやら昨日落馬したのだとか。

なんと哀れな場面よ。次郎が愛情たっぷりだとわかるところがつらい。

彼は彼なりに、そっけない妻を愛しているのに、妻は応じない。それどころか会話から情報を引き出そうとしている。八重がまともな妻ならば、むしろ夫に武功を立てさせようとするだろうに……。

 

頼朝「大通りを堂々と行け!」

八重はこのあと、弓を構えて矢を放ちます。

弓を引く構え。放ったあとの凜とした顔。綺麗でした。最高に、美しかった。

この顔を見られただけでも、新垣結衣さんが八重を演じてよかったとしみじみ……こんなに綺麗だとは思いませんでした。

顔かたちだけでなくて、まっすぐな愛情そのものの輝きが滲み出ているようで、ともかく素晴らしかった。

頼朝は、八重の放った矢を手にしています。

白い布が巻いてある。放ったのは八重だ。かつて二人が忍び会っていたころ、庭の梅に白い布を巻くことは、今夜会いたいという合図だったとか。

頼朝はハッとします。挙兵は今夜にせよ、ということだと。

こうして坂東武者が揃いました。

一堂を前にして、北条宗時は高らかに宣言します。

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では、どの道を進んで山木邸へ向かうのか。

時政が抜け道を提案すると、頼朝から「大通りを堂々と行け」と命じられます。正義を為すからには、そうすることに意義がある、と。

これも面白い伏線かもしれません。

頼朝はこういう大義名分をかざるところはある。

しかし、奥州にいる彼の弟である義経は、そんなことお構いなし。頼朝が思う以上に義経は獰猛で、そこでも兄弟は噛み合わなくなっていくのかもしれません。

一体どんな描き方になるのか、興味をそそられるばかりです。

一同揃った中で、うなずく義時が見えます。

この頷き方ひとつとっても、まだ彼は若いと伝わってきます。そして絵になるんですよね。

序盤で兵数も少ないのに、闇の中で大鎧を着た坂東武者が揃っているだけで惹かれるものがある。

こと甲冑についていえば、この時代が最高かもしれません。五月人形だってモデルはこの時代が多いのでは? それだけ芸術性が高いのでしょう。

そんな迫力ある大鎧を着た一団が、武者行列のように祭りの中を横切っていく。

何か人間を超えた怪物のような、そんな不思議な迫力があり、その行列を八重が見ている。

照明効果が素晴らしい場面です。

松明の炎が浮かび上がるようでいて、画面が見えにくくもない。趣もある。撮影技術を駆使しているとわかります。

今はVOD全盛期で、世界各地の時代劇を見られるようになりました。

どの国も魅力的ではあるけれど、日本の時代劇には独特の個性がある。そういう個性を良い方向へ伸ばしているとわかるから、今年の大河はよい。

そのころ政子は寝床にいます。

頼朝がやってきて「何もせんでいいと言った」と話しながら、妻に救いを求めているようです。

 

一本の矢が放たれ 4年7ヶ月の源平合戦へ

いざ山木邸へ。

坂東武者たちは臨戦体制です。

宗時は義時に「怖いのか?」と聞いている。何かと熱血暴走気味とはいえ、宗時はよい兄です。弟としては、この兄が大好きだし、頼りにもなります。

宗時は弟を安心させるように、俺も怖いと言います。そして父上を見るように言います。堂々たるものだと。

「馬鹿野郎! 俺だって怖いよ」

「父上もですか」

しょんべんちびったと言い出し、笑わせる時政。ふざけているようで、大事な場面だと思います。彼にはムードを作る才能があるんですね。

そのころ頼朝は政子の膝に寝ていました。

二人は離れない。それに政子が何もしなくても、こうしているだけで頼朝の力になっています。

山木邸で配置についた一団。弓を引く音が入ります。SEも抜群に綺麗なこのドラマ。弓を引く音が実によい。

そして佐々木定綱が放った一本の矢が、4年7ヶ月に及ぶ源平合戦を始めるものとなるのでした。

「かかれー!」

喚声があがり、次回へ。

 

MVP:八重

八重は本当に駄目な女です。

後世つくられていった「婦徳」(女性が守る徳目)をことごとく破っている。

自分の恋心に流されて、実家を裏切っていること。

今の夫である江間次郎を利用していること。

この二点だけでも許されません。こういうことをする女がいると困るからこそ、婦徳という概念が作られました。

やはり婦徳を破っている政子や、りくと比較すると、無害なようでそうでもないようにも見えてしまう。

政子とりくは際立った賢さがあるけれども、八重はそうではない。持てる知性は全て頼朝への恋のために使われ、政治力や野心はありません。

と、ダメ出しをしていますが、だからこそ八重は魅力があります。

打算がまるでないひたむきな愛情。平凡で染まりやすい自分に愛を教えてくれた頼朝が自分にとって全てだから、そのために尽くそうとする。

矢のように向かっていく思いがあまりに美しい。

重たいし面倒だし洗練されていないけど、ここまで純粋ならもうどうでもいいじゃないか! そう思えてきます。

それもきっとテレビの中にいるからなのだろうとは思います。

自分が決めた妄想シナリオ以外は無視する頑固さには哀れみを感じますし、勝手だし、夫の江間次郎は気の毒だとも思える。

これほど欠点だらけなのに、それでも魅力がある。

すごい人物像ではないでしょうか。

 

総評

テレビで縄文土偶について説明する番組を見ていて、ふと思ってしまったことがあります。

縄文時代の人々と『鎌倉殿の13人』の人々。

現代人と『鎌倉殿の13人』の人々。

断然、前者(縄文と鎌倉)のほうが距離が近いのではないか?と考え、同時にこのドラマを作る難しさを想像してしまいます。

語彙力。知識の量。そういうものが戦国時代とは大幅に違い、注意せねばなりません。

『麒麟がくる』ではバンバンと漢籍を引用し、故事成語を使っていて素晴らしかったけれども、それが本作ではできない。

いったん難しい言葉を使って、それを落とすようなことを本作はしています。相当厳しいはずなのに、そこをうまく高度にこなしている。

三谷さんの脚本は笑えるな〜……と、おさめているけれども、笑えるだけではない仕組みや伏線があって毎週すごいと思うばかりなのです。

語彙力だけでもありません。

源平合戦って、わけがわからないんですよ。

戦国時代となると戦術戦略に納得できるものがあるけれども、源平時代はもう無茶苦茶。

その理由はわかってきました。

源平合戦の時点では、兵法はじめ様々な思想研究がまだまだ未熟すぎるのでしょう。もちろん、皆無ではないだろうし、本能的に察知できている人はいても、敵味方にコンセンサスが無ければめちゃくちゃになって当たり前です。

たとえば、義時のこのセリフです。

「坂東は平家に与する奴らの思うがまま。飢饉が来れば、多くの民が死にます。だから、我らは立つのです!」

一見いいことを言っているようで、ものすごいダメ出しをしたくなるセリフです。

隣国・宋の士大夫だったら? と、考えると、こうツッコミたくなるのです。

「あのさあ、飢饉が来そうな時こそ、戦なんてもってのほかでしょ! 兵糧確保できないで戦を始めてどうするの? 兵法の基本的なこととして、兵糧の確保が難しい時はそもそも戦争を始めない。そういう基礎知識が通じないんですか!」

「それよりもね、まず、飢饉になったら権力闘争より民を救いなさい! 仁政ってどういうことかあなた方理解できます?」

こういう脳内ツッコミをしてしまう。

もちろん後世からのツッコミであって、義時たちが悪いわけじゃない。彼らは、戦に勝利するだけではなく、国を統治することまで考えるようになります。

努力、鍛錬、学習を重ねてゆきます。

法を整備し、御恩は何かを武士に教え、道徳心を醸成してゆく。

そうすることで日本の歴史をより強く実りあるものへと変えてゆく。

そういう後半があるからこそ、序盤は無茶苦茶なのだと思います。

伏線として何本も矢を放たれたこのドラマ。義時たちの運命をきっちり見届けましょう。


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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト

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武者震之助

2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』以来、毎年レビューを担当。大河ドラマにとっての魏徴(ぎちょう)たらんと自認しているが、そう思うのは本人だけである。

-鎌倉殿の13人感想あらすじ

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