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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第14回「都の義仲」】
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京雀たちに嘲笑される義仲
牛車が都を進んでいます。
義仲が履き物を投げ、それからひらりと飛び降りる。
と、京雀たちは扇を手にして嘲笑っています。なんという陰湿さよ。
義仲と行家は法皇に会いました。
法皇としても、源氏の指揮権を確認しておきたい。行家はキッパリと、頼朝の指図で動いていないと全否定します。
頼朝め……そう苦々しい表情の法皇。かくして恩賞は仕切り直しとなりました。義仲も、戦った家人と兵のために、恩賞を願う。
しかし、これには頼朝も怒るしかありません。
頼朝は下劣で腹黒いというだけでもない。彼も坂東武者という猟犬を飼っているからには、餌がいるのです。
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どこかあやうい、日本中世の構図といえます。隣の南宋と比較すると、国のシステムとして緩いんですね。
恩賞なり、領地を配る支配権を朝廷や公卿が握っていれば、武士は従うしかない。そんな構図にひびが入り、破壊を完遂するのが今年の大河です。
しかし、下劣な政治劇だけでなく、透き通った世界もある。大姫と義高の二人は、まさにそんな世界の中にいます。
大姫が会いたいからと詫びる政子。そしてこうきた。
「よいお顔立ち……」
「ありがとうございます」
スッと返事をする義高。
このやりとりを見ていた妹の実衣が「なかなかああは言えない、言われ慣れている人はちがう」と納得の様子です。
政子が、息子の万寿も冠者(義高)のようになるのかと期待していると、源氏の人はシュッとした顔立ちだからそうなるのでは?と実衣が答えます。
なかなか苦い転換点かもしれません。
政子の愛する男への関心は、頼朝から万寿へ移動している様子。
夫より息子がイケメンになって欲しい。娘がイケメンと恋をして欲しい。そんな変化を感じます。
頼朝が政子以外を求める気持ちもわかるような……いや、もっと歩み寄る努力しなさいって!
それだけ義高が美しいということかもしれません。
そんな希望の子である万寿を抱いて、道がやってくると、義高を見てこうだ。
「まぁよいお顔立ち!」
「ありがとうございます」
確かに慣れているのか……どうなのか。
「本当にゆっくりする奴がおるか!」
三善康信は京都で観察を続けていました。
頼朝挙兵のキッカケにもなったうっかり者ではあるけれど、真面目で誠意がある。そんな人物です。
なんでも木曽の兵が乱暴で、目に余るとか。
「気取りやがって!」
康信が狼藉者に絡まれていると、義仲が庇い彼を救います。
京に住む者たちの不安を訴えると、義仲は「今のは俺の兵ではない」と返します。なんでも攻め上るうちに、寄せ集めが近寄ってきてしまったとのこと。引き締める必要があると詫びる義仲です。
義仲は魅力があって、人の心を掴む。彼も透き通っています。義高はそんなところを父から受け継いだのかもしれません。
そのころ、法皇と源行家は双六遊びをしていました。
義仲の悪評を聞き、困ったものだと突き放す行家。どこまで卑劣なのか。
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法皇様はお強いとおべんちゃらを言っています。
行家が帰ると、法皇は双六をバラバラにしつつ、いつになったら出陣するのかと丹後局にこぼし始めました。
「ゆっくりせいと言っておいて……本当にゆっくりする奴がおるか!」
な、な、な……何、この京都人の面倒臭さを凝縮した「ぶぶ漬けでもどうどす?」理論は! あまりの陰険さに私は震えるしかありません。
※ぶぶ漬け=お茶漬けを食べて欲しいという意味でなく、この程度の粗食しかないから帰れという意味
行家も義仲もがっかりだ、と過剰な忖度を求める法皇に、丹後局が相手を庇うと拗ねたように吐き捨てます。
見目良い男に弱いってよ。コメツキムシよりはマシだと笑う丹後局。
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新たな帝が即位したとなっては、三種の神器奪還が大事。ゆえに、猟犬は撫でてやらねばなりません。
法皇は安徳天皇を諦めたのです。
そして別の孫――後鳥羽天皇を即位させました。
僅か4歳。史実では、この即位の背景に丹後局の進言があったとされますが、名前の近い別人・丹波局との混同との見方もあります。本作ではそちらを採用しているように思えます。
皇位継承の証である三種の神器がない、異例の即位でした。
もはやこれ以上猶予はならぬと、法皇は三種の神器奪還を促します。
義仲と行家が命じられると、義仲は困惑するばかり。平家と兵力が互角で苦戦すると返すのです。それなのに、平知康は勇猛果敢な兵が山ほどいると言ってくる。
思わず、戦を知らぬ人には口を出して欲しくないと義仲が言うと、法皇はムスッとします。謝るしかない義仲。
頼朝はいつになるかわからないから、今すぐ、今すぐ! そう急かす法皇。
中世の迷信、その弊害がここにあります。
三種の神器があろうがなかろうが、即位はできている。
義仲は責任感があって優しい。兵士を無駄に損耗させたくない。けれども法皇はそんなこと知ったこっちゃない。
こんな理不尽があってよいものなのか? 悔しくなってきます。
恩賞どころか所領を奪われそうな義仲
そんな父の武運を、鎌倉で義高は祈っています。
義高が美しいのは顔立ちだけではない。心が美しいのだと思えます。
案の定、備中国での義仲は苦戦を強いられてしまいました。
ここで合戦シーンがあります。
当時はまだ素朴というか、原始的な戦いだということはわかります。
【倶利伽羅峠の戦い】において、義仲は「火牛の刑」で大勝利を挙げますが、中国では戦国時代・斉の田単(でんたん)が、BC3世紀に用いていました。
日本だと邪馬台国の時代、つまり『三国志』ともなると、火計はもっと精密です。油を入れた壺を投石機で投げて火矢を放つといったこともできます。
つまり源平合戦でも割と原始的な戦術なんですね。
義仲の苦戦は頼朝にとって好機。空白地帯になった京都へ向かうにはうってつけで、いよいよ出番だ!と、鎌倉で張り切ります。
更には、そつなく法皇にも引き出物を贈っておき、上洛への手筈を整えました。
と、法皇は、東海道、東山道諸国の領地や寺社仏閣の統治、年貢取立ての権利を頼朝に与えます。
東国の支配者だとお墨付きをもらったのです。
これを受けて御家人に得意げな顔を見せる頼朝。「武衛」と嬉しそうな上総広常。しかし、他の御家人にはどこか不満げな空気が漂っているようで……。
一方、義仲は困惑するばかり。東山道には信濃もある。それが頼朝のものになるとはどういうことなんだ!
「信濃は俺の所領だ! 法皇様は何故このような仕打ちを!」
「くやしゅうございます」
巴御前がそう言いながら、義仲たち一行は京都へ戻ります。
歴史の一面が見えてきました。
義仲が野蛮なのか? それとも源頼朝が狡猾なのか? 後白河法皇が信賞必罰を理解せず無茶苦茶なことをしているのか?
わかりやすく面白いからと、最初の見方(義仲野蛮説)が受け入れらがちですが、果たしてそうなのか疑問です。
恩賞があるからこそ武士は血を流しても戦う。その仕組みを壊すだけでなく、所領まで取り上げる法皇の所業は無茶苦茶ではないですか。
かくして京都へ戻った義仲は、法皇には会えません。
それどころか信濃を取り戻すには戦に勝つしかないと平知康にあしらわれる。苦戦するとわかっていたから、慎重に出陣せずにいたのに、失敗したらこれですか。
しかも行家は、平家と無断で和睦しておいて、謀反だのなんだのネチネチ言い始めてきた。
義仲は上がり込んで直に話そうとすると、そういうことをするから嫌われると知康が嘲笑います。
「お前に用はない!」
「山猿めが」
そう言われ、義仲は「鼓判官!」と言います。
鼓を打たせたら京都一なので、平知康はそう呼ばれているとか。「それが何か」と挑発してきます。
「では俺が叩いてみてもよい音がするのか!」
そう殴りかかる義仲……気持ちは理解できるけど、暴力はよろしくない。知康は殴られ悲鳴をあげています。
知康が法皇に泣きつくと、法皇はこうきめつけました。
「謀反じゃ! 謀反じゃ! 謀反じゃ!」
このあと、法皇の代わりに丹後局が義仲の前に現れ、お会いにならないと冷たく言い放ちます。
一目だけでも! そう訴える義仲を、丹後局は突き放します。
「わからないのですか? そなたに肝心なのは、都が何たるかを知ること。下がりなさい」
とても柔らかい鈴木京香さんの容貌と声が、冷たく響きます。
なぜ義仲はこんな目にあわねばならないのか……辛い……。
そのころ鎌倉では――。
上洛の挙兵を決意 大将は九郎
頼朝が「法皇様をお救いする」と言い始めました。
義仲が平家と通じていると言い出し、もう猶予はならない。しかし義時が、すぐには出兵できないと返します。
問題は兵糧ではありません。
御家人たちに不満が溜まっています。
源氏同士の争いに巻き込まれたくないし、奥州が気になる。もし頼朝が鎌倉を経てば、藤原秀衡が背後を突いてくるかもしれない。
なぜ藤原秀衡は義経を二度も匿ったのか~奥州藤原氏の名君は頼朝に対抗する気だった?
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文覚の呪詛が効かないことに、頼朝は苛立ちます。
と、弟の阿野全成が苦い顔で言います。文覚、最近、真面目じゃないってよ。よりにもよって浜の漁師と仲良くして、釣りをしているとか。
生臭坊主が!と怒り出す頼朝。魚を食べるんじゃ話にならねえ!
かくして全成が文覚の元へ乗り込み「鎌倉殿の御指図だ」と色々と没収します。そのうえで、秀衡の呪詛祈祷は自分がやると宣言する。
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義時のいう通り、坂東武者の心は冷めていました。
千葉常胤は義仲との争いに関わりたくない。比企能員が法皇様を救うと言っても、土肥実平は源氏の争いではないかと懐疑的です。
義仲が平家と結んだ噂は鎌倉にまで届いていて、混沌としています。
あの三浦義澄ですら不満そうだし、岡崎義実は鎌倉殿の駒じゃねえと毒づいている。
不満はごもっとも。京都では武士をもっと露骨に駒扱いしているからこそ、義仲は追い詰められています。
頼朝は苛立っている。要するに自分が御家人を束ねて使えるのが当然じゃないかと思っているのです。
やむなく御家人抜きでの出兵を考え始めます。
しかし兵数を見積ると、せいぜい千人。大江広元は先陣を向かわせ、あとで合流させることを提案します。
大将は誰か?
ここで梶原景時の名があがり、景時も前向きな姿勢を見せます。
しかし、頼朝は決めていました。
「大将は九郎」
信用できるのは身内だと言い切り、呼んでくるように言います。
気になるのは景時の目です。何かがよぎった。彼は他の御家人よりも賢いし、実行力がある。
他の連中ならばせいぜい「やってらんねえよぉ!」と酒でも飲んで暴れるところで、景時は発想の転換ができる。
邪魔者がいれば追い詰めて排除する。そういう知恵が回る男です。
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かくして義経が呼ばれて来ます。
命令を聞くと感動して言葉も出ない。源範頼がかわってお礼を言うと、義経はこうきた。
「一月のうちに平家を滅ぼしてご覧にいれます!」
まずは木曽義仲だと言われると「かしこまりました!」と返す義経。
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かくして義経と範頼の出陣が決まるわけですが、これはもう頼朝が迂闊としか言いようがないでしょう。
身内云々以前に、将の資質を見抜かねばなりません。
【亀の前】の一件で、義経にはオーバーキル(やり過ぎ)の傾向があることはわかっていた。命令すら守れない将が、身内ということで厚遇される。こういう人事が一番危険です。
仮に、この手の人事を強行するなら、何らかの歯止めや指示が必要です。それが特に見えてこない。
嗚呼、なぜ頼朝はこんなにも迂闊なのか……。
戦になってしまう――その前に義時は木曽義高と密かに会い、義仲へ戦にならぬよう文を書いて欲しいと頼みます。
義高が澄んだ目で返す。
「父は義にもとることは決して許しませぬ」
彼は信じています。義が勝つことを。そして、この戦に義はあるのか、と素直にそう問いかけてきます。
こんな濁った世界に、なぜ、木曽の父と子はいるのか。彼らのような魚は、澄んだ水でしか生きられないのでしょう。
頼朝から出陣の件を聞いた北条政子は怒りました。木曽殿と戦わぬよう訴えています。
わしのせいではないと頼朝が言葉を濁すと、政子は冠者殿、つまりは義高を案じています。
大姫の許嫁の件は難しいと頼朝が言葉を濁すと、政子はどうか首を刎ねるなどというおそろしいことは言わないで欲しいと訴えます。
頼朝は世を糺すとはそういうことだと言います。
それでも政子は、大姫のためにどうか! そう訴えて来ます。ここで頼朝もしぶしぶと「考えておく」とは言います。
政子は夫を信じているわけでもない。冠者殿を守ると実衣に宣言すると、彼女も賛成します。
大姫がどれほど冠者殿が好きなのか。頼朝はまだご存知ないのだと彼女らは考えているのです。
北条家の皆さんは、恋愛に対してまっすぐだなぁ。
時政はりく。政子は頼朝。実衣は全成。そして義時は八重。そこには嘘がないと思えます。
三浦の館で謀反談義に義村は
三浦館に御家人が揃っています。
なんでも坂東武者で関東を治めるとか。つまりは謀反。頼朝を追い出して、清水冠者を据えるという。
そこで三浦義村がツッコミます。
頼朝から清水冠者に変えても、鎌倉殿と同じことの繰り返しだ、と。
彼は答えを弾き出している。亡くなった北条宗時と同じです。たとえ源氏の棟梁だって、利用するだけ利用したら、坂東ではない者は放り出す。
思えば義村は序盤から頼朝の首を刎ねちまえと平気で言って来ました。彼には源氏の魔力なんて通じないのです。
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一方で、父の義澄は困惑しています。
進むも危険、断るも危険。周囲は、腰が重かった三浦義澄も仲間に入ったと喜んでいると、義村はむっつりとしつつ、頭の中身を回しているような顔をしている。
義澄は北条を討つつもりか?と確認しています。
彼は、北条を助けることを条件として提案します。そして知恵者の我が子に確認をするとこうきた。
「父上のお好きなように……」
義村の場合、これは別に肯定というわけではありません。現時点では答えが出せないけれども、“否”というわけでもない。ペンディング中ですね。
義村は三浦一族の安泰が第一目標です。つまらないけれど、そこはわかっている。
彼の性格を考えてみたくなります。
女にちょっかいを出しているけれども、隠し子ができるような段階まではそうそういかないそうだ。その点、義経はあっさり比企の里とそうなっていた。
真面目というわけでもない。要は、三浦の嫡男が隠し子なんて作ったら、面倒なのですよ。
無駄な手間がかからない範囲でスリルを求めたいから、粉かけて遊んで終わり。ある意味タチが悪いと言える。
今の厄介な状況も、義村にとっては暇つぶしかもしれません。うまく泳ぎ抜いてやればいいけれども、それも自分の想定内であることは大事。
三浦一族の嫡男という意識もキッチリ持っています。三浦の傍流が自分の行く道の邪魔をしたら、義村はその肉を食らってでも排除することでしょう。
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