鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第14回「都の義仲」

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時政「みんな所領が欲しいんだよ」

義時が八重にボヤいています。

八重は理解を示す。坂東武者は決して京都から来た人の言いなりにはならない。なったフリをしていても、心の底では舌を出している。

「私の父がまさにそうでした」

父のことをようやく語れるようになったのでしょう。八重も父に似たところがあるのかもしれない。

頼朝の来訪をキッパリと断り、噛み付いた時。父のことを思い出していたのかもしれません。

あの頼朝の下劣なにじり寄りは、八重に「やっぱり坂東武者がいい!」と確認させたのかもしれません。

面倒なことになったと疲れている義時。彼女の腹には夫妻の子がいます。

この子が大人になるころには何か変わっているだろうか。そう義時は言います。そして八重は横になってもよいかと聞いてきます。

義時は妻を気遣い横たわらせ、そっと布をかけて水を持ってきてやろうかと言います。礼を言う八重。

すごくよい夫妻です。幸せそうです。

でも、欠けているものがある。

善児の首です。

首は流石に物騒だけれども、善児はこの夫妻にとっては仇ですからね。

後の北条泰時の誕生祝いにいかがでしょうか。

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義時は父の北条時政に相談することにしました。

話を聞き、アッサリと答えを出す時政。

「みんなは所領が欲しいんだ」

そう結論づけます。戦に勝ったら土地が欲しい。坂東より離れた土地でもそうなのか?と義時が疑問の表情を浮かべると、要は米の収穫高だと時政は説明します。

りくがやってきて「時政の不在に懲りたか?」と言い出す。

どうですかね。大江広元もいることですし。

とはいえ、確かに御家人と頼朝を結ぶ絆は不足しています。それでも向こうが呼びにくるまで帰らないとりくが言い切り、時政も「だそうです」と言うだけでした。

時政も不思議な奴です。使えるのか使えないのか。ムードメーカーですので、実はチームに重要なんですけどね。

 


義経の先発隊

閏10月8日、義経の先発隊が出立です。

明るい声でハキハキと、仁田忠常が人数を点呼し、義経が出陣しようとしています。

頼朝はこのとき、弓を引いていました。

しおらしく挨拶にやってくる義経。存分に働くように告げる兄に、全身全霊で戦うと告げる。

頼朝が放った矢が的を射抜く。

義経に弓を渡し、やってみるかと促しながら頼朝が言葉を続けます。思えば黄瀬川で会ってから、じっくり二人で話し合っていなかったな。戦から帰ったら、語り明かそう。

しかしその内容が「木曽と平家をいかにして滅ぼしたか」というものなんですから穏やかではない。

義経が矢を放ち、頼朝の矢を押し退けて当てる。

慌てる弟に対し、強き弟に恵まれ果報者じゃと頼朝は誉めます。

「京で、お待ちしております」

義経はそう言い、出立するのでした。

それにしても頼朝は、なぜ亀とそうしたように、義経と語り合わなかったのでしょう。語り合って理解していれば、あんなことにはならなかったかもしれません。

源頼朝は、毎週毎週、私の中で評価が落ちてゆきます。

彼自身、戦が苦手なのは仕方ない。人には得意不得意があります。

しかし、全軍を束ねているのに、将軍の気質すら見抜かず任命するってどういうこと?

このあと義経は散々酷い行いします。それも頼朝が歯止めをかけられたはず。猛犬を飼っているのであれば、首輪とリードはしっかりとつけねばならない。

それができないのは無責任です。

源頼朝は、むしろ学んではいけないリーダー像だと思う。現に彼の子孫はあまりに早く滅んでしまいます。不運もあるにはあったけれども……。

弁慶たちも張り切っていよいよ出立です。

と、その前に、義経はいつか渡そうと思っていたと義高に箱を渡します。

蝉の抜け殻が入っていました。

感動的なようで、ゾッとさせられる場面でもあります。義高に優しさを見せる一方で、彼は義高の父を滅ぼすと頼朝に誓っている。心の構図が独特なのです。

このあと、義高は残念だと義時に言います。義高は義経のことを惜しんでいました。父に戦で叶うわけがない――そう言いつつ、手のひらの中の抜け殻を握りしめる義高でした。

 


陰謀サークルに景時

御家人の陰謀サークルに、あの男が参加していました。

梶原景時――呑気な坂東武者は、景時はあっち側(頼朝側)だと思っていたと歓迎している。

しかもこのサークルには文覚まで参加してきおった。こいつは魚を取ってロクに仕事をせず、処罰されたばかりなのに、どこまで人として最悪なのか。

坂東武者ははしゃいでいますが、ここでも義村はおかしい。

彼は常に彼の道をどうすれば進めるか、最善の手段を考えている。そのために血が流れるにせよ割り切るタイプ。

文覚がペラペラと調子が良いことと比べてみましょう。こういうとき、自己アピールする奴は使えないものです。

義時は、鎌倉殿側で打ち合わせ中です。そこへ景時が来て、御家人の陰謀を明かす。

皆好き勝手に喋るばかりで、一向に話は進んでいない。けれども束ねる者がいれば危険だと。

それはつまり、あの場にいない上総広常だ。

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義時は広元から上総広常のことを頼まれています。

先週、坂東武者の青春は終わったと書きました。もう修学旅行にならないと。

社会人の機密保持義務どころか、一気に憲兵隊がうろつくような恐ろしい事態になりました。

このあと義時は、広常に何かを頼みに行きます。武衛も大変だと語っていた広常は、なんと御家人の集まりに向かっていくのです。

皆が感動する中、やはり義村は警戒している。状況を観察し、結論を推理することが趣味のようなところがあるのでしょうね。

そして鎌倉は二つに割れたと語られます。

 

MVP:京都人

『京都人の密かな愉しみ』というNHK番組があるのですが、さながらその中世暗黒版といった回でした。

牛車にうまく乗れていない木曽義仲を嘲笑う。

思いつきで命令をコロコロと変える。

義仲を山猿とバカにする。

猟犬のように義仲をこき使っておいて所領を取り上げる。

人をコケにし、自分達以外は人ではないと見下す。

「平家にあらずんば人にあらず」もとい、「京都人にあらずんば人にあらず」と言いたげな高慢さ、冷徹さ、いやらしさに戦慄しましたね。

後白河法皇も、その周辺も、牛車をひく牛飼童まで、全員がどす黒く見えておそろしかった。

そして、こういういやらしさを出すことで、坂東武者の言動に説得力を持たせます。

三浦義村には、平氏にせよ、源氏にせよ、まったく血統オーラは通じない。

あんな連中を担いでいたら腹が立つだけだと、心の底では舌を出している。爺様(伊東祐親)の血を濃くひいた孫ですから。

このいやらしい京都人と、それに対して反発する坂東武者という構図。これが本作の根幹にあるのでしょう。

一方で、両親が坂東武者の北条泰時がついに母の腹に宿りました。

義時はこの子が育つ頃は世の中が変わるのかとつぶやいていました。

父子で世の中を変える。京都になだれ込み、さんざんコケにしてきた連中に泡を吹かせてやる。

それがこのドラマのフィナーレでしょう。

そうそう、いやらしい京都人には大江広元も入ります。

彼の悪辣な策が鎌倉にヒビを入れています。彼の場合、ショック療法だからたちが悪い。しかも、彼は生き延びて毛利氏の先祖になるんだなぁ。

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総評

木曽義仲はなぜかくも滅びたのか?

ここで、もう一人の人物を持ち出したいと思います。

三国志』でおなじみの呂布です。なぜか?

日本では脳筋でともかく無茶苦茶武力だけが高いように思われますが、中国語圏では貂蟬とのロマンスもあって、イケメンとして描かれます。極端に愚かというわけでもありません。

とはいえ、褒められるかというとそうでもない。

主君でもある董卓と共に洛陽を荒らしました。

『演義』はじめフィクションではともかく悪事が強調される董卓と呂布。これには考えたい要素があります。

董卓や呂布は、北からやってきた。中原にいる漢族とは異なる、異民族でした。

異民族が都を荒らし回ること。これは絶対的な悪であるとされます。

ヨーロッパを荒らしたアッティラ。“タタールのくびき”と呼ばれるモンゴルの西進もこの構図に当てはまるのです。

この構図に当てはまる場合、悪事が誇張されていないか、検証の必要があります。

董卓や呂布への嫌悪感の背後には、中華思想があるのです。

この中華思想は中国大陸だけではなく、日本でもありました。

京都周辺が日本の中華である。京都へ登ることを「上洛」と呼ぶことからもわかります。「洛」は「洛陽」からきている。かつて京都は中国をならって「洛陽」と呼ばれていた名残です。

この構図を考えると、木曽義仲が京都に入った構図は、『三国志』序盤とも重なります。

外戚と宦官=平家

董卓や呂布=木曽義仲

反董卓連合の群雄たち=源範頼、義経

義仲と呂布は立ち位置として似ています。

彼らは何が悪いのか?

確かに野蛮で、暴力的だったかもしれない。けれどもそれ以前に、異民族であって、しかも都に入った時点で悪だとみなされてしまった。

この構図にはどうしたって差別があります。

このドラマは義仲の義を描き、透き通った人物とすることで、差別構造を描きました。

そこが新しいと思えるのです。

そしてこの差別は、ずっと根底に響いているのでしょう。

鎌倉から坂東武者が結束して京都へ攻め上る【承久の乱】には、華夷の差別構造を打ち破るための闘争として描かれるのだと思います。

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『三国志』と見立てる構図は、続きもあります。

さらに進めていくと、主家を乗っ取り、政権簒奪を完遂してしまう司馬懿が出てきます。

北条義時はさしずめ、この司馬懿になると。

司馬懿を主役としたドラマに『軍師連盟』があります。

司馬懿が曹魏のパワハラ体質に疲れ果て、やけっぱちになって政権を簒奪する。そんな労働問題を感じさせる秀逸なドラマです。

時代は司馬懿や北条義時の言い分に耳を傾けるようになったのかもしれない。そんなことを考えてしまう。

仕事でこんなに神経を削られまくっていたら、そりゃ復讐したくもなる。世の中変えたくもなる。

そうされたくなかったら、労働環境の整備が重要ですね。

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