源実朝が、和歌の紙を夢中になって見ています。
三善康信がさりげなく置いといたもので、書き写したのは母である北条政子。
一番気に入った歌は誰のものか?と尋ねています。
道すがら 富士の煙も 分かざりき 晴るる間もなき 空の景色に
それは『新古今和歌集』に収録された源頼朝の歌でした。
父のものだと知り驚く実朝。
富士の噴煙がわからぬほど雲が多かった情景を詠みました。
「あなたも不安なことがあるかもしれない。でも父上もそうだった。励みにして」
政子が温かい声をかけます。
和歌をはじめ文芸作品は、そのまま見た景色だけでなく、託した心境も読み取るものです。
政子は狩りに出かけて富士山すら見えないと嘆く頼朝の気持ちを読み取りました。初代鎌倉殿であっても、先行きの見えない不安を抱えていた。
「鎌倉殿も思いを歌にしてみてはいかが?」
そう言われて、実朝は深く頷いています。
新妻のえの本音
実朝の婚礼が近づく。
その陰で、時政とりくは息子を失っていた。
不可解な死の真相を巡り、駆け引きが始まる――。
長澤まさみさんによるナレーションで、今週もまた不穏な物語が幕を開けました。
新婚の北条義時は、今年は御台所がお越しになると新妻のえ(伊賀の方)に告げています。
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早くお世継ぎに恵まれればよいと返答するのえに対し、義時が尋ねる。
「子が欲しいか?」
「欲しくないと言えば嘘になりますが」
なんでしょう、このヤリトリ。
義時もちょっと気色悪いし、のえの返答も嘘くさくてムズムズしてきます。
義時は、りく(牧の方)と時政の子である北条政範について語ります。
りくは政範を北条の後継ぎにしようと必死だった。子がいたらいたで大変だ。そう語ると、のえは優しく返します。
「小四郎殿には太郎殿がいらっしゃいます。私はそれで満足」
あからさまに謙虚な妻に対して、ニヤニヤと笑みを浮かべる義時。すっかり騙されていますね。しかし……。
「満足なわけありませぬ!」
「すべてはお前次第……」
「必ずや男子を産んで、その子をいずれは北条の家督にしてみせます! そうでなければあんな辛気臭いな男に嫁ぎません!」
直後に、のえは、祖父である二階堂行政に生々しい本音を暴露していました。
物語上の伏線であると同時に、現実ってそんなもんだなぁとも思えますよね。
一方、太郎こと北条泰時は、父を心配しています。
とんでもない女を娶った父が心配でならぬ。妻の初は「あなたの義母上ですよ」と嗜めていますが。
「伝えるべきだろうか?」
「関わらなければいいのではないかと」
冷静に返す初。
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まぁ、泰時から真実を伝えたところで、父には理解されないどころか、余計なトラブルに発展しそうではあります。面倒なことに巻き込まれたくない初の気持ちもわかります。
「しかし裏の顔を見てしまったからには……ああもう、なぜ父上はあんな女子に!」
まずいですね。義時が不真面目な性格で、妾にするくらいならマシだったかもしれない。正室にしたことで非常に厄介なこととなりました。
にしても、存在そのものが災厄となってしまう主人公の妻とは斬新。
死んだ息子を皿に喩える時政
元久元年(1204年)12月10日――源実朝と結婚するため、後鳥羽上皇の従妹である千世が鎌倉に到着しました。
さっそく出迎えるのは北条政子と妹の実衣。
京からやってきたのは、まるで生きた雛人形のような、可憐な姫君です。
にも関わらず、りくは顔を出しません。彼女が勧めた縁談だろう、と北条時政が気遣っていると、「政範が連れてくるはずだった」と嘆いています。
時政は、どうしようもない話を展開させます。
幼い頃、親父殿の大事な皿を割ってしまった。親父殿は叱ったけれど言った。
割れた皿は元には戻らねえ、しかし皿に載った料理のことは忘れはしない。
思い出の皿はいつだって、うまい料理を乗せて俺たちの前に並ぶってよ。
喩えがなんだかおかしいくない……?と思いきや、案の定、りくは怒ります。
「酷すぎる! 自分の死んだ子を皿と一緒にするなんて!」
オロオロするばかりの時政は、気弱なお前を見ているとどうしたらいいかわからなくなると泣きつくしかない。もはや、完全にりくの操り人形だ。
「わしが言いたかったのは……」
「わかっております。もう大丈夫」
ひとまずりくは回復するのでしょうか。
かくして彼女も参加して、実朝と千世の結婚の儀が進みます。
千世の装束はまさにお雛様。実写になってみると感慨深いものがあります。加藤小夏さんと柿澤勇人さんの美しさよ。
けれども、実朝の戸惑いと迷いはあるようで、酒を口に含むことにためらいがあります。
朝雅が毒を盛ったのではないか
京都から千世を連れてきた畠山重保が義時たちに報告しています。
鎌倉を出た時は元気だったのに急な病とは……と、義時が政範の死を惜しんでいると、人生はわからないと大江広元が淡々と答えます。
すると重保の父である畠山重忠が神妙な面持ちになります。
「そのことで息子から話したいことが……」
政範が死んだのは京都到着二日目の夜。宴席で突如倒れて亡くなった。長旅で疲れていたとはいえ……。
そう言葉を濁す重忠に対し、義時がその先を促すと、宴席の前の晩、重保が聞いてしまったと言うのです。
何を?と思えば、平賀朝雅でした。
「では、これを汁に溶かせばよいのだな。味で悟られてしまわないか?」
朝雅が医者と密談していて、医者のほうも「味がない」と返したというのです。
平賀朝雅による毒殺――衝撃を受ける義時。
話には続きがあり、重保は、政範の死後、朝雅本人を問い詰めていました。
饗応のために汁の味に気を配っただけだ!とシラを切る朝雅は、重保に向かって静かに語気を強めます。
「畠山殿……人に話すと、ご自分の正気を疑われますぞ」
脅迫ですね。
朝雅のほうが立場も発言力も強いことで圧をかけ、重保を黙らせようとしている。
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ただ、重保も若く、真っ直ぐ過ぎました。もう少し相手を泳がせるなり、証拠を固めておけばよかった。例えば政範の遺体を調べられたらよかったのですが……。
それでも「あれは汁の味の話ではない」と言い切る重保。
義時は調べてみると請け負います。
政範に毒を持ったのは畠山重保だと!?
一方、平賀朝雅は、りくに京都へ戻ると告げています。
彼女がいずれ東山にお参りに行くと返答すると、それならばお供をすると笑顔を浮かべる朝雅。
そして、本題へ入ります。政範の死について、嫌な噂が流れていると囁く。
あまりに突然の逝去であり「毒を盛られたのではないか?」と、りくを騙しにかかる。
「毒? 誰が?」
「畠山重保殿……」
追い打ちをかけるようにして、重保が毒を盛る動機まで説明を始めました。
畠山一門には、武蔵の統治をめぐって北条に恨みがある。父の重忠が揉めている。そのせいだと。
息子の死だけにとても冷静にはなれないりくが「許せない」と声を絞り出すと、朝雅はさらに追撃します。
「重保は自分(朝雅)を下手人だと言いふらしている」
「頭がくらくらする……まことですか?」
「畠山重忠が何を言ってきても信じてはなりませんぞ」
そう念押しする朝雅。
りくは頭がくらくらしているし、血が昇っておかしなことになっている。それでも信じてしまった。
りくは時政をせっつきます。
「政範の仇をとってくださいませ!」
そうはいっても、重忠は時政の娘・ちえの嫁ぎ先です。
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忠義者で知られ、人望も厚い。
しかし「自分の血縁ではない!」と声を荒げるりく。
政範は殺されたんだ!と訴え、畠山が彼女のことを北条一門だとは思っていないのだと捲し立てます。
誰であろうと勝手に兵は動かせない
義時は証拠を集め推理をして、朝雅にぶつけてみます。
・あまりの突然死
・死体はすぐさま東山に葬られた
・夏ならともかく、この季節なら京都から鎌倉に運べたはず
さらには、毒を飲んで死ぬと死体の顔色が変わると問い詰めると、相手は「おほほほほ!」と笑い、無礼だと怒ります。怒るところが怪しいんですけどね。
法医学なんてない時代の怪事件を、ミステリにするのは楽しいことです。三谷さんもノリノリでしょう。
義時は時政に、この件に関しては軽はずみに答えを出すべきではないと釘を刺しています。
りくは畠山を討つと言っていると狼狽するばかりの時政。彼にしても、畠山を討ちたくない。重忠はよき息子である。
ただ、政範は大事な息子だった。
義時の隣にいた北条時房も、政範はかわいい弟であったと相槌を打ちますが、それを無視するかのように時政は「畠山を討つから力を貸してくれ」と義時に頼み込んでいます。
義時はキッパリと返す。
「誰であろうと鎌倉で勝手に兵をあげることはできない。たとえ執権であろうと」
軍勢を動かせないことに動揺する時政に、鎌倉殿の下文がなければ勝手に動けないと、手続きのことを説明する義時。
むしろ今までホイホイと軍勢を動かせたことが危険でしたね。
時房は、父に申したいことがあると付け加えます。
「父上、義母上に振り回されるのはもうおやめください。息子として恥ずかしうございます」
「うるせえ!」
途端に怒る時政。義時も、最後のは余計だったと言いながら、その場を去っていきます。
のえに疑いを持つ義村
義時は、盟友の三浦義村に相談しています。りくの入れ知恵のせいで、父が畠山と戦う気になっている。
「次郎を甘くみるな」
あれは優男だと付け加えつつ、壇ノ浦のことを思い出しています。
源義経の命令とはいえ、誰よりも進んで漕ぎ手を殺していたのが畠山重忠。優男だともう一度付け加えつつ、それができる男だとして注意を促しています。
重忠も大したものではありますが、あの激戦でそこまで観察していた義村もやはりすごい。
と、ここで継室のえがやってきて、「縫い物していたアピール」をします。相変わらず、あざといやっちゃ。
義時は妻に盟友を紹介します。悪いところもあるけれど、頼りにしているとか。
「三浦平六にござる」
「今後ともよろしくお願いいたします」
のえの指をチラッと見る義村。用向きは済んだからと、二人で酒を飲むことにします。
「できた女子だ」
義時がデレデレしていると、義村に惚れているのかと尋ねられ、惚れていなければ妻にはしないと返している。
もう嫌な予感しかありません。父の時政が目の前で振り回されていても、自分は大丈夫だと思い込んでいますね。
「だったらいいが」
「なんだ?」
義村は見ていました。のえの指には飯がついていた。握り飯を食いながら裁縫をする奴がいるか。
やはりこいつは見る目がある!
八田知家ではなく、義村がのえを検分していたら結婚していなかったのかも……。
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前回、義村が実朝に語っていた処世術は真実なのでしょう。
遊ぶけど、惚れはしない。相手が深く情けをかけてくれるほど深く付き合わない。冷たいようで重たくないし、短期間、遊ぶ相手としてはいいのでは?
あのわけのわからない処世術講義は、義村と義時の恋愛観の違いを見せる意味もあったのでしょう。
悪いようで、悪くない男。それが三浦義村の個性かもしれません。
ただもう、義時は手遅れですし、これはこれでそういうものかもしれません。
現実問題、家の中をおさめる女性は必要ですし、裏の顔はさておき、表の顔はこんなにも甘くて素敵ですから騙しきればよいだけ。
義時は地位と金を与える。のえは家の統治と子を与える。裏だの表だの愛情だのを抜きにすれば、取引成立です。
千世との結婚生活に馴染めない実朝
源実朝は、和歌を詠もうとするも、調子が乗らないようです。
そんな実朝に向かって、三善康信が素晴らしい御台所だと褒めている。
あのように気高い女性が見たことがない。気がそぞろになるのも致し方ない。
若い新婚の二人ですから、早く夜にならないかソワソワしていると康信は思っているのでしょう。
しかし、実朝はどうもそうではない様子です。
義時は、りくに会うよう政子に声をかけています。
平賀朝雅にあることないこと吹き込まれているから、少し話を聞けば落ち着けるはずと頼んでいる。
政子も畠山との戦は止めたいと訴えます。
実朝は、泰時に妻・初のことを聞きます。
「どんな女子だ?」
「なかなか気の強い女子で、叱られてばかりです」
「不思議だな。文句を言っているのに惚気にしか聞こえない」
確かに千世は美しい。しかし実朝は、雛人形ではなく生身の女性を愛したいのかもしれません。それこそ心の底から恋歌を贈りたくなるような恋をしたいのかもしれません。
実朝は、気晴らしに表をぶらぶらしたいと告げ、泰時がお供をします。
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りくと会って話を聞くように、義時から頼まれた政子は、彼女のもとへ出向きいていました。
と、菊の花を生けていたりく。
表面上は冷静になっていて、3人の子を亡くした政子の前で辛い顔をしたら罰が当たると答えます。
政子は、重忠のことは頼朝も頼りにしていたし、ちえの夫だとしてさらに釘を刺す。
急にどうしたの?
りくが平然としていると、政子は追撃の手を緩めず、畠山を討つなどトンデモナイことだと伝えます。
「ごめんなさい、わからないわ」
あくまでトボけるりくは、政範は急な病死だとして、畠山を討つという話が初耳のような態度を取っています。
さらには、御家人同士が殺し合うのはもうたくさん、と話を打ち切りながら、彼女は手にしたハサミで菊の花までジャキジャキと切り落としていました。
政子との会話など、全く耳に入っていませんね。
武蔵へ戻って戦支度をする
毒を盛ったのは誰だ?
こうなったら審議をすべきだろう――。
しびれを切らした畠山重忠が、そう言い始めます。
しかし、平賀朝雅はすでに京都。
それこそが嘘をついている証拠であり、すぐに連れ戻すべきだと重忠は言います。それでも義時は判断できない。
彼は後鳥羽院の近臣であり、下手をすれば朝廷との対立が決定的になってしまう、とのことで、そんなもん知らんわ、とばかりに重忠は怒りしかありません。
「我らが謂れなき罪を着せられてよいのか!」
重忠は、武蔵で揉めていることも思い出しています。執権殿の狙いはそこだ。畠山を滅ぼし、武蔵を我がものにするのだと。
義時が父を庇うことに理解を示しつつも、武蔵へ帰ることとしました。
このままでは戦になる。
義時にそう訴えられても、念のため戦支度をすると返します。
床には、重忠が拳を叩きつけた跡がついている。あの冷静沈着な重忠がこうも怒っている。
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そのころ源実朝は義盛邸にいました。
義盛が作る鹿汁を食べている。なんでもここにいると心が落ち着くんだとか。
義盛とは気兼ねなく話ができるそうで、一方の義盛も、子供が成人して家には寄り付かないため、頼りにされて嬉しそうです。
巴も、将軍のお役目が辛いのか?と気にかけています。
「少しは羽目を外した方がいい」
義盛は、面白いところへお連れすると言います。
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実朝・義盛・泰時・鶴丸が向かった先には、テントのような家がありました。
なんでも「歩き巫女」がいる場所のようで、今日は若い者を連れてきたと義盛が告げています。
彼女は名うての歩き巫女で、面白いように占いが当たるとか。
甥っ子だとして、一同を並ばせる義盛。
さて、巫女はいきなりこうきました。
「この中に一人……一月体を洗っていないものがおる」
「俺だよ、ようわかったな!」
いきなり驚きの声をあげる義盛。単に臭っているのでしょう。これって占いなのかと泰時が怪しんでいます。
臭いのする義盛が後ろに下げられると、巫女は泰時に向かって「双六が苦手だろう」と突然言い切りました。
苦手というか、子供の頃から双六をするとなぜか具合が悪くなるようです。
双六の最中に殺された上総広常を思い出させる話ですね。
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続いて実朝は「雪の日は出歩かないように」と巫女から忠告されます。
災いが起きる、とのこと。
雪の日は滑るからだいたい歩かない方がいいと義盛が付け加えますが……。
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りくの脅しを鵜呑みにする時政
義時は粘り強く、父に畠山を討たぬよう訴えています。
重忠は頼朝に命を救われてから必死に戦ってきた。奸臣の言葉を信じないように。
奸臣とは誰のことかと問われ、平賀朝雅の名をあげる義時です。誰よりも疑わしいと伝えると、平賀朝雅には動機がないと時政は返します。
時政は気づいていませんでした。
政範が亡き者になれば、次の執権の座は朝雅にもチャンスが回ってくる。それを狙ったのではないか?
そんな状況であるにも関わらず、真偽を正さず畠山を罰すれば必ず後悔する。
「畠山討伐は待っていただけますか?」
義時の言葉に頷くしかない時政ですが……。
「それで引き下がってこられたのですか!」
そんな時政に激怒するりくです。
政範のことはもう少しよく調べてからと時政が告げても、「まだわからないのですか!」と煽る。
梶原景時。
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比企能員。
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滅ぼさなければ滅ぼされてしまう。
畠山を退け、足立を退け、北条が武蔵を治めねば、政範だけではなく、次は私の番かもしれない。
「それはいかん!」
時政はハッとしている。最早その段階まで来ているというりくの脅しを鵜呑みにしていますね。
兵を動かすには鎌倉殿の花押入りの下文が必要であり、時政は御所へ向かいました。
しかし……。
「鎌倉殿は今、会えません」
御所に向かうと、娘の実衣に止められました。大事な用があると粘っても、父上だろうと従うわけにはいかないと強硬な姿勢。
実朝が、お忍びで義盛のところへ遊びに出てしまったため、御所では居場所がわからず混乱しています。
なぜ黙っているのか?と大江広元が不審がると、事を大きくしたくないとか。
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文官たちは狼狽しながらも八幡宮を探すと話し合っています。
御所に騒ぎが広がっています。
「よう、鎌倉殿は見つかったか」
そのころ実朝たちは?
義盛と鶴丸は相撲をとり、実朝はまだ占いをしてもらっていました。
妻を娶ったことを話、思いと関わりのないところで全てが決まったと悩んでいる。
「おまえさん……まあいい。悩みは誰にでもある。おばばにもある」
おばばは、歳をとって肘が顎につかなくなったと嘆いています。
いや、それは……誰でもそうではないのかと実朝が生真面目に返答する。
「お前の悩みはどんなものであってもお前一人の悩みではない。はるか昔から同じことで悩んできたものがいることを忘れるな。悩みとはそういうものじゃ」
巫女に諭され、実朝は涙ぐんでいます。
御所では、八田知家が意味ありげに腕を組んでいました。三善康信は鎌倉殿に何かあったら私の責任だとうろたえるばかり。
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北条家の面々は、今後のことを話し合っています。
重忠は身内なのだから、なぜ戦うのか?
政子がそう懸念すると、同席していた大江広元は、我らが鎌倉殿を見つけられないと言うことは、時政も見つけられないと励まします。
そして、不意に実衣へ向かって「いい匂いだ」と声をかける政子。急に何かと訝しみつつ、京都から貰ったと答えています。
私達の日常でも、緊迫した場面で本題とは関係ない話は出てきますが、それとなく実衣と京都の関係が垣間見える話ですね。
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「よう、鎌倉殿は見つかったか」
と、そこへ時政がひょっこり顔を出してきました。ここに隠れてんじゃねえのか?と疑うような時政に対し、政子が即座に否定します。
そして彼らは、時政にお引き取りをと迫る。
「じゃあ、そうするか。一旦帰ります」
しかし、時政は帰るフリをしていました。
そんな御所のヤリトリには一切気づかず、義盛一行は相変わらず遊び続けていました。
義盛と鶴丸が「双六をしよう!」といい、もうやだやだ!やだやだ!と泰時が駄々をこねていると、八田知家の登場です。
迎えにきました。“女性を見る目がない”以外はデキる男です。
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こうして無事に戻った実朝一行。
足立遠元が告げると、こんなに大騒ぎになっているとは思わなかったと実朝が詫びています。
無事に帰ったなら十分だと安心する康信。
御所に静けさが戻り、一堂安心――そんな間隙を縫うかのようにして、やってきたのが時政です。
鎌倉を守るとは便利な言葉だ
実朝の側にきて紙を取り出し、花押を記すように告げる時政。
これは何が悪いのか?
疲れているから確認しない実朝か?
悪意を持った時政か?
どんな時代でも、常に人間の悪意やミスはあります。
だからこそ重要な決め事だけは絶対に漏らさないシステムが必要となる。
今回の一件は、時政もわざと文面は見せず、孫の実朝にサインを促していましたが、「文章の中身を読まなければ花押は記さない」あるいは「重臣にも確認させる」といったシステムがあれば防げたでしょう。
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そんなことも露知らず、武蔵では義時が重忠に「とりあえず父はわかってくれた」と告げています。
重忠が鎌倉殿に会い、潔白を誓う起請文を提出する。それをわざわざ言いにきたのかと重忠が義時に問うと、執権殿の気持ちが変わる前にと、互いに盃を口に運びます。
しかし、彼は油断しきっておりません。
「私を呼び寄せて討ち取るつもりではないでしょうね」
「はは、まさか」
重忠は侮らぬようにと告げます。
一度戦となれば一切容赦しない。相手の兵がどれだけいようと、自分なりの戦い方をする。
義時も畠山の兵の強さはわかっていると言います。
重忠は、執権殿と戦うことになったらどちらにつくつもりかと義時に聞いてきます。
「執権殿であろう。それでよいのだ。私があなたでもそうする。鎌倉を守るために」
「だからこそ戦にしたくないのだ」
「しかしよろしいか」
そう重忠は本質をついてきます。
「北条の邪魔になるものは必ず退けられる。鎌倉を守るとは便利な言葉だが、本当にそうなのだろうか? 本当に鎌倉のためを思うなら、あなたが戦う相手は」
「それ以上は」
「あなたはわかっている」
「それ以上は……」
答えられぬ義時です。
MVP:歩き巫女と重忠
この二人は幽冥の世界――要するに半分あの世にいます。
巫女は高齢であるし、水を跳ねて呪文を唱え、占いをするときにそうなる。
そうすることで相手の魂やこれから先に待つ世界が見える。
巫女だけに、あの世とこの世の境目にいけるのです。
畠山重忠は違う。
最後の場面は死の予感と覚悟ゆえに、半分魂が抜けてきている。
そんな不思議な場面になっていました。
もうこの世界に生きていないから、義時の迷い、魂も見えてしまっている。
そういう得体の知れない相手に問い詰められて、義時は「それ以上は……」と参るしかない。
山田風太郎『幻燈辻馬車』のラストシーンで、死の覚悟を決めた主人公が、亡くなった妻子と同じ爛光(りんこう)にふちどられていた――とありました。
どういう状態なのか? 想像するしかなかったのですが、今回の重忠にそれを見た気がします。
思えば『麒麟がくる』の最終回光秀にもそんな光があった。
半ばこの世界から飛び立っていて、覚悟を決めた結果、人ではない何かになった。
そういう透明感のある姿を体現する中川大志さんがすごかった。
声も低いようで、地面の底から響いてくるようで、きっちり言いたいことはつたわってくる。
不気味でもない、おぞましいのでもない。ただ真実を見通せるからこそおそろしい。
荘厳な幽霊がそこにはいます。
死亡退場は悲しいけれど、こんな圧巻の姿を見せるというのは素晴らしいことです。
重忠の前で嘘はつけません。
重忠がどんな姿になろうと、問い詰められたら、義時は道を選ぶしかなくなるのです。
総評
今回は小悪党心理が解剖されています。
平賀朝雅、りく、北条時政――どいつもこいつも、圧倒的でカリスマのある悪ではなく、卑劣な保身で滅んでゆきます。
彼らは、自分こそが被害者だというアピールに余念がない。
朝雅は自分が加害者なくせに、疑ってくる相手のせいで苦労しているとすり替える。
りくにせよ、根拠もなく自分が襲われると被害者アピールをします。
こういうことは典型的です。
「あいつらのせいで安全が脅かされる!」というのは差別と迫害、格好の言い訳です。
そんな人間心理が秀逸な本作。
三谷さんがストーリーテラーとしての高みにどんどん登ろうとしていて、彼が前に立って突撃するからこそ、スタッフもキャストも食いついてゆく。
そんな理想的な流れがうまくできていると思えます。
三谷さんじゃないとこれはできない。そう思えるのが複雑なプロットです。
「ちょっと難易度高すぎねえか?」
時政を真似て、そうスッとぼけて言いたくもなる。中盤以降その傾向がどんどん強くなっていると思えます。
◆ 『鎌倉殿の13人』、「あの人の暗殺」を書くのは「ネタバレ」になるのか? 悩ましい問題(→link)
こういうニュースがあったのですが、思うにこれは古典的ミステリと無縁の意見だと思えます。
古典的なミステリでは、冒頭に殺人場面があることもある。毎回犯人が同じ連作短編集もある。
誰がどういう最期を遂げるのか、そういうネタバレははなから破っていることがしばしばあります。
そういう事件をどう解決するか。その過程でどう悩むか。トリックはどうなのか。真犯人をどう追い詰めるか。
そこが重要なのであって、答えを知っていればよいというものでもありません。
たとえば畠山重忠の破滅は、りくとの確執が原因です。何かと不穏な武蔵のこともある。
随所にそういう伏線が史実通りに張ってあったものの、平賀朝雅の毒薬というピースをはめ込むことで、ガラッと変えて見せてきました。
そして歴史フィクションにもそういう醍醐味がある。
『麒麟がくる』が光秀と信長の関係性を描き、どうしてこの二人が決裂するのか描くことで盛り上げていました。
加害者と被害者を変えてはいけないけれども、動機の膨らませ方でドラマは成立すると一年を通して描いたわけです。
鎌倉時代となると史料が比較的少ないし、『吾妻鏡』は編纂意図を読み取りつつ謎解きをしないといけないとされます。
そこをうまく落とし込んで、歴史劇はミステリと相性抜群だと再提示してきていると思えるのです。
このドラマの魅力はたくさんあるけれど、まずともかく脚本が一番です。
脚本がいいと、皆奮起して手抜きしないのだとわかります。
三度大河のオファーを受けるとなれば、もう俺は大御所だとでーんと構えていいとも思えるけれども、三谷さんはそうでないところも素晴らしい。
その三谷さんが手本とした作品について少し考察したいと思います。
お手本は『ゲーム・オブ・スローンズ』
気になったのはコチラの記事です。
◆『鎌倉殿の13人』で感じるシェイクスピア要素 ともに大衆の心を熟知(→link)
シェイクスピア要素とは何でしょうか?
シェイクスピアについては、注意せねばならないところがあります。
彼は元々あった伝承や伝説を基にして脚本家していることが多いので、そういうプロットを「シェイクスピア要素」と書くことは誤解を招きます。
ここであげられている『ロミオとジュリエット』も、もとは古代からある伝承です。
古代からの伝承や似たような話ならば、別の国にあってもおかしくはありません。
僭越ながら、それをシェイクスピア要素というのは語弊があるように思えます。
「プロテスタント以前、中世の歴史観が通じる」あたりでいかがでしょうか。
鎌倉時代とシェイクスピアを結びつける発想は、明治時代からありました。
例えば坪内逍遥は、日本史を題材にしてシェイクスピアのような作品を描けないかと、牧の方をヒロインにして作品を作り上げています。
今更シェイクスピアを持ち出すよりも、もっとよい比較対象があります。三谷さん自身が今回の大河を描く上での「お手本」を明かしているのです。
◆(三谷幸喜のありふれた生活:1101)「鎌倉」へ、長い旅でした(→link)
有料記事の一部分ですので引用しませんが、『ロード・オブ・ザ・リング』や『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下GoT)といったファンタジーの匂いを感じているとあります。
特にGoTはお手本だと。あんな大河ドラマを作ってみたいと思っていたと。そして日本史を知らない海外の人が観ても楽しめるようにしたのが目標であると。
僭越ながら、以下の事前予想記事で記したことが当たっていたようです。
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大河『鎌倉殿の13人』見どころは?残酷な粛清の勝者・義時の悪辣描写が成否のカギ
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これは強調しておきたいのですが、ラニスター家が主役かつ勝利するバージョンということです。
ラニスター家は、視聴者が感情移入するスターク家を追い詰め潰そうとする悪役の位置にいます。
同時に人気もあり、そんなラニスター家と、北条家は家族構成がそっくりです。
父:陰謀家。あまりにえげつなさすぎて、怒った我が子に裏切られる
姉:王と結婚するも、我が子を全員失い、自らが権力の座につく。服喪中のような黒いドレスに短髪が後半のトレードマーク
兄:姉を忠実に支える
弟:知性派
まんま北条一族じゃねえか!とツッコミたくなる。
対立する一族を次から次へとえげつない策で滅ぼし、のしあがる。その様を歌ったテーマソング「キャスタミアの雨」は有名です。
ラニスター家は最終的に、歴史と由緒あるターガリエン一族末裔に敗北するわけですが、その最終決戦の勝敗が逆転しているんですね。
そんなリアルラニスター家をモチーフにした饅頭やビールが売られていると思うと、なかなかシュールですな。
ラニスターの味だの物語だの、味わいたいような、そうでないような……。
他の人物も似ております。
オリジナルキャラクターであるトウは、女暗殺者アリアに。
比企尼は原作のみの設定ですが、虐殺後呪いをかけるために戻ってくるキャトリンと共通点がある。
今回出てきた歩き巫女の予言も、GoTでも頻出する要素です。
あの作品でも予言をする巫女が出てきて、重要な役割を果たしています。
演出でも影響を感じます。
HBOよりもレイティングが厳しい中で、大河としてはギリギリまで挑み、精神的に打撃を与えるようにしているとわかります。
血飛沫が散る。切断面や斬首の瞬間が映る。
そういう表現を避けつつ、斬首前に理不尽さを叫ばせる。
首を入れた箱をにこやかに誰かが運んでくる。首桶が並んでいて頭髪がうっすらと見えている。こういう表現でショッキングな演出にできると証明しています。
スローモーションに印象的な音楽を流す。不気味な暗い照明。戦闘シーンのVFX。実に効果的に使われています。
今作の演出は重要です。去年とは比較にならないほどレベルがあがりました。
2021年大河は天狗党の処理があまりに“ゆるふわ”だとこぼしたところ、真っ当に見ていたらそんなわけないと絡まれました。
改めて言います。あれはまぎれもなく“ゆるふわ”です。
実際に起きたことの残虐性がろくに伝わってこないのは、今年と比較すればおわかりいただけるかと思います。
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夫の塩漬け首を抱えて斬首された武田耕雲斎の妻|天狗党の乱はあまりにムゴい
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今年のおかげで、視聴者もすっかり鍛えられてきたと思えます。
GoTのファンは残虐さを乗り越えて茶化すファンアートを楽しみ、リアクションを動画にしてネタにしてきた。
そうでもしなければやってられないということかもしれませんが、適応したのです。
その適応を示す広告がこちら。広告キャラクターが突如惨殺される様をユーモラスに描き、ファンも笑う。そんな鍛錬があってこそ成立する外道コラボです。
大河ファンダムも仕上がってきましたね。
だってGoTだから。そんなノリと同じように「だって鎌倉だもん」で通じるようになりましたので。
◆「鎌倉殿」次回、凄い予告 誇り高き畠山殿が激怒、なぜ悲劇?予告が語った結論にネット震撼「ここは鎌倉」(→link)
これは歴史を学ぶことを考えるうえでも大事ですし、ドラマの鑑賞でも重要です。
自分の体験や感覚を現代人一般のものとして考え、それに近いと高評価する。
好感度や共感だけを過剰に重要視する傾向を最近とみに感じます。
そういうことばかりをしていると、マイノリティのことや、過去の歴史や価値観ををふまえた作劇に「だってわからないから」というだけで低評価をつけること、考証を無視してでも共感性を演出されるだけで高評価をつけることにつながります。
それをうまく大河でも生かしたのが2019年と2021年でした。
朝ドラで成功した手法やキャストをそのまま踏襲して、盛り上がったファンダムの流れをそのまま移すだけである程度の高評価を稼げると証明した。
特に後者は五代友厚を同じキャストで繰り返すなんて、あまりに露骨です。
しかし、それは日本国内でしか通じませんし、歴史の理解からすると大問題です。
中世以前の価値観なんて、専門の研究者ですら「理解できない!」と嘆くことも当然ある。無理矢理、現代人みたいな思考回路をする中世人にしなくてもよいのです。
歴史劇についていえば、日本でこの傾向が強いことは懸念していました。
ガラパゴスにもほどがある。
歴史劇の話をしていても全く話が通じないことがしばしばあり、困惑させられてきました。
日本人が見て胸がぐるぐるしたところで、これだけVODが普及し、韓流華流時代劇も強い時代では先細りです。朝ドラの二番煎じなんて滅びるしかない。
そういう流れと訣別した今年は、まぎれもなく大河の歴史を大きく進めたと言えます。
世界的にあれだけヒットして、歴史劇や歴史観までもを変革したとされるGoTぐらいは、大河と比較する上でも最低限見ているべきではないかと私は思います。
以前記事に、でしゃばったことをしないで国内ドラマだけ見ていればいいと書かれましたが、それは違うでしょう。
あの作品を抜きにして歴史劇を語るなんて、2020年代にはもう無理があるのですから。
今年の大河は歴史劇、ひいては視聴者の歴史観まで鍛える。極めて秀逸な作品です。
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【参考】
鎌倉殿の13人/公式サイト























