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【鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第45回「八幡宮の階段」】
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実朝最期の歌
時房が政子に、鎌倉殿の遺骸を部屋に安置したと告げています。
政子は御台所こと千世のことを気にかけている。どうやら彼女は鎌倉殿の手を握ったまま離そうとしないそうで……愛のある夫婦でした。
実衣は涙を流しながら激情。
公暁を討ち取るように指示を出します。首を御所の正面に晒すくらいでなければ気が収まらない。
しかし政子は、あの子は私と頼朝様の血を引いていると言い、命を助けてやりたい様子です。
「何を言ってるの? 大丈夫?」
そう呆れる実衣。
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時房ですら、公暁は謀反人なのだから、尼御台がそのようなことを言ってはならないとたしなめます。
政子はそれでも引けない。公暁の首を取って実朝が喜ぶとは思えないと言うのです。
「だったら今、実朝に会いに行きましょうよ。あの子の前でも同じことが言えるかどうか。さあ、姉上」
そう実衣が告げると、千世がやってきました。
彼女は実朝の生涯最期の歌を手にしていました。
いでていなば 主ぬしなき宿と なりぬとも 軒端の梅よ 春を忘るな
【意訳】私がここを出ていったならば、ここは主人のいない屋敷となってしまう。それでも軒端に咲く梅よ、次の春にも忘れずに美しく咲くのだよ。
政子に促された時房が読み、愕然とします。
「これは別れの歌……」
同時に、今がどんなに厳しい寒さであっても、春は来ると告げています。あたたかい風が吹いてきます。
風は、源仲章には当たらなかった。もしも天があたたかい風を吹かせ、それを受けて咲く梅があるのだとすれば、それはどこにあるのでしょう?
そのころ仲章の屋敷にいたトウは縄を外し、監視人を倒して脱出していました。殺すことを使命とする彼女は、どこへ向かうのでしょうか?
妻を突き放す義時
「おかえりなさいませ」
自邸に戻った夫の義時に、のえが抱きつきます。鎌倉殿が襲われたと聞き、ご無事で何よりだと喜んでいます。
「代わりに仲章が死んだ」
「亡くなられたのですか」
「着替えて御所に戻る……お前も救われたな」
困惑して聞き返すのえを義時は突き放す。
仲章はのえに目をつけていました。貝合わせなどで彼女に近づき、だからこそ、いずれ言わなくても良いことを喋っていただろうと義時。そしてこうも言い切ります。
「私はお前を斬っていたかもしれない」
困惑しつつ、妬いておられるのか?とのえが言うと、さらに義時は突き放します。
「八重も比奈も、もう少しできた女子だった」
「言っていいことと悪いことがございます! 今のはどちらでしょうか? 今のはどちらでしょうか!」
のえが叫ぶ。彼女は言われっぱなしにはならない。
それにしても、義時は勘違いをしているのではないでしょうか。
妻とは夫を映す鏡です。
今の妻が劣って見えるというのならば、自分が醜くなった可能性には気づかないのか。
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父の北条時政はりくに籠絡されていたけれども、愛のために泣き続ける鶯(うぐいす)だった。花の枝に止まって鳴く姿は愛らしい。
けれども今の義時は、まるで屍にたかる鴉だ。ギャアギャアと鳴く姿は、ただただ、おぞましい。
たかが骸骨、されど骸骨
三浦義村が焦っています。
早く若君こと公暁を見つけ出すよう命じている。他の奴らに先を越されてはまずい。
弟の三浦胤義がお連れしてよいのか?と尋ねると、苛立ったように「見つけ次第殺す」と命じます。
謀反人に加担していたら三浦は終わり。そう説明しながら、そんなことも理解できない弟に苛立っているようだ。
当の公暁は、政子の部屋の前に来ていました。
ここにいてはすぐに捕まってしまうと部屋に招き入れ、傷に薬を塗りながら、公暁に語りかけます。
「実朝は、あなたに謝りたいと言っていました」
「話をしました」
「会ったのですか?」
「二人で源氏の世を作ろうと言われました」
「あの子がそんなことを……」
「しかし私には信じられなかった。欺かれてると思いました」
公暁が実朝の言葉を素直に受け取れていたら……。ほんの少しの差で、事態は大きく変わってしまいました。
「こんなことをして鎌倉殿に本気でなれると思っていたのですか。謀反を起こした者についてくる御家人はいません」
「多分そうでしょう」
「わかっていたなら、どうして?」
一見、何気ない問答のようで、頼朝の蒔いた種が育っているとわかります。
かつて頼朝は奥州合戦において、主君・藤原泰衡を密告した河田次郎に忠義がないと罵り、斬首を命じました。
そうでもしないと坂東武者に忠義はわからない。
頼朝のころはそうだったけれども、その種は育ったのです。
鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第21回「仏の眼差し」
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祖母の政子を前にして素直になれたのか、公暁が話を続けます。
「知らしめたかったのかもしれません」
「知らしめる?」
「源頼朝を祖父に持ち、源頼家を父に持った私の名を……結局、私には武士の名はありませんでした」
源氏の血だけで鎌倉の上に立てる時代は終わった。そんな嘆きもあるような言葉です。
そして“お見せしたいもの”として、取り出したのが、あの髑髏。実朝の部屋から持ってきていました。
「これぞ鎌倉殿の証、四代目は私です。それだけは忘れないでください。二度とお会いすることもないでしょう。御免」
たかが髑髏、されど髑髏――かつて文覚が源義朝の骸骨として持ちこんだ偽物を、政子が掲げて頼朝に挙兵を促しました。
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そうして征夷大将軍にまで上り詰めた頼朝と、その血を引く子たちは次から次へと散ってゆく。
政子の人生は、源氏という歯車に巻き込まれたようなものでした。
義時に対峙した義村は……
公暁の犯行について、実際のところ義村はどこまで知っていたのか?
義時が問い詰めています。
義村は、たしかに公暁から相談は受けた。しかし断った。そう言いながらも、信じられるほどの説得力はないと理解している様子。
そして正直に言います。
確かに一時は考えた。公暁を焚きつけ実朝を殺し、てっぺんに上り詰めようと思った。だがやめた。
「なぜだか教えてやろうか?」
「聞かせてもらおうか」
義村は言います。義時のことを見ていたら頂点に立つことなど嫌になった。今の義時は力任せで、怨みを集め、怯え切っている。
「そんな姿を見ていて、誰がとって代わろうと思う?」
そう言われて義時はこうだ。
「私にもう敵はいない。天も味方してくれた。これからは好きなようにやらせてもらう」
「頼朝気取りか? 言っとくが、これから鎌倉はガタガタだ。せいぜい馬から落ちないよう気をつけるんだな」
義時のあまりに異常な言葉に、あの義村ですら怯んでいます。
正面きって反論するというよりも、皮肉げに冷たい笑みを浮かべつつ憎まれ口を言う――こういうやり口って、猫が耳を伏せながらシャーシャー言っているようなもので、ビビっているとかえってわかります。
そんな相手に義時は容赦しない。
自分が狙われていることを知っていたのか、公暁が私を殺そうとしていたことは知っていたのか、と畳み掛けながら、叫ぶ。
「私に……死んで欲しかったのではないのか!」
「公暁がお前を殺そうとしていると知ったら、俺はその場であいつを殺していたよ」
そう言いながら去ってゆく義村は、襟を直していました。
前回(第44回放送)で明かされた義村の癖ですね。真意と違うことを言うときは襟を直しながら言葉を出す。
では、今回の義村はどうだったか?
半分嘘で、半分真実を語っているとも思えます。
三浦が北条に勝つ手段を考えてきたこの男。義時を殺すことを夢想したことがなかったとは思えません。
しかし、仮に義時を殺したところで、北条には泰時がいれば時房もいて、さらには何と言っても頼朝の妻だった政子もいる。彼ら全員を首尾よく倒すことなど不可能に近い。
そんな危ない賭けをするぐらいなら公暁を始末した方が確実だ。
義時への友情なんて、そんな湿っぽいものではなく。この二人は莫逆の友というより、呉越同舟といったところでしょう。
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しかもこの会話の最中に、義村も気づいた。
天命に足を掴まれた。目の前にいる男は巨大化している。
かつては自分に策を聞きに来た、すがる犬のような目で助けを求めていたこともある男が、今や、自分を掴んで頭から噛みちぎりそうな何かになってしまった。
これほどの恐怖と屈辱はないでしょう。
なんだろう、義時がもう人には見えない。もっと別の何かに見える。
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