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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第21回「仏の眼差し」】
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男児誕生で複雑な立場の時連
北条時政とりく(牧の方)との間に、待望の男児が生まれました。
この夫妻は子沢山であったものの、女児ばかり。ついに男児が生まれ、世継ぎができたと喜んでいるのです。
政子、義時、実衣のきょうだいたちも揃って祝いの言葉をかけていると、大姫が姿を見せます。
「おじじさま、元気を出してください」
「元気がないように見えるかな」
なんだか大姫は不思議なことを言い出します。赤ちゃんに命を吸い取られるとか。そんなことはないと否定しても、親の命は子の命だと考えた方が気が楽だと言います。
そして“葵”がおまじないを教えると何やら勝手につぶやき始める。
「おんたらくそわか、おんたらくそわか、おんたらくそわか……」
これは一体なんなんだ?と実衣が阿野全成にコッソリ尋ねると、もしかしたら「如意宝珠」ではないかとのこと。
そもそも葵とは何か?
そう尋ねると、今日から名前を変えたと大姫がニッコリ答えます。義時が不安そうにいいのか?と政子に同意を求めると、目を若干泳がせながらとりあえずいいと返す政子です。
この北条家の集まりには畠山重忠もおりました。
政子、義時、実衣の異母妹である“ちえ”を嫁にとっていたんですね。しかも彼女は子を宿したとか。
実衣は畠山殿に似た子が生まれるといいと言いだし、りくも御家人の中で一番凛々しいとうっとりしています。
その背後には、稲毛重成もいました。
彼も時政の娘で義時たちの異母妹である“あき”を娶っています。あきは病弱らしく、政子と実衣が気遣っています。
ちなみに政子たちの同母妹に“時子”がいます。
足利一門の祖たる足利義兼の正室となるのですが、本作には顔を見せないようです。
なぜか?
足利義兼と時子は親族間の熾烈な争いに巻き込まれず、比較的穏やかに生きていたからではないでしょうか。
義兼の活躍は、アニメで楽しめますね。
◆ 足利義兼描くアニメ、米映画祭2部門入賞 切り絵と実写で映像化(→link)
和やかな雰囲気の中で、時政に向かって「八重が渡したいものがある」と義時が告げます。
子供たちと編んだ草履です。
時政は喜び、政子も褒めるのですが、隣にいたりくが不機嫌になって、私が古い草履を履かせていると言いたいのかとチクリ。
大姫はただただマイペースで、おまじないのことを続けます。
そこへ突如として現れたのが瀬戸康史さん演じる北条時連(北条時房)。
大姫に頼まれていたものを持ってきたといい、父と義母の息子誕生を祝うのですが、これが何気ないようで、なかなか厳しい場面です。
というのも時連は、りくから生まれてきた男児の異母兄にあたります。それでも母の身分が低いから、北条の跡取りになれません。
兄の義時も同じ立場とはいえ、彼は江間の家を継いでいる。
つまり、時連にとっては、生まれたばかりの弟の方が尊いとされてしまう残酷な場面です。
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壊れかけの大姫
そんな時連が大姫に頼まれて手にしているものはイワシの頭でした。
魔除けとかで、身重のちえは臭いに困っています。
政子は話を逸らし、八重に預かっている子供の数を聞く。と、15人とかでまた増えている。
りくはこれも気に入りません。金剛を孤児と一緒にされることが許せないのです。下々の子とは立場が違うんだぞ、と。
元となりそうな逸話がありますね。
御家人と金剛がすれ違った際、相手が下馬しなかった。すると頼朝が金剛は若くとも立場が違うと怒ったとか。
そもそもりくは、八重が孤児の世話をすること自体が嫌で仕方なく、他にやることがあると不満を口にし始めます。
もっと北条を盛り立てて欲しいとか……ひとつ口にすると止まらなくなってしまい、色々言いたくなるからいっそ言ってしまおう!と宣言して続けます。
矛先がぶつけられたのは畠山重忠でした。
なんでも最近は比企が目立っているし、梶原景時が奥州合戦では兵を任されるし、どういうことか?と。
万寿を擁する比企への対抗意識が見て取れます。梶原景時も万寿側とされているようです。
場の空気に耐えられなくなった時政は話を逸らし、伊豆の願成就院に行こうと語りかけます。
なんでも奈良から呼び寄せた運慶が仏像を作っているとか。
しかし、りくは話を逸らさない!とたしなめ、大姫はイワシの頭をうまくちぎれなくて叫んでいます。カオス……。
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重苦しい会合の場が終わり、実衣が政子に大姫のことを尋ねます。
若い娘はああ言うのが好きだと戸惑う政子。
葵という意味もわからないのですが、これは『源氏物語』からではないかと阿野全成に指摘されたとか。確かに大姫は読んでいたそうです。
葵の上は、光源氏最初の妻で、祟り殺される人物です。義時が、自分のせいで義高が死んだ……と苦悩の表情を浮かべると、思わず政子も言い放つ。
「あなたのせいだわ!」
慌ててたしなめる実衣。原因はともかく、どうにかせねばならないでしょう。
義高の死により、大姫が鬱状態になったとは史実でも指摘されるところです。それが劇中でこのような方向に向かうとは……妙に生々しい壊れ方を感じます。
義時は伊豆へ 八重は川へ
金剛と鶴丸が喧嘩をしています。
止めに入った八重が金剛を諭す。鶴丸には父も母もいなく、寂しいのだ。
両親は生きていて修行に出ていると語っていたのも、寂しいからこそ強がっているだけだ――八重はそう言い聞かせます。
「母上は金剛の母上です。私だけでは駄目なのですか」
八重は辛い思いをしている子を助けたいと言います。そしてこう付け加える。
「でも、あなたが一番大事」
確かに幸せそうで、輝いている姿に見えます。
伊豆の願成就院では、住職が時政や義時たちを出迎えていました。
阿弥陀如来様の仕上がりを確認したいと告げると、見たこともないようなお姿だと住職は言います。
そのころ、八重は義村とともに川遊びする子供たちを見ています。
義村の娘と金剛は仲が良い。夫婦にさせてやるかと気の早いことを言う義村。
場面は再び伊豆へ。運慶殿は聞きしに勝る腕前だと嬉しそうな住職。時政も奈良から呼んだ甲斐があったと喜んでいます。
なんでもお金を相当弾んだとかで……その運慶はどこか?
ここで、当時の伊豆について想像してみますと、当時の遺跡として竪穴式住居も見つかる状態です。
当時の日本全国が『枕草子』や『源氏物語』のように綺羅びやかな生活を送っていたわけがない。
国語の授業で古典を習い、歴史の時間でも京都周辺を習うからわかりにくいですが、関東地方ともなれば素朴です。
そういう地域に寺社ができる――なんだか凄いことだ……と現地の人は驚いたことでしょう。
しかも運慶の仏像ですから、とてつもないこと。
中世の宗教というのは、ともかく圧巻の美術で信者の心を掴みにいくわけですね。今を生きる私たちが受けるよりもはるかに大きな衝撃を、当時の人びとは味わう。
八重は義村に、この先戦はないのだろうかと尋ねます。
戦う相手がいないと答える義村ですが、御家人同士で争わぬ限りは……と不穏な条件をつけます。
八重は義時のことを心配しています。
元気がない、奥州で何かあったのか、と義村に尋ねるのですが……。
「知らん! 冷えてきたな。ちょっと小便に」
義村は立ち去ります。
かつて彼は八重を狙っていると言っていたことがありますが、真意はどうだったのでしょう。
頼朝のように、義時を愛する八重にイライラしてしまったのか。
それともただ単にいつもの感じの悪さ、情緒ケアに向いていない言動が出ただけか。
ともかく、川に八重を置いて用を足しに向かいます。
運慶と一杯 八重は川の中へ
時政たちの興味が布に被された仏像に向かっていると、運慶がやってきました。
「おいおい触らないでくれ、勝手なことされちゃ困るな。よっ、俺が運慶だ」
明るく軽快な人物です。
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運慶は住職が呼ぶのが早いと言います。なんでも奈良で運んだものを仕上げているとかで、明るいところで見ないとわからないチェックをしているそうですよ。
ただし、彼の仏像は薄明かりで見た方が引き立つ。そんな持論を語ります。
さらには俺を無礼と思っているのか?と時政や義時たちの方を見る。
寄進をもらい、仏を彫る。これで見返りはない。へつらう必要はなし! あとは顔ができたら完成だと言い切ります。
この運慶は中々よいことを言っていると思いました。
展示会で見る仏像は確かに素晴らしいですが、果たして観賞として正しいのか。
照明を落としてあるとはいえ、実際に寺の中で置かれている状況とは違うのではないか。
そんな仏像と向き合う姿勢を考えさせられる場面です。
また見る側の反応もいいんですよね。時政や義時らも、本当に心をつかまれた顔をしている。
しかし、このとき八重たちのいる川遊びの場では大変なことが起きていまいた。
鶴丸が流され、流れに取り残されていたのです。ちょっと目を離した隙に流されてしまったとか。
「千鶴!」
思わずそう叫んでしまう八重。川に流され命を落とした一人目の我が子を思い出してしまいます。
時連は仏像を見て、まるで仏様がそこにおられるようだとうっとり。運慶は嬉しそうに解説します。
「阿弥陀仏は生あるすべての者をお救いになる。不思議なもんでさぁ、どことなく顔立ちが、ある人に似ちまってさぁ」
それが誰なのか?
問われても「教えん!」と返す運慶に対し、何か刺さったのか、時政が気に入り、一献飲もうと誘います。
しかもここで酒盛りをするらしい。阿弥陀様も一緒に飲みたいって……仏の教えに感動しておいて酒ですかーい! そう突っ込みたくなる。
日本ではかなり甘いですが、仏教徒は飲酒もよろしくありません。
タイの仏教研究者に「ビールでも飲みながら仏の教えを語ろうか」と語りかけ、怪訝な顔をされたという日本人の先生もいたなんて話もありますね。
鶴丸を救うため、八重は川の中へ入っていきました。
「ばかっ!」
そして鶴丸を抱いて川の中を歩いていると、義村も戻ってきて、慌てて救出へ向かいます。
そして八重から鶴丸を受け取り、岸へ。
急に深くなるから川は気をつけたほうがいいと語る義村。山本耕史さんの鍛え上げた上半身が見えます。すると……。
冷たい流れに力が尽きてしまったのか。
八重の姿が見当たりません。
「母上!」
「八重さん!」
悲痛な叫び声が河原に響きます。
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