鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第4回「矢のゆくえ」

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鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第4回「矢のゆくえ」
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運命の8月17日 始まる

8月17日――運命の日。

頼朝は読経しています。

大庭景親はそのころ、伊東祐親から挙兵のことを聞かされています。祐親はあのとき首をとっておくべきだったと悔しそう。

ここで山内首藤経俊が急用があるとドスドスとやって来ます。

頼朝挙兵のことを伝え、誘われたが断った!と鼻息荒い。景親からは、いつどこで挙兵するのか、と逆に尋ねられますが、経俊はわかっていません。

経俊を引き下がらせた景親は、兵を集めるのに苦労していては挙兵など出来まいと読んでいます。

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山内首藤経俊の裏切りは頼朝にとって非常に厳しい。

こんな調子では「乳母の子ですら背くってよ」と良からぬ噂が広がってしまい、確実に足を引っ張ります。経俊は、そこまで深く考えてないでしょうね。

なんせ、「どこで、いつ、挙兵するのか?」すら把握していない。

戦国時代ならば、その点をシッカリ把握した上で密告してくるでしょう。いや、そもそも情報収集の間者(忍者)が暗躍していて、こんな雑な計画、即座に露見しているでしょう。

そこに本作の難しさもあると思います。戦国時代と比較して圧倒的に雑で程度が低い。三谷さんがふざけた脚本にしているわけでなく、それが時代の感覚です。

挙兵を控え、市場を歩いていた北条宗時が、伊東祐清に声をかけられました。

お互い対決することになるとわかって、これも運命かと話している。

宗時は、もっと焦ってもよい場面でしょ。情報漏洩しておりまするぞ!

政子が読経しています。そこへりくの女中のくまが来て呼び出される。

仏様に祈っているのか?とりくに聞かれ、できることはそれくらいだと政子が返すと、彼女がさらに続けます。

「おやめなさい」

「どうして?」

「祈れば勝つというものではありません」

政子が反論すると、りくは鮮やかに返します。

敵の身内も祈っている。神仏はどちらに味方すればよいのか?

では何をすればよいのかと政子が聞くと、佐殿はどう言ったか?と、りく。政子は何もすることはないと言われていると告げます。

ならば何をしなくてもよいし、戦は男がするもの、我らはその先を考えましょう。そう言うと、おもむろに図面を広げます。

なんでもこの戦が終われば自分のために館を建ててくれる約束なんだとか。

「楽しみですね」

なんとも楽しそうなりくの頭脳は、ぶっ飛んでいて驚異的です。理詰めで神頼みすら否定する。

今よりずっと神仏が重かった時代に、そんなことができる人間もごく少数います。例えば『麒麟がくる』の織田信長とか。彼女はそれに該当するようです。

比較したいのが、りくと八重――二人はあまりに対照的。人間関係には愛情と打算があり、八重が愛情に振り切っているのであれば、りくは打算に針を振り切っています。

当時わざわざ坂東に嫁いでくる京女なんて、そこはやはりおかしいわけで。自分が思うままに時政を操ることに楽しみを見出してしまっている。

内助の功だのなんでの言いますが、たとえ頭脳が有能だろうと、ここまで打算まみれなのはどうかと思いませんか?

政子はこの点、バランスが取れている方かもしれない。もちろん、彼女も濃厚な性格ですが。

 

最終手段は八重に聞くしかない

挙兵準備は進行中です。

堤の館から出てきた雑色に吐かせたところ、やはり祭り当日は手薄になるとかで、残る問題は山木兼隆です。

本人が館にいるかどうか。時政はいるような気がすると言いますが、それではダメ。確実に本人の首を取らねばなりません。

ここは仕切り直すべきか?

そんな案も出てきますが、伊東が怪しんでいると宗時が言います。息子の伊東祐清と話しましたからね。

ならば延期して18日は?と提案されると、今度は頼朝の都合が悪い。どうやら毎月18日は、殺生を控え、観音菩薩に祈る日になっているとか。

頼朝は苛立ち、取りやめだと言い出しますが、実際問題、今しかないことは重々承知している。かくして挙兵は不安な中で進められてゆくわけですが……。

義時が当てがあると言い出します。

相手はなんと、八重。

彼女のもとを訪ね、山木の所在を確認しにいくのですが、八重にしても「何を言っているのか?」と義時に返すしかない。

それでも義時は、山木が館にいるのかどうかだけでも知りたいと訴えます。

しかし、八重は挙兵のことを父に伝えていた。

呆然とする義時。

一番大事なことを忘れていると八重は義時に諭すように話します。自分は伊東祐親の娘。義時が北条を大事に思うように、伊東家が大事。父を裏切るような真似がどうしてできましょう。

本作は、セリフが矢のように飛んできます。義時と政子が時政にすることを思うと……。

それでも義時は諦めず、頼朝の命が奪われて良いのかと訴える。そうそう、彼はあくまで自分と八重のことは持ち出しません。無意味だとわかっているのでしょう。改めて思いますが、義時と八重の関係は“甥と叔母”だ。

八重は自分自身に言い聞かせるように「命までは奪わぬ」と父が言っていると伝えます。

「爺様はそんな甘い人ではない!」

思わず声を出して食い下がる義時。八重は知りませんが、実際、息子の千鶴丸は犠牲になりました。そして、これ以上話しても無駄だと義時を追い払う。

「北条も愚かな。佐殿の口車に乗せられて、無謀に戦を始めるとは」

「坂東は平家に与する奴らの思うがまま。飢饉が来れば、多くの民が死にます。だから、我らは立つのです!」

そう告げる義時ですが……。

 

夫・次郎との哀しい会話よ

義時の報告を聞いた北条宗時は、頬を引っ叩きます。

「こともあろうに伊東の娘にぺらぺら喋るやつがあるか!」

時政は言っちまったものは仕方ねえと投げやりですが、義時はしおらしく反省。安達盛長はこれでますます後には引けなくなったと言っています。

そして佐々木の息子が……来ていない。さすがに「もう夕方じゃねえか!」と苛立つ時政。いつ来るのかと聞かれて、相手の秀義はこうですよ。

「あさ!」

「だからもう日が暮れるだろ!」

ここで義時は「あさではなく、”さあ“ではないか?」と推察します。もう一度聞いてみると。

「さあ!」

紛らわしいわ!

そう突っ込んでいると、佐々木四兄弟が馳せ参じました。しかも長兄・佐々木定綱は父には夕方着くと伝えておいたと言っております。

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思い出してみましょう。たとえば『三国志』でも結構です。中国の戦争だったら、こういう曖昧なことはやってない。もっと厳密に、いつ、誰が、どの程度率いて合流するかくらい把握しておけ! となる。

国民性云々でありません。それだけ当時の日本では、ルール適用が曖昧だったのです。

笑えるようで、私は地獄だと思ってしまう。だって、これは死人が出る戦の話なのですよ。

わちゃわちゃと「一か八か攻め込もうぜ!」なんて言っているけど、それでいいのでしょうか。もう、胃が痛い……。

そのころ江間の館では、八重が庭にいました。夫の江間次郎が来て、一緒に三嶋明神の祭りに行かないかと声を掛けてきます。

「あなたと?」

「ご案内いたします」

そう照れてうつむく次郎の可憐さよ……。

祭りで父にばったり出くわさないか?と八重が言うと、それはないと返す次郎。なんでも、祐親はそういう場がお好きではないとのことです。

次郎は八重より人間観察眼があるのかもしれませんね。

では山木もそうかと八重が続けて尋ねると、行かないと次郎は断言します。どうやら昨日落馬したのだとか。

なんと哀れな場面よ。次郎が愛情たっぷりだとわかるところがつらい。

彼は彼なりに、そっけない妻を愛しているのに、妻は応じない。それどころか会話から情報を引き出そうとしている。八重がまともな妻ならば、むしろ夫に武功を立てさせようとするだろうに……。

 

頼朝「大通りを堂々と行け!」

八重はこのあと、弓を構えて矢を放ちます。

弓を引く構え。放ったあとの凜とした顔。綺麗でした。最高に、美しかった。

この顔を見られただけでも、新垣結衣さんが八重を演じてよかったとしみじみ……こんなに綺麗だとは思いませんでした。

顔かたちだけでなくて、まっすぐな愛情そのものの輝きが滲み出ているようで、ともかく素晴らしかった。

頼朝は、八重の放った矢を手にしています。

白い布が巻いてある。放ったのは八重だ。かつて二人が忍び会っていたころ、庭の梅に白い布を巻くことは、今夜会いたいという合図だったとか。

頼朝はハッとします。挙兵は今夜にせよ、ということだと。

こうして坂東武者が揃いました。

一堂を前にして、北条宗時は高らかに宣言します。

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では、どの道を進んで山木邸へ向かうのか。

時政が抜け道を提案すると、頼朝から「大通りを堂々と行け」と命じられます。正義を為すからには、そうすることに意義がある、と。

これも面白い伏線かもしれません。

頼朝はこういう大義名分をかざるところはある。

しかし、奥州にいる彼の弟である義経は、そんなことお構いなし。頼朝が思う以上に義経は獰猛で、そこでも兄弟は噛み合わなくなっていくのかもしれません。

一体どんな描き方になるのか、興味をそそられるばかりです。

一同揃った中で、うなずく義時が見えます。

この頷き方ひとつとっても、まだ彼は若いと伝わってきます。そして絵になるんですよね。

序盤で兵数も少ないのに、闇の中で大鎧を着た坂東武者が揃っているだけで惹かれるものがある。

こと甲冑についていえば、この時代が最高かもしれません。五月人形だってモデルはこの時代が多いのでは? それだけ芸術性が高いのでしょう。

そんな迫力ある大鎧を着た一団が、武者行列のように祭りの中を横切っていく。

何か人間を超えた怪物のような、そんな不思議な迫力があり、その行列を八重が見ている。

照明効果が素晴らしい場面です。

松明の炎が浮かび上がるようでいて、画面が見えにくくもない。趣もある。撮影技術を駆使しているとわかります。

今はVOD全盛期で、世界各地の時代劇を見られるようになりました。

どの国も魅力的ではあるけれど、日本の時代劇には独特の個性がある。そういう個性を良い方向へ伸ばしているとわかるから、今年の大河はよい。

そのころ政子は寝床にいます。

頼朝がやってきて「何もせんでいいと言った」と話しながら、妻に救いを求めているようです。

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