鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第31回「諦めの悪い男」

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一幡には関東 千幡には関西 という折衷案だが

己が動けば血の海になる。どうすればよいのか。義時が何か書面を見つめています。

そして比企能員にこう提案しました。

鎌倉殿の役目を二つに分けるのはどうか?

一幡には「関東二十八カ国」と千幡には「関西三十八カ国」。要は列島の御家人支配域を東西で分けるということですね。

能員は悪どい笑みを浮かべつつ、書面を破って投げ捨てます。

そして能員がその場を去っていくと、大江広元が義時に対して「比企殿が受け入れるわけがない、最初からわかっていたであろう?」と語りかけます。

やれることはやった。拒んだのは向こうだ。

そう強調する義時。なるほど、アリバイ作りですね。

息子の泰時も黙っていられなくなったのでしょう。父に「わかっていたのか?」と問いかけると、質問には答えず「これで大義名分がたった」と無表情のまま返す義時。

「比企を滅ぼす……」

泰時は唖然としています。まさか父が、こんな顔をするなんて……。

しかし、この泰時の絶望こそが希望でもあります。父の汚いやり方を学ぼうと目を輝かせていたら、何の救いもありませんから。

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8月末日――容態の戻らぬ頼家が、意識のないまま床の上で出家させられました。

政子と義時は比企一族をどうするのか話し合っています。

しみじみと頼朝の正しさを噛み締めている義時。敵を寄せ付けず、常に先に仕掛けた。それがあの方の教えであった。

政子は一つだけお願いがあると言います。

一幡の助命です。頼朝の血を引くものを殺めてはならないと願うと、義時は、仏門に入ってもらうと妥協案を提示します。

政子はそんな弟を信じていないのでしょう。

「誓いなさい」

「誓います」

そう言い合いますが……ある意味、頼朝が殺戮のたがを外した結果がこれです。たとえば頼朝が、源氏の血だからと木曽義高を助命していれば、その後の結果は大きく違ったかもしれない。

頼朝の死後、さらにゲームのルールは変わりました。

たとえ出家していようとも、阿野全成とその息子・頼全は殺された。

徹底せねば、いつまた驚異となるかわからない。

そして義時は、政子に誓約した直後、戦になったら真っ先に一幡様を殺せと泰時に命じます。

「生きていれば、必ず災いの種になる。母親ともども……頼朝様ならそうされていた」

頼朝の教えを受けた愛弟子が、その頼朝の血を引く幼子を殺す。何をどう間違ったらこうなるのでしょうか?

歴史で言えば、司馬懿曹操のやり方をトレースして、王朝簒奪する過程を思い出します。

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比奈に比企を偵察させる

比企の館に比奈が戻って来ました。

義時の頼みを受けてのこと。

善哉とつつじは大事に思われていないようで、一幡が遊びたいというから善哉だけ来ているようです。これなら善哉とつつじを巻き込まずに始末できそうですね。

比奈が善哉をどうするのかと聞くと、八幡宮で出家させるのだとか。

ここで比奈は失礼すると立ち上がり、扉の向こうを立ち聞きをしています。

そこにいたのは、三浦義村に誘いをかける能員でした。

能員は、北条には先がないと言っています。つまり、両者ともに殲滅する気だと言質が取れたようなもの。こうなったら先手をとる方が勝ちます。

泰時が暗い顔をして考え込んでいると、比奈がやってきます。義時が御所にいると聞くと、急いで書状を届けて欲しいとのこと。

この比奈もいつもと同じマイペースなようで、重大な情報を伝えようとします。

泰時がこう聞きます。

「父上は変わられましたか?」

「変わられたと思うのですか? 人は変わるもの。それでいいではないですか」

「……忘れてください。行って参ります」

「いってらっしゃい」

見送る比奈の顔には、さみしさが滲んでいる。彼女の愛した純朴な小四郎はもういない。同じ顔と声をしたあの人は、何か別のものになってしまったのかもしれない。

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比企に手を伸ばされ、あの男、つまり義村はどう出るか?

悩む義時に、泰時は比奈を利用したのかと尋ねます。

義母上の気持ちを利用して、比企を裏切るようなことをさせて、どうして平気でいられるのか!

そう問いかけ、父上がわからないと畳み掛ける。

「父上はどうかされております! そこまでして、北条の世を作りたいのですか?」

「当たり前だ!」

我が子にそう返すものの、義時は本当にそう思っているのでしょうか。なんだか己に言い聞かせているようにも見える。

深く嘆息する義時は全く楽しそうではない。いや、こんな状況でもどこか楽しそうな三浦義村がおかしいだけですね。

 

最後の交渉を父に託す義時の狙いとは

義時はまだすべきことがあります。

父の北条時政と向き合い、念押しします。

千幡様はまだ幼い。鎌倉を率いるのは北条ということになる。率直にそう切り出すと……。

「その覚悟があるかってこったろ」

「はい」

「あるよ。なんだよ」

「軽いのです!」

おう、軽いぜ――そんな孫の運動会に行くか聞かれたおじいちゃんみたいなノリで答えられてもな。で、りくから聞いているってよ。

「あれは誰よりもわしのことをわかっておる。そのりくがいうのだからなんとかなるよ」

ならねーよ! そう全力で突っ込みたい。自分の頭で考えてくれってば。

しかし、わしには大事に思っているものが3つあるとかで。

1 伊豆の土地

2 りく

3 息子たち 娘たち

息子と娘で4つでないか……と突っ込まれると、一つで数えると言い出す時政。

これは微笑ましいようで、覚えておいた方がいい場面かもしれません。

我が子より、先にりくが来ている。

両者を天秤にかけたらどうなってしまうのか?

そんな疑問も湧いてきますが、ともあれ、その3つを守るのが天命だと言い出します。

それなのに全成を死に追いやってしまい、実衣を辛い目に遭わせちまったと猛反省。もうこんな真似はしねえと言います。このセリフ、嫌な伏線にしか思えませんが……。

鎌倉のてっぺんに立って、北条の世を作ってみせると豪語します。

頼朝様みてえに細かい目配りはできねえから、義時の力も借りたいってよ。

「もちろんでございます」

義時は嘘をつくのがうまくなった。

内心、父を見限ったのかもしれない。そんな猿山の大将みたいな理念表明して何がしたいのか。

この渾身の宣言で、時政には人の上に立つ資格はないとハッキリしました。

「まずは比企討伐じゃ!」

「その前に……」

義時は、もう一度だけ比企能員と話してみようと思っているとか。

「おめえも諦めの悪い男だな」

「最後の機会です」

しかしそれを時政が引き受けると言い出します。お前じゃ埒があかねえ。向こうが承知すれば御の字。そう引き受けてくれるのですが……。

義時は本当に嘘をつくのがうまくなった。

時政にまっとうな交渉ができるわけがないのに、「一応」のアリバイとして父を使うのでしょう。

義時は本当に決裂を避けたいのか?

それともわざと決裂させたいのか?

自分でもわかっていないような不気味さがあります。

盟友の義村はこの点、感情もゲームもコントロールしていると思えるのですが、義時は何かに流されているようなところもあり……それが普通の人なのかもしれません。

 

能員と時政のしょーもない口撃

かくして比企能員のところへ時政がやって来ました。

能員は後悔を口にします。

それは頼朝の挙兵時のことで、比企は日和見をして参加しなかった。己がいたら石橋山でも勝っていたかもしれないと言い、そうすれば北条より上につけたかもしれないと語ります。お陰で随分遠回りしたのだと。

「よう踏み切ったな」

「わしは源頼朝という男を信じておった。この婿はいずれでかいことを成し遂げる」

「たいしたものだ」

「なあ、ここらで手を打たんか? 小四郎の考えた案を受け入れてくれ」

「断る」

「もう御家人同士の戦はたくさんだ」

「それはこちらも同じ。しかしあれはいかん」

「頼む!」

「泣き落としが通じるはずもなかろう。ならばこうしよう。九州は千幡。その他は一幡様」

そう挑発されて交渉決裂。これ以上話すことはなさそうだと言います。

しかし、時政もタダでは済まない。

「ひとついいことを教えてやろう。悔やむことなんざ何ひとつねえぞ。あの時お前がいたところで、頼朝様は負けておったわ!」

なんともしょうもない話ですわ。

ただ、これは時政が正しいとは思えます。

圧倒的な兵力の差は、比企の参戦程度でどうにかなったわけもないでしょう。

あの戦いにおいて、頼朝にとって一番の恩人は、石橋山の中で頼朝をわざと見逃した梶原景時でしょう。

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その景時を積極的に追い払った二人がこんなくだらないことを言い合っている。

本当にどうしようもない。

能員だけでなく、時政も器が小さく、しょうもない人物だとわかります。

ともかく義時が延ばした最後の手を能員は振り払いました。

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