鎌倉殿の13人感想あらすじ

鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第45回「八幡宮の階段」

建保7年1月27日(1219年2月13日)――夕方から降り続けた雪が強さを増している。

「天命に逆らうな」

そう語るのは、実朝が和田義盛に引き会わされたあの歩き巫女。

何やら意味ありげな登場の仕方ですが果たして……。

 

鎌倉殿は守り刀を手放した

儀式の様子を建物から眺めているのは三浦義村。その肩を北条義時が叩きます。

「どうしてここにいるのか?」

義村が怪訝そうな表情を浮かべると、横から北条時房が「聞かないように」と困った顔をしています。

義時は役目を外されてしまったとか。源実朝の太刀持ちを源仲章が代わったのです。

鎌倉殿の御命令であり、もう用無しと言われたとか。

主君の前で武器を持つということ――危害を加えることもできますから、全幅の信頼が置かれてないと任命されません。

義時が外され仲章に交代することは、本当に鎌倉殿の御命令だったのか。時房がそんな疑念を挟んできますが、当の義時はあっけらかんとしています。時房の方がかえって悔しそうです。

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ただしこのことは鎌倉殿が義時という守り刀を手放すことも意味します。

思えば初回以来、彼は鎌倉殿を守る刀でした。

最初に源頼朝を引き入れたのは兄の北条宗時だったけれども、頼朝を守っていたのは義時です。女装した頼朝を馬に乗せて逃げていく役割も担いました。

義時は義村に尋ねます。

公暁はどこに潜んでいる?」

シラを切る義村ですが、義時も察しはついている。ならばなぜ動かないのか?

当然の疑問に義時はこう応える。

「思いは同じ。鎌倉殿は私に憤っておられる。もし公暁殿が討ち損じたなら、私は終わりだ」

覚悟を決めているような、諦めているような、そんな言葉ですが態度はふてぶてしく、終わるだなんて思っていないようにも聞こえます。

 

「覚悟ッ、義時!」

雪が降る中、厳かに儀式が進められる鶴岡八幡宮

実朝の右大臣就任を祝う武家の都。

しかし三代鎌倉殿代替わりで生まれた歪みは取り返しのつかないところまで来ていた。

復讐の刃が向かう先は――。

長澤まさみさんのナレーションが静かに不穏な空気を伝えます。

「天命に逆らうな」

相変わらず同じ言葉を繰り返す歩き巫女。

公暁が八幡宮の階段横に潜んでいました。

と、北条泰時が義時の姿を見つけます。どうしてここにいるのか。驚く泰時に対し、時房は「聞かないでくれ」とそっと告げます。

泰時は父がいたことに安堵しています。その上で動かぬように告げる。

公暁は義時も狙っている――。

長い石段を実朝が降りてきます。泰時がそちらへ向かおうとすると、義時は止めます。

「聖なる儀式の邪魔をしてはならぬ」

義時の信仰心はおかしい。実衣が「意外と気にしい」とからかっていたけれども、確かに変だ。神聖なものを自分のために利用しているようで、ここもそう思えます。

その刹那でした。公暁が飛び出し、声を上げます。

「覚悟ッ、義時!」

斬られたのは源仲章でした。

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驚きと苦悶に満ちた表情で、その場でフラフラとする仲章。

突き刺され、今にも死にゆくその姿を、義時はまるでわかっていたかのように見守っている。

「寒い、寒いぞ、寒いぞ、ああ、寒いんだよ〜……」

ついには断末魔の叫びをあげ、この優美な男は息絶えました。

花が落ち、踏みにじられたような無惨極まりない死に様。あれほど美しい生田斗真さんが、血反吐に塗れて無惨に死ぬ。

これぞ大河の意義でしょう。

全く惜しむ必要性が感じられない。こういう散り際ができてこそ、演技の幅も広がりますよね。お疲れ様でした。

 

誰もが天命の虜になったかのような

「鎌倉殿!」

泰時が絶叫し、その場へ駆け寄ろうとすると、義時が「動くな」と止めます。

事前に胴丸の装着を拒んでいた実朝は、泰時から渡された小刀をどうにか懐から取り出しますが、しかし――。

「天命に逆らうな」

またも歩き巫女の声がしてくる。

公暁ですら迷いがあったように思えたところ、実朝は手にした小刀を落とし、まるで誘われ、吸い込まれるように刃へ近づいてゆき……呆気なく斬られました。

「鎌倉殿〜!」

泰時が叫ぶ。

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義時、時房、義村は衝撃的な場面を眺めているだけ。心底驚いているのは時房だけのように見えます。

「阿闍梨公暁、親の仇を討ったぞ! 源氏嫡流簒奪の謀略はここに明らか!」

事前に文書を用意していた公暁ですが、その紙はひらひらと落ち、実朝の身体の上で血に染まってしまった。

そのタイミングを逃すものか、とばかりに義時が宣言します。

「斬り捨てよ!」

この場面はかなり不思議に思えます。

ゆっくりとスローモーションのようで、あれだけ余裕があるなら実朝の暗殺を阻止できたようにも思える。

しかし誰もが観客となってしまい、ただただ、天命を見守るしかないような……あたかも天命の虜になってしまった神秘的な場面です。

実衣が姉・政子のところへ向かい、手をとります。

「気をしっかり持って」

「何?」

これから最悪の知らせを聞くことになる実朝の母・政子。

「天命に逆らうな」

そう歩き巫女が叫んでいると、義時の次男・北条朝時が小馬鹿にする。

「この婆さん、誰彼構わず天命に逆らうなって言っているんだ。昔はよく当たったのに」

どこから迷い込んだのか?と追い払っています。警備責任者としてそれでよいのかとツッコミたくなると同時に、重要な指摘でもありましょう。

天命に逆らうな――この言葉を誰彼構わず告げるというのは、巫女は天命の言葉を代弁しているから。

この夜、八幡宮周辺にいるもの全員が天命に巻き込まれているとすれば、それが正しい。

正しいのは巫女です。もしも誰かが天命に逆らい、実朝と公暁の間に身を投げ出したら天命は実現されません。

「笑えるな。お前の代わりに死んでくれた」

義村が皮肉げにそう言うと、

「兄上は天に守られているようです……」

すかさず時房がフォローする。

この二人も天命に飲まれた。義村は天命が成し遂げた悲喜劇が笑えた。時房は天命を感じ取った。

そして公暁は逃げてゆきます。天命を果たした藁人形は、捨てられるだけ。

 

冷淡に経緯を把握する広元

御所に戻った義時。

公暁を捉えるように宣言すると、大江広元はさらなる暴挙に出ないようそうすべきだと賛同します。

三善康信は泣いています。

泣いてるだけなら邪魔だから出ていくようにと広元は冷たく促している。

問題は次の鎌倉殿です。

上皇様に送る文を書くように告げる義時。鎌倉殿を失ったが、動揺は一切ない。そんな指示を出します。

康信がいなくなると、広元が、義時の無事を喜びます。さらには源仲章の死を自業自得だとして、手間が省けたとも言い切る。

「どうやら私はまだやらねばならぬことがあるようだ」

義時はそう言いますが、どんどん霧がかかるように難解になってきました。

広元よ。あんなに熱く語っていた尼御台への愛はどうなった?

政子の心痛を気にかけないばかりか、むしろ盤面が思ったように進んだと、ワクワクしているようにすら見えてくる。

広元は指手ではありません。駒を動かすのはあくまで天命。それでもこの盤上でことがうまく運んでいることに内心嬉々としているようだ。

そして天が指す駒の義時は、まだ終わっていないと理解しているようです。

義時が仕上がってきていますね。

和田義盛が亡くなったあたりは、元々の彼が顔を出して苦しみを見せていた。今は天命に呑まれ、かつての義時はまるで息をしなくなったように思える。

いったい誰が彼を救えるのか……。

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